11話 安易な行動の結果と誓い 上巻
前回、次で終わると言いましたが前後編で切ることにしました
「おぃ!全員起こせ!」
「チッ、なんでここがバレたんだよ!」
「知るか!そんなもん!とにかくやべぇって!逃げるんだよ!」
「討伐隊はたかが数百だろう?全員が1人倒せば全滅するじゃねぇか」
「話を聞いてなかったのか!?封術のルーナと剣客のレイヤが指揮をとってんだよ!」
え?
「は?なんでそんなお偉い様がこんな真夜中に直々にくるんだよ?」
「知るか!とにかくこのままじゃ組織が壊滅する!さっさと荷をまとめろってんだよ!」
「お、おう!」
今レイヤとルーナって?言ったのか?
何やら辺りが騒がしい
「う……ううん…」
俺は重い瞼を上げて状況把握に務める
そんな俺の視界に写ったのは
慌ただしい山賊達の姿だ
誰一人として立ち止まっている者はいない
皆木箱やら何かが詰められた麻袋を運んでいる
(何だ?何が起きた?)
まるで、引越しでもするかのような慌ただしさだ
俺がその光景を目で追っていると
「アルマ!」
セレンディアがブロンドの髪を靡かせ
俺の元に駆け寄ってくる
「ケガは……ないよね。よし!」
セレンディアは1人で何かを納得した様に俺を抱き抱え
「行くよ」
とだけ、言うと走り出した
(うっ…凄いスピード)
これはうっかり落とされたらたまったもんじゃない
(てか、速過ぎない?)
この子50メートル何秒だよ
5秒超えてんじゃね?コレ
基地の通路は右側通行と左側通行が決められている用で衝突する事が一切なくスピードをカーブ以外で緩めることなくセレンディアは俺を抱えて走り続ける
そして、1分程だろうか?
走り続けたセレンディアは一息付き
すぐさま、目の前の扉を開ける
この部屋は…
「そうだ。奴らは麓からここへ向かってきている。ならば山を登るか東の森へ逃げ込むかしかない」
「しかしですぜ?はぐれる者が続出しやすぜ?」
「…全員無事に逃げ切る事が最善だが…やむ得ない場合は…」
「……そうっすね。全員死ぬよりはマシってもんすかね」
「そうだ。私は後ろを振り返らないよ
だから、私に何かをあった時は構わず見捨てな」
「はっ!それだけは、できねぇぜ。前の頭領の…血を絶やさせはしねぇ。俺たちは守るって決めたんだよリーンアンタを。」
「スティン…」
「俺もっすよ!」「俺も!」「オラもだ」「もちろんオイラも!」
「お前ら…ありがとう」
何なんだ?この光景
どこか今生の分かれの様な…
血を絶やさない……って言ったよな?
確か絵本に書いてあった
どういうことだろう?
いや、考えれば分かるはずだ
と言うよりは既に何となく察している
恐らく敵襲だろう
基地内の慌ただしさに始まり食料などを運んでいるのを見るに恐らく強敵。逃げの一手を決めたんだろう
そして、頭領である。リーンを守るとかそういう事だろう?
「セレンディア。待たせた」
「いいえ。この山賊は頭はリーン様です。私など下っ端に気を使われる必要はありません」
「ふっ、そういうのはよせ。アルマを一緒に可愛がった仲だろう?」
「そ、そうですね」
「ん?どうした?」
「いえ、幹部の皆さんが居るのにそんな大っぴらに言ってもいいのかなって…」
「ハハ。構わないさ。どうせ、みんな気づいてたんだろう?」
「バレてやしたか」
「当たり前だ。私を生暖かい目で見やがって」
「それは、幹部の皆が…いえ、奥様を知ってる皆がアルマを可愛がってる姿にリーン君と奥様を重ねていたんだ。」
「そうさ。姿が似てきたと思ったらいきなり母性本能を出すだもんな」
「そうそう!」
「クッ……お前らな///」
ホントに……なんというか
(いい人達だなこの人達)
俺は素直にそう思った
山賊に助けられて最初はどうなるかとも思ったが蓋を開けてみればそこには溢れんばかりの温かさがあった
俺は沢山の人に助けて貰った
だが、それだけじゃない
仲間がケガをしてきた時はすぐに仲間を治療してやる
何を言ってるのかほとんどわからないが楽しい話を常にしているであろう事がわかる事
そして、俺が今見た。リーンを想い慕う手下達の温かさ
果たして、滅ぼされて当たり前の存在なのだろうか?
