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リュイス、6歳頃

さて。

リュイスの5歳の誕生日から1ヶ月ほど経った頃、クロルとルルドに妹が生まれた。

ドルノという名前になった。親たちは、ドルノは、クロルの父似だと言っている。


生まれた赤ちゃん、ドルノのお世話で、皆がちょっとバタバタしたが、基本的には暮らしは変わらない。


リュイスはクロルとよく遊ぶ。クロルの弟ルルドとも遊ぶ。


基本的に、日中は、家の中だ。

とはいえ、クロルとルルドには、毎日、お勉強の時間というものがある。


ぬいぐるみがいるとはいえ、クロルとルルドと遊べないのはつまらない。

だから、リュイスも同じように、お勉強の時間を過ごす事になった。

本を読んでもらったり、絵を描いたり、お料理を作ってみたり。

棒を武器にした体の動かし方を練習したり、気配の消し方とか隠れ方とか、他の人に変装してみたり。細い木の上を歩いてみたりとか。父や母たちの提案のもとに色んな事をして過ごす。

色んなことができて楽しい。


お勉強の時間以外は、子ども同士で過ごすことがほとんど。かくれんぼが一番面白い。


それ以外は、父や母たちに空の船に乗せてもらって他のお店に買い物に行ったり、湖に船を出してもらって魚釣り。

湖とは反対側、つまり陸側に、花壇を作ったり、木を育てることも始めた。


今から船の操縦をやっていこう、という事で、陸の船の運転もさせてもらえるようになった。


空を飛ぶ船は、お金持ちなら当たり前に持っている。

運転手を雇う家が多いのだけど、自分で出来た方が便利で楽しい、という事だ。


リュイスの家にも空飛ぶ船がいくつもある。色々な船があった方が便利だから。

こういう時はこの船が便利、と教えて貰いつつ、空の船は運転を失敗すると落ちて死ぬことだってあるからと、一番安全な陸の船からの練習になった。


ちなみに、一番運転が上手いのは、リュイスの父。次に、クロルの母。それからクロルの父で、最後にリュイスの母。

ぬいぐるみのクマも空飛ぶ船が運転できる。どうも、リュイスの父の運転の真似で運転できるようになったらしい。すごい。


さて、運転はとても面白いけれど、まだ一人で運転は駄目。

それぞれの父か母と一緒に乗って、どちらが早く目標の場所まで行けるかを、リュイスとクロルで競争する。


そんな様子に、まだ参加できないクロルの弟ルルドが、ずるい、と大泣きした。

父たちが話し合ったが、やっぱり、運転の練習は5歳から、とルールを決めた。小さいとあまりに危ないからだそうだ。


ルルドは泣いて暴れたが、5歳ルールは変わらなかった。

とはいえ、ルルドはもう少し待てば5歳だ。


さて一方、週に一度、親たちの許可を貰った上で、リュイスとクロルは、夜に湖の底の部屋に遊びに行く。


父には「夜じゃなくて昼にしなさい」と叱られたけれど、ぬいぐるみたちは夜の方が良いらしい。

ぬいぐるみたちからの訴えを告げると、父も渋々、許可してくれた。


実は、リュイスの父と母は駆け落ち結婚だそうだ。

とても美人の母は、良いところのお嬢様だったらしい。駆け落ちしないと結婚できなくて、ぬいぐるみたちはそんな父と母をたくさん応援してくれ、物凄く助けてくれたそうだ。


だから、父も母も、ぬいぐるみたちを大切にしている。

つまり、父と母にとっても大事なお友達で、ぬいぐるみたちに無理な事をさせたくない。

というわけで、週に1度の夜を、父も許してくれた。


ところで、やっぱり父たちはあの湖の底の部屋には行けなかったそうだ。

滑り台が大人には通れないから。大人にはちょっと小さすぎる。


それから、湖の底の場所は5歳までは秘密、というのは今後も続くことになった。

やっぱり小さい子には危ないと、父たちも考えたから。

