序章
読んでくれたら嬉しいです。面白かったら続きもお願いします。
「人は支え合いながら生きていく。」
そう俺は教えられた。
それが「嘘」だとも。
生き物は、この世に「自分」を存在させるために「他」から奪わなければ生きていけない。
それが生き物、これこそが人。
貴方には自分のために、奪われた者の全てを背負う覚悟はあるのだろうか?
朝、それは全ての生物に平等に訪れる。
たとえそれが奴隷でも、だ。
陽が出る少し前。冷たい石壁に囲まれた部屋で、少年は目覚める。いつも通り、藁の敷かれた冷たい石床から起き上がり、固まった筋肉をほぐし、汚い自分を少しでもきれいにすべく、寝床に敷かれた藁で体を拭く。
これが奴隷である彼の日課だ。
暫くして、他の奴隷達も起きだすと、朝食の配膳が彼の部屋の鉄格子の隙間から押し込まれる。
野菜クズで出来たシチューのような流動体だ。
彼はすぐさまソレを口に流し込み、部屋の片隅に置いてある、唯一の持ち物である本を開き、待つ。
本を持つ事で、自分は字が読める事をアピールするためだ。
変に賢い奴隷は嫌われる。騙す事が難しいからである。
そのお陰で、変な主人に気に入られ、弄ばれた挙句、殺されるような事は最低限避けられる。
店主からは嫌われ、鞭で叩かれるが、長年叩かれたせいか、痛みはとうに感じなくなっていた。
「おい、糞共お客様のお出ましだ!変な真似するんじゃねぇぞ!」
と、店主が怒鳴る。
開店の時間が来たのだ。
他の奴隷達はそこでやっと、身なりを整え始めたが、少し遅く、
珍しい事にも、最初の客が来てしまったのだ。
珍しさに少年は無関心を装う事が出来ず、鉄格子の外を一瞬だけ、覗いてしまった。
その時、偶然か必然か、客と目があってしまったのだ。
それが、自分の一生を左右することになるとは、少年には知る由もなかった。
楽しい世界になるといいですね。