体育祭練習
体育祭ダンス練習二日目。
この日は秋らしい涼しい日だった。程よい曇天で、時折太陽が雲の隙間から顔をのぞかせる。
山の上のこの街は秋になると急に涼しくなる。
全校生徒は体育祭のプログラムである、カラー対抗ダンスの練習を運動場で行っていた。
あまねは中学一年生なので、中学校の体育祭というものは今年が初めてだった。
あまねのクラスは青団に所属していた。
あまねのクラスはこの時間、同じ団の応援団の先輩からダンスを教わっていた。しかしあまねはいじめられているのでこの時間も孤立していた。
あまねは虚無感に苛まれていた。
「二階堂さん、元気ないなあ、どないしたん?」
そう声を掛けてくれたのは女の先輩だった。
体操着の左上に岡本と刺繍されている。
「うち体育祭初めてやから勝手がわからんねん」
あまねは敬語を使わずに不満をごちた。しかし本当の気持ちは、誰からも話しかけてもらえないのが寂しい、だった。
「二階堂さん、こっちおいで。うちらと一緒に練習しよ!」
岡本さんはあまねを誘い、先輩たちのグループへと迎い入れた。
「うち入れてくれんの?ええんか?」
あまねは戸惑った。本当にいいのだろうか。
「ええに決まってるやないの!」
岡本さんは屈託なくさわやかにそう言った。
あまねは少し心に温もりを感じた。