後編
(前編の続き)
四回戦前日。
僕は色々思い出していた、うっとり。
生まれてからの事、人見知りの対人恐怖症だった時の事、マリアに会ってからの事、そして、漫才の事を。
僕は眠れなかった。もっちゃり。
緊張しているというよりも、漫才が出来るのが楽しみで目が冴えきっていた訳です、神様。初めからこの四回戦が鍵になると思って生きてきた、こってり。
この四回戦を突破出来ればきっと・・・味噌ラーメン(意味不明、ただ作者がこの時間に食べたくなっただけ)。
色々な思いが去来して、駆け巡る、か弱い僕の頭を。
もしも四回戦を突破したのなら、マリアに聞いて欲しい事があるんだ。本当の事を。
「マリア、明日、頑張ろうな。遅刻するなよ」そう一人口元にゴニョゴニョ呟いて、また、漫才が大好きな事に気付き、眠れぬ夜を・・・。
「チュンチュン、チュンチュン・・・」小鳥の鳴き声だ。もう朝か。・・・時計を見るともう待ち合わせの時間じゃないか。そのまま、家を飛び出した僕は、急いで待ち合わせ場所に向かった。これは何かの歴史に残る由緒正しき速度と誠実さであろう。
ごめん、マリア。あれだけお前に遅刻するなとかべしゃっといて、己自ら遅刻の魔の手に陥るとは・・・何かすいません、と涙を流しながら待ち合わせ場所に・・・。確かに、ここが友愛の情で契りを交わした、約束の待ち合わせ場所のはずなのだが・・・。まったくもって喜べない類の奇跡が今起きているとでもいうのか。僕はその生き証人であろう、なんとマリアがいない。
すると、我の背後から「遅刻するかもー。モー、モー」と、マリアが闘牛の如く猛スピードで走り向かって来た。あわよくぶつかりそうになるが、闘牛士の如く彼の火照ついた肉体と魂をいなし制した。
「完全に遅刻しているだろー」と、常連ツッコミを撫でつけながら、時間がないので急いで僕等は、会場とは別の・・・
「そっちは今来た道じゃないかよ、会場はこっちだ」と、心臓が飛び出しそうなのを押さえながら、愛と学びのある導きのツッコミを入れさせていただき・・・。どうでもいいから会場に行くぞ。
案の定、恒例となった、透明人間漫才が繰り広げられている。それは幻やデジャブなんかじゃない。誇れる現実の果実。それを見て笑うマリアと、どうにか間に合った事に笑う僕。イカれちまうには早過ぎる。
一気に一歩でステージを駆け上り、メソメソと漫才を始めた。
〈ボクシング〉 a:冗談 b:マリア
a:紙飛行機は、何故フラフラするか知っていますか?
b:紙で出来ているからだろ。
a:惜しい。パイロットがいないからなんですよ。
何故パイロットがいないか分かりますか?
b:紙で出来ているからだろ。
a:惜しい。客が乗っていないからなんですよ。
このように、世界は持ちつ持たれつの関係で成り立っているんですよ。つまり愛。
b:鳥はパイロットがいなくてもフラフラしてないぞ。
a:スーッと飛んでいるのは、誰かが見ている時だけなんですよ。あれは一種のサービスなんです。誰も見ていない所では、フラフラ、オドオド、フラフラ、オドオドのオンパレードですから。だってパイロットいませんもの。
b:本当かよ?
a:全ての生き物は孤独では生きられない。だから寄り添い合い支え合っていたいんです。特に人間は・・・。
(コントに突入)
a:シュッ、シュッ、シュッ・・・。
b:ボクシングの練習ですか?
a:いいえ、乳搾りの練習です。
b:牧場の牛の乳搾りですか?
a:いいえ、妻の乳搾りです。
シュッ、シュッ、シュッ・・・。
b:ストイックですね?
a:子供が生まれたんですけど、母乳が出なくて困っているんですよ。
b:そうなんですか。
a:だから、頑張っていこうかなって、思っている訳なんですけれども・・・。
b:頑張っていこうかなって、思っている訳なんですけれどもって、あんたガリガリじゃないか?
a:別に減量している訳じゃないんですよ。心配で食事が喉を通らないもので。この大量の汗も冷や汗でして・・・。ボクシングの練習に見えましたか?
b:ええ。
a:実はね、僕、ボクシングの練習してないんですよ。
b:ええ、先ほど聞きました。
a:でも以前はよくしていたんです。僕さー、ボクサーだったんですよ。
b:そうですか。
a:だから妻の乳搾りも得意だと思っていました。でも全然出なくて・・・。
b:乳搾りは力じゃないんだよ。それにそんなに強く引っ張ったら、乳首がコリっと取れてしまう。それは時間の問題だよ。乳搾りに必要なのは愛なんだよ。
a:愛ですか・・・。どうすればいいんですか?
b:搾ってみろ。緩急つけて。左、右、左、右。今度はコンビネーションだ。よし、いいぞ。そこでカウンターだ。
a:指導するの上手ですね?
b:昔なー、ボクシングのトレーナーをやっていたんだよ。いいから休むな。手出せ、ジャブ、ジャブ、もっと本気で来い。
a:本気で胸借りてもいいですか?
b:ああ、胸と言わずに、乳を借りていけ。
a:はい。
b:あー、いいぞ。もっと優しく繊細に。宇宙を感じろ。あー、出るはずもないわしから母乳が出そうだ。
a:何も知れない人から見たら、とんでもない変態野郎共ですね。
b:世間の目に負けるな。集中しろ。あー、あー、あー・・・。
お前、どんだけ山を越える気だ。才能あるよ。
a:ありがとうございます。早速家に帰って、妻をKO(こんなにお乳出た)させてきます。
b:行ってこい。
a:最後に一つ聞いていいですか?
b:ああ、一つ聞いて十を知れ。
a:最近よくここで会いますよね?
b:偶然だ。
a:そうですか。
b:生まれた子供は女の子か、それとも男の子か?男の子だろ?
a:・・・女の子です。
b:そうか、女の子か・・・。
a:すいません。ボクシングは教えられません・・・。
b:なあ、もう一度わしと組んでチャンピョンを目指さないか?
