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ロミオかジュリエット  作者: 符逢作 由生
1/2

前編

〈内容〉

僕の名前は全部冗談。

隣にいるのは相方のお歳暮マリア。

今から二人で漫才をします。

笑って下さい。






 僕は悲しい・・・だから笑いに変える。

僕のお名前は全部冗談、お母さんの全部嘘子と二人で暮らしている。お父さんは、僕がクリン、クリンの小学生だったクリスマスの日に、大好きなエビフライと僕達を残して家を出て行ってしまった。それからは家に帰って来てはいない。

迷子にでもなってしまったのか?小さかった僕は、よく屋根の上や缶の底などを探し回った・・・そんな所に居るはずもないのに。見つかるのはピチャピチャに濡れたエロ本だけだった。

僕は毎回、毎回、それを恐る恐るめくっては教科書のようにしてよく学び成績を上げていった。よっ、エロ博士。

何の話だっけ?話がズレたけど、僕達は貧乏で寂しい毎日を送っていた。

薄っぺらい家に帰るとお母さんと二人っきりなので、ラブラブのカップルのようか?と聞かれればそうだったけど、やはりお父さんのいない分だけ加齢臭が足りないので物悲しく虚しかった。

でも、お母さんが毎回作り話を聞かせてくれたので、助けられていた。粋だね。

お母さんは昔から作り話が得意で、子守唄代わりに聞かされていた僕は、作り話を聞くと子守唄を聞いているかのようにスヤスヤとなってしまう位だ。おやすみ。

今思うと作り話と言うよりも、ただの嘘にも思えくるのだが・・・。

お父さんの帰って来ない理由も、「物凄く遠くに仕事に行ったか、ら帰って来るのに物凄く時間がかかるんだよ」と、言い聞かされていた。それで納得していた。

ただ、お母さんの作り話が面白可笑しく思えたのも、小学校を卒業するまでだった。

中学生になると、その作り話の裏に隠れる、

悲しみや寂しさに意識がいくようになり、少し黒くなった。

この頃から僕は、人見知りが激しくなり対人恐怖症になっていった。人間って何だ?

それは相手の目を見ることも口をきくこともできず、恐ろしくて震え上がってしまう位だった。(その震え、マグニチュード4)

お母さんの前では気丈に振舞ったが、学校に行けば友達の一人もいなく、いつも屋上の隅で昼飯のない僕は、紙パックのコーヒーを飲みながら空を見上げていた。喉越しだけが友達さ・・・。

そんな日々永久に続く。


そんなある日。友達も、恋人も、お父さんも、主治医も、愛犬も、プリップリに尻の締まった秘書もいない僕は、いつも通り一人寂しく屋上の隅で、体育の授業でもないのに体育座りをして、紙パックのコーヒーを飲みながら空を見上げていた。

