博識メイドと匙投げ教師
「いいですか?魔物というのは例外なく敵です。まずこれを覚えておいてください。決して相容れない存在です」
部屋を移動して、マナからの魔物講座が始まり開口一番にそう、告げられた
「魔物は人を喰らい、殺戮し、我々人類に仇なす者です
見つけたら倒すか逃げるのどちらかしかありません」
ふーん。モンスターテイムとかはないのかな?
それとも知らないだけ…って事はないよな
俺の家はかなり規模が大きそうなので
そんな俺等に教える人。マナが知らないという可能性は薄そう
ということは、本当にないのか
もしくは、隠されているのか
まぁどちらにせよ。生きていればわかる事だ
今回はマナの言葉を全て鵜呑みにしよう
「魔物の種類はかなり確認されていますが、よく見かけるのは通称ゴブリン・インプ・ドリヤードと呼ばれるモンスターです」
で、出たな
定番モンスター達
「正式名称は他にありますが、皆過去の冒険者が呼び慣れていた通称の名の方が浸透していますのでコチラを覚えて下さい」
過去の冒険者ねぇ…
質問しとくか
「過去の冒険者様達ってまだ生きてる人なの?強いの?」
「いいえ。ずっと昔の冒険者です。強いか弱いかはわりかねます」
「そうなんだ~」
ふむ、まぁ生きてはいないと
それなら気にする必要はないか
「ゴブリンは特に凶暴で人を見ると襲ってきます
1匹1匹は大した事はありませんが、油断をしてはなりません」
うん。ゴブリンってそんなイメージだよね
「インプ、ドリヤードはゴブリンと違い知性があります
しかし、人を見つけたら襲ってくる事は間違いないので注意は怠れません」
ふむふむ。マナが話しながらモンスターの絵をサラサラっと書いてくれているのだが上手くてイメージがつきやすい
メイドって凄い
「先程も言いましたが他にも数多くの魔物がいます」
今のはよく見かけるモンスター
つまり雑魚って認識でいいのだろうな
「ワンランク上の魔物になるとオールクニス。通称オークという2足方向の怪力を持つ魔物がいます。生息地は山で道中では会う事は無いと思いますが遭遇した際は、すかさず逃げて下さい。
冒険者界隈では、新人殺しと言われており中々の強者です」
おー出たよ。オーク
何時かあいまみえる時がくるのだろうか
「魔物の上位種と言えば、魔族というものがいます」
「魔族?」
「はい。私達と同じ言語アルスマティア語を操り。単体でかなりの強さを誇ります。一体で国を滅ぼせるのでは?と言われている者までいるそうです」
アルスマティアとはこの世界の事
現代で言うと地球って所だ
その言葉なのでアルスマティア語
この世界には基本的に言語は1つな様だ。英語とか苦手意識のある俺にとっては朗報だ
「ふーん。お父様とどっちが強いの?」
「旦那様はこの世界でもかなりの強者として名を馳せていらっしゃいます」
「へーそうなんだ!」
俺は何気なく言った質問に面白そうな回答が返ってきてワクワクする
「ええ。何せ北の地。ここ二ブルム領を納められている方ですからね
騎士家の当主には魔物を圧倒する力が求められているのです」
「へー」
俺は簡素に返事をする
が、頭の中では色々な思考が飛び交っていた
その中の1つが、騎士家について
今度説明してくれるとの事なので今聞く事はしないが
騎士家。その当主には力が求められる
時折ボロボロになって帰ってくる父から連想できるもの
誰かもしくは何かと戦っている
少しずつ見えてきた事柄に俺は一層心を引き締める
「ただ、そんなレイヤ様でも互角。それ以上の輩がいても不思議じゃないと言われています」
「そんなのがいて国は放置していいいの?」
「はい。ここ最近は人界で魔族を見掛けたという報告は受けておりませんので皆安心し切っているのでしょう」
ふーん
何ともまぁ危機感の薄い事だ
まさしく平和ボケと言う奴だろう
俺が異世界からきているというのがあるからなのか
全く安心できない。早く護りたい者を守れる強さを手に入れよう
今回のマナによる魔物の勉強会はとてもタメになった
マナによると基礎知識に過ぎないようだが
また、折を見て講師を付けて勉強するという
俺達はその後、ゴブリンやらの生態などを聞いていたが
大体ゲームや小説のイメージ通りであったためすんなりと頭に入ってきた
後は、実践あるのみだ
「アルマ様とミーシャ様は戦ってはなりませんよ?
