傭兵編2話
翌日、軍上層部の演説があるという事で早速夕方に召集がかけられた。
かなり人数が多いが、内訳は傭兵3万と正規軍7万強の混成部隊となっているようだ。
ライン王国は魔術師の育成が盛んで、魔術によるモノの加工法・魔工技術が高い。その他科学面にも力をいれている技術国家であり、様々な国と隣接した位置にあるため交通の要所としての役割を持っている。
かつて名だたるアヴェロン帝国と領土を巡り大会戦を繰り広げたが、陸軍が大打撃を受け大敗を喫した。現在国力回復を望み帝国との再戦に向け牙を研いでいるところ、帝国側にけしかけられてしまった。そのため急遽対応する事になったものの、如何せん兵力が全く足りていないため傭兵派遣を余儀なくされたとのこと。
アヴェロン帝国は新興国家のため領土拡大を目論見、既に一度大勝を喫しており勝算も十分なライン王国を一気に畳み掛けようとしているらしい。
と、言う事をオスカーに説明してもらった。
オスカーというのはたまたま隊列を組んだときに隣になった男で、本名はオスカー・フォルックスと言う。
アヴェロン帝国からの流れ者らしく色々な事を知っており、鋭い眼光から冷酷な印象を受ける男だ。
オスカーにこの世界の状況について伺っているうちに伝えられた時刻を迎えたが、いっこうに演説は始まらない。周りもだんだんとイライラしてきている様子が伝わってきた頃、突然スポットライトが壇上を照らし、行進音楽と共に勲章をいくつも付けた軍人と憲兵が壇上に登った。会場の注目は一気にその軍人に向けられた。しかし軍人は喋らない。ひとしおに高まる注目をよそに、数十秒後軍人はゆっくりと口を開いた。
「現状、ラインには兵力が足りていない。ラインは勝利を求めている。かつて我々は、ラインは敵に対して大敗した。あの敗北はラインに大きな黒い影を落とした。あの敗戦でラインは明日のパンにも困るようになってしまった。この状況は危機的である。これは誰の目から見ても明らかである。ラインが持ちうる資源もアヴェロンの連中に奪われてしまった。奴等の蛮行によって全てが奪われた。ラインは今、降り下ろされようとしている鉄拳だ。ラインが今、奴等に一矢報いてラインの国土を取り戻すのだ。ラインの国土を。ラインの資源を。そのためには総力戦が必要不可欠である。諸君らは総力戦を望むか?ラインのために全てを差し出し、ラインのために命を賭す覚悟はあるか?否か?ラインはこの戦争に勝利しなければならない。諸君らは今、敵の攻勢を遥かに越える一騎当千の兵士だと我々は信じている。ラインは諸君らの活躍に心底期待している。諸君らの活躍によって、ラインの国土を取り戻しラインの復興と栄光への礎となってもらいたい。今、諸君らとラインはもはや一心同体である。ラインと共にアヴェロンの蛮族を打ち倒し、共に勝利を祝おうではないか。勝利の女神は我らに付いている。勝利に!」