すると、僕と空の間に顔が挟まってきた。サンドイッチ状態。知らない顔だ。彼は初対面の僕にこう言った。

「お・し・り」そして、尻上がりに続けた。

「お尻揉んでくれない?」急なことに驚いて慌ててコーヒーを噴き出した僕は、彼の顔面にドンピシャぶっかけてしまった。

すると彼は頭から湯気を出し物凄い形相で、自分のポケットに手を突っ込んだ。ヤバイ、ナイフで刺される。そう思わす位の形相だ。般若同然、同類、助けて、誰か。

すると、彼はヒラヒラレースの可愛いハンカチを取り出した。まあ、可愛い、そう思っていると彼は真っ直ぐに言う。

「綺麗に拭いて」仕方ないので、顔についたいたいけなコーヒーを、彼の可愛げのあるハンカチちゃんでフキフキ拭いた。

すると、彼は喜びて言う。

「お尻も拭いて」そして、綺麗な桃色の尻を何かのサービスの様に、僕の顔のまん前に差出した。

僕は震えながら呟いた。

「僕等は知り合いでもないから出来ないよ・・・」それを聞いて彼は尻を抱えて大笑いした。

「今のは尻と知り合いのシリをかけたのか?お前面白いな。夏を寝過した花火みたいな顔しているくせにな」 

「どんな顔だよ?」

「しけった面ってことだよ」

「失礼な」

思わず腹を立てた僕は言う。

「僕は物凄く貧乏なんだぞ。だからこの紙パックのコーヒーが昼飯代わりだったんだ。君のせいで噴水みたいに吹き出しちゃったじゃないか。どうしてくれるんだよ」

「そこは噴水じゃなくて、ウォシュレットと呼んだ方が、響きが心地良かったんじゃないか?」

「噴水でもウォシュレットでもどっちでもいいんだよ。そんなことよりもコーヒー弁償してくれよ」

「うーん、説得力がないよ。それじゃ弁償しにくいな。もっと違ったアピールの仕方があるんじゃないか?」そう言って、綺麗な放物線を描きながらまた輝く尻を出した。

「例えば?」

「例えば、腕時計を腕にはめても普通だろ。だから腕時計を足にはめるとかさ。そういう様なアピールの仕方の方がいいって事だよ」

「足にはめたら、時間が見られないだろ」

「んっ。でも、あの人、足に腕時計はめているわ、素敵ねってなるじゃないか」

「よく分らないけど、もっとアピールすればいいんだろ」

「ああ」

その時僕は、夢中で気付かなかったけれど、人見知りで対人恐怖症の僕が、お母さん以外の人とこんなに長く話すのは、本当に久しぶりのことだった。記憶にございません。それに、こんなに気を使わないで話せるのは・・・まるでお父さんと話している様な気がした。僕は少し浮かれていた。フワリッ。

そして、眠っていた血が沸々と騒ぎ出していた。グオオオオオオオオオオオオオオオオオ。

「このコーヒーは普通のコーヒーではないんだぞ」

「とうとう本気になったか、聞かせてくれ」

「このコーヒーは・・・」


〈コーヒー〉 a:バイト b:マスター


a:どうしたんですか、マスター深刻な顔をして?

b:コーヒー一杯いくらにしようか決めかねていて。

a:このコーヒーでも飲んでリラックスして下さい。

b:ありがとう、お前がこういう時に入れてくれるコーヒーには値段が付けられんな。ただ私は喫茶店のマスター、客に出すコーヒーには値段を付けないとな・・・一杯三万円と。

a:値段の付け方が甘いんじゃないですか、ますたー?

b:ブラックコーヒーの値段なのだが・・・。

a:もう少し冷静になって値段を決めて下さいよ、このコーヒーでも飲んで。

b: ありがとう、お前がこういう時に入れてくれるコーヒーには値段が付けられんな。ただ私は喫茶店のマスター、客に出すコーヒーには値段を付けないとな・・・一杯三万円と。

a:経営の事情も分かりますけど、お客さんが手の出せない値段では、美味しいコーヒーも冷めてしまいますよ。

b:ホットコーヒーの値段なのだが・・・。

a:マスターは変わってしまった。昔のように、自分がお客さんだった頃のように、コーヒーを純粋に愛していた気持ちを思い出して値段を付けて下さい。とりあえずこのコーヒーでも飲んで。

b:ありがとう、でも少し飲ませ過ぎじゃないかな?君も少し落ち着いた方がいい、今コーヒーを入れるから。

a:ありがとうございます。

b:さあどうぞ。

a:美味しいです。

b:そうだこうしよう、君がお客さんだ、この一杯のコーヒーにいくら出す?

a:私には値段が付けられません。

b:そんなはずはない、もう一口飲んで落着きなさい。さあいくらだ?