つまり、ルルドとディアン、そしてもちろんドルノにはまだ秘密。


***


ついに、ルルドが5歳の誕生日を迎えた。

その日の夜、親たち公認で、クロルとリュイスが、夜中にこっそり、を装いつつルルドを起こしに行き、湖の底の部屋に連れていった。


「凄い! ズルイ! ズルイ! 今までどうして教えてくれたなかったの、ずるい!」

ルルドは何度も叫びながら、大きな部屋を走り回った。

興奮している。


ルルドの5歳おめでとうの日なので、皆でルルドを主役に楽しんだ。

リュイスはルルドと何度も踊った。もっともっと、とルルドがリュイスに頼んだからだ。

ただ、そのうち眠たくなってくる。

ルルドの方が元気で、リュイスが眠るのが一番早かった。


その数か月後。

リュイスに、新しく弟が生まれた。父似の男の子。リュイスが6歳の時だ。

父はイーシスと名前を付けた。やっぱり、すごくカッコイイ騎士の名前からとったそうだ。


母は、父にイーシスを抱かせて、リュイスを傍に並ばせて、

「まぁー、そっくりねー」

と嬉しそうだ。


父も楽しそうに、母とディアンを並べて、

「母と子だな、似てるぞ」

と言う。


兄弟が増えると、ちょっと忙しくなる。

お手伝いとか、お世話とか。

リュイスとクロルは、兄弟の一番上同士だから、苦労を分かり合えるのが良かった。


***


翌年、リュイスが7歳。

ちなみにクロルが9歳、ルルドが6歳。リュイスの弟ディアンは、まだ3歳で、クロルの妹のドルノはまだ1歳。イーシスは1歳になったばかり。


クロルに問題が起きた。


体が成長して大きくなったことで、クロルがついに滑り台でつかえてしまったのだ。


物凄く苦労し、時間をかけて降りてきたクロルは、

「もう無理だ」

と心から悲しそうに、リュイスとルルドとぬいぐるみたちに告げた。

皆、クロルが全然来ないので心配していたのだ。


事情が分かって安心したルルドは、一方でとてもクロルに冷たかった。

「クロルはずっとここで遊んでたんだろ。もう終わりだよ。これからは僕がリュイスちゃんとここで遊ぶ番だ」

「ルルドくん、酷い・・・」


「ここに来れなくても遊んでくれるよな?」

クロルに泣きそうに言われて、リュイスは頷いた。

「勿論。あと、実は前に思っていたんだけど、帰りは空飛ぶ船でしょ? 来る時も空の船で来れるんじゃないかしら」

「あ。本当だ」


この話の流れに、操縦担当のクマの人影が出てきた。そして悲しそうに首を横に振った。

「諦めて。それ、実は僕たちも気づいてた。でもそれをやっちゃうと、親も皆、連れて来なきゃいけなくなるよ。面倒だから嫌だ」

あれ。冷たいな。


「そもそもここ、ぬいぐるみの秘密の場所に子どもだけはご招待、っていう設定だしさ」

とライオンのリオンも言う。


「結構、皆冷たいのね・・・」

リュイスはポツリと呟いてみたが、皆、諦めろ、というように首を横に振る。


まぁ、そもそもは、ぬいぐるみの秘密の場所だったわけだ。


「私も、そのうちここに来れなくなっちゃうわ」

とリュイスは訴えてみた。


「リュイスちゃんはまだ頑張ってよ。僕一人だけになるのは嫌だ」

とルルドが膨れる。

まだ、次のディアンは5歳になっていない。


「私だって、もっとここに来たいもの。でも頑張りようがないわ」


とにかく、クロルがここから卒業する事になった。

クロルの最後の日になるから、クロルを主役にして過ごすことになった。


「上でも、僕とダンスして欲しい」

クロルと躍っている時に、リュイスはそう頼まれた。


「勿論よ。私もクロルくんと踊りたいもの」

とリュイスからも頼んでおいた。


***


どうも、ルルドはクロルと張り合おうとする。

「ずるい!」

リュイスとクロルと一緒に遊んでいると、すぐに怒る。


