学院とレイナ
やっとバトルじゃない部分のスタートの第12話です。
翌朝、俺はとても良い夢を見た。
透き通った海、真っ青な空、砂浜の上を俺と共に走るのは隣に住む少女。
おいでおいでと俺の名前を呼ぶ。
そして急に足を止め、後ろで手を組みながら振り返る。
リヒトー!はーやくー!
と、可愛い声で俺のことを呼ぶ。
ちょっと待ってくれー!
俺はそう言いながらも、笑顔で彼女の元へと走って行った。
リヒトー、リヒトー······
「リヒト!ねぇ、リヒトってば!!」
ハッと目が覚めた。
ガバッと起き上がりベットの側を見ると、そこには学院の制服姿のルルナが立っていた。
え?!は?!何でここに?!
「あの〜ルルナさん?何で俺の部屋の中に?」
俺がそう聞くと、ルルナはハァ〜………っというため息の後に、
「あのねぇ、時間になっても出てこないから何回も連絡したんだよ?それでも出てこないから、管理人さんに合鍵貸してもらったの。それで入ったらまだ気持ち良さそ〜に寝てたから、叩き起こしたの。」
ルルナは『あっきれた………』とでも言うようにそう説明した。
「誠に申し訳ない………。」
と頭を下げると、
「よろしい。今後は気をつけるように!」
と、まるで教師のように俺を叱った。
その後、ルルナはおもむろに部屋を見回した後、
「それにしても、何?この部屋は?」
ルルナがそう口にするのも無理はない。
3LDKの部屋に敷き詰められた家具の他に、部屋に散らばってる服や、パンパンになったゴミ箱、それにコンビニの弁当や出前をとった食べ物の残骸。
いかにも一人暮らしに慣れてない人間の部屋だった。
ルルナは再びハァ………とため息をつくと、
「その様子だと、まともに食事もしてないでしょ?キッチンも見させてもらったけど、料理した形跡が無かったし。」
うっ……………!
図星だ。
「じゃあ、今日からご飯は私の部屋で食べるわよ。」
はい…………。はい?え?!今なんと?!
と、驚いた表情を見せていると、
「部屋同士の移動で外を経由するのは面倒だから、そこの壁に穴を開けて繋げるから。そうすれば朝ご飯も夜ご飯も食べれるし、何より起こしに行きやすくなるでしょ?」
「それってつまり………!」
と、期待を込めて聞くと、
「ほら、そろそろ支度しないと間に合わないよ。続きは放課後に話そ。」
そう言ってルルナは俺の部屋を片付けてくれた。
天使だ………!
なんて事を思いながら、俺は寝間着を脱いで制服に着替えた。
リビングに戻ると、 昨日の夜とは比べ物にならないくらいにキッチリと片付いていた。
「本当にありがとうございます。」
と敬語でそう言うと、
「純粋に綺麗好きなの。それに、私の部屋と繋がるのに、汚かったら嫌でしょ?」
本当に感謝しかない。
俺達は他愛のない話をしながらマンションを出て、学院へと向かった。
中央新都魔術第一学院
そこは高い魔術の授業と、魔族に関する知識を学ぶための学校。
“魔術教書origin”に記録されていた魔術を解析し学業に初めて導入した、人類側の中で最も魔術に関する学びに長けた学院である。
現在、在校生はのべ1000人。初等部1年から高等部3年まで、様々な生徒がここに足を向け、そして魔族に対する知識を学ぶ。
そんな学校に転入して来た俺は、まだ慣れないながらも教室に向けてルルナと歩いていた。
すると、
「ルールーナー!!」
という声と共に、ガバっとルルナに抱きついて来た人影。
髪色はベージュ、ポニーテールに髪を束ね、目の色は透き通った青。
「おはよ、レイナ。」
レイナと呼ばれた少女は、
「うん、おはよ!あれ?この人は転入生君かな?」
と、俺を指して言った。
「あ、はじめまして。今月転入して来た、リヒト·アルテミスです。よろしく。」
「アハハ、知ってるよー。だって同じクラスじゃん。」
あれ?そうなのか。
全然顔を覚えてない………というか転入初日から入院してたから、誰か分からなかったからな。
「じゃあ私も自己紹介しとこうかな?高等部1年、レイナ·エレメスだよ。よろしくね、リヒト君。」
と右手を出してきたので、俺も右手を出して握手をした。
「それでぇ〜?」
ニヤニヤしながらレイナは聞いてきた。
「二人はどういう関係なのかな〜?」
「ゴホッ!!」
っと、お茶を飲みかけていたルルナがむせた。
「げほっ!えほっ!!」
「あぁ〜ルルナ、ごめんごめん。」
とルルナの背中をさすった。
「飲んでなかったから良かったけど………レイナぁ〜??」
と怒りを込めた口調でレイナを問い詰める。
「だからごめんって。いやだってさ、普通気にならない?親友と噂の転入生君が朝から一緒に登校って、絶対何かあると思うじゃん?」
まぁ………その気持ちは分からんでもないな。
「住んでる部屋が隣なのよ。それで、リヒトは朝が苦手らしいから、私が起こしに行くって事になった訳。」
「なるほどね〜。だから一緒に登校してるのか。」
納得してもらえて何よりだ。
「まぁ、授業が始まるまでまだ少しあるから、教室へ向かいながら話そ。色々聞かせてもらいたいしね?」
と、またニヤニヤしながら言ってくる。
こっちを向いたルルナの表情には、『こういう子だから諦めて』という感情が見て取れた。
そして俺とルルナは先に歩いて行ったレイナを追って歩き出した。
二人目のヒロインの登場です(*´∀`)