常軌を逸するジョーキの行為! 悪役令嬢同士の抗争を終えた現場に入ります! 瞳の内蔵式カメラで映します! 下着を脱がして特殊な魔力が込められたマジパワーズを機械人形に穿かせます!
廃墟を探索。
こちらは、侯爵家令嬢メロリナー様の拠点の一つだったお屋敷の、エントランスです。
瞳の内蔵式カメラで映像を記録し続けながら、あなたへとご報告をさせて頂きます。
あなたには事前にご連絡済みですが、こちらでは一週間前に、悪役令嬢メロリナー=ナショエクスト様と、敵対する別の悪役令嬢シムコ=ティボール様との抗争がありました。シムコ側の襲撃を受けてメロリナー側が撤退し、こちらの拠点は放棄された状態になります。
エントランスをご覧下さい。破壊活動のおこなわれた証拠が数多く残る、痛々しい光景が広がっています。
ちょっと見た感じでは、少女が十数人は倒れているようですが、全員が少女ではなく女性型機械人形“ジョーキ”です。ジョーキの多くは、シムコ陣営の戦闘型ジョーキ、『アクリーム』または『フォーハン』でした。
メロリナー陣営は、三体ほどあるメイド型高級ジョーキの『デイムズ』で抵抗したのでしょう。戦闘向けジョーキではないデイムズですが、それでもアクリームやフォーハンよりも基本性能がはるかに上ですので、何倍もいる敵ジョーキと対等に戦えたのだと推測します。
この場のジョーキは全て破壊され、無残な姿になっています。
よって、あなたには、あまり良い結果はご報告出来そうにありません。
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エントランスだけでなく他のお部屋も回って、放棄されたジョーキを全て見ました。動力源はもちろん、思考装置や補助装置など、使えそうな部品はほとんど残ってなさそうなのが現状です。
あなたにジョーキの内訳をご報告いたします。メロリナー陣営はデイムズが四体、シムコ陣営はアクリームが九体、アクリーム・スペシャルが一体、フォーハンが十四体でした。
どのジョーキも、動力源は破損しているか、奪取されています。ただ、デイムズ型ジョーキの思考装置だけは、残っていました。デイムズの思考装置は安全保障機能が高く、通常、所有者以外では起動も解析も出来ないからです。使用不可能な装置を持ち帰る意味はありません。
そのお陰で、『奥の手』が使えます。
我々国営研究所の開発した試作下着『マジパワーズ』さえあれば、問題はすぐにでも解決するでしょう。
さっそく、あなたの研究成果を試してみましょうか。研究所外で使うのは初めてなので、緊張します。
エントランスでは、三体のデイムズ型ジョーキが倒れていました。どれも着ているメイド服が破かれ、デイムズの高額な動力源を取り除いた跡があります。頭部が吹き飛ばされていたり、腕が取れている個体もありました。
三体のうち、頭部の右目周辺が破壊されて機械が剥き出しになっているものの、他の損傷も少ない個体を選びました。
まずは……、黒いロングスカートをめくり上げます。スカートの中に入りました。
美しい装飾のついたレースの白いショーツを、このジョーキは穿いています。ガーターベルトは不要なので、取り外しましょう。
ショーツもこれから脱がしますが、あなたには見えないよう、危険な股の部分には黒塗り処理を施して映らないようにします。ご了承下さい。
下着の両端を持ち、足元へとひたすら引っ張って、脱がします。こちらの素敵な下着とガーターベルトは、お持ち帰りをしますね。
私は下着を持って、自分のスカートの中の後ろ側に運びます。お尻の上には、体内の収納物を出し入れ出来る細長い横穴があるからです。ガーターベルトも入れますので、しばらくお待ち下さい。
お次は、マジパワーズを取り出します。
ご覧下さい。こちらの白いマジパワーズの丈は、太ももを覆うぐらいまであり、正面の上部には小さな白いリボンがついています。
見た目こそ、市販品と変わらないロングドロワーズですが、この下着には恐ろしい力が秘められていることを、開発者のあなたはご存じでしょう。
マジパワーズを倒れたこのジョーキの両足へと通し、優しく穿かせてあげることにしますね。再びスカートの中に潜ります。
サイズは大丈夫のようです。きちんと穿かせることが出来ました。
これから、マジパワーズに向かって顔をくっつければ、あなたへと残す映像は真っ白になるでしょう。それは映像事故ではありません。儀式なのです。
では、始めますね。
私は特注ドロワーズの両側をしっかりと両手で押さえて、ジョーキの下半身に顔を密着させます。お互いジョーキですから、人間よりも感触が硬いのです。