a:チャンピョンですか?・・・昔は僕も必死で目指していました。でも子供が生まれて、安定したお金が必要なので、ボクシングは止めました。それにチャンピョンになれるのは一人だけ。それは孤独です。一人になるよりも、僕は家族と一緒にいたいんですよ。
b:孤独なのはチャンピョンだけじゃない。才能のある選手に巡り合えないトレーナーも同じ事。トレーナーを辞めた後も、つい探してしまうんだ、才能のある奴を・・・。わしがここに来るのは偶然じゃない。見つけてしまったんだよ、お前というダイヤモンドを。
a:僕はダイヤモンドなんかじゃない、れっきとした人間です。
b:そんな事は分かっている。ただわしにはダイヤモンドに見えてしまうんじゃよ。
a:どんな目をしているんですか、異常ですよ。
b:わしの目に狂いはない。お前はチャンピョンになれる人間だ。わしと寄り添い合えばチャンピョンになっても寂しくないだろう?
a:そんな趣味はありません。妻と寄り添い合って子供を増やします。
b:そんな事を言っているんじゃない。わしはもうお前というボクサーを支えていく覚悟を決めたんだよ。
a:昔ならあなたを見た瞬間に分かったはず、名トレーナーだって。でも今の僕にはあなたがただのセーター位にしか見えませんよ。
b:からかっているのか、この野郎。
a:もちろん。
b:ふざけるな、この怒りの鉄拳でもくらえ。
a:うわー、やられた。おじさんの勝ちだ。だからおじさんがなりなよ、チャンピョンに。
b:夕日は沈んでいく。わしは首にかけたタオルを投げずに、そっと涙を拭いた。次のラウンドこそ・・・。わしは諦めない。
僕等は最後までやり遂げたんだよ、諸君。二人ともパジャマ姿のままで・・・涙。
結果なんてどうでもいい訳じゃないけれど、どうでもいいと思える位に楽しく漫才が出来た。うーそじゃないよ、ほんとーうに。
僕は壮大な達成感に包まれていた。香しい。
なのに、聞いておくれよ。マリアときたらさ、浮かない暗黒顔をしている。香しくないよな。
「どうしたんだよそんな顔して、せっかくいい漫才が出来たのにさ」と、僕は気になるもんだからマリアに聞いた。変な答えだけは止・め・て・よ・ね。
「・・・パジャマ姿、恥ずかしい」
「今更かよ」と、大いに呆れもてあそばれる僕。もしかしたらパジャマ姿の方が伸び伸び漫才出来るんじゃないかと、変な思想を持ち始めていた自分の尻を叩いてやりたい気分さ。辱めておくれ、愛のムチで。
まあ、何にせよ、僕等はやったんだぞーーーーーーー。ありがとうマリア。結果なんてどうでもいいさ。お前とこんなにも楽しく快楽漫才出来たんだから。漫才中毒の患者である事を今ここに誇れよ。なあ、マリ・・・マリアが倒れている。ピーンと、針金みたいに、または棒の様にボーと伸びて、伸び伸びしている。
「大丈夫か」
「ZZZ・・・何で起こすんだよ」
「寝るなー」と、頬に甘くツッコミ、緊張感も皆無になったところで、四回戦の結果発表が行われたぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーうさん。
こんにちは、宇宙、僕等は今、星が綺麗に見える誰もいない場所にいる。
そして、僕等はグシャグシャと語り合った。
初めてマリアに会った日の事を。それに修学旅行や卒業するぞ君の事。バレンタインディや結婚式、卒業式や火事騒動、老人ホームや引っ越しのバイト、そして、マンザイグランプリの事を・・・。時間が過ぎるのも忘れて、この瞬間に。
「なあ、マリア。聞いて欲しい事があるんだ」
「何?」
「実はさあ、マンザイグランプリに出場した理由なんだけどさ」
「ああ。優勝して、賞金1000万円貰ってお母さんを助けたいんだろ」
「ああ。絶対笑わすの前で漫才をするチャンスでもあるし」
「それにまた、卒業するぞ君に漫才見せられるもんな」
「ああ。だけどそれだけが理由じゃないんだよ」
「パジャマ姿になりたかったからか?」
「そうじゃなくて。実は僕のお父さんの事なんだけど・・・」
「そういえば、冗談は自分のお父さんの話をするの避けていたよな?」
「うん。実は僕のお父さんは家を出て行ってしまったんだ」
「へー、散歩か?」
「違くて。きっと他に女の人を作って、お母さんと僕を残して出て行ったんだ」
「お前達もついて行けば良かったのに」
「ピクニックじゃないんだから。それにね、僕はお母さんの本当の子供じゃないかもしれないんだ」
「・・・」
「お父さんが出て行ってから、僕等は貧乏だし悲しい事がいっぱいあったんだ。でも、その度にお母さんが得意の作り話を聞かせてくれて、僕が今ネタを作れるのも、きっとお母さんの血が流れているんだって、信じたい気持ちもあって漫才をしているんだ」
「俺は信じているよ」
「ありがとう。でもいくら楽しそうに振舞っていても、お母さんはどこか寂しそうで、きっと心の中でお父さんが帰って来るのを待っている気がするんだ。またみんなで暮らしたいって願っているはず。・・・少なくとも僕はそう願っているんだ。だから、どんなお父さんであっても、もう一度一緒に暮らしたいんだ。もし僕がテレビで漫才をして、お父さんに呼びかけたら、きっと戻って来てくれるはず、そう思ったんだ。これがマンザイグランプリに出場した本当の理由さ」
「俺が出場したかった理由と同じだな」
「ふざけるなよ、アハハ・・・」
そう言って、僕等は笑い続けた。寒空の下パジャマ姿の僕等は寄り添って・・・。この世界に愛があるのかと嘆く人よ。あるよ。愛はここにあるよ。
決勝進出おめでとう。そして、ありがとうマリア。
12月24日、クリスマス・イヴ。
街は華やかに彩られ、人々の悲しみを掻き消す様な温かい雰囲気に包まれていた。まるでそれは漫才の様に、どや。
そして、空からはクリスマス・イヴに相応しく、雪のプレゼントが贈られた。・・・あなたはいくらで買いますか?
