8話 保護と山賊
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「で?雪山であの子を拾ってきたと?」
「ヘイ。お頭。あまりにも可愛そうで」
「はぁ…誰が育てるって言うんだい」
「いや、もちろん!それはアッシが!」
え…
いや、それは困る
「い、いや!拾ってきたんならこの子も今日からアタシのファミリーだ!私も含めて全員で面倒を見よう」
「へ、へい!わかりやした!」
ふぅー危なかった
もうすぐでアタシだけ子守りをさせて貰えなくなる所だった
あの子の寝顔可愛かったもんなー
早くあの子と遊びたい。あの子に名前とか呼んで欲しい
(あぁ~早く起きないかなぁ)
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「お! 目を覚ましたぞ!」
「おい!わかるか?名前は?」
「バカ。どう見ても喋れる歳じゃねぇだろ!」
「そっか!」
とぼけた髭面の男の発言にワヤワヤと笑い出す周り
それを見て俺は
(んん??どうなってんだ?何処だここ?それにこの人達は…)
俺は何故こうなったのか思い出そうとする
……あぁそうだ
俺は雪山で…意識を失ったんだ
そして、意識が途切れる間際に誰かに抱きかかえられた記憶が薄らとある
という事はこの人達は命の恩人?
俺は獣の毛皮らしきものに包まれており近くには焚き火がある
俺は座布団らしきものに寝かされている
所々に配慮が見える事から
悪意ではなく善意の行為だったのが見て取れる
「は?そんな名前認められるか!」
「あん?お前のよりはいいだろう!」
「ハッ。どっちもどっちだろ」
「「お前のが1番ねぇよ」」
「んだと!?ゴラァ!」
周りがうるさい
何?名前?
俺の名前でもめてんの?
「なら、当人に決めて貰おうぜ!」
「おお、いいぜ?」
「そうだな。反応が良かったのにしよう」
え、何?
俺は毛皮を重ね着した大男3人に囲まれる
「坊主!」
なんだよ
初めて聞いた単語だが俺を指している事は何となくわかる
俺に話しかけてきているようだ
「いいか?ヨーゼフって名前どうだ?」
名前?
あー俺の名前候補?いや、いらんけど
「…反応ねぇな」
「ハッ。やっぱりな!俺のバンデッタがいいよな?」
いや、よくねぇよ
「…イヤな顔すんなよ」
「な?お前のそれはねぇって」
「んだな。じゃあ俺のベンゼデルカターナはどうだ?」
…ん?今なんて?
ベンなんたらーナ?
え、それ名前?
俺は不思議そうな顔が表に出る
「ほら、見ろ。そんなん名前じゃねぇよ」
「なんだと!?俺は息子が生まれたらこの名前って決めてたんだよ!」
また何やら揉め始めたよ…
俺はそれを横目に考える
さて…どうするかな
俺は今名乗るかどうかを考えている
言おうと思えば「名前、アルマ」位言える
しかし、明らかに盗賊や山賊の類であろうこの人達に名乗ってもいいものなのか?
俺は尚も考える
そして、結論を出す
「名前」
「「「ん?」」」
「アルマ」
名乗ったのにぽけーっと固まる3人
俺はそれを見てもう一度名乗る
「名前、アルマ」
俺の2度目の名乗りを聞いた時点で
「「「おおおおおおおお」」」
3人が雄叫びを上げた
(え、何だよ)
俺が3人の奇行を白い目で見ていると
3人の内1番体格がゴツイ男が
「喋ったぁぁぁぁぁ」
っと大声を出した
(喋った?)
あぁ喋れないと思われてたって事?
え、それだけでそんな叫ぶ?
「おい、喋れるって事は会話も出来んのか?」
「いや、それは無理だろ」
「だが、名乗ったって事は俺達が名前を提案していたって分かってた事だろう?」
「あぁそうか。そうだよな」
やべ、そこからか
そう言われればそうだ
1歳になったばかりの子が言葉を理解して適切な言葉を返すのは可笑しいよな
…バカなフリでもするか?
「名前、アルマ」を耳がタコが出来る位リピートしてやろうか
そうして、それしか喋れないって事にして
偶然会話が繋がったって事にするか?
いや…それ今後面倒くさくね?
俺は家に帰りたい
今の所好意的な山賊達だが、全員が全員そうとは限らない
それに賊の生活なんて良いイメージはない
それなら元の家に帰って本を読みたい
「あ、本」
「「「ん?」」」
あ、やべ
「今何か言ったよな?」
「本って言わなかったか?」
「あーそう言えば拾ってきた時に本を持ってたな」
「あの分厚い本な」
「アレどこ置いたっけ?」
「首領の所じゃね?」
「あぁそうだそうだ」
どんどん話が進んでる
しかし、思わぬ情報だ
自信は無いが本は首領とやらが持っているらしい
帰るにしても、あの本は持って帰りたいからな。返して貰わなければ
「他の言葉も知ってるみたいだな」
「何者だ?本当に赤ん坊か?」
「いや、赤ん坊には違いないだろ」
うぅ…
俺に3人の疑り深い目が降り注ぐ
「あ、分かったぞ!」
「俺も分かった」
「え、何がだよ?」
え、分かったって?
もしかして、俺が転生者って事!?
男達はわからないと言ったヒョロヒョロの男に耳打ちしている
「なるほど!」
「俺も同じ事を思ったぜ!」
「だよな!それしか考えられねぇ」
クッ。どうする?
誤魔化すべきか?今からアホのフリ間に合うのか??
「間違いないこの坊主は天才だ」
そう。天才……うん?
「天才かーいいなー」
「天才ならこの歳で喋っても可笑しくないだろ」
あーうん。
訂正しなくていいや
俺は都合の良い解釈をしてくれた3人に感謝しつつ傍観する事にした
「赤ん坊が起きたって?」
「あ、頭領」
「へい。つい先程起きやした」
ツカツカっとヒールの足音が聞こえる
女性の声だ
「ほらどきな!見えないだろ!」
「「「へい」」」
頭領って言うからにはこの賊のリーダーか?
どんなイカつい人なんだろ…
俺の目の前にいた3人組が横にハケて頭領と言われている人と目が会う
その見た目は
「か、かわいい♡」
俺を見て口元を緩ませる
どう見ても10代~25まで位の若いあどけなさが残る姿だった
後、2,3話で赤ん坊編の終わりの予定です
赤ん坊編には1つのテーマがあります
それは赤ん坊編が終わった後に話します
良ければ続きをお願いします
今回は山賊の触りのみ。こんな境遇にアルマは突っ込まれましたーって話
次からガッツリと行きます
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