この儀式は、お仕事を円滑に進めるために、おこなっています。ですが、下半身に顔を埋めて、興奮しないわけはありません。気持ちが高揚してしまいます。白い大地に左右へと顔を振りながら、突進するぐらいの勢いで、顔をめり込ませていました。
そんなことを続けていたら、ジョーキが細かく動いていることに気づきます。再起動が完了したようです。
ドロワーズから顔を放した私は、お楽しみのお時間とお別れしました。立ち上がって距離を置きます。
デイムズ型のような高級ジョーキの思考装置は、本来ならば所有者以外では起動が出来ないのですが、マジパワーズのお陰でそれも可能なのです。魔力が練り込まれたマジパワーズは、動力源の代用にもなります。
破壊されたジョーキに囲まれる中、息を吹き返した唯一のメイド型ジョーキはガタガタと起き上がります。
「しん……にゅう……しゃは……、排除、いたっ……しま、す……っ!」
発声機能はどうにか正常のようです。
彼女は武器を持っていません。周囲に剣や銃器といった武器が一つもないことが分かると、彼女は両手を拳にして、攻撃態勢を取りました。
「ご安心下さい、私は侵入者ではありません。私は、ジョーキ国営研究所の所長の助手、ジョーキ『エスティート』改、固有名『リクス』です」
彼女に対して、軽くスカートをつまんでごあいさつをします。
「私は放棄されたジョーキの有用物を回収するために派遣されて来ました。こちらをご覧下さい」
首から掛けていた長方形の社員証を掲げ、お見せしました。
メイド服姿のジョーキは攻撃態勢を解いて、こちらに近寄って来ます。彼女は小柄な私よりも背丈が高く、見下ろしの格好で社員証を目にしました。
「……こちらには、貴女様のご身分が、提示されています。ですが、侵入者でない証拠がございません」
「証拠もあるので、少しお待ち下さい」
私はまたも、自分のスカートの後ろ側に両手を入れました。
「出ました。どうぞご確認を」
収納の穴から出した派遣の証明書を、ジョーキに渡します。それには所長のあなたのサインも入っていました。
「ありがとうございました。疑ってしまったことを謝罪いたします」
「分かって頂けて何よりです」
「リクス様。私は一時的に、貴女様の指揮下に入らせて頂きます。なんなりとご命令を下さいませ」
長いダークブルーの髪を一本の三つ編みにした彼女は、両手を前で重ねた格好で言いました。
右目周辺には痛々しい破損があり、メイド服も切れている箇所がありますが、とても美しいお姿に、思わず見とれてしまいます。
「……ところで、あなたのお名前は?」
「私はシャモアと呼ばれていた個体です」
「では、シャモアさん。私の代わりに、ジョーキの使えそうな部品の回収作業をお願いしてもよろしいでしょうか?」
私が楽をしようと一任したら、彼女は困ってしまいました。
「すみません、リクス様。私にはそのような経験がございませんので、ご指導頂けませんか? 全力でお手伝いをさせて頂きます」
「ですよね……。一緒にやりましょうか」
ということで、二人で作業を始めることになったのです。
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再利用可能な部品は、ほぼ回収しました。
破壊されたジョーキ全てを持ち帰るのは不可能です。彼女達同胞を放置するのには、辛いものがありました。
「お手伝いして頂き、ありがとうございました、シャモアさん。そろそろ撤収としましょうか」
「……いいえ。私はこちらに残ります。私の本来のご主人様は、メロリナーお嬢様でございます。こちらでお嬢様のお帰りをお待ちいたします」
顔の損傷があるものの、彼女の表情から読み取れる決意は、いかにも強そうでした。流れ的にすんなりとご一緒してもらおうかと思っていましたが、説得が必要のようです。
「それはご主人様に忠実なメイドさんとしては、大変優秀な心構えですね。ですが、シャモアさんはうちの研究所開発のドロワーズを穿いているから、動力源なしで動いていられます。そうですよね?」
「はい、リクス様」
私はシャモアさんのスカートを両手で正面からたくし上げ、身に着けるマジパワーズを丸見えにしました。シャモアさんは恥ずかしがることもなければ、反抗もしませんでした。
「研究所のものを穿いている貴女は、うちの研究員と同等です。しかも、一時的に私の指揮下に入ったからには、貴女のご主人様がいない間は、私の撤収命令に従うべきでしょう」
「……はい」
あまり納得をしていない肯定でした。
「シャモアさんがどうしても、こちらに残りたいのであれば、このドロワーズを回収するため、私が脱がすことになります。そうしたら、シャモアさんは動力源を失い、他のジョーキ同様、動けなくなりますが、よろしいですか?」
「はい」
彼女は自身の犠牲は気にしないようですが、これならどうでしょう?