マンザイグランプリの決勝戦がとうとうやってきた。・・・あなたの為に、きっとそう願う。
僕はマリアの美しくも完璧なまでの遅刻を、はみ出て踊る尻毛の様に気にしていたが、意外にも、僕よりも早く待ち合わせ場所に着いていた。信じられますか?
しかも、いつになく真剣な表情で・・・というよりも顔色が悪い位に、どす黒くてカチカチの顔をしている。信じられませんよね。
「大丈夫かよ、そんな顔芸してさ。これから漫才をして人を笑わせるんだぜ」
「はい、はい、漫才すればいいんでしょ、漫才」と、ガチガチではない事をアピールするけど、ガチガチに緊張している様子のマリア模型。今日に限って何の真似?
真逆に僕は、この前マリアに全部を打ち明けて以来、ずっと落ち着いていた。モデルの決めポーズの様に、勇ましくもあるぞ。
「この前言った事は気にしないでくれよな。ギャグだと思ってくれ」マリアを落ち着かせる為の本音を、ゴロッとこぼす僕は、子供だけど大人。
「笑えないギャグかますなよな」そう言って、マリアは鼻血の交った鼻水を垂らした。しかもブワッと泣きながら。
「・・・本当に大丈夫かよ?」
「大丈夫だよ。だって今日はマンザイグラン、プリッだろ」そう言いながら、クリスタルに艶めく尻を出すマリア。これがまた似合うんだな、尻王子。
「逆に心配になるよ。本番では止めてくれよな、失格になるからさ」
「どうしようかなー」そう言って、もう一度尻を天高くかざすマリア。蘇るパーティー気分。
正真正銘マリアが今戻ってきた。だって尻から湯気が出ている、ラッキー。
そして、勇猛果敢な僕等は、地球規模の笑いにも耐えられるという超ナウい会場に入り、リハーサルを行なった。
笑わせる準備が着々と整う様は、やはり滑稽。いつもはテレビで見ている芸人達が、僕達の周りを、鍋を囲む様にして囲んでいる。ぐへへへ、僕は何の具だい?ただの愚だろう。でヘヘ、そばにいるだけで僕は笑えて来た。まだ始まる前だのにざ。
無事に(本当は無事にじゃない)リハーサルを終えたポンコツパンチの僕等は、出演者の楽屋を挨拶して回ったぞ。人間の面影もなく。
初めての事なので大変戸惑ったが、みんな温かく迎えてくれたので助かった。地球人は心が広いと思う、皮肉かな?
「マンザイグランプリを盛り上げてくれ」そう後押しを嫌々されながら、僕等はとうとうあのお方の楽屋に挨拶をする事になった。緊張し過ぎて、合コンに行きたくなってきたぞ(・・・作者が)。
あのお方とは僕の崇拝する、絶・対・笑・わ・す・だ。
「コンコン、失礼します」神聖な楽屋に入る、ちょっと邪悪な僕等。
「失礼する奴が何処にいる。そんな子はとっとと帰りな。お母さんの子宮まで帰りな」そう厳しくボケる絶対笑わす。緊張感というか迫力が違う。別次元だ、たまんない。
「あんたが失礼していまーす」そう言いながら、楽屋に入り直すマリア。この時、莫大な量のカルマを消化する。
「お前等出来るやんけ」そう言った瞬間、シュルルルドゴントト、神業の様なスピードで尻を出す絶対笑わす。素人相手にも決して手を抜かない、ビューティフル。
すると、ガルルルトトト、絶対笑わすに詰め寄る半眼のマリア、三つ目が開く。そして、「いい尻していますなー」と言って、尻を出したマリアが、絶対笑わすの尻を撫で回し始めた。伝説だよ、おっかさん。
思わず笑いの衝撃波を正面から食らう僕。すると、今しかないとしか思えない事しか分らない、ありえないけどありえた絶妙なタイミングで、しゃべり始める絶対笑わす。
「その調子で、今日のマァンザァイィグゥラァンプゥリィ頑張ってなー」と、猛烈烈烈発達した、麗しき発音と辱めの美声を、幾重にも重ね合わせて言い放った。有難やー、地球は青かった。
その角度たるや、僕等の0.00000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000001ミリもズレる事のない、正真正銘の180度。つまり、僕等に笑笑しい背中を向けて、壁に向かって話をしておられる。
「どこに向かってしゃべっているんですかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」ありとあらゆる生命エネルギーを逆流噴火で昇華させる事により、空がグラつくほどの超爆発を起こした様に、たわいのないちっぽけな愛を、大胆にも慎ましく子供の色気をプンプンに漂わせ撒き散らしつつも、地球のみんなに感謝を込めたツッコミを僕は絶対笑わすに食らわせた。皆の者、人間やれば出来るさ、夢を諦めるな的放屁でレベルアップ中。
それを合図に、まだ見ぬ疾風の如くトタタトスストタタトス、マリアが行きます、鼻クソの如く。
僕の親愛なるズボンを、引きずり引きずり引きずらせず引きずりオロオロ下した。もちろん摩擦ゼロで、脱がした感覚なんて与えやしないさ。たとえサンタクロースがプレゼントを出し渋っても、代わりに僕がキスのプレゼントを・・・あげないよ、からの愛ラブラブ。
三人全員が尻を出した状態なる。それは天文学的数字の偶然にも勝る必然性を秘めながらも、それを愛して止まない人が運命と呼ぶものに相応しかった。僕の嫁にならないか?