a:三万円です。

b:それじゃあ私と一緒じゃないか。客が手を出せない。

a:いいんです。だって誰にも飲ませたくないんです、マスターの作ったコーヒーを。だから私が毎日三万円で飲みに来ます。

b:馬鹿な考えは止しなさい。それじゃ君がもたないだろう。

a:いいえ、強盗でも何でもしてお金を作ってきます、もう止められません。

b:私は強盗にはコーヒーを作らない。

a:困ります。

b:それならはっきり言ってくれ。このコーヒーはいくらだ?

a:五百円です。

b:もっと言ってくれて構わんよ。

a:これは、ただの黒いお湯です。だからタダです。

b:本当にそれでいいのか?

a:感謝の気持ちを表してお客さんに礼金を払う必要があります。それは三万円。

b:やはり三万円。

a:マスター、コーヒー百杯お願いします。

b:三百万。やっぱり君を強盗にしてしまう。それでも私はコーヒーから離れられない。コーヒーとは何なんだ?

a:コーヒー自体はただの美味しい飲み物です。

ただ人が作るもの。そこに愛が入り込んでしまうのです。

b:確かに私が初めてコーヒーに恋したのも、ある店のマスターが作ってくれる一杯のコーヒーだった。他の店とは一味も二味も違った。正確には三味。あのマスターが作ってくれる一杯三万円のコーヒーが飲みたくて、よく足を運んだものだ。

a:皆さんいくらのコーヒー飲んでいますか?五百円。アハハ、そうですか。

b:本当に美味しいコーヒーが飲みたいのなら内の店に来て下さい。

a:一杯三万円のコーヒーでお待ちしております。


「・・・つまりこのコーヒーは三万円もするんだぞ」僕は鼻息を荒くして作り話をした。これはきっとお母さん譲りだと思いたい・・・。

「面白い話だな。でも貧乏なお前が三万円のコーヒーなんて買えるのかよ?」

「このコーヒー買っているせいで貧乏なんだよ」

「なるほど」

不思議な空気が二人の間を流れた。何かの契約が今結ばれたかもように。僕は少し落ち着いて言った。

「コーヒーのことはもういいよ。それよりも君は僕に用事でもあるのかよ。お・し・り・とか言ったり、実際に尻を出したりしてさ」

「用事なんてないよ。ただお前が一人で暗い顔していたから、笑わしただけだよ。ごく自然の当り前の事だろ?」

「そんなことが当たり前なら、この国は今頃・・・」

「今頃・・・何なんだよ?」彼は何故か僕に期待している。変な期待だ。ギャグでもぶっ放して言えとでもいうのか?

「今頃・・・。そんなことよりも僕が君ならば、もっと違うやり方で笑わすけどな」

「例えば?」

「例えば、お・し・り・の一言で笑わすにしても、ちゃんと話を作って・・・」


〈ダンス〉 a:ダンサー b:お嬢さん


a:お嬢さん、僕と踊りませんか?

b:ヒールの高い靴を履いているので結構よ。

a:それならこの動きやすい靴をお貸ししますから。

b:私のドレスとは合いませんわ。

a:それならこのドレスをお貸しします。

b:合いませんわ。あなたは美へのモラルがないのかしら。

a:ええ、私はあなたと踊りたいだけですから。

b:向こうの椅子に腰をかけた男が見えないのかしら?

a:こっちを睨んでいます。

b:私の男よ。とても強いの。それでも私と踊れるの?

a:もちろん、あなたが踊れなくてもエスコートさせていただきますよ。

b:変わった人ね、そこまでして何故私と踊りたいの?

a:向こうの椅子に腰をかけた男に頼まれたもので・・・。

b:そう。

a:彼は踊るのが得意じゃないみたいで、でもあなたが踊りたそうな顔しているので、代わりに私が踊るようにと頼まれました。

b:怖い顔しているでしょう、彼?

a:ええ、とても。私も忙しいのですが、あの顔で迫られたら断れませんよ。

b:私が告白された時もそうだったわ。とても断れなかったの。でもね、彼は物凄く優しいの。そして不器用なの。ダンスだけじゃなくて何もかも・・・踊りましょうか。

a:本当にあなたと踊っていいのでしょうか?

