第4話 もう一度
「私だってこんな若い身空で死にたくない。だけどまあ冷静に考えて、カーティスから受け取ったお金を返すのは惜しい。もう借金の返済にだいぶ使っちゃってるし、そもそも物理的に返せもしない。だからさ」
そう言って区切ると、にやっとしてフリージアを見た。
「もう一回入れ替わればいいのよ」
その言葉に、フリージアは目を丸くした。
「入れ替わる、って……」
「今度はカーティスも邸中の人も騙すの。私はここでは本物のフリージア。あなたはリディとして、そして外に出たら本物のフリージアとして生きていくのよ」
それは願ってもみない提案だった。
急に降って来た思いもしない展開に、フリージアがうまく考えをまとめられないでいる間に、リディは話を続けた。
「私は自覚があるほどの人でなしなんて無理。それでも好きだって言うんだから、あんたくらいしか嫁げるやつなんていないじゃない。入れ替わりだって、一度はできたんだから同じことをすればいいだけよ」
「でも今度は私とリディ以外の人すべてを騙さなければいけません」
「グレイを騙す必要はもうないでしょ? 気を付ければいいのは、この家の中にいる時だけ。私は大人しくする。あんたは私みたいにちょっと下町っぽさを出す。完璧じゃなくても、最近は猫かぶるのもうまくなったんだなって思ってもらえるわよ」
「確かにそうかもしれませんが……」
あの厳しい義兄の目を騙し通せるとはとても思えない。
しかしそれを口にすれば、リディに舌打ちされた。
「あんたにやってやれないわけがないでしょ。そもそもあんたのオニイサマが私とあんたが似てると思ったから連れて来たんだし。大好きな婚約者と自分が結ばれたいんだったら、嫉妬ばっかしてうじうじしてないで少しは根性出して頑張んなさいよね!」
確かに彼女の言う通りだ。
フリージアは覚悟を決め、強く頷いた。
「わかりました。やってみます」
嫁ぐその日までのことだ。
もしもフリージアが嫁いだ後に彼女が失敗をしてカーティスにばれるようなことがあっても、きっと彼女はうまく逃げることだろう。
その時には義兄が侯爵邸に乗り込んでくるようなことがあるかもしれないが、フリージアは本物のフリージアだ。
侯爵家にとっては何の問題もないのだから、フリージアを渡す理由はない。
結婚は家と家との契約なのだから。




