邂逅
プロローグ
目を開くと、真っ白い空間にいた。何もない、辺り一面白い海。
まるで雲の上にでも来てしまったかの様な光景に、俺は圧倒されていた。
今の自分はどんな状況なのだろうか………うぅむ……思い出せない。
下を向いて自分の姿を確認すると、白いローブと、いかにも神聖そうな雰囲気を醸し出している服が目に入った。
ふと気になって隣を向くと、右隣に同じ格好の少女がいた。
年は15·6位だろうか?可憐で可愛い……。
でもなんでだろうか?彼女は僕と関係ないという感覚はしなかった。むしろ、自分にとってかけがえのない人物だと感じる。
ねぇ、君は……
そう言いかけた瞬間、
「やぁやぁはじめまして。君達が今日から新たなる神となる人達だね」
と、唐突に声がした。
声の方向に振り返ると、そこには短髪で赤いローブを纏った天使がいた。
誰だこの娘?見たこともないけど……
「色々聞きたいことはあるかもしれないけど、まずは自己紹介。僕の名前は“司記憶神ムネモシュネ”記憶と精神を司る神様だよ」
えっ……か…神様…?!
「うん。そう、神様」
そのなんとも拍子抜けな反応に、隣の少女と顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。
すると神様……もといムネモシュネはわざとらしい咳をした後、
「まぁともかく、本題に入ろうか。君達は今日から最高神様に選ばれ、神様となるよ。僕の後ろの門をくぐったら、そこはもう神の国だ。それにあたって、君達二人にはある義務と権利が与えられる」
義務と権利?何だその政治みたいなルールは…?う〜ん、条件次第なら呑んでもいいけど、君はどう思う?
隣の少女に問いかけると、彼女は微笑みながら無言で頷いた。
わかった。教えてもらえる?その……義務と権利ってやつを。
「理解が早くて助かるよ。まずは義務から。コレは僕の力によって君達に前世の記憶と経験を、今の体に与えること。そして権利、コレは君達には、何か一つだけ、僕に質問をする事が出来る。たったこれだけ。うち一つは僕の仕事だしね。簡単でしょ?」
確かに。この条件なら俺達でも受け入れられる。そういえば、なんで俺の存在があるのか分からなかったので、知りたかった所だ。分かった、早速お願いしてもいいかい?
「OK。それじゃあ、君達の生きていた頃の記憶を僕と共に見に行こうか」
こうして俺達と神様を名乗る少女の3人で白い光に包まれていった。
暗い森の中、一人の少年が息を上げながら駆けていく。少年の髪は燃えるように赤く、衣服の所々に炎が渦巻いていた。
辺りを仄かに照らしながら森を走る少年の視界の先に、大きな樹木が見えてきた。数千年もの間、世界の中心として立ち続けてきた木。いわゆる神木だ。
だがその神木にも、今は返り血がこびり付き、深く抉られた傷や焼け跡などが至るところに残っている。だが、少年の視界には、神木など入っていなかった。
神木の傍らに体を委ねる様に倒れている少女に、その視線は行っていた。
彼女の体には無数の傷跡、そして、彼女のものだと思われるおびただしい量の血が地面を赤く染めていた。
「どう……して………?」
その質問は誰からの返答もなくただ森の暗闇に吸い込まれていった。彼女との思い出が脳内をよぎる。瞳には涙が溜まり、彼女の声が、うるさい位に頭に響いた。
そして少年は嘆いた。
未だに戦火の止まない暗い森の中でひたすら声をあげた。涙で顔をグシャグシャにしながら、彼女の体を抱き上げる。当然ながら、心臓は動いていなかった。
「なん…で……!何でなんだよ!何で俺達はこうならなきゃならない!何で……死ななきゃならないんだよっ!」
少年の叫びは、夜の戦火の中に消えていった。
「こんな世界なら………変えてやる……!彼女を救うためなら……どんな犠牲だってはらってやる!」
そして彼は、神木を中心とした“黒永型魔法陣”を作成し、その中に少女を抱えて入った。
「我、黒より黒き者に命ずる。己が力の全てを結集し、かの世界を塗り潰す理となりたまえ。礎は世、返す物は時。我が腕の中に眠る者を、我が命と同調とす。刻限は規則なり。廻れ!黒刻繰返術式、バンキッシュ·エヴァーリム!」
少年の呪文と共に、神木及び魔法陣が黒く輝きだした。
少年と少女は、魔法陣から発生して黒き塵の竜巻に飲まれた。段々と感覚が消えていく中、少年は、
「ハァ…ハァ……。これで…いいんだ………。……待っていてくれ。俺が運命なんか変えてやる。いつまでかかっても、必ずお前を……救ってみせる…!」
その言葉と共に、二人の存在は完全に消滅した。
いつも通りの朝だった。窓からさす朝日も、小鳥のさえずりも、何もかもがいつも通りの朝。
「また………あの夢だ……。」
最近よく見る同じ夢、悲しき少年と少女の物語。
朝目が覚めると必ず涙が出てきてしまう……。
少女は起き上がり、寝ぼけた頭を何とか回転させながら着替え、家を出ていつもの石畳の道を歩いていった。
朝日で目が覚めた。見慣れない天井、見慣れない配置の部屋。
「あぁそうか…引っ越したんだった…」
中等部でのお勤めを終えてから今月、俺はこの街にやってきた。
「今日から新しい学校……制服何処だっけ…?」
そして少年はベッドから起き上がった。朝食を食べ、新しい制服を何とかクローゼットから見つけ出した。俺ってやっぱり整理整頓が苦手だな…と改めて深く思った事にため息をついた。そうして少年も家を出て、石畳で出来た道を眠たい目を擦りながら歩き始めた。だが、最近よく見るあの夢は一体全体何なんだろうか?妙に少年の性格が似てると感じてしまう………。まぁいいや。どうせ関係のない事だ。多分何処かで聞いたか見た話が夢に出ているだけだな。
そうして少年も、順調な足取りで学校への道を歩いていった。
時は32年、光年6月14日。ここから始まった物語は、時を越えてなお続くものとなるだろう。この日に出会う2人の少年少女は、己の運命にのまれ、やがて語り継がれる大戦争“光陰のラグナロク”へと走っていくーーーーーーー
はじめまして!天宮 美玖と申します!初投稿なのでプロローグですけどかなり短くなってしまいました(すみません)。初心者なので、その辺は大目に見てほしいです。完全に自分の趣味で書き始めたものなので、たまに見ようかな?程度で読んでもらえると助かります。これからよろしくお願いしますね(≧▽≦)