b:何故そんなことを聞くの?

a:男の顔がどんどん険しくなっていくもので。

b:大丈夫よ、彼は上品だからハンカチはいつも持ち歩いているわ。だから嬉し涙がこぼれても平気なの。

a:あれが涙を堪えている顔なのですか?そんなにあなたが踊れることが嬉しいとでも言うのですか?

b:きっとそうよ。優しすぎるの。だから彼は何があっても泣いてしまうの。人が落ち込んでいるのを見ても、アリが道を外れるのを見ても、たとえどんな面白いことがあったとしても涙がこぼれてしまうの。私の願いはただ一つ、彼の笑う姿が見てみたい。それだけよ。

a:それなら二人で彼を笑わせましょうか?

b:お願いできますの?

a:お安い御用で。

b:お・っ・ぱ・い、ボヨーンボヨーン。

a:お・し・り、プリップリーン。

b:駄目みたいね。

a:踊りましょうか。

二人はお尻を出し永遠に踊り続けたとさ。


彼はウンウンとうなずきながら感心して聞いていた。そして僕にこう告げる。

「なるほどね。でもその話を披露するには、二人必要じゃないか?」

「・・・それなら君が手伝ってくれよ。そしたら笑わせられるだろ?」

「誰を?」

「・・・だから、暗い顔している人をだよ」

「ふーん」

変な空気が僕らを包む。別に僕は人を笑わせたい訳ではない。話がズレてしまった事を訂正する。

「これは例え話で・・・」

(キーンコーン、カーンコーン)

授業開始の合図が、僕の訂正をさりげなく妨げる。

「さよおなら。プーッ」そう言って彼は、おならをして屋上から消えてった。最後も尻を出して。

「変なこと言っちゃったな。それにしても彼は誰だったのだろうか?」

久し振りの充実感を得た中で、その疑問がフツリと残った。だが、ケツを出した彼の正体への疑問は、ケツだけにすぐに解決した。


「授業を始める前に転校生を紹介します」先生が先生らしく言う。

「今・日・か・ら・こ・の・臭・い・学・校・で・勉・強・を・教・え・る・こ・と・に・な・っ・た・お・歳・暮・マ・リ・ア・で・す・よ・ろ・し・く」転校生はカタコトの自己紹介をした。

「何故カタコトなんだ。それに君は勉強を教わる側だろう。最後に臭い学校と失礼だろ」先生が小突く様にツッコんだ。

「ペロッ、すいませーん」そう言って、転校生は謝ると同時よりも早くに尻を出した。そうなのだ。さっき屋上であった彼は、転校生だったのだ。しかも同じクラスの・・・。

「アハハ、尻出した」クラス中の爆笑をかっさらう彼。ただし僕だけは笑えなかった。何故なら僕はさっき言ったことの気まずさと対人恐怖症が顔を出して、顔が引きつっていたのだ。

それが気に食わなかったのか、マリアはむきになって、すかさず学生服を脱いで裸になった。

そして、「学生服のサイズが合いませーん」

というギャグをチュドーンとかました。あまりにも急な事に、みんなはザーと引いてしまった。が、僕は逆に唾を飛ばして大笑いした。その声だけがクラス中にこだました・・・かと思うとすぐさま、やはり女子から、「変態―」と非難され、教科書やノートが投げつけられる暴動が起こった。

そしてマリアは、転校してそうそうに、自分の席にも着かずに廊下に立たされるのであった。

マリアは廊下でちゃんと反省しているのだろうか?ちなみに、この時間の授業はホームルームの時間となった。

そして、来週行く予定の修学旅行の話し合いが行われていた。

マリアは教室に呼び戻され、席に着かされた。

そのマリアの席は、結局、僕の上の席に・・・上?僕の膝の上にマリアがドッシリと乗っかる、王様の様に。

「お歳暮君、そこは君の席じゃなくて全部君の席だから、その隣の空いている席に座って下さい。フルーツバスケットじゃないんですから」と先生の優しい?ツッコミがツルッと入る。

