幕間 九州区画冷凍休眠施設第一種秘匿指定記録
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九州区画冷凍休眠施設第一種秘匿指定記録「魔族との戦闘記録概略」
・区画標準時元年四月九日、第三開拓班五十名が東方開拓部にて所属不明の集団、およそ百五十と遭遇。剣・槍・斧その他で武装した正体不明の生物の襲撃に応戦するも八名が負傷し、四十一名が死亡。第一、第二、第三、第四警備班が現場へ急行し武力にてこれを排除。警備班に負傷者・死亡者共になし。
・区画標準時元年四月二十日、第一研究区画に移送された正体不明の生物(以後これを魔族と呼称)の死骸の検査の結果、体内に放射線物質を含む第三次元元素群を含有する生物であることが判明。非浄化者への接近禁止命令を発動。生存者審議会にて以後、遭遇した際には浄化者を中核とする警備班がこれに対応することを決定。
生存者及び警備班の証言から魔族が不可解な現象を起こし、これを攻撃手段としていたことが判明(以後これを魔法と呼称)。浄化能力によって魔法が効果を失うこと、並びに魔族に対する攻撃手段として浄化能力が有効であることが判明。
・区画標準時元年四月二十四日、生存者審議会にて全浄化能力者の非常招集を決定。早期の軍事訓練の実施と本施設周辺の防衛設備敷設を優先事項と決定。
・区画標準時元年五月七日、生存者審議会の決定により新たに新設された第二偵察班が魔族の大規模な集団を確認。数、推定三千。第一から第三十五班までの警備班千七百五十名が南方の河川に集結。
平和的な交渉を模索するも、矢と魔法による攻撃を受けたためこれに応戦(以後、魔族を敵性集団と認定)。魔族四百九十二体を殺害。第二十一、第二十七警備班により負傷した生存者四名を捕虜として移送。第二営巣区画に収監。
・区画標準時元年五月八日、捕虜への尋問により情報は得られず。様々な言語・方法による意思疎通を試みるもこれを果たせず。捕虜の内、一名は魔法により脱走を試みたため止むを得ず浄化能力にてこれを殺害。翌々日、生存者審議会は魔族に対するジュネーヴ条約の適用を否決。積極的な尋問へと移行。
・区画標準時元年七月一日、偵察班により南北から魔族の大群が接近していることが判明。生存者審議会は、全警備班及び全浄化能力者、及び二十四歳以上の全ての区画市民の動員を決定。総員七万千二百三名を動員し、南北の第一防衛線にて応戦。
前線の報告により銃弾が貫通しない盾や鎧を持つ魔族がいることが判明。迫撃砲及び対戦車砲、手榴弾と工作用爆弾、並びに複数の浄化能力者により対処。南北両戦線にて魔族の大群を撃退。
・区画標準時元年七月五日、生存者審議会の全会一致により積極攻勢を可決。本施設周辺の完全浄化作業に並行して周辺に生息する放射性汚染生物(以後魔獣と呼称)並びに魔族の掃討を開始。十一月までに村落二百七、都市七、城塞二を攻略し破壊。資源確保のため、採掘班と警備班が偵察班の情報を基に資源の収集を開始。
厳冬により攻勢を一時中断。防衛施設の敷設へ人員を再配置。区画標準時七月一日における戦闘の教訓に基づき、鹵獲した武器を基に製造した剣を装備した部隊を新設(以後これを剣兵班と呼称)。対魔族を想定した近接戦闘訓練に合わせて効率的な浄化能力の運用法についても訓練を開始。
・区画標準時二年三月二十三日、第三偵察班の威力偵察により南北における魔族の集結が判明。北部戦線は前年を上回る数が想定され、人員を増加。
・区画標準時二年三月三十日、魔族側の攻勢が開始。本施設周辺の農耕地が魔族の別動隊により被害を受ける。
・区画標準時二年四月十二日、回転作戦により南部戦線の敵を撃破。剣兵班の有効性が確認される。なお、実弾銃の弾薬が不足。
・区画標準時二年五月四日、北部における大規模な魔族の攻撃を受け反撃を開始。二十四歳未満の全区画市民の動員を生存者審議会が決定。
・区画標準時二年五月十八日、第二防衛線まで後退。犠牲者多数。
・区画標準時二年五月二十八日、第二防衛線を魔族が突破。本施設を囲む最終防衛線に魔族が到達。本施設が攻囲を受ける。
区画標準時二年五月二十九日
九州区画市民協議会代表 警備班総長代理 田山圭