従者に全てお任せ下さい。いざ、という時には旦那様とルーナ様が対応されるそうです」
「あ、はい」
俺のやる気は空回りに終わりそうだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔物の生態を学んで一夜が去った
年中雪が降っておりいつも雪が積もっている庭も
珍しく外の雪が溶け芝生が姿を表している暖かい日
今は朝の体力作りを終えて、朝食を終えて勉強
そしてその後のアモンの魔法の講師だという
「私の名前はルーアリバ。アリバとお呼び下さい」
に魔法について教えてもらう事になった
「早速ですが、アルマ様、ミーシャ様。お二人は既に属性魔法を発動できるとは誠ですか?」
「うん。できるよ」
「私もできる」
俺は宙に手の平を仰向けに広げ魔法を発動した
一瞬で俺の手には装飾が凝った剣が
ミーシャも隣で何か作ったようなので横目で見ると細かい作業が必要そうな氷の薔薇を作った
「「…………」」
「「?」」
無言の空間
静寂が辺りをつつむ
俺とミーシャは出来たものを見せてるつもりで、何か感想待ちなのだが……
当のアルバとアモンが呆然としている
そして、先に動き出したのは、アリバだった
「はぁ……そういう事ですか」
え?何?
アリバが頭を抑えて下を向き困った顔をする
「ウチの子は天才みたいだから、3歳から私の元で学ばせたいと言われた時は3歳の子に教えるのは初めての経験で驚きましたが納得しました」
ん?どういう事?
俺は状況が飲み込めず困惑する
「アルマ様。その立派な剣を見せて下さい」
「……いいですけど」
俺は作った剣をアリバに渡す
「これは……無理ですね」
「え?」
「今から私が精一杯全力でアルマ君の作った剣を再現します」
「は、はい」
俺はよくわからないが両省する
「土魔法…………想像」
(…………は?)
何その棒は?
「……私の想像力や魔力制御ではこれが限界です」
嘘?マジ?
アルバの魔法適性は【地】のようで手には土で出来た剣……とは言い難い棒が握られている
俺のを再現したとはだれも思わないだろう出来だ
剣先は丸っこく。両刃は一直線でとても剣とは呼べない
やはり、悪いがただの棒っきれだ
俺の装飾をマネしようとしたのかぐちゃぐちゃとしてる部分があるのが更に痛ましい
「アルマ様やミーシャ様の魔力制御は一般の常識を超えています。
魔法とは本来そこまで精密な操作を必要としません」
「そう、なんだ」
ミーシャは相槌を打ったのだが、その顔は若干引きつっていた
「魔法とはですね……本来」
アルバは前方後円墳に手の平を向けて唱える
「土魔法!岩槍!」
ゴンッという、音がして数メートル先の地面から尖った岩がでてくる
「おぉ~」
「すごい…」
俺とミーシャは素直に賞賛を送る
「これは、岩槍。地面に魔力を通して尖った岩を突き出す技です」
へぇー魔法っぽい
それに殺傷能力は高そうだ
「岩を地面から突き出す。というだけの魔法ですがこれが意外と上手く行かないのです。お手本の様な理論は特になく感覚を掴むしかないですからね」
……そんな事ないだろうよ
(地面の中からってのは難しいか?土魔法は土を操るから簡単だろうが氷はどうやるんだ?)
俺は試行錯誤してみた
そして、何とか再現出来そうなのでやって……みようかと思ったが
出来ない方がいいのか?と思い直した
「えぇだから、幾ら魔力制御が上手くても攻撃魔法として使えるかは別問題で~」
うん。アリバ先生凄い饒舌だもんなー
ここは空気読むかー
俺はアリバ先生の魔法を再現できそうだが辞めた
そう決意し、俺の片割れの様子を見る
すると、ミーシャも俺の方を見ていたので、俺は頷く
(これ以上の規格外な行動はやめよう)と言ったつもりだ
ミーシャも俺の頷きに頷き返した
(さぁてどうするかな)
オレが顎に手を当て思考に入る
そんな俺の後ろからポツリと声が
「氷魔法。発動。」
「え?」
パリパリッパキッ
空気中の水分または空気自体が固まる音が頭上から聞こえる
直前に後ろから聞こえた声はミーシャ
そしてその言葉通り、頭上にはミーシャが放った魔法の光景があった
「おぉ~すご」
「ふへ?」
「流石だなぁミーシャは」
ミーシャを除く3人は頭上の光景
宙に浮かぶ6本の氷柱。それも現代なら電柱位の太い氷柱を見ていた
当のミーシャは両手の平を俺達の視線の先の氷柱に向けていた
そのミーシャが左手を下げると
ドスッごスっ、ボスッどスッ
と音を立てて重力に任せて5本の氷柱が地面に突き刺さった
そして、右手の手を下ろすと最後の1本が落下して
ゴォン
先生が先程作った岩槍を粉々にした
大きさ的には岩槍は3角コーンなので粉々になった
(岩と、氷なら氷が負けそうなもんだけどなー)
それは込められた魔力の違いなのか
ミーシャの作り出した氷柱は欠ける所か岩槍を粉砕し堂々たる姿で地面に刺さっていた
「嘘だろ?私の魔法よりも圧倒的に大きな魔法。どれだけの魔力を込めたんだ?」
てか
何してくれてんの?妹よ
俺は当のやらかしてくれたミーシャを見る
「!。……?」
俺の視線に気づいたミーシャは
(いや、キョトン?じゃねぇよ)
可愛らしく小首を傾げて「どうしたの?」とでも言いたげだ
そして、その視線の意味を感じとったのか
「あ…そういうこと?」
と、漏らした
俺は。多分そういう事であっていると察したので頷く
すると、ミーシャは目を逸らした
(コイツ……)
さぁではどうするかだ
ミーシャがやらかしてしまった訳だが、、
選択肢は2つ
1つ、
このまま出来そうな事を隠す。そして、ミーシャをチート扱いにする
2つ、
俺もチート野郎になる
さぁてどうするか……
俺は考える。しかし、幾度考えても同じ答えしか出ない
(妹ができて、兄の俺が出来ないとか無いよなぁ?)