「今って、フルーツバスケット中じゃないんですか?それをもっと早くに言って下さいよ。もちろん早口で言って欲しい訳じゃないですよ」とふざけっぱなしのマーーーーーーリア。

先の思いやられる僕は、冷や汗を浮かべた。

その冷や汗をヒラヒラレースの可愛いハンカチで拭いてくれるマリア。

「さっきのお返し」そう言って、舌を鼻につけて白目をむいて笑わせてきた。

ただ、笑ったのはマリアの方だった。何故なら、僕は対人恐怖症なので、顔を触られた事により、優秀な変態ばりに変な顔に早変わりしていたからだ。

涙を流し悔しそうにマリアは言った。

「・・・面白い」僕はオドオドしながらフォローする。

「これはギャグじゃなくて・・・」

「これがギャグじゃないって。それじゃあ、お前がギャグやったらどうなっちゃうんだよ?」

「僕がギャグやったって誰も笑わないよ」

「誰もがわらわになるって?」

「違うよ。誰もがわらわになるって、意味分かんないだろ。誰も笑わないって言ったんだ」

「・・・ダイエットかたわらにだって?」

「どんな耳しているんだよ」

「えっ、聞こえない」イヤホンをして音楽を聴くマリア。

「人の話を聞けー」その声がクラス中に炸裂、鳴り響く。

「話を聞くのはお前だ」話をしていた先生から、冷やかなお灸をすえるツッコミが入る。そして、みんなに笑われた。

「どうだ上手くいったろ?」嬉しそうにマリアが話かけて・・・

「逆だよ、逆。そっちは壁。誰もいないだろ、僕はこっち」

「分かっているねー。でも気持ち良かったろ。人を笑わせるのって」

「・・・笑わせたんじゃなくて、笑われたんだ」

「そう怖い顔するなよ」と、オドロオドロしく怖い顔で言うマリア。

「怖い顔しているのは、お前の方だろ」

「うーん、君には才能があるよ」

「・・・何の才能?」

「笑いの才能。他にも小銭を素早く下品に数え上げる才能もありそうだけどね」

「貧乏だからって、馬鹿にしているだろうー?」

「被害妄想だって。それに俺は貧乏人を尊敬しているんだよ」急にまん丸メガネをかけた学者ばりに、真面目な顔をするマリア。

「なんで貧乏人を尊敬しているんだよ?」同じく僕もガリ勉よろしくばりに、真面目に質問した。

「えっ、何か言った?」深い眠りに入っていたマリア。

「人の話を聞けー」そして、また教室に僕の声が膨張炸裂した。

「・・・だから、話を聞くのはお前だろ」再び蘇る先生のツッコミ。再びクラス中、爆笑の渦とかす。

「これはテッパンギャグだな」鉄板を持って話しかけてくるマリア。

「なんで鉄板なんて持っているんだよー」・・・って、これは流石がに、僕の勘違いの妄想だった。

「鉄板なんて持ってないよ。少しは頭をお湯で冷やせよ」

「お湯で冷やせるか。せめてコーラだろ」

「・・・コーラ。それはよく分らないな」

「コーラには・・・コラッと怒られて頭を冷やせという意味が含まれている。なんてね」

