期待の目と奇異の目
長め7000文字
この世界にも現代日本と同じ様に四季があるようだ
しかし、俺の住んでいる場所二ブルム領と呼ばれる中央都市から北に位置するらしい我が家の周辺は
年から年中寒く
日本でいえば初秋に該当する季節でありながら
うっすらと雪が積もっており、今もしんしんと雪が降っている
そんな中、俺の住居前では早朝から声が挙がっていた
「魔力の訓練をするのは久々だな!準備はいいか?」
「「「はいお父様」」」
俺ことアルマ、妹のミーシャ、姉のシャーリーが
父であるレイヤの問いに元気よく答える
「よし!では、アルマとミーシャは前回のおさらいだ!
シャーリーも同じでまずは、魔力を可視化してみろ!」
「「「はい!」」」
俺は手に魔力を集める
我先にとシャーリーが魔力を出す為に踏ん張った
格好はと言えばヤ〇チャの繰〇弾をだす時のポーズだ
「ぷっ」
俺はその姿に吹き出す
「よし!出た!」
シャーリーは元気よく飛び跳ねる
そんな姿が微笑ましくてニヤニヤしていると
そんな俺を見たシャーリーは
「むぅ~アルマ笑ったでしょ!?」
「笑ってないですお姉様」
「うっそだぁ~!私見たもん!」
「笑ってませんよお姉様」
俺は事実を認める事なくしらばっくれる
そんな俺にシャーリーは
「じゃあやってみなよ!魔力出すのって難しいんだよ?」
俺は逆手で腕を前に出す
〇気弾を出すポーズのように左手を添えたり腰を落としたりはしていない
あくまで自然体の姿勢で
特に踏ん張る事なく
(魔力の流れを感じて…掌に球体を作る…)
と頭でイメージを作り
バスケットボール程の青い球体を作り出した
「す、すごい。3歳で…こんな綺麗な球体を!?」
「…前回のはたまたまじゃなかったか」
軽く挑発してきたシャーリーは俺が呆気なく作った魔力球に驚いている。俺が作った物の大きさがバスケットボール程なのに対して
シャーリーが作ったのは野球ボールだったので尚更ショックを受けている
「何で3歳と半年の子供ができるのよ!
それになんで、5歳のアタシより大きいのよ!」
「なんでと言われても…」
俺は本気で悔しがっている様なシャーリーに
なんと返そうか悩む
既に魔力制御が簡単で
これ以上に大きな球体でも余裕で形を保てる自信があるから
(とは、言えないよな…)
この大きさにしたのは、だ
「流石だな。アルマ、前回のは偶然ではなかったのだな」
「はい」
そう。このレイヤとの魔力訓練は2回目
前回、手本として見せられたこの訓練を1度見ただけで
俺と、ミーシャは再現した
この大きさにしたのはレイヤの見本がこの大きさだったからにすぎない
「ミーシャは?」
「あ、はい」
静かに俺達の会話を見ていたミーシャは
短い言葉に込められた、「ミーシャは魔力が出せるか?」という問を読み取り
「はい。できました」
俺と同じ大きさの魔力の球を作り出した
「なんでミーシャもあたしより大きいの!?」
「ミーシャも流石だな」
ミーシャは驚き
レイヤは関心をしている
「私は魔力を出すのに1年。ここまで大きくするのに更に1年掛かったのに!」
そう。2人の反応はこの常識からきている
加えて、シャーリーはこれでも優秀な方らしく
「シャーリー大丈夫だ。魔力の可視化は12才から入る一般の子供達が最初に習うものだ。5歳でそれができる。尚且つ球体などに形を保つのは更に難しいんだ。」
「でもぉ…」
「そうだ。この2人は天才みたいだ」
2人の視線が俺とミーシャに向く
「あはは」
俺は空笑いで頬をかく
ミーシャはと言うと目を逸らす為にそっぽを向いていた
俺、とミーシャは何かと周りから天才と言われる
3歳から流暢に話ができる事に始まり
読書を率先してする事。読み書きや算術
3歳レベルとは思えない食事マナーや
俺の苦手な美術でさえ3歳にしては天才レベル
ミーシャのクロッキー技術至っては神の域だ
俺達は
「まぁアルマとシャーリーなら仕方ないよね~」
「うむ。これからが楽しみだ!」
で、片付けられる事がここ最近特に多くなってきた
(まぁこの世界の常識がわからずにやらかしてしまう事がもあるからその方が好都合なんだけどね?)