「また、その場合、私の目を通して、シャモアさんが脱がされる場面が、映像として記録されます。その映像が万が一流出したら、メロリナー様の名誉にかかわるかと思いますが」
本当は映像に残さないようにすることも可能ですが、その点は伏せておきましょう。
マジパワーズは一枚しかないので、研究所に連れて帰ることが出来るジョーキは、一体のみです。
逆に、一体は連れて帰れるのであれば、連れて帰らない選択などあり得ません。
その一体が、問題なく作動する優秀な高級ジョーキなら、あなたもきっと喜ぶはずです。
「……分かりました。メロリナーお嬢様の名誉のため、リクス様のご指示にお従いいたします」
よし、と叫びたかったのですが、私は平常心を装いました。私が興奮を隠せなくなるのは、下着に顔を埋めた時のみです。
言質を取ったので、私は彼女のスカートから手を放しました。白いマジパワーズは見えなくなります。
「私も冷酷ではありません。シャモアさんのために、置き手紙を残すことにします」
紙に、シャモアさんを一時的に研究所が引き取る旨の内容を書いて、リビングのテーブルに置きました。
「それでは帰りましょう。シャモアさんは戦闘もこなせるので、帰りの護衛もよろしくお願いします」
「お任せを。リクス様」
この辺りで、あなたへのご報告はひとまず終了としましょう。もし、道中に何かありましたら、またご連絡いたします。
あなたの忠実な助手、リクスより。
以上です。
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シャモアさんが研究所に来てから半年ほど経ったでしょうか。研究所に、ついにあのお方が訪れました。
置き手紙をお屋敷に残したので、いつかはご訪問されるかもしれないとは思っていましたが……望んではいませんでした。
所長のあなたがご不在のため、私がご対応します。
こちらのお方は、波打った金色の美しい長髪と、見惚れてしまうような容姿をお持ちの、完璧なお嬢様。ですが、性格は冷酷で凶暴だと、シャモアさんから聞いており、緊張してしまいます。
「……あなた様は、メロリナー=ナショエクスト様とお見受けしますが、本日はどういったご用でしょうか?」
そうお尋ねしたものの、悪役令嬢メロリナー様がこちらにいらっしゃった理由は推測がつきます。
「シャモアを呼んで頂けますかしら?」
やはりそうでした。
「分かりました。少々お待ちを」
軽く会釈して、研究室にいるシャモアさんを呼びに行きました。
あれからシャモアさんは、私リクスにとって大変役に立つ有能な部下であり、いてくれてとても助かっています。だからこそ、元々のご主人様と再会させるのには、あまり乗り気はしませんでした。
「お久し振りでございます、メロリナーお嬢様」
シャモアさんはあの時と似たようなメイド服姿で、ロングスカートを持ち上げてのごあいさつをします。
「ねえ、シャモア。このわたくしがわざわざ赴いたのはどうしてか、お分かりでしょうねぇ?」
「私を迎えに来て下さったのではありませんね」
「えっ?」
私は思わずシャモアさんのほうを見てしまいました。てっきり、引き取りに来たとばかり思っていましたので。
「さすがはシャモアね。わたくしのことはお見通しのようだわ」
「あの、どういうことですか、メロリナー様」
「あなたはこちらのジョーキですね」
「あ、はい、ご紹介が遅れてすみません。私は所長の助手で、リクスと呼ばれています。メロリナー様のシャモアさんには、大変お世話になっております」
「それは良かったですわ」
素晴らしい笑顔を見せたメロリナー様は、シャモアさんのほうを向きました。
「シャモア。わたくしは、悪役令嬢なのよ。だから、捨て駒を再び拾おうとは思わないわ。だからあなたは、今後はわたくしではなく、こちらに忠義を尽くしなさい。いいわね?」
「はい、メロリナーお嬢様」
「もうお嬢様はやめなさい」