「ダジャレなのか、シュールなギャグなのか、いまいち分らないないな。それにしても、さっきの同じこと言って笑わせるのカツ丼って言うんだぜ」

「それを言うならテンドンだろ」

「知っているねー。君はやっぱり笑いを愛しているんだろ?ニ・ク・イ・オ・ト・コ・だ・ね」

「・・・愛しているとか、愛してないとかじゃないよ、別に」

「じゃあ。お前にとつて笑いって、一体何なんだよ?」

「・・・愛しているとかじゃないから、友達みたいなものじゃないかな?なんてね」

「笑いと友達なのかよ、紹介してくれー」

「例え話だよ。実際の僕は、友達の一人もいない暗い人間なんだから」

「暗い人間だぞって、自慢されてもなー」

「これは自慢じゃなくて悩みなの。コンプレックス」

「コンプレックスってなんだ?プロレスの技か?」

「そんな技があったら困るだろ。どう対応していいか分からないしさ」

「そういう困るような事を、俺にしてきている訳だろ。困るよ」

「お前が絡んでくるからだろ」

「お前が二人で笑わそうって言ったからだろ」

「確かに言ったけど、あれは・・・」変なところだけ真面目だなこいつ。

「大丈夫、お前には笑いの才能がある。俺が補充するよ」

「それを言うなら保証だろ」

「違くて、笑いが足りなかったら、俺が協力して補充してやるって事」

「・・・なるほどね」

「納得した?」

「そのことには納得したけど、人を笑わせることには納得してないよ」なんだか二人、恥ずかしくなって黙ってしまった。まるで恋人のように・・・。

「別に恋人じゃねえぞ」とマリアが鋭くツッコむ。

心の声が聞こえたのか?・・・って寝ているよ。寝言か。逆に奇跡だな。人見知りの僕がこんなに話すのも奇跡に近いけど・・・。まあ、何より眠ってくれて安心したよ。これでようやく先生の話が聞こえるから。でも、別に先生の話なんて聞きたいものじゃないけどね。

「俺はもんじゃ焼きよりも、お好み焼きの方が好きだな」

またマリアの寝言か。あれ、待てよ。今のって、聞きたいもんじゃないと、もんじゃ焼きのもんじゃをかけたのか?つまり、人の心が読めるということなのか・・・?さすがに考え過ぎの妄想だよな?

「妄想し過ぎて暴走しているぞ」こいつさっきから本当に寝言なのか?それとも本当に人の心が読めるのか?・・・などと一人で妄想していると、先生に呼ばれる。こっちはこれっぽっちも妄想じゃない。

「全部君。今度の修学旅行は、お歳暮君を君の班に入れる事に決まりましたから」

「えー、なんでやねん」と、独り言の様にツッコむ僕。それを聞いていたマリアが乗り出してツッコむ。

「お前、関西人とちゃうやろ」

「お前こそ、関西人ちゃうやろ」と僕はオウムの如く言い返した。このやり取りが五分間も繰り返された。

「なあ、どうでもいいけど、よろしくな全部」急に爽やかになるマリア。軽くテニスか何かで汗を流したかのような爽やかさだ。僕も負けじと、早朝に小鳥達と会話をしながらジョギングでもしたかのような、爽やかさで対抗した。

