9話 頭領と推測
お待たせしましたー
「頭領?」
「ん?あ····起きたようだね」
「へ、へい。つい先程」
「どうだ?様子は?」
「へい。特に問題ありません。泣くかと思い色々準備はしてたんですがどうやら必要ないようでさぁ」
「そうか。しかし、準備は怠るな?泣いたらやかましくて寝れたもんじゃない。常にアジトには寝ている奴がいるんだからな」
「へい。巡回の交代制は把握してやす。オイラ達が寝ている時も他のヤツ達が面倒見ることになってやす」
「そうか…その…お前らは子供が好きなのか?嫌いならアタシが変わってもいいぞ?」
「いえ!お気になさらず!頭領の手間はとらせやせん!拾ってきたオイラは勿論。なんだかんだアイツら二人とも好きみたいでさぁ」
「何だかんだで可愛いですからねー」
「お、おい!俺は好きなんかじゃッ!」
「そ、そうかい。交代するヤツは?お前達が寝ている時は私がって手も」
「へい。問題ありやせん。子供好きな3人を集めてやす。それに、1人はセレンディアでやす」
「セレンディアか…あぁ確か」
「そうでやす。借金で家を取られて母親が死んでからウチに入った女でやすが、その母親が子守りを仕事にしてたらしくて団員內で1番の適任だと思われやす」
「…そうかい」
(落ち込んでる?)
俺は一連のやり取りを眺めていた
必死に言葉を理解しようとしているが早口な為上手く聞き取れない
つくづくまだ勉強が必要だと言う事が理解できた
そんな俺を他所に話は進んでおり
「何かあったらアタシに言えよ?」
頭領と呼ばれている女性は立ち去ろうとして踵を返した
「はぁ···」
というため息を残して
俺はそれを見て思い出す
(あ、俺の本!ドンって人の部屋にあるって言ってたんだ!)
「ドン、待って!」
「え?」
俺の声に驚愕の表情で振り向く女性
「こら、坊主。頭領は忙しいんだぞ?」
男が邪魔をする
ホントに邪魔だ!これだけは譲れない
あの本を読み進めれば今の状況が知れるかもしれないんだ!
「ドン!待って!」
「よしよし。いい子だから。オイラ達が遊んでやるから、な?」
俺の頭を撫でながら「遊ぶ」という男
(違うんだよ!)
俺は必死に暴れる
そんな、俺を見て
「離してやれ。カラカラ」
「へ、へい」
「何だ?えっと…おい、この子の名前は何に決まったんだ?」
「へい。色々考えてたんですがこの子が自分で名乗りまして」
「え?この子がか?」
「へい。アルマって言うそうでさぁ」
「へーアルマかぁ~そうかぁ~」
俺を見る頭領の顔はニヤニヤ顔だ
俺から離れた男は少し後ずさっており他2人の位置関係もドンからして背中しか見えていない位置だ
つまり、俺だけに見せている顔という事になる
「よし、どうしの?アルマ?」
物凄い猫なで声で話掛けてきた
俺は聞き取る事ができたので、要件を伝える
「本、返して」
「本?」
「へい、この坊主が持ってた赤くて分厚い本でさぁ
この子さっきもほんの事を言ってて大事なもんらしいんでさぁ」
「あんな難解な本を?」
「そんなに難しいんですかい?あの本」
「あぁ。あの本の内容は一般の授業のレベルを超えているね
それ以上アタシにもわからないね。アタシはできるけどあんた達魔力の流れなんか感じられないだろう?」
「は?魔力に流れなんてもんないでしょう?」
「あるんだよ。しかし、それも当然だそれを理解している人族はほとんどいない。ほとんどの人族は感じられる程の魔力を持っていなかったり、持っていても感じるという工程を得なくても魔法は問題なく詠唱を行えば出せるから気にもしない奴が多いんだろう」
「へい、よくわかりませんが相当難しいんだと言うことは分かりました」
「はぁ……全然わかってないな?」
「すいやせん」
「まぁいい。とにかくあの本は絵本の類じゃなく。私やましてやお前達が理解できる代物じゃないってことさ」
「「「へぇ~」」」
(何言ってんのかわかんねー)
相変わらずの早口だ
魔力、流れ、本などの単語が聞こえたから本についての事を言っていたのだと推測はできるが理解には程遠い
(むぅ…気になるなぁ)
そんな俺を見て
「か、かわいすぎだろぅ…」
なんか褒められた
もちろん。俺の顔が見えているのはドンだけなのでもちろんその人だ
「お前らの相手なんかしてられん!本だったな!すぐ取ってきてやる!」
「頭領!場所さえ言ってくれりゃ!俺が取ってきやすぜ!」
「いい!アタシが行く!」
そう言うとドンは立ち上がる
「好感度上げるチャンスを逃してたまるかよ…」
と何か小声で呟くと走りだした。
小走りではない。かなりのスピードの奴だ
(ドンってなんでこの賊にいるんだろう?普通の少女にしか見えないんだが)
そんな疑問を浮かべる位には若く
奇妙な事だった
そんな事を考えているとドンが帰ってきた
もちろん疾走している
「ゼェゼェ。持ってきたぞこれだな?」
確かに俺の愛読書だ
俺はその本を受け取る。無言ではバツが悪いので
「ありがとう」
と言う
「ふへ!?今ありがとうって言ったか!?」
何やら口元をニヤニヤしながら尻もちをつくドン
「へい。この坊主ある程度言葉を理解出来てるみたいでさぁ」
男の言葉を聞き疑問の表情を浮かべるドン
「は?どう見ても1歳か2歳だろ?言葉を理解している訳ないだろ」
「いや、でも現に今お礼を言われましたよね?」
「あぁ…そうだな。…ホントかよ。スゲーな」
何やら俺は奇異の目で見られている気がする
ドンが現れる前にも1度同じ目をされたぞ…また、やらかしたか?
このドンという女性は中々に賢そうだ
て、事は
「もしかして、この子」
危険分子として殺される!?
「天才なのか!」
「「「オレ(アッシ)達もそう思います(やす)!」」」
あ、大丈夫みたいだ
俺は都合の良い返事を聞き届け
早速、本を捲る
そんな俺を見て
「え、本読んでんのか?」
「みたいでやすネ」
「ページを適当に捲っているだけなんじゃないか?」
「そう、だよな」
俺は見られている
しかし、特に気にせずに本を読み進める
原因を探すんだ!
……
…………
………………
そして、3日が経ち
「見つけた!」
「「え?」」
俺の声に反応した2人なんて俺の耳には入らず
読書の成果にテンションを上げて、同時に反省するのであった
一つ報告があります
前話冒頭で頭領をお頭と呼んでいた男がいたはずです。あの男がアルマを持って帰ろうと言った人物なのですが
他の山賊と違い目立たせようとしてして他のメンバーとは違う呼び方にしようと思ったのですが紛らわしいので頭領に統一します
その代わりにアッシとかでやすとか頭領に変な敬語を使っているのがアルマを拾った山賊という事にします
ブックマーク、評価などよろしくお願いします
この話はドン(名前は次話)の人物像をピックアップした話でした
そして、次回赤ん坊編は大きく動きフィナーレへと向かんせます!
良ければお付き合い下さい