プリッ、プリッとお尻の可愛らしくもときめかしく、交わる事のないアンニュイと至高の間を取り持つハーモニーを、慮らせながら絶対笑わすは、三人で尻を合わせるという、センチでオシャマな平和的提案を掲げた。許すも許さないも、僕等の間に壁など元からない。
僕等は一秒間に一億五千回うなずいて、それを心よく承諾した。さあ、勇気を剥き出しにして、約束されたレールの上なんてはみ出してしまおう。翼を広げて、ゴートゥーヘブン。そして、国同士のつまらない悲しみに暮れる争いから、人々をゴツク解放して、あの誰がつけたのか忘れられてしまった、忘れられない祝福メロディーにもろに合わせて歌い踊り、週刊誌を買いまた踊りましょう。もしも、誰かがスッテンコロリン転んだのなら、そんなにも膨大な数の救いの手は必要ないと、愛されながら断られようとも、この世とあの世の全ての存在が手を差し伸べるだろう。それはアイドルの握手会並のポテンシャルで・・・。怖がる事なんて何もないんだ。信じていれば夢はいつかは叶うさ。叶わなくても叶った事にすればいいさ。黙っていてあげるかどうかは別の話だけどねなんてね。これが嘘じゃなくて何が嘘として叫ばれる。たとえ君の勇気が世界を変える事が出来なくても、嘆く事など何もないんだ。何故なら君が勇気をくれるから、僕はとても愛された気持ちになるよ。これは夢なのか?夢なら覚めないでくれ。でもね、君が笑ってくれるのなら、僕は笑って目覚めるだろう。このちっぽけな現実の世界だとしても。親愛なる友よ、恋人よ、父よ、母よ、子供よ、全ての者よ、地球よ、宇宙よ、そして、人間よ、僕等はあの日の約束を果たすだろう。みんながみんなを愛して止まなかった。
「尻合わせて、幸せー(シリアワセー)」三人は尻を合わせながら、地球の中心でも端っこでもない、僕等の場所からそう叫んだ。
そして、その輝きが素粒子を感動させる事に成功する。時空に穴が開き、虹色の愛が楽屋を包みこんでいく。無論いいも悪いも、上品もツッパリも関係ない。自由、平等、平和、全ての可能性が顔を覘かせて、僕等を手招きしているかの様な永遠の安らぎを与えた。苦しむ者には朗報であろう。今世界は産声を上げた。君に新しい赤ちゃんが出来るだろう。それはみんなの子供。その子は「愛」と呼ばれるだろう。
神は言った。「私、神を止めます。誰か代わりに神になって下さい」全ての人間は答えた。
「一人残らず全ての全てが神となりましょう」
それを聞いて神は笑った。全ての闇に光が射す。それはとても小さな光だったが、忘れられない光となった。
今の僕等には分らないが、これが始まりである。
「コンコン、失礼します」僕等が始まりを体験していると、楽屋に他のコンビが挨拶に来た。や・め・て。
スッと我に帰る僕達。
「失礼しました」そう言って、楽屋を後にしようとする僕等に、絶対笑わすが、ただこう言った。
「悲劇と喜劇は紙一重」
「ありがとうございます」そう言いながら、絶対笑わすの楽屋を出て、自分達の楽屋に帰って来た。それもわずか一秒間で。
「楽屋の文字通りに楽しい部屋だったなー」そう言って僕とマリアは笑った。
全ての闇は消え去った。
そして、マンザイグランプリの本番が始まった。
ドカーン、マンザイグランプリとは。
エントリー数5555組、年齢や人数制限はなく、プロからアマチュアまで老若男女問わず、コンビ結成10年目以内なら誰でも参加出来る、真のおもろい奴を決める大会ですよ、奥様。
その頂点に立つ8組のネタが人類の許可なく始まったのだ。
この様子は全国ネットでリアルタイムに放送される。つまり、日本中が笑いに包まれる愛の奇跡なのだ。だから、お買い物は後回しにして下さいね、奥様。
そんな素敵なクリスマス・イブになる事を誰もが望んだ。もちろん奥様も。
しかし、そんなプレッシャーに飲み込まれるコンビもいた。それは、秘・密・だ・よ。
それは、一組目のコンビ「トリカブト」だった。早速、ば・く・ろ・す・る・よ。
肝心なボケで何回も噛んでしまい、まさにトリカブトの毒を噛んだ状態だった。う・ま・い・こ・と・言いました。
そして、採点に入る。
採点方法は、絶対笑わすを筆頭に、今のお笑い界を代表する八人の審査員が、一人持ち点100点満点の合計点で競われるのだ。永久に。
さらにその得点の高い上位3組で最終決戦をして、その勝者が優勝となる。幸せかい?
ちなみに、ネタの順番は事前にくじ引きで決められており、僕等は8組中8番目の最後。誰が何と言おうと僕等がトリとなったのだ。文句あるかい?
当初は、早い順番で勢いよく漫才出来ればと、悔やんでいたが、先ほど絶対笑わすとの楽屋での絡みで、超神秘体験をしたおかげで、かつてないほどの集集集集中中中中、集中をしているので、みんなのネタの後にじっくりと漫才出来るのも悪くはないな、と思えてきた。追い風吹く、おけ屋が儲かる。
それよりも一組目のコンビ「トリカブト」の得点が、カツラじゃないけどズラーと出た。
568点。
厳しい点数にうなだれるトリカブト。その姿はまるで子供が描いたモダンアート。
トリカブトは結成9年目のベテランコンビだ。経験豊富な彼らが、トップバッターの重圧からとはいえ、あんな初歩的なミスを重ねるなんて。やはりこのマンザイグランプリ、魔物が住んでいる。何処かで住所をゴッソリ取得して。
続く二組目の兄弟コンビ「チャールズ皇太子」572点。
三組目の男女コンビ「タップダンサー」542点。
なんと、一組目から三組目のコンビまでスベリ倒すという、波乱の幕開けとなった。この瞬間に世界中のカップルがキスを止める。
会場の雰囲気も氷河期の様に凍てついていた。誰か笑いを、誰か笑いを・・・。人々は笑いに飢え、この状況を打破する救世主を待ち望んだ。モッコリと。
その祈りが、人の背負ってはいけない所まで、達してしまう程のプレッシャーに変わる中、満を持して登場したのが、四組目のコンビ「チンチン」だ。回覧板を回している場合じゃないぜ、奥様。
結成6年目、脂の乗っりきったノリノリな彼等は、これからのお笑い界をしょって立つ若手を代表するコンビだ。それは偶然じゃなくて必然よ。
冠番組をいくつも持ち、テレビや雑誌で見ない日はない位の人気者。そして、実力者だ。
ちなみにチンチンは、絶対笑わす率いるコンビ「笑い人間」の後継者とも言われている。