「こちらこそよろしくね、マリア」爽やかにし過ぎて、つい下の名前で呼んでしまった。すると、マリアははしゃぐはしゃいだ。

「やっと下の名前で呼んでくれたね」

「義理の親に、子供がなついた時みたいな言い方するなよ。もしくは、恋人が初めて下の名前で呼んでくれた時みたいにー」

「先生全部君がうるさいです」チクリを入れるマリア。

「どうした全部、いつも一人葬式みたいに静かなお前がおしゃべりなんて」と先生。

「告白されましたー」と真っ赤な嘘をつくマリア。クラス中、爆笑で揺れる。

「とりあえず、静かにしなさい」と、なだめる先生。

「お前裏切ったな」僕はマリアに問い詰める。

「裏切られるのは嫌だろう。だから俺を裏切るなよ」チンプンカンプン。訳の分らないことを言うマリア。

「それは裏切った奴が言うセリフじゃないだろう」

「裏切った事のある奴だけが言える深い名言だ、覚えておくように」鼻水を垂らしながら言うマリア。

「説得力ないなー」と、一応ツッコんでおいた。

「お前が二人で笑わそうって言ってきたんだからな、裏切るなよ」と、そこだけは一途なマリアだった。

そんなやり取りをしている間に、先生の話は修学旅行中に行われる、お楽しみ会の事になっていた。

「みんなには出し物をして貰います。一人でも、グループを組んでもいいですからね。それでは出し物とグループを決めて下さい」みんなはグループを組み始めた。

もちろん、友達のいない僕は一人とり残されていた。それが当たり前だった。それともう一人、孤立する人間がいた。それは今日転校してきたばかりのマリアだった。

十五分経過、先生が話始める。

「出し物とグループを発表して下さい」そう言って、クラスの先頭から発表し始めた。

そして、僕の番が来た。

「僕は一人で・・・」と言いかけた時、満面の笑みを浮かべたマリアが半笑いをしながら・・・つまり、満面の笑みなのか、半笑いなのか、分からない笑みを浮かべて言った。

「全部君と僕は二人で漫才をします。しかも絶対笑わせます。もし笑わせられなかったら、また転校します。全部君と一緒に転校します」

「そこまでしなくていいですから」先生の冷静なツッコミが入る。

「それなら笑って下さい」と、図々しいマリア。

「そんなこと言ったら、漫才じゃなくて脅迫じゃないか」と、不覚にも思わずツッコンでしまう僕。

「じゃあ、僕等の出し物は脅迫にします」ドンドン調子に乗るマリア。これにクラス中が笑いに包まれる、お馴染みの風景。

「漫才をやるのは構いませんが、ここでなくてお楽しみ会でして下さいね」先生も追い込む様に、さらにツッコむ。

なんだかな。今日はクラス中が笑いぱなしになった。

結局、そこで終りの時間がきて僕等は漫才をする事になってしまった。


不安でいてもたってもいられない僕は、話し合いをするためにマリアを引き留めようとした。が、マリアはもう校門の近くにいる。とっととお帰りの様子だ。急いで走って、マリアを引き留めた。

「お歳暮君、一緒に帰らないか?」

「・・・別にいいけど」そう言って、ポツポツと歩き始める僕等。意外にも沈黙のマリア。仕方ないので覚悟を決めて、僕から話かける。

「あのー・・・」すると、それに被せるようにマリアが話し始めた。

「なあ、さっきから言おうと思っていたんだけれど・・・」言い渋るマリア。

「何だよ、はっきり言えよ」催促する僕。

「上履きのまま帰るなんてオシャレだなーと思って、これからは俺も真似していいか?」

「あー、急いで走って来たから履き替え忘れたー」

「もしかして、私服にも上履きを合わせて履く気なのかい?」

「気付いていたのなら、早く言ってよ」

「バカだなー、周りを見てみろよ」周りを見ると、上履きを履き替え忘れて騒いでいる僕を見て、通りすがりの人達がクスクスと笑っていた。

「笑いになったろ」と、マリアは自慢げに僕に・・・。

「それは電柱だろ。僕はこっち」ツッコまざる負えない僕。

「お前と電柱を間違ったんじゃなくて、オシッコしようとしたんだよ」

「お前は犬か」

「日本語をしゃべれる犬がどこにいるんだよ」と、電柱にツッコむマリア。

「それは電柱。僕はこっち」と、ツッコミ返す僕。

このやり取りを十分間も繰り返す僕等、さすがに笑えてきた。

「なっ、笑いっていいだろ?」息を切らせながらマリアが言った。

「息あがっているじゃないか」と、僕も息を切らせながら言った。

「お前こそハア、ハア、言っているじゃないか?」

「僕はハア、ハア、言っているんじゃなくて、アハ、アハ言っているんだよ」どんな呼吸法だよ、と思いながら僕は返した。

「アハッ、アハッ、ということはつまり笑っているということだろ?なっ、笑いっていいだろ?」どうしても笑いがいいものだと言わせたいらしい・・・意外に言いたいだけなのかもしれないけど。

