京都人はあっさり上品な味が好きなわけではない
京料理といえばなんとなく上品なイメージ(いわゆる”はんなり”どすな)があると思われるがいかがだろうか?
近年はいくら銀座に一流が集まるといっても、日本一の高級料亭といえば京都嵐山のあの店が思い浮かぶ人が多いだろう。
アパレルブランドに勤めていた友人は、来日した海外の取引先の接待には嵐山の高級料亭を利用していたが、外国人客もまったく特別扱いしない慇懃無礼な接客が子気味良いと語っていた。それが京都らしさかもしれない。
しかし昼の弁当に五万円も取る豪華絢爛な料亭料理はやはり異世界のもので(そもそもあの店は大阪が本家だ)、伝統的な京料理は豆腐や水菜、川魚などを使ったシンプルしかし洗練された料理というのが本筋といわれる。
茶懐石とか、精進料理系だって奈良と並んで本場である。
では京都の一般人の日常食とはどのような物だろうか?
さらに週末に外食する場合、どんなものを食べているのであろうか?
やはり壬生菜の漬物や大安の千枚漬けでぶぶ漬けとか?
それとも湯豆腐とか湯葉とかを食べているのだろうか?
祇園で遊べるようなお金持ちや年寄りはどうか知らないが、私の知る限りでは京都人の多くはとにかくコッテリ、濃い味の料理が好きである。
(千年もはんなりした食べ物ばかり食べていた反動だろうか?)
たとえば関西では「京料理でも食べに行きましょか」というのは「餃子の王将」に行こうという隠語だったりする。そう王将は京都発祥なのだ。
ジャンボ餃子と脂っこい中華料理をがつがつと大量に食すのが実は京都スタイルなのである。
また京都と言えばラーメンも有名である。
北白川の有名ラーメン店はあちこちにチェーン展開しているが、かなり濃い味付けの醤油ラーメンにがっつり背油入りだ。
宮本武蔵vs吉岡道場の決闘で有名な一乗寺も、今ではラーメン屋が鎬を削る激戦区である。この界隈のラーメンは山盛りの唐揚げとセットで食べるのがデフォルトで、「唐揚げのおまけにラーメンが付く」というジョークがあるほどだ。
そうそう忘れてはいけない。ドロドロに白濁したこってりスープが売りの「天下一品」も京都発である。
京都に友人が居る人は、京都人におすすめの食堂・レストランを訪ねると、たいてい焼肉とお好み焼きが入ることを知っていると思う。
焼肉とお好み焼きは大阪人も好きだが、京都人にとってはソウルフードなんじゃなかろうかというくらい人気があるようだ。
このように京料理をいつまでも他所者は決して食べることができない「京のぶぶ漬け」みたいな古いイメージでとらえてはいけないのである。京都といえど、時代は変わっているのだ。
その証拠に「一見さんお断り」で有名な格式高いお茶屋さんなどでも、最近ではツアー客を受け入れているところが少なくないそうだ。
ツアーの最後には「これでもう一見さんと違います。つぎはご自由にお越しやす」と言ってもらえるそうだ。
しかし気を付けた方が良いかもしれない。
次回ツアーを通さずにその店に行くと「あらいややわ。本気にしはったんどすか」と言われるかもしれない京都の怖さがあるから(どうしてもそういうイメージが抜けないなあ)。。