その彼らが流れを変えた。コテンパンにね。
「アハハ・・・」
今日始まって初めて、会場が笑いの渦に包まれる。その笑量は成人の一日の平均笑量を軽く凌駕した。たまんねえ、奥様方も思わず下品に笑う。
とうとう、最後の最後の最後の最後の最後の最後まで笑いに笑わしきった。「チンチン」の得点は・・・722点。
もちのろん、この日の最高得点である事は言うまでもなく。言ってしまえば、とても他のコンビには手の届きそうもない領域の漫才だった。漫才だけに万歳。
思わず僕等も舞台袖で笑ってしまい、笑いの王国に連れて行かれてしまった。
ようやく会場もホカホカトロントトス、温まってきた。この勢いで笑いの時代が続くかと思われた・・・が、続く五組目の女性コンビ「女の尻」667点。六組目のメガネコンビ「プラスチックおにぎり」631点と意外に伸び悩んだ。
審査員達は、それだけ厳しく真剣に審査を行っていた。流石に笑いで飯を食ってきた生きる伝説達である。そこには笑いへの妥協臭など、存在しようもなかった。クンクン、クンクン。
ちなみに、この時点で「チンチン」の最終決戦進出が決定した。御見それしました。
ここで半分以上のコンビが漫才を終えたが、依然として会場には、お笑いの大会とは思えないほどの緊張感がドルリン、漂っていた。重・た・い・よ、ウフフ。
大会前には考えられない位に、予想外の展開が続いていたが、またここで予想外が起きる。
それは七組目のトリオ「背」だった。結成4年目の無名トリオであって、決勝戦に残った唯一のトリオだ。大会前の下馬評では、期待度の低い扱いを受けていたが、この日、爆発した。というより、こんな漫才見た事な・・・。「背」だけに背中に衝撃が無断で走る。新しい漫才、新時代の漫才だ。うめえぞこれ。
ただ、玄人好み過ぎる。そこがどう採点に影響していくのか。注目が集まるその点数は・・・711点。
「チンチン」に11点差と大健闘。審査員の点数も高いものから低いものまで、バラバラに別れたが、大変味のある漫才だった。化け物じゃねえか、べらんめい。
次のネタに期待がかかる。つまり、ここで「背」の最終決戦進出が決定した。かゆい所に手紙が届く感じです、手じゃなくて。良く分らなくなってきた、限界かい?
残すは、僕等「ロミオかジュリエット」だけとなった。誰の為、貴方の為に。
「女の尻」の667点を超えれば、最終決戦に進出出来る。物語上頑張って欲しいわね、オホホホ。
舞台袖で僕等は、男の尻を一回ずつ出して舞台に上がった。夢だったんだよ、この舞台が。僕の、それとも・・・。
〈寿司〉 a:冗談 b:マリア
a:それにしても、季節は変わりますね?
b:それは当り前の常識、決まり事ですね。
a:季節が変わると、服装が変わりますよね?
b:暑ければ薄着になるし、寒ければ厚着になるね。
a:この前、そば屋に行って天ぷらそば頼んだんですよ。そしたら天ぷらの身が全然入ってないんですよ。
b:何の話?
a:だから、客が来ないんで衣が厚くなったという話だよ。
b:衣替えしたって言いたいの、うまいねー。
a:うまくなんてないですよ。ベチャベチャの汁に伸びきった麺、ガッカリして店出ましたから。
b:そばの味の話かよ。
a:そばだけじゃなくて、うどんもうまくなさそうでしたよ。
b:そんなの知らないよ。そうじゃなくて季節の話だろ。
a:何をボケているんですか。季節が変わるなら、話題も変わるに決まっているじゃないですか。
b:別にボケていませんよ。僕はツッコむのが仕事ですから。
a:だったらこの前のそば屋のオヤジはツッコミですか?
いーや、僕がツッコんでいるから、あのオヤジはボケですよ。でもボケの僕がボケと言う、あのオヤジは一体何なんでしょうか?
b:ただのそば屋のオヤジだろ。
a:あんなしょうもないそば出して、完全なるボケですよ。ボケて作らにゃ作れないそばに仕上がっていましたから。・・・いや、待てよ、思い出した。あのオヤジ、確かそば持ってくる時に指を汁に突っ込んでいた。あのオヤジは疑いようもない生粋のツッコミだ。いや待てよ。店の看板にボケと書かれていた気もする。
b:ボケなんて看板掲げる店があるか、そこはそばだろ。文字数しか合っていないボケかますなよ。
a:まあ、そのオヤジがボケだろうとツッコミだろうと関係なく、うまい物出してくれればそれでいいんですよ、僕は。
b:うまい物と言えばやっぱり寿司だろう。
(コントに突入)
a:今までいろんな店で食ってきたけど、やっぱり大将の握る寿司が一番だね。
b:ありがとうございます。
a:大将はいつから寿司を握っているんですか?
b:家は先祖代々この寿司屋を継いでいますから、オヤジに言われてガキの頃からずっと握っていますよ。
朝起きては寿司を握り、学校から帰って来ては寿司を握り、夜は寝床で寿司を握ってきました。
a:行儀が悪いよ。
b:ええ、まあ、時には寿司以外の物も握ってみました。
砂を握り、雨水を握り、時にはクマのシッポを握り、ありとあらゆる物を握ってみました。でも結局寿司に戻ってきて、だから、あっしは寿司を握るんですよ。
a:大将、かっこいいよ。
b:一途というかなんというか、電車に乗っていても手すり握らずに寿司握りますから。たとえ崖の上で絶体絶命のピンチを迎えたとしても、命綱握らずに寿司握りますから。
a:そこは命綱握って下さいよ。
b:命綱一丁。
a:命綱を注文した訳じゃないですから。
ところでお宅の景気の方はどうなんですか?
b:ケーキですか?
嫌いではないですけど、あれって結局握らないでしょう。だからあっしは寿司を握りますよ。
a:いいねー。大将の話を聞いていると、ペンも握らずに寿司ばっかり握ってきたのが分かるよ。本物ですね。結局大将から寿司を取ったら何にも残らないんだろうな。
b:お客さん、あっしから寿司を取らない下さいよ。その時は今まで勉強してこなかった分だけガリでも握りますよ、ガリ勉なんてね。
a:アハハ、ガリ勉と来たか。こりゃ一本取られたな。
b:ガリ勉一本。
a:注文じゃないですから、それにガリ勉一本て何なんですか。
b:注文じゃないですから一丁。
a:もういいです。
それにしても、この店には長く続いて欲しいな。大将、跡取りの方は大丈夫なんですか?
b:跡取りですか?