(……そんなもん。決まってるよな)
俺は結論に至る、そして、自分に出来ることを考え始める
これは他人事ではない。おんぶに抱っこのままではいられない
だって、この敵襲の正体は俺の両親である可能性が高いのだから
俺は寝ぼけた頭ではあったものの確かにレイヤとルーナという単語を聞いた
もとろん聞き間違い可能性はあるし空耳かもしれない
しかし、父レイヤは分からなかったが母のルーナの名前の単語の前
封術のルーナとか言ってた気がする
封術とは本にも出てきた単語でルーナに掛けられた術とも一致する
という事は、封術とはルーナの事を指す2つ名みたいなものでは無いかと推測できる
となるとだ。何故、2人がここに来たのかと言うことになるが
(まぁ間違いなく俺を探しに来てくれたんだよな)
嬉しい。嬉しい……けど
俺はここのヤツらが嫌いじゃない。むしろ好きだ
緊張した面持ちで不器用ながらも俺の世話をしてくれたリーン
世話焼きのセレンディアに命を救ってくれたカラカラ
他にもたくさんの名前を覚え、何をしてくれたかを思い出せる
それくらい短くも濃密な日々であった
そんな彼らとこれまた実の家族で数日かけて俺を探しにきてくれた両親
喜びのあまり泣きだしそうだ。しかし、この涙にはこれから待つ未来への憂いも込められている
この後、十中八九惨劇が起こる
実の両親と俺を助けてくれた恩人達の戦いだ
「おい、どうした?アルマ」
「え、アルマ?どうしたのぉ?」
涙が出てきた
「うっぐ、うぇぇぇぇん、うぇぇぇぇ、ひっぐ」
「アルマが泣いたのは初めてだな」
「ええ、ずっといい子でしたから」
「まったく…賢い子なのかもな。これから起きる事を察したのだろう」
「泣かないいい子で、あんな難しい本を読むアルマなら不思議じゃないな」
みんなに暖かい目を向けられる
俺はそれを受けて更に悲しくなった
(俺のせいなのに……俺を助けたりするから…)
「さぁ方針を確定しよう。アルマを守る為にも、な」
「そうだな。俺達がいなくなったら頭領を将来守ってくれるナイトになるかも知れない有望な子だしな」
俺は山賊の重鎮だと見受けられるスティンに頭を撫でられる
「そういう事は、言うな…生きろ」
「ああ、死ぬつもりはねぇ」
「……生きてくれ」
「だから、死ぬつもりはねぇって」
「……」
「ほら、今後の方針を決めるんだろ?さっさと仕切れよ頭領」
「……わかった」
鼻を1啜りして
涙が溢れているのかもしれない目を拭った
俺の角度からは見えないがそんな気がする
「まずは、だ」
それから少し話が続く
この辺の地図だと思われる紙に赤いインクらしきもので記していく
そんな話し合いが10分程行われた
そこへ、
「敵襲です!早く逃げて下さい!」
男がドアをノックもせず足でこじ開けた様で勢い空き
開口一番に言った
「あ?うんなもん分かってるんだよ。だから、今敵が来る前に逃走経路を」
「来てるんです!もうこの基地に!」
「何?数百人規模の軍隊がそんなに早く雪山を登れる訳がないだろ」
「はい、乗り込んできたのは2人!1人は銀髪の女性!」
「もう1人は!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「「「!?」」」
ドアの向こうから男の断末魔らしき叫びが聞こえた
つまり、もうすぐそこに
ドアを開けた男はその断末魔の声の方向をみている
「や、やめてくれ」
男の顔は明らかに怯えている
声を震えている
「き、切らないでくれ!頼むよ!」
男の声を聞き届けたであろう侵入者
その男は返答する
ザシュッ
男に剣を1振り
鮮血を散らすという無言であろうとも明確な意思表示をした
姿はまだ見えない
しかし、俺は確信している
この魔力を俺はしっている
抱き抱えられほっぺにチューをされた時や撫でて貰っている時に微かに流れ込んできた魔力
今感じる魔力は微かに感じるなんて生易しいものではない
肌がヒリつく様な荒々しい魔力。魔力による威圧なんてものがあるとしたらこれの事だろう
その荒々しき魔力の持ち主
それは
「!……アルマ」
レイヤが俺の名を呟く
「え?」
そして、それに反応するリーン
「今助けるからな」
「一体……何を?」
俺以外に敵意を示す父レイヤと
俺を抱き抱えて動揺するリーン
そして、レイヤの気に当てられ退治するのがやっとで声なんてほとんど耳に届いてない他
と俺
という構図ができる
そして、静寂は数瞬の間に終わりを告げる
ザシュッ
切られた男は声も発せなかった
レイヤは俺の視界から外れる速さで動き幹部の1人の首を跳ね飛ばしたのだ
「その子を渡せ。女盗賊」
そしてレイヤはリーンの首筋に剣を向けて
「妙なマネはするな?その子をゆっくりと床におけ」
今までに見たことのない父
その冷たい目に俺は驚く。そして、それを向けられたリーンは
生唾を飲む
その音を俺は確かに聞き取った
やっとここまでという感じで、続きの創作意欲はあるものの忙しくて書けない日々が続き辛い
遅筆で申し訳ないですが、付き合ってくれる人はブックマークお願いします。評価や感想など貰えると大変嬉しいです