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ギルド養成所



 ギルド養成所。


 そこは、ギルド協会が運営する養成所だ。


 そこでは戦闘訓練やモンスターや植物等、日常的にも活用出来る知識を学べる場所である。期間は基本一年間。そこから故郷へ帰る者も居れば、ギルドの冒険者や探索者へ進む者もいる。中には国の騎士や魔法師からスカウトされる場合もあると言う。


 ……ま、興味無いけどね。


 安定した収入を得られて、アニメを見られればそれだけでいいから。


 さて、シオン・ラヴィーユことボクは突然、半強制的にパパンからギルド養成所へ通うことなってしまう。でも、パパンの言う通り色々体験する事もいいと思いまして……あ、いや、家の手伝いや狩る以外にも何かやってみたいな〜、とか飽きたとかそういうのじゃないよ?


 にしても、ここがギルド養成所。


 まるで学園みたいじゃないか。


 本当、日本でも中々この規模の大きさは無い。しかも硝子張りの場所とかあるし……小中高とかのレベルじゃない。大学の学園みたいなものだろ。


 あ、そうか。ボクみたいな村の出だけではなく、商人や貴族、王族までもがここに通うから……多分、資金援助とかあるんだろうな。子供だからわかりましぇ〜んっ!




 「スッゲーな、ギルド養成所ってのは!なっ、シオン!」


 「そうですね、ロベリア」



 彼女はロベリア。


 近所で、幼馴染みの女の子。歳はボクと同じ12歳だ。

 短髪黒髪の活発な子。見た目は完全に男の子っぽい……いや、ボーイッシュって言ったほうがいいかな。整った容姿だから、将来は美人さんになりそうだね。あと、黒髪って珍しいみたいだけど、何と言いますか……前世が日本人だからかな。結構落ち着くんだよね。


 ……因みに、ボクの髪は白髪。


 何だろう、黒髪が恋しいのですが。



 「おい、ボケーッとしてねーで行くぞ」


 「わかりました」



 因みに、寮はあるんですよね。


 一年間、そこの寮を使うのですが大抵はボクの様な村の出や商人が殆ど。王族や貴族は近くの高級ホテルなどで過ごされるみたいですよ。ま、それほど数は多くないみたいですが。



 「なぁ、シオン。どんな試験を受けるんだろーな?」


 「そうですね……恐らく簡単な試験みたいなものでしょうか」


 「シケンか……馬車の中で言ってた、あれか?知識・能力を調べられるっていう」


 「恐らく、ですけどね」



 実際に見た訳でもないから分からないけど、試験はあるのは確実だ。別に、そこで養成所に入れないという訳ではない。


 端的に言うと、それぞれの能力をクラスに分ける為。ま、普通に考えれば能力の差があると教えるのに一苦労しそうだし。



 「おっ!あそこでやるんじゃねーか?」


 「みたい、ですね」



 そこは、大きな体育館。


 うん、ここ地球かな?日本かな?


 しかもその体育館内には、恐らくこの養成所へやって来た12歳の子供達が並んでいる。数もそこそこって感じかな。一学年、4クラス位の人数はいるかな。学園内が広く、校舎もデカいから本来結構な数がまあまあな表現になっちゃう。


 ……ふーん。試験内容は、戦闘能力のみ、か。


 まあ、そうだよね。


 知識に関しては王族・貴族は例外として村人は殆ど平均レベルでしょ。というか、ボクも母上に読み書きを少し教えて貰った程度だからね。



 「よっしゃっ!戦いなら負けねーぜ!」


 「ロベリア、これは喧嘩じゃありませんよ。試験なんですから、試験官の指示に従わないと」


 「わ、わーってるよ、そんなこと!」


 

 ロベリアは負けず嫌い。年相応の子供らしさと生意気さはあるけど、女の子だからね。せめて言葉遣いを何とかしたいとは思ったけど……無理でした。


 

 「ほらシオン。さっさと受けにいくぞー」


 

 順番は守らないといけないとですよー、と注意しつつボクも試験を受けましょう。


 はぁ……ぶっちゃけ、異世界転生してからチート能力と言っても[固有能力:【アニメ見放題(※月額600ティア)】]しかないから。というか、戦闘的に使えないから、あんまり期待しないでね。


 一番心配なのが、養成所でお金稼げるかな……?貯金はあるとは言え、アニメ見れなくなったら、軽く逝っちゃいますよぉ……?