それが生きのいいのがいましてね。三年目になるこさぶって言うのがいるんですけど、まー、奴の握った寿司は絶品ですよ。若いんだけど凛とした品のある寿司を握るんです。それに斬新なアイデアで、あっしを毎回驚かせてくれるんですよ。
a:へー、興味あるな、こさぶ君の握った寿司。
b:どうですか、お客さん。ここは一つ、こさぶの握った、「こさぶ君の僕この店継ぐんだ寿司」を試してみては。お客さんなら分かって貰えると思うんで。
a:分かりました。大将がそこまで言うんなら、その「こさぶ君の僕この店継ぐんだ寿司」をお願いします。
b:ありがとうございます。こさぶ、いつもの奴ブチかましてくれ。
a:ブチかますんですか?
b:ええ、こさぶの寿司はブチかましてなんぼですから、本当にお金なんぼ払う事になっても知りませんよ。
a:面白い、それ位でないと食べがいがないですから。
b:それ以上に期待して頂いてけっこうですよ。
なにせ、「こさぶ君の僕この店継ぐんだ寿司」の前では、他の寿司など「僕じゃこの店継げないんだ寿司」ですから、でした、ですね。
a:果たしてどんな寿司が出てくるやら。
b:へい、お待ち。
a:大将、これって。
b:いかがですか?
a:いかがですかって、何もないじゃないですか?
b:何言っているんですか、そこにあるじゃありませんか?
a:何もないけど、もしかして透明な寿司だとでもいうのか。まさかね・・・。
b:お客さんっていうのはいつもそうだ。ああだこうだと注文するくせに・・・。たまにはあっしらの注文も聞いて下さいよ。
a:とりあえず、食べるふりでもすればいいのかな?
b:お味の方はいかかですか?
a:うーん、身が締まっていて美味しいです、なんてね。
b:もっとー。
a:うわー、美味しいです。
b:もっと、もっとー。
a:恐ろしく、美味しいですー。
b:バサッ。
a:どうしたんですか、大将。急に裸になって?
b:こさぶ、店の鍵を閉めて、このお客を押さえ付けろ。
a:うわー、止めてくれー。
b:お客さん、あんたが立派な跡取りになりなよ。まずはちらし寿司―。
a:うわー、おならだ、くせー。
b:続いて握り寿司―。
a:堪忍してー、そんな所を握らないでおくれー。
b:今晩はあんたがネタになって、あっしとネタらいい。
a:スシだけにスキにしてー。
b:無理があるから、もういいよ。
僕等は静かに漫才を終えた、グスン。
あまりにも漫才に夢中になり過ぎて、客や審査員の反応がまったく分らなかった。グスン。笑いは起きたのか?その答えを知るには、ただ採点を待つ事しかなかったのさ。ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
運命の点数は・・・686点。
この瞬間、「ロミオかジュリエット」の最終決戦進出が決定した。愛しています。
無条件にはしゃごうとする僕だったが、隣にいるマリアが、無感情的な冷静さを持ちたたずんでいたので、僕は心臓がビックリして逆に落ち着いた。そして、マリアは鉛の様な重みを感じさせる言葉をグッと吐く。
「優勝・・・するんだろ」そう言って、静かに笑った。それだけだった。
ここで全ての出場者の漫才が終わり、最終決戦に進出する3組が「チンチン」・「背」・「ロミオかジュリエット」に決定した。興奮し過ぎてトイレに行きたいぞ、何てね。もう、そんな事言わせないでよね、ウフ。
そんな僕等が息をつく暇もなく、さらりと無情に、最終決戦のネタの順番決めが始まった。
得点の高いコンビから順番を決める権利が与えられた。日本よ、笑っていますか?
まずは「チンチン」
「このままの勢いでいきたいので一番」
続いて「背」
「大トリは嫌だからさ、二番目がいいのさ」
最後に「ロミオかジュリエット」
「三番目、変態の僕達が大トリを任せられるなんて大変光栄です」
こうして、3組の選ばれし漫才バカ共のネタの順番が決まった。日本よ、食い込んでいますか?
「優勝しような」そう僕はマリアに語りかけると、マリアは立ったまま眠っていた。幸せそうに・・・。
「・・・何だよ、いい夢見ていたのに」目を一兆回擦るマリア。おはよう。
「こんな時に眠るな。それにいい夢見るのはこれからじゃないか」そう言って、喝を入れる為にマリアの背中を叩くと、尋常ではない、ナイアガラ滝の様な汗をかき尽していました。日本よ、聞いているかい?