「と、まぁ本来ならば、アルマとミーシャには魔力球を出す所を1年。いくら優秀な2人でもシャーリーのレベルにまで半年は掛かるだろうと目算していたのだが……」
レイヤは苦笑いをする
な、何か申し訳ないなー
「2人にはシャーリーと同じ様に魔法を発動する練習に行こうと思う」
(キタ!魔法の訓練!)
俺は待ちに待ったこの時を喜ぶ
そして、その反面少し落ち込む
この世界にきて、日常生活を便利にする為の魔法はメイド達を中心に多くみた
焚き木に火を付けたり
洗濯物の水を出したり
遠くの物を引き寄せるのに風を発生させたり
と色々だ
しかし、俺が1番印象に残っている魔法
それは
【戦闘】
母ルーナが俺を奪還するという名目で使った
あの、氷の氷柱や礫を出す魔法だ
その光景は、もちろん思い出して良いものではなく
重く楔として、俺の魔法への好奇心に蓋をする
しかし、この記憶があるからこそ
真面目に魔法を学ばなければという思いもある
俺はこの思いがあったからこそ
1度も属性魔法を使っていない
恐らく、既にできる
感覚的なものだがそんな気がしている
(まぁ、それはすぐわかる事だろう)
「よし、では始めよう」
レイヤが「ウホン」と咳払いを入れ話し始める
「まず、3人に作ってもらった魔力球は何色だったか覚えてるか?」
レイヤが質問する
「はい!青色!」
「そうだ」
青色の球を出したシャーリーが元気よく答える
「アルマもミーシャも青……というか空色だったよね!」
「う、うん」
「そう。水色」
俺は自分で言おうとした矢先の姉からの進言に言葉が詰まる
(この姉元気すぎな)
ミーシャも淡々と否定することなく頷いていた
そう。ミーシャの言う通り俺達の出した魔力の球は水色だった
「そうだ。私の色も水色だ。ルーナ」
レイヤはパラソルの下で隣に佇むマナと一緒に俺達を見守っていた母ルーナに声をかけた
「はい」
と、短かく言うと
事前に決めてあったやり取りなのか
ルーナは魔力球を出した
「見ての通り、ルーナも水色だ」
そう。ホント見ての通りルーナが出した球も水色であった
「いいか?魔力というのは色がある」
「へぇ~」
隣でミーシャが呟く
ちなみな、俺は知っていた。俺はこの数年魔力の本が中心とまでは行かなくともそれなりの数を読んできた。
だから、その辺には詳しいのだ
「シャーリーには昔教えたが、アルマも知ってたみたいだな」
俺の様子を見てかそう言われた
「うん。本に書いてあった」
「すごいわねぇ~」
と、答えると
ルーナが力のない拍手ではあったがしっかりと賞賛されている事がわかる反応と言葉で俺を褒める
「教える側としては、「そうなの!?」っと昔のシャーリーやアモンの様に無邪気に聞き入ってくれると嬉しいのだかな」
レイヤはニカッと
しかし、クールさは残しながら笑いながら言う
「はは、ごめんなさい。でも、学び直したいので説明お願いします」
「ハッハッ!うちの子はホント皆優秀だな」
今度は家族と親しい者にしか見せない様なバカ笑いで満足そうに笑うレイヤ
隣にいるルーナや
後ろに佇むマナもにこやかだ
俺はそんなみんなを見て
場を回転させる為
「まぁ?ミーシャは知らなかったみたいだし?」
「え!?……絵本に出てきたから少しは知ってる」
俺は矛先をシャーリーに向ける
この世界にきて1番長く一緒にいるからわかるが
一瞬悔しそうな顔をしたミーシャを俺は見逃さなかった
そして、そこを突かれてムッとするミーシャ
俺が魔力関係の本をよく読んでいる事を知っているミーシャは
俺よりも魔力という分野において知識が劣っていると自覚しているので強くは出られない
「3歳で知っているアルマが頭が良すぎるんだよ」
と、ミーシャを慰める流れになるとおもったら
俺が呆れられる結果となった
(うむ~そうか。そうなるのか~)
子供らしさ、というものを作ろうと思ったのだが
異世界転生者っぽさを垣間見せてしまう結果となったようだ
(失敗、失敗)
「では、アルマも聞いてくれる様だし解説をする」
「「「はい!」」」
教え子3人の声を揃えて返事を返した
「魔力の色は性質の色だ。
我々の青というのは水に該当する」
レイヤは掌に魔力球を再度作り解説する
「基本1人一つの性質で、たまに2つを持つ者や3つ持っているなんて規格外もいるようだ。……聞いておくがアルマとミーシャは出せないよな?出せるのなら今の内に言ってくれよ?」
レイヤが尋ねてくる
俺とミーシャは他4人から視線を向けられる
「もう1つの性質って感覚的に出せるってわかるものなんでしょ?