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 ギルド養成所、試験会場。


 そこは、戦闘面を検査する場所だ。


 日本で言うところの、体力測定みたいなもの。主に対人戦闘能力があるか、動体視力・反射神経を確認するだけ。


 試験内容としては、最初に戦闘経験の有無の確認でその実技試験を受けるか受けられないかで分かれる。無論、戦闘経験……モンスターか対人が無ければそのまま戦闘未経験という事でそのまま一から戦闘訓練の基礎から学ぶこととなる。


 無論、戦闘未経験でもチャレンジは可能だ。

 

 試験は一人一人個々で行われる。


 それ故に、時間も非常にかかってしまうのだ。


 試験会場内には、それぞれの教員が試験を受けた者達の評価をする。大抵は戦闘経験無しとしてそのまま終わるのが大半だ。



 「先程の子は中々だったな」


 「確かロベリア、と言ったね。確かにあの女の子は育て甲斐があるさね」


 「体術だけなら彼女が一番じゃないかい?」


 「将来有望ですわ。私の様に立派な女騎士として活躍も期待できるでしょう」


 「無駄口は後だ――――――次の者、入れ」



 試験は慎重かつ丁寧に行われる。


 最初の一日目はこの試験に費やされるのだ。


 そして、次に入ってきた者は――――白髪の、そして線は細く華奢な身体な子供だ。性別は分からないが、そんな事は後で確認は出来る。



 「名前は」


 「シオン・ラヴィーユです」


 「……確認した。では、簡単な質問だ。君は戦闘経験はあるかね。例えば対人戦闘や、動物やモンスターを狩ったりなどだ」


 「はい。人並みには」


 「なるほど。では、実技試験を受けてもらう。中央に人型の傀儡がある。その傀儡を敵と考えろ。傀儡はこちらで操作はしているが、君はその傀儡の攻撃を避けても良し。反撃も良しだ。無論、その傀儡は破壊しても構わない。武器に関しては、地面に突き刺してある物や置かれている物を自由に使え。質問はあるか」


 「……いえ、ありません」


 「そうか……それでは、始めィッ!!!」



 試験官の合図と共に、シオンは駆ける。


 相手は、全長二メートル超えの人型傀儡。木材で作られているが、腕は太く強靭だ。舐めて掛かれば怪我をしてしまうだろう。傀儡、ということなので誰かが操っている筈なのだが、傀儡の身体から糸のようなものは見えない。シオンは直ぐに、魔法によるものだと判断する。



 「いきますっ!!!」



 地面に刺さっていた短剣と長剣を抜き取ると、その刹那傀儡人形の右腕を斬り落としたのだ。


 

 「なんと……っ!」


 「ほぅ」


 「まぁっ」



 しかし相手は傀儡。遠距離操作されている木材ロボットだ。腕一本落とされた位で怯む事も止まることも無い。

 即座に傀儡は左手腕でシオンを殴りつけようとするが、彼はその傀儡の股を滑り込む様な形ですり抜けたのだ。だが、相手も馬鹿ではない。まるで後ろに目が付いているのか、そのままシオンを蹴り飛ばそうとする。


 ―――――が。


 シオンの手には、長剣も短剣も持っていない。


 では、何処にやったのか。


 

 「一瞬で、か」



 試験官は感心する。


 しかし、驚きはしない。


 シオンが先程まで使っていた長剣と短剣は、傀儡の両足にそれぞれ突き刺さっていたのだ。しかも勢いよく突き刺した為に長剣・短剣は傀儡の足を貫通し、地面にまで深々と刺さっていた。


 それ故に、直ぐに足を動かす事ができない。



 「―――――ふっ!」



 獲物を失ったシオンは、直ぐに近くにあった大鎌を両手に掴むと―――――次は左腕を切り落とす。


 しかし、やはり相手は傀儡。両手失った程度では動きは止まらない。


 

 「っ、重いっ!?」


 

 流石にシオンの肉体的に大きな武器、大鎌は扱いきれない。傀儡の左腕を斬り落としたのと同時に重さで持てきれずに手放した。



 「(この試験、戦闘能力以外に何を見ている(・・・・・・)のか。ですが、時間を掛け過ぎるのは―――――不味い、かな)」



 明確にこの試験のクリア基準な分からない。いや、敢えて何も言っていないのだろう。ただ、どの様に動くか。戦うか。どの様な判断をするのか……それらを見ているのだろう。恐らくシオンが考えているよりも、更に深いところを見ている可能性は十分ある。



