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猫をお迎えしたくなった理由

作者: 有坂有花子

 うちの猫はキジトラですが、頭は黒くて背中はオレンジと黒です。


 なぜ猫を迎えたのか、というと、とあるのら猫と仲良くなったからです。


 その猫は地域猫で、耳がカットされたさくら猫でした。地域猫は何となく知っていて、その近所にごはん皿が置いてあったので、このあたりでお世話されてるんだなと思いました。メスの黒っぽいキジトラで、あとで知りましたが、二回出産したお母さん猫でした。そのあたりにはほかにものら猫がいて、サビ猫と、茶色っぽいキジトラがいました。


 そんななか、黒っぽいキジトラが昼寝していたところに最初に出会いました。わたしはのら猫とは仲良くなりたいタイプだったので、近付いてみましたが逃げられてしまいます。おやつでは吊らない、というマイルールがあったので、とりあえず遠くから写真をとって、しゃがんでまばたきをして指を出したりしていました。


 その間、サビ猫と茶色いキジトラにも会いました。茶色いキジトラは遠巻きに見ている感じで、いつしか来なくなってしまい、サビ猫は警戒心がとっても強くて、逃げられるかシャーといわれました。ごはんをあげている方にもシャーだったらしいので、人が嫌いとか怖かったのかもしれません。


 黒いキジトラと出会ってから一年、ある日突然足元にすり寄られました! 最近、写真をとるとき近付いても逃げないな?と思っていたので、怪しい人じゃないと分かってもらえたのかもしれません。逃げられていたのら猫と仲良くなれたのは初めてだったので(しかもおやつなしで)とても嬉しかったです。


 それからは会うたびに撫でさせてくれるようになりました。猫を撫でるのが不慣れだったので、とりあえず喉とお尻を撫でていましたが、喉が振動していたので、ごろごろいっているのかな、と思いました。


 のら猫の寿命は短いです。二回出産していたということで、でも、それでももう一年くらいはこうやっていられるんじゃないかな、と思っていました。


 黒いキジトラを見かけなくなって、最近雨だからかな、無事だといいな、と思っていたら、亡くなったとお世話していた方が教えてくれました。撫でさせてくれるようになってから二週間後でした。五歳くらいだったそうです。


 わたしはただ通りがかって写真をとって撫でさせてもらうだけで、お世話していたわけではないのに、すごくすごく悲しくて泣きました。一週間くらいは泣いていました。最後だから撫でさせてくれたのかなとか、そんなの分かりませんが、さらに悲しくなって泣きました。最後に会った日、ごはんを食べていたのにわざわざこっちへ来てくれて、いい写真がとれて、撫でさせてくれて、元気そうに見えたのに、と涙は尽きませんでした。


 そうしてそのあたりにはサビ猫だけになってしまいました。サビ猫は猫にはとても優しかったので、「ひとりになっちゃったね、さみしいね」と遠くから話しかけました。

 わたしはどうしても黒いキジトラのことが忘れられず、猫を迎える決心をしました。




 そうして引っ越しやら何やら紆余曲折を経て、今猫と暮らしています。サビ猫は、わたしが引っ越したあと亡くなったそうです。


 今うちにいる猫は、頭のところが真っ黒で、お母さん猫なところが黒いキジトラに似ています。キジトラ(しましま)なのに、背中だけ見ると黒とオレンジで、サビ猫に見えます。


 顔が似ているとか、生まれ変わりとかではなくて(うちの猫が生まれたとき、まだキジトラとサビ猫は元気でした)、ご縁なんだろうなと思いました。背中がサビ猫みたいだと気付いたのは、うちに来てしばらくたったあとだったので。




 そうしてうちの猫を見るたび、生きていてくれるだけで幸せだと、わしゃわしゃ撫でるのです。

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