なら、出せないよ」
と、俺は答える
「……そうなんだ。なら、私も出せない」
隣のミーシャは「もしかしたら自覚してないだけかも」っと思って答えを渋っていたがアルマの言葉を聞き答える
二人とも嘘は言っていないと言うことは本人達が1番よくわかっている
「そうか!うん。それが普通だ」
あはは…
(お父様めっちゃ嬉しそう…)
優秀なのもいい事だが、あまりにぶっ飛びすぎてると手に負えないとかそういう事なんだろうか
「説明を続けよう。性質は6種類で魔力の色も6種類だ」
レイヤが説明の続きを始める
「まず、我々の水色や加えて青は先程も言ったように水
赤色は火、紫色が雷、緑が地、黄色が光、そして、黒色が闇だ
高い魔力の保有やコントロールをできる者ほど鮮度が明るくなる
我々は水色だが、普通は我々と同じ属性を持っていても藍色に近い色だと思って貰えればいい」
「むぅ…」
…隣から視線を感じる
俺はチラリと横を見ると姉がむくれていた
「な、なに?」
「私青色」
「あーうん」
短い言葉に嫉妬心が込められていた
「シャーリー?貴方の色も綺麗な方よ?普通はもっと黒に近い色な事が多いの」
「そうですよ。シャーリー様試しに水の適正を持つメイドに魔力球を出してと頼んで見てください」
「そうだぞ。シャーリー一般レベルという話ならば魔力の色はもちろん。形を整えて具現化する事や球体に維持するというのも困難な者が大半なんだ」
「でもぉ…」
「我が家は北方を護りし騎士の家。北の騎士家だからな。高い水準を求めているが5歳でその域ならば大したものだ」
「ええ、期待通りよ」
「でもぉ…この2人は期待以上でしょ?」
「「……まぁな(まぁね)」」
oh…またこの目を向けられてしまった
まぁ悪い方向に行かないならいいけどさ
「とにかく。気にする事はない。他の5つの騎士家では色々噂は聞くが我が家では、例え無能と周りから評価されようとも見捨てる事はない。……決してな」
最後の言葉に何か力強い意志を感じたが
概ね優しくシャーリーに言葉をかけるレイヤ
ルーナはというと優しくシャーリーの頭を撫でている
(……騎士家ね)
俺の家、二ブルム家と呼ばれる
人里から少し離れた場所に豪邸を掲げる我が家は色々と特殊な様だ
個人的に色々調べはしたが…
決定的な本が書かれている本は家には置いておらず理解しきれていない
そりゃ、自分の家の事が書いてある本なんていらないよな
必要な時がくれば話してくれるだろうと思っていたが、、
何より1番気になっていたのは
【北方の騎士家】の意味ではなく
言葉の綴りだ
この【ノース・シュバリエ】という言葉
明らかに英語と
どこか忘れたがヨーロッパ系で騎士を表す言葉だ
つまり、現代の言葉
つまり、この言葉を作ったのは地球からこの世界に来たことになる
オセロや他便利器具や娯楽がいろいろある時点で察してはいたが
物であれば人が思いついてたまたま同じ物ができでもギリギリ納得はできる
しかし、言葉となるとありえない確率だろう
この世界に地球人がいるのなら、今後の人生に影響を与える可能性はある
ならば、明らかにしておきたい
(…今聞くか?)
俺は悩む
が、そんなオレを知ってか知らずか
「お父様。我が家について教えて貰えますか?」
と、ミーシャが聞いた
「……3歳の娘に聞かれるとはな」
「えぇ……成長が速いわね」
レイヤとルーナは困った顔を作る
「アナタ…アモンの時に」
「そうだな」
レイヤとルーナは頷きあい一つの結論を出したようだ
「今度、アモンに我が家について詳しく説明をする。ミーシャも同行しなさい」
「はい」
え、ちょっと待って俺も!