 「なら―――――っ」



 相手の動きを止める。


 その為に、シオンは自身が扱えるだろう武器を拾い構えた。



 「槍、ねぇ?」


 「即座に己が扱えないと判断した武器は捨てた、ね。判断力はまあまあかな」


 「悪くはない」



 シオンは槍を構え、突撃する。


 両腕は斬り落とされた傀儡は、両足に刺さった短剣・長剣のせいで身動きは取れなかったが、左足に刺さっていた短剣は自力で左足を上げて抜き放った。



 「遅い――――っ!」



 先手必勝。


 傀儡が何かする前に、シオンはその槍を突き刺した。突き刺したのは、人間であれば急所。心臓だ。勢い良く突き刺した為に、傀儡はバランスを崩し仰向けに倒れてしまう。容赦無く、そのまま倒れる勢いのまま更に深く槍を身体を貫通させて突き刺すのだ。


 しかし、それ以上に手はない。


 仕方が無く、シオンは己の右拳を振り上げ、そのまま傀儡の顔面に一発撃ち放とうとした刹那―――――――――――――。



 「そこまでッ!!!」


 「っ!」



 試験終了の合図。


 一息入れ、少し疲れたのを隠しつつ馬乗りになった傀儡の身体が離れる。

 正直、人型……つまり、対人戦闘は父親と多少行った位で経験としてはほんの少しあるだけ。まだ兎や鹿などのモンスターを狩る方が楽だと感じたシオン。


 そんなシオンに試験官は言う。



 「試験は終了だ。今回の試験に関しては明日、クラス分けの参考となる。本日は寮に向い、寮長より指示を聞くといい。以上」


 「……わかりました」



 試験は無事終了。


 シオンは試験官とその他の教員に向けて礼儀として「ありがとうございましたっ」と一言礼を言い後にする。



 「――――――ぉっ!おーい、シオン!一緒に寮に行こーぜ!」


 「わかりました。行きましょう」



 シオンの試験が終わるまで待っていたロベリアと合流し、案内板の地図にある寮へ共に向かうのであった。


 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




 「むむむ…………これは」


 

 シオンが試験会場から出ていく後ろ姿を一人の教員――――――最年少の少女は眺めていた。


 その風貌は、金髪の耳が尖った種族である“エルフ”だ。この世界では種族的な差別はほぼ(・・)ない。それ故に、この養成所では彼女の様なエルフだけではなく“ドワーフ”や“ビースト”などの種族も教員は勿論、生徒の中でもチラホラいる。


 数が少ないのは、種族的な問題ではなく環境的な要因が多い。例えばエルフであれば、色白の肌の為、陽光直下では暮らすのは苦労するらしく水辺の近く且つ森の中で住まうのを好み、ビーストは一部を除いて寒冷地での生活は難しいというのが理由だ。


 彼女はエルフ。


 陽光に弱い為、日頃からの服装は着込まれている。エルフに魔女の様なとんがり帽子や全身ローブに纏っているのは、それが理由である。


 彼女は魔法専門の教員。


 加えて研究者でもある。



 「これは……?」



 戦闘試験を受ける者にだけ、彼女はこの体育館に試験者の能力を測定する為の魔法陣・結界が施されているのだ。これは、王宮に仕えた歴代の宮廷魔道士達が作り上げた【能力鑑定結界】。


 元々王宮の宮廷魔道士でもあった彼女は、その結果が刻まれたプレートを見て困惑をしていた。


_______________________


【シオン・ラヴィーユ】


  種族   :  人族


総合戦闘能力 :  X(ツェーン)


 固有能力  :  ■■■■■■(※■■■■■■)


 適性能力  :  無し


   加護  :  ■■■■


_______________________



 「(総合戦闘力が、【X(ツェーン)】。本日、試験をしていた中でも最高レベル。けれど、固有能力と加護が文字化け……いえ、塗り潰されている。まるで、見られないように(・・・・・・・・)する為……?何の為に?しかし、ここで悩んでも仕方がありません。けれど、シオン・ラヴィーユ。彼には何者かの加護(・・・・・・)はある………恐らく、神でしょうか。暫くは、様子見ですかね)」



 彼女は、元宮廷魔道士【ガーベラ】。


 魔法専門教員であり、最年少で宮廷魔道士の役職に就き、その実力を教員兼研究者として現在この養成所に務める。養成所の内、最強の一角と言えるだろう。



 「機会があれば、彼の中(・・・)を見させてもらいましょう」



 しかし、彼女は慎重に行動する。


 教員と生徒という立場、嫌でも関わる事は幾らでもあるだろうから。

 








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