「はい。メロリナー様」
「わたくしはそれを伝えたかっただけよ。……リクスさんとおっしゃったかしら。これからもシャモアのことを、よろしく頼みますね」
メロリナー様に礼儀正しく頭を下げられ、私は困惑しました。
「あなた。もしかしてわたくしのこと、冷酷で凶暴だと思っていらっしゃる?」
「あっ、はい、その通りです。シャモアさんにそう聞いていたので……」
「あら、シャモアはわたくしの命令を守ってくれていたのね。それは、わたくしのことを聞かれたら、そう答えるよう命じていただけですのよ。……シャモア。もうこの命令は無効よ、本当のことを喋って構わないわ」
「分かりました、メロリナー様。……リクス様。今までメロリナー様のご意向をお伝えしたままでいて、申しわけございません。メロリナー様はお優しいお方で、厳しくもありますが、勇ましく、悪役令嬢と呼ばれる方々の中では最も尊敬されるべき存在です。多少凶暴というのは、否定は出来ません」
「凶暴ではあるんですね」
「あーら、そんなことおっしゃると、アナタに対しても凶暴になっちゃいますわよぉ~?」
メロリナー様が正面から小柄な私の後ろに両手を回し、密着しました。大きくて柔らかい胸部が間近でぶつかっています。これはしっかりと記録しなければ。
「リクスさん。悪役令嬢って、世間では悪人のように噂されていますでしょう? ですが実際は、悪役と言われない令嬢のほうが、よっぽど酷いですわよ。この前傘下に加えた悪役令嬢のシムコも、一対一の決闘でボコボコにしてやりましたけど、本当に腹黒い令嬢は、最後まで自分の力で戦おうともしませんもの」
「それよりも苦しいです……」
「あら、ごめんあそばせ」
ようやく解放されました。予想よりも苦しくて自分から拒否してしまいましたが、良き映像は撮れたはずです。あなたには伝わらない、素敵な香りも漂った密着は、私にとって貴重な体験でした。
「では、そろそろわたくしは御暇しますわ」
そうメロリナー様はおっしゃった後、シャモアさんのほうを見ました。まるで、家族にでも向けるような、優しい眼差しです。
「あなただけでも、生きて会えて嬉しかったわ。シャモア」
「私もです、メロリナー様。これまで、ありがとうございました。今後はメロリナー様のご厚意に報いるべく、こちらで精励いたします」
シャモアさんが丁重に頭を下げる中、メロリナー様は微笑みを向けていました。そのお顔は、並の令嬢では出せないような、きらびやかさをまとっていました。
「あっ、お待ち下さい、メロリナー様」
「どうしました? リクスさん」
去ろうとしたメロリナー様を、私は引き止めます。
「その……、あなた様は外見だけなく、お心も美しいと判明したので、所長も興味が湧くだろうと思います。もしメロリナー様がよろしければ、所長がいる際にまた今度、こちらにお越し頂けないでしょうか?」
当初は会うのも嫌だったのに、こんなことを言ったのは、彼女が好感を持てるお方だったからでしょう。また、今後もシャモアさんと会う機会を作りたいと思ったのです。
「ええ。前向きに考えておきますわ」
笑顔でメロリナー様は応じて下さりました。
メロリナー様は外で待たせていた馬車に乗ります。その馬車が完全に見えなくなるまで、横でシャモアさんはお辞儀を続けていました。
一方私は、心優しい悪役令嬢に有能な部下が取り返されずに済んだ九割の安心感と、シャモアさんと別れずに済んだ一割の良心を抱きながら、見送っていました。
以上で、あなたへの映像は終了とさせて頂きます。
帰宅後には、ぜひとも悪役令嬢メロリナー様が私に抱き着いている胸部の場面を、何度も再生してほしいと思います。
(終わり)
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。このような作品は他にもありますので、まだ読んでいないものがあったら、ぜひお読み下さいませ。