と、俺が言おうとした刹那
「アルマとシャーリーも理解をしなくても、時が経てばまた説明するから同行しなさい」
「は、はい」
「わかりました。お父様」
俺が言おうとした勢いを殺されどもった返事の後
大事な話だと本能的に悟ったのか天真爛漫な姉はどこへやらお嬢様モードで返答した
「よし、今は魔法訓練だ!どこまで話したかな?」
「魔力の色までだよ!お父様」
「おぉそうだったな」
いつもの姉に戻った姉と父がそう話している
我が家についての話はもう、ここでは掘り返さない方がいいだろう
隣をチラリと見るとミーシャは顎に手を当て何やら考えている風だ
(控えめに言って、とても3歳児には見えない)
見た目は童女!
雰囲気!大人!
その名も!
って感じだ
そんな俺を放って話が進んでいた為俺はレイヤの言葉に耳を貸す
横目に見えたミーシャも何やら考える事を辞めたようだ
「同じ系統でも、魔法の内容は概ね異なる。火であれば出せる熱の温度が一般的だな。我々に当てはめると水という性質でありながら氷を操る。実はね、氷の魔法を扱う者はかなり少ない。
我が家は代々氷を司る血筋らしくてな。氷の魔術師が生まれやすい」
「お母様も二ブルム家の人なんだよね!」
「そうよ~レイヤさんが本家。私は分家ね」
「分家って何?」
「分家っていうのはね~」
ふーん。まぁ何となく知ってたけど家らやっぱ本家なんだなー
一応聞き耳を経てながらも本家や分家という意味は異世界チートで分かるので適当に聞き流した
「3人ともが氷属性の魔法かは確定ではないが、血筋により魔法の属性は遺伝するのが常だ。よくは知らないがそうらしい」
うん。俺の愛読書達にも書いてあった事だ
レイヤは知らないと言うが、色んな学説はがあった。どれも鮮明に覚えている
そして、俺の系統。それは既に理解している
発動はしていないが、出せるという所まではできているのだ
「普通は、青系統の色と言えば水を操るのが常識だ。現に家のメイド達も水を使っているだろう?水を普通に扱える者が氷を操る事は普通は出来ない」
確かに、メイド達が氷を出した所を見た事はない
いつも、飲み物が緩くなったら氷を作るとすればルーナだ
ルーナと、口ぶりからしてレイヤしか俺の周りで氷を使う事は出来ないのだろう
(ん?)
俺は一つ気になった
それをそのまま質問する
「お兄様は?氷魔法だったんですか?」
俺は兄アモンについて尋ねる
「えぇ。アモンも氷魔法よぉ~」
「そうなんだー」
俺はルーナの回答に相槌をうつ
質問した後で兄が火魔法とかだったら気まずいと思ったが杞憂だったようだ
とにかく、これで3人と
そして……
「よし。では魔力球を出すのと同じ感覚。しかし、魔力を可視化ではなく具現化するイメージだ」
よし!魔法発動の許可が出た!
やるぞぉ!
「なんとなく。自分が何の魔法を発動出来るかわかるか?」
「氷だよ!」
「氷だね」
「私も氷」
「そうか!!よかった」
「ええ、本当によかったですねアナタ」
「ああ」
俺を含めた教え子3人は同じ解答をし
それを両親は嬉しそうに話す
「では、3人とも魔力の球ではなく、氷の玉を出すイメージをするんだ」
氷の球を……手の上に……
俺は集中する
姉のシャーリーも繰気弾を撃つポーズに入っている
そのポーズを視界に抑えても今度は笑わない集中力を発揮する
「この魔力を具現化して属性魔法にするというのは」
「ハッ!」
「ウンッ!」
「タァッ!」
俺とミーシャと数瞬遅れてシャーリーが各々掛け声をあげる
「簡単には……いか…ない」
人差し指を経て解説をしていたレイヤは言葉を途中で尻すぼみにする
そして、ポツリと言葉もらした
「……流石だな」
レイヤに続いて
「え、ええ」
「ホント凄いですね…」
ルーナとマナも言葉を漏らす
その声は完全に呆れていた
3人の視線の先には
またやっちまったか?と困った顔をする俺と
目を逸らすミーシャ
その右手にはバスケットボールサイズの綺麗なまん丸の氷の球が乗っていた
そして、位置的には俺とミーシャの間
左右の魔法を発動した俺とミーシャを見て
orzのポーズのシャーリーがいた
(あーまたこの目だぁ…)
俺は3人に向けられた目を見て苦笑いをした
属性魔法についてはこんな感じ!
よぉぉし!次の設定行くぞ!
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