曲り角で
思い出すのはあなたの顔。
ほんとうはもう少し、
いやもっともっとあの日、
話していたかった。
ひとりでに楽しみになり、
ひとりでに喜んでいた。
人との関わりは大事と、
口で言って心で後退り。
音楽の友達にしても、
仕事の同僚にしても、
身の回りの人たちとは
何かしら違和感を感じた。
それでもあなたの顔は、
今でもよく浮かんでくる。
だから幸せであってと
ひとりでに願っている。
人は一生の途中で、
何度か曲り角にかかる。
そして、その曲り角に
立つ人が必ずいる。
まだ若いあなたのことを
今でも思い出すのは、
あの頃が曲り角になって
いたのだと思う。
あなたは時々優しいと
言ってくれた。
そんなことはないと
思いながらもほっとした。
曲り角を曲がるときに、
ほっとできていたから、
そのまま歩き続けられた。
今も辞めていない。
詩は送りたい、ずっと。
あなたの顔が浮かぶかぎり、
あなたの幸せを願えるかぎり、
がんばりたい、そっと。
畑では、玉葱、じゃが芋、
大豆、そら豆が、膨らんでいる。
夏野菜は苗が育ってきた。
きゅうり、かぼちゃ、おくら。
そうそう、茄子もある。
さつま芋がぼちぼちと、
夏の太陽を浴びよと、
芽を出している。
どれだけ実るかわからない。
わからないけれど、
今となれば、あなたに向けて
実らせている。
一つ、気になったまま。
あの別れ際、あなたの目が
泣き出しそうに見えていた。
大丈夫だったか。
通り雨の日にも、
今日みたいな汗ばむ日にも、
心にある風景は同じ。
見送ったあなたの背中。