マリアでも緊張するんだなっと、新しい発見に僕は一人笑った・・・。
そして、3組のコンビは最終決戦に向けて意気込みを語った。聞けよ宇宙よ。
まずは「チンチン」
「必ず優勝して、賞金一〇〇一万円を持って帰ります」
「1000万円だろ。何勝手に1万円多く貰おうとしているだよ」と、司会進行役の司会進めるが、格好つけながらキザにツッコミを入れる。
会場に笑いが生まれる。さらに笑え人類よ。
続いて「背」
「僕等は優勝とかどうでもいいのさ。ただスベリたくないだけさ。だから、優勝するのさ」それを聞いて司会進めるが、ここぞとばかりに、ねぎらいの傑作ツッコミを発射、今度は陽気に。
「結局、優勝したいんじゃないかーーーーい」
会場が笑いになる。全てよ、笑え。
最後に「ロミオかジュリエット」
「えーと、僕達は・・・」僕がしゃべり始めると、隣のマリアがマイクを奪って心で話し始めた。
「僕の隣にいる相方は全部冗談と言います。お母さんと二人で暮らしています。それはお父さんの・・・お父さんの名前なんて言うの?」と僕に尋ねるマリア。愛しているよ。
「・・・全部捨てた」うつむきながら僕は答えた。愛しているから。
「こいつのお父さんの全部捨てたさんが、家を出て行ってしまったからです。それからというもの、こいつとお母さんはずっと悲しい想いをしてきました。それでも笑いの力を借りて強く生きてきました。もし、全部捨てたさんがこのテレビを見ているのなら、この後にする僕達の漫才をしっかりと見届けて下さい。そして、もし、笑えたのなら、家に帰って来て下さい。そして、また一緒にこいつと暮らしてやって下さい、以上です。何か湿っぽくなっちゃったんで、お詫びの印として・・・」
その瞬間。絆だね、マリアが尻を出すのが以心伝心で分かった。伊達に相方はやっていない。それでも、それだから・・・愛・し・て・い・る。
「尻を出すなーーーーーーーーーーーーーー」この世の神々が宿った様な力強さで、純粋無垢な細胞の塊であるマリアのズボンを、間一髪中の間一髪、何とか命からがらとでも言えようその瞬間の隙間を見て、この黄金の両手で掴まえて押さえ付けた。生きている。
「尻を出させろーーーーーーーーーーーーー」と、地を這う様な完全なる爆声を、笑いの羽衣衣装にたくましくも包み、天命を受けた頃の自分に照らし合わせて、甲斐甲斐しくも華やかな、薔薇の花の如く咲き乱れるマリア。それは、妖精と戯れる赤子の心音を思わせるリズムを刻み、我々に童心の時代にはあった形には変えられない、懐かしくも革命的笑いを提供し尽すのであった。生かされている。
それを見て、「お前の敵は俺が討つーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」と言い、尻を出そうとする絶対笑わす。その姿はまるで尻そのものだった。
それを司会生命をかけて、司会進めるがストップする。この瞬間、確かに時間が止まった。
掛け違えたボタンが、自分の運命だなんて決めつけるなよ。必ずまた明日会おうぜ。僕等人類は、一つの兄弟で一つの家族さ。忘れない、君がくれた勇気のプレゼント。忘れない、たとえ宇宙が姿を変えたとしても。こんなにも小さなやり取りがあった事を、きっと。そうさ、何もしてあげられなかったなんて簡単に笑うなよ。そう言って笑った。もしも僕が君に出会えなかったのなら、誰が僕を笑わせる事が出来ようものか。この崇高な魂が迷えるのは君の前だけだと、勇ましくも胸を張り、張り裂けそうな君の鼓動に、そっと口づけをして感謝した。その姿はまるで、まだ見ぬ僕の為のあなたなのだろうか?道路の隅っこに花が咲いたんだ。良かったら僕を置き去りにしてまでも、見に行ってあげてくれないか?そして、聞いてくれよ。その生命の無駄のなさを。それなのに、それなのに、貴方ときたら、今の貴方からは無駄しか感じあれないのです。お祭りは終わらない。何故なら終わり方を忘れてしまったのだから。君の為に、語られない君の為に、小さい頃にお母さんが言ってくれたありがとうを君に。大きくなってから、お父さんが言うであろう約束のありがとうを君に。君の耳元では「なんでやねん」。でも、心の中ではありがとう。力尽きたら抱きかかえておくれ。それ位に愛を込めてI・LOVE・YOUを今叫ぶ。僕は君をア・イ・シ・テ・イ・ル。本当さ、アハハ。今僕が笑ったのは決められた運命なのかい?君が教えてくれよ。恥ずかしがりながら手を取って。偶然なんだと言わせておくれ。そして、君であるあなたをからかうんだ。だから笑えよ。つまりお前は僕の恋人さ。結ばれるであろう運命に逆らって結ばれていくんだ。運命だろ。昔神様が言っていたんだ。僕等の間を切り裂いて離れ離れにするよな時に、我々、いや、全てを救うものがある。それは神なのか?いいや、笑いであった。
その真実が瞬間であった時、全てが笑った。きっと、絶対、全部捨てたも・・・。
「それでは最終決戦に参りましょう。一組目チンチンです、どうぞ」
「チンチン」の漫才が始まった。
僕とマリアは舞台袖で語り合った。
何を語ったかは覚えていない。
「アハハ」
「アハハ」
「アハハ」
「アハハ」
「チンチン」の漫才が終わり、「背」の漫才が始まった。
二人だけ。僕等は語った。そして、笑った。
「アハハ」
「アハハ」
「アハハ」
「アハハ」
背の漫才が終わった。
「アハハ」
僕は最後にありがとうを言いかけた。
マリアはそれを嫌がって、尻を出す。
そして、僕を笑わせると舞台に上がった。
〈お父さんとエビフライ〉
a:冗談 b:マリア
a:最近、脇の下が生臭いと思ったら、刺身が挟まっていたんですよ。
b:何で?
a:買い物した時に、荷物が多くて持てなかったので、脇の下に刺身を挟んだんですけど、その刺身が挟まったままだったんですよ。
b:気づけよ。でもそんな刺身食べたくないなー?
a:うん。だから、お隣さんにお裾分けしたんだよ。
b:そしたら?
a:美味しかったって喜んでいましたー。
b:美食家だねー。
a:困ったのが、それから物を脇に挟むのが癖になっちゃったんだよ。
b:変わっているね。
a:色々試したんだけど、やっぱり刺身がいいんだよね。
b:でもそんな刺身食べたくないよね?
a:うん。だから挟んだ刺身はお隣さんにお裾分けする事にしているですよ。
b:そしたら?
a:美味しかったって喜んでいましたー。
b:美食家だねー。
a:でも、そんな事を続けていたら、脇の下がかぶれてきちゃってさ。やっぱり偏った食生活は良くないなーと思うんだけど、結局刺身を脇の下に挟んじゃうんだよね。
b:脇の下が脇の上にもあったらいいのにね。
a:そうなんだよ。そしたら肩も凝らずにすむのにさ。
b:でも、もしあったら秘密にするだろ?
a:ああ、誰にでも人に知られたくない秘密はあるものだから。
(コントに突入)
b:はい、召し上がれ。
a:うわー、大好きなエビフライー。
でもこれだけしかないの?
b:贅沢言わないの。
a:海の中には沢山いるのに、食卓にはちょっことしか出てこないエビフライー。
b:お母さんは泳げないからちょっとしかエビが獲れないんだよ。
a:買って来た物だから、そんなの関係ないよー。
b:そんなに少ないって文句言うなら、あんたがエビフライになるかい?お母さんが油で揚げてあげるから?