出来るだけ抑えてきた対抗心。それが剥き出しになる
それに今回抑えていない理由は既に、ミーシャがやらかしてるってのもある
ならば、どうせミーシャはアリバの反応を見る限り【規格外】の烙印を押される
(ならば!その規格外に並び立ってやろうじゃないか!)
一緒に育ってきた仲だしな
死なば諸共。規格外も諸共ってな
しかし、どうせなら……
「ねぇ、先生?」
「あ、な、なんだね?」
「魔力を込めた量によって魔法の強度や威力は変わるの?」
俺は放心していたアリバの、肩を揺すり質問した
「あ、あぁ。込めた魔力によって私の魔法や
……あの氷柱の強度が変わる。氷や火なら温度が変わったりもする。
見たまえよ……氷柱の刺さった先端を……冷気で草が凍ってるよ……あのクラスの魔法を放つのは3歳に出来る筈ないんだけどね……アハハ」
ふーん。なるほどね
俺はアリバの話を聞きながら自分の魔力を体内で確認する
「というか、私にも無理だ。既にギルドで戦力になれる実力だぞ?
いや、全魔力を放出したなら私にもアレくらいの威力が……いや、魔力を制御出来る筈がない。それに、あの子、魔力欠乏の様子がない……まだ余裕なのか?」
「先生うるさい」
「あ、はい。申し訳ありません!」
俺は後ろでグチグチ何か言っていたアリバを黙らせる
俺は初めての挑戦に集中したいのだ
ミーシャは空中に6本の氷柱を発生させた
恐らく空気を凍らせたんだろう
それを応用して……よし!出来そう!
ミーシャは地面ではなく空中という真逆の回答で魔法のを発動したが
俺はあくまで再現に拘る
「先生。今度は僕が先生の魔法のマネするね?」
「ふへ?」
俺は無邪気な笑顔で先生にそう言うと
俺は人差し指を逆手で地面の方に指す
(開始地点はあの辺の地面!スタートはサークル型)
イメージ完了
「氷魔法!発動ぅ♪」
俺がクイッと人差し指を上げると
ゴンッ!ガラガラ。ゴンッ!ガラガラ。ゴンッ!ガラガラ
っと音がして3本の氷柱が砕け散った
俺がイメージしたのは現代のゲームで有名RPGの氷魔法だ
そのイメージを元に下から上にタケノコのように進行方向が先端になるようにして伸ばす
俺のヒ〇ドは魔力を1本の氷柱に集中させた事により6分の1ずつしか魔力が入っていなかったであろう氷柱を余裕で3本貫通して破壊した
俺はドヤ顔でミーシャの方を見る
当のミーシャはというと
そっぽを向いていた
しかし、俺は見逃さなかった
ミーシャの口元が歪んでいた事を
「アルマ様。ミーシャ様」
そんなやり取りをミーシャと俺がしていると
真剣な表情でアリバが話しかけてした
そして、その口から
「君達は、私には荷が重い!指導は降りさせてくれ」
「「…………」」
俺とミーシャは何も言えなくなった
「アハッハッ!流石アルマとミーシャだ」
1人だけ笑い転げるアモンの声は静かな空間によく響いていた
補足説明。アルマはこの時点では知らない裏話
今のアルマとミーシャは当然の様にアモンとシャーリーより強いです
そして、レイヤとルーナにはどうやっても勝てない差があります
最後に今回登場したアリバですが、試合をすれば7:3でアルマが負けます
殺し合いなら、9:1アルマが負ける位に考えておいて下さい
これは単純な力の差を表した物です。
何故こうなのか?と説明はできますが、詳細については物語内にて明かしていきます
そして、次は街だー
描きたいイベント多すぎて楽し辛い