作ってもらったダンス用の部屋でクロルと踊っている時も、ルルドが物凄く怒った。


「ルルドは湖の下でリュイスちゃんと躍ってるだろ! 僕はもう行けないんだから!」

「今までさんざん躍って来たくせに!」


嫉妬ねぇ、と、そんな様子を見た母たちがしみじみと言っている。


ちなみにリュイスは、クロルと遊んでいる方が楽しい。

ルルドは、すぐ邪魔をしてくるから困ってしまう。


そんな中、父もリュイスと踊りたがる。

父は、踊りながら持ち上げてくれる。これは父しかできない。すごく楽しい。嬉しい。

思わず声を上げたり、抱き付いたりしてしまう。父もすごく嬉しそうだ。


一方、父と踊ると、クロルが何だか気まずそうだ。

クロルが父を睨んでいたこともある。父が気付いてクロルを向くと、クロルが焦ったように視線を晒してそそっと移動する。


リュイスが父が怒っているのかと心配になって表情を確認すると、父はニッコリ笑う。怒っているわけではない様子だ。

どうしてクロルはあんな風になるのだろう。


その際のルルドの方は、クロルの様子に、なぜか勝ったように笑っている。

ただ、父がルルドを見ると、ルルドもクロルと同じように顔を強張らせる。


変なの。


母が困ったように笑うのだ。

「あなた、私とも踊ってくださいな」

「あぁ」

父の様子が柔らかくなる。口調がちょっと優しくなるというか。

リュイスの時とちょっと違うなぁ、とリュイスは思う。仲が良い。


「あなたには私がいるでしょう? 浮気はダメよ?」

母が楽しそうに笑いながら注意しつつ、父の腕を取る。

「浮気じゃない」

「度が過ぎると嫌われるわよ、あなた」

父は文句を言いたげになるけれど、心配そうにリュイスを見てくる。


リュイスが父を嫌う、という話?

そんな事絶対にないのに。

変なの。


父と母のダンスを皆で見る。

クロルの父と母が、リュイスも含めて、子どもたちに、

「お手本になるから、ちゃんと見ておいて。あぁいう風にきれいに踊れるといいね」

と言い聞かせる。


リュイスの父と母が一曲踊って見せてくれた後は、皆で踊りましょうよ、と母に誘われて、皆で踊る。


リュイスは、母みたいに踊りたいと思う。とても綺麗だ。あんな風になれるかな。

身長的にも、クロルと練習するのが一番良いはずだ。


クロルも、すごくカッコよく、リュイスの相手で踊りたい、と言うので、お互いの目標は同じである。


***


リュイスが8歳の時。


クロルたちにもう一人、妹が生まれた。ノルラという名前になった。

上のドルノはクロルたちの父似だが、ノルラはクロルたちの母似だった。

「揃ったなぁ」

と、クロルの父が嬉しそうに言った。

つまり、母似の男子、父似の男子、父似の女子、母似の女子。確かに。


なお、子どもが増えても、この家は大きいので、引っ越しなどなく住んでいる。

そもそも、リュイスの父は、クロルの父に仕えているのだ。遠い国の貴族のクロルの父が始めた事業を手伝っているのが、リュイスの父。

先にリュイスの父が準備をしていた。そして、クロルたちの一家がこちらの国に引っ越してきた。

という事情が、8歳のリュイスにはちゃんと理解できる。


つまり、一緒の仕事をしているので、一緒に住んでいる方が、親たちが便利なのだ。仲良しだし。

子育ても助け合えるから良いらしい。


ただ、リュイスの父は、リュイスを眺めてみてから、母に、

「引っ越した方が良いだろうか」

と悩み始めている。

母は、

「このままで良いんじゃないのかしら」

と毎回、結構気軽に答える。


母に聞いてみると、父は、リュイスが、クロルやルルドの誰かにとられるのではと心配になっているらしい。


え?

仲良くするの、お父様は心配なの?


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