a:僕を食べても美味しくないもーん。
b:そんなの知っているよ。お前が小さかった頃に、食べようとした事があるからね。
a:怖ーい。
b:ふふふ、冗談よ。さあ、冷めない内に一緒に頂きましょう。
a:うん。でも、このエビフライお父さんにも食べさせてあげたいなー。お父さんは何処に行ったの?
b:仕事じゃないか。
a:ずっと帰って来ないよね?
b:何言っているの、お父さんは物凄く遠くまで仕事に行ったから、帰って来るのに物凄く時間がかかるんだよ。だから二人で頂きましょう。
a:うん。でもやっぱり、お母さんが作ったら良かったのになあ。
b:今日は買ってきたエビフライだけど、一緒に食べれば美味しいだろ?幸せだろ?
a:エビフライの事じゃなくって・・・。本当はお父さん仕事じゃなくて、他に女の人を作って出て行っちゃったんだ。それに僕はお母さんがつくった子じゃないんだ?
b:誰から聞いたの?
a:隣のおばさん。
b:そんな話、きっと嘘よ。お母さんを信じて。
a:僕は悲しくても大丈夫、だから本当の事を教えて。
b:条件があるわ。
a:何?
b:ハンカチを用意する事。
a:ありがとう。
b:人間が誕生して、いや、宇宙が誕生してからどれほどの時間が流れたのだろか?それは運命と言う名の偶然であって、運命だったわ。飽きもせずに高速で回り続ける賢くて優しい地球の片隅で、お父さんとお母さんは出会ったの。そして、激しく引かれ合ったわ。その姿はとてもあなたには想像出来やしないし、見せられないありのままのお父さんとお母さんよ。そして、二人は結婚をする事を心に決めたの。でも・・・運命の悪戯よね。両家の両親の猛反対に遭い、二人の中は残酷にも引き裂かれていったの。まるでロミオとジュリエットみたいにね。そして、やり場のない孤独に愛されてしまったお父さんは、酒に溺れ、ギャンブルに身を投げてしまったの。やがて全てに嫌気がさしたお父さんは、ギャンブルからジャングルに心を奪われていったわ。
a:ギャンブルからジャングル。
b:どれだけの歳月が流れただろうか?気付けばお父さんはジャングルで、ボスゴリラとしての地位を不動のものにしていたの。
a:ゴリラ?
b:でも、日々激しく永遠に繰り広げられる縄張り争いが生む悲しみに堪らなくなったお父さんの魂は、居場所を失い荒んでいったの。やがてバナナを剥くのを止めてしまったわ。
a:・・・致命傷。
b:そして、お父さんはジャングルを後にして海へ向かったの。そこでただ一面に広がる母なる海を見て感動したお父さんは、こう思えて来たの。まるでジャングルでの争いが嘘のようだ、と。そして、隣のおばさんが言う事は丸っきりの嘘だ、と。そして、真実は母なる海と言うか、お母さんの言葉にあると。これが今から300年前の話だよ。
a:嘘だー。
b:どうしてお母さんの話が嘘なのさ。そんな事言ったら、隣のおばさんの話だって嘘だよ。
a:でも、隣のおばさんはゴリラだの、300年前だの言わなかったもん。
b:何言っているの。さっきから隣のおばさん、隣のおばさんって言っているけど、あの人は300歳のゴリラだよ。
a:嘘つきー。
b:異常にバナナ剥くの上手いし、それに昼夜問わず、年がら年中ウホウホ叫んで手がつけられないんだから。何よりも、ゴリラみたいな顔しているじゃないの。逆人面ゴリラ。
a:確かにゴリラみたいな顔しているけど。
b:あれ、もしかしたら嘘ばっかりつくタヌキさんかもね。
a:うーん。そう言われればこの間、頭に落ち葉っぱが乗かって、タヌキみたいだった。
b:そうでしょう。だから涙なんて拭いて、熱い内に一緒にエビフライを頂きましょう。
a:うん。
b:美味しい?
a:美味しいよ。
b:これはきっと仕事でお父さんが取ってきたエビよ。信じる?
a:うん。
僕は悲しくない。
お父さんはもうすぐ家に着くところ。
エビフライはまだ熱い。
笑いは起きなかった。
みんな泣いていた。
それを見て、僕とマリアだけが笑った。
クリスマス。
お母さんが、僕とお父さんの大好きなエビフライを作ってくれた。
そして、僕とお母さんは笑った。
僕は悲しくない。
お父さんはもうすぐ家に着くところ。
エビフライはまだ熱い。
悲劇と喜劇は紙一重である。
その日のクリスマスにマリアは死んだ。
一度目に倒れて時、もう助からないと分かっていたらしい。
もちろん、誰にもそんな事は言わなかったが・・・。
これは関係のない話なのかもしれないが、僕のお母さんは、お父さんが家を出て行った日から毎日教会に足を運んで、みんなが笑えますようにとお祈りをしていたらしい。
僕はその話を聞いて祈った。そして、笑った。これからもみんながずっと笑えますように。きっとそれを、天国からお歳暮マリアが聖母マリアの様に見守るだろう。
果たしてこの話は、悲劇なのか喜劇なのか?きっとマリアは舌を出して・・・尻を出して笑っている。
「なんでやねん」
この話が始まってから、初めてマリアが真剣にツッコミを入れる。
そうこれは全て僕の作り話だったのかもしれない・・・と言うよりも冗談だったのかもしれない。
僕の名前は全部冗談。
だから全部が冗談だったのかもしれない・・・なんてね。
「何やっているんだ、みんなが待っているぞ」
いつも正直で真面目なしっかり者のマリアが僕を呼ぶ。
僕等の出番だ。
悲しい事が大嫌いで、いつもふざけて冗談ばかりの僕は、みんなに笑って欲しくてしかたがないんだ。
僕の名前は全部冗談。
隣にいるのは相方のお歳暮マリア。
今から二人で漫才をします。
笑って下さい。
「アハハ」
この話はここで終わります。
最後まで読んでくれて、ありがとう。
君は今、笑っていますか?
笑ってくれたのなら嬉しいです。
この世界には悲しい事がいっぱいあって、でも笑える事もいっぱいあって・・・。
悲しい顔をしている人がいたら笑って欲しい。
今度は君が笑わす出番なのかもしれない。