そんなことしている場合じゃない、上履きを履き替えないと。

「上履きを履き替えて来るから、待っていてくれないかな?」

「待っていてくれなんて、水臭いこと言うなよ」

「学校までついて来てくれるのかい?」

「ああ」そう言って、学校とは違う自分の帰る方向にとっとと歩き始めるマリア。

「待っていてくれ、どころじゃなくて待ってくれよー」そう言い残し、上履きのままマリアについて行った。

「それでいい」と、マリアは力強く言った。

「何でだよ?」当然疑問に思った僕は聞き返した。

「笑えるだろ」と、マリアはさも嬉しそうに言い放った。

「結局、それかよ」と、僕は完全に呆れた。

「この世に、こんなにオシャレな中学生がいたとはな」そう言って、マリアは完全に笑った。

仕方なく僕は、「これは勇者の靴なんだ。勇者にしか装備できないんだぞ」と、カッチリ開き直った。

すると、マリアがタンタンとツッコむ。

「勇者様は何をする為に、学校に行かれているのですか?」

「・・・上履きを取りに、だよ」と言って、カーッと恥ずかしくなる僕。

「やはり、そのままがいい訳ですね?」と、余裕で得意げなマリア。

「ああ」と言って、僕は受け入れるしかくなり、タンタンと歩き続けた。

歩き続けると、僕の家からはどんどん遠ざかって行く。そろそろ修学旅行での漫才の話をしないと。

「ちょっと待って、話があるんだけど」超真剣な顔をして、僕は言った。

「何?」超ふざけた顔して、マリアは聞き返した。

「修学旅行でする漫才の話なんだけど・・・」僕が言いかけると、マリアは悠然と歩き始める。

「それなら、俺の家で話し合おうぜ」と、言って・・・。

人見知りのはずの僕は、そのままトコトコついて行った。

僕等はそのまま十五分位歩いたのだが、その間もマリアはくだらないことを言ったり、尻を出したりしていた。

僕の脳内コンピューターの計算では、確実に尻を出している時間の方が長かったし、記憶に残っていた。何度もそのことをツッコもうと試みたけれど、僕は上履きを履いている事を、ツッコまれるのが何よりも恥ずかしくて、とても言えなかった。そんな事が頭を埋め尽くす頃、マリアの足が止まる。

「何だよ、急に立ち止まって。迷子にでもなったのかよ?」

「ここだよ」

「何がここなの、お城みたいなお金持ちの家の前に連れて来てさ?」

「ここが俺の家だよ」

「えー、嘘だろ。物凄いお金持ちじゃないか?」

「そんなに驚くなよ。お前の家だって物凄く貧乏なんだろ。俺からすればそっちの方がびっくりするよ。そんな家の中によく人が入りますねって具合にさ、雑技団じゃあるまし」

「馬鹿にしているのかよ?」

「バカ、馬鹿にしているのはお前の方だろ。

俺がお金持ちって言われるのは、お前が貧乏って言われる位に嫌なことなんだぞ。人は見かけで判断したがるけど、大事なのは心が幸せかどうかだろ?」

「・・・確かに」

「お前だって、貧乏だけど幸せだったりするだろ?」

「・・・まあ」

「俺は逆に超お金持ちだけど、不幸せかもしれないだろ?まあ、俺はお金持ちのおかげで世界一幸せだけどな」

「ズコーッ、どういうこっちゃ。結局自慢しているんだろ?」

「まあな、遠回しにな」

「そこまでくれば直接的だろ。それよりもここが本当にお前の家なの?そこの庭にある家がお前の家だったりして?」

「あれは犬小屋だよ」

「あれが犬小屋?ひょっとして僕の家よりも大きいかも・・・」

「なんだ、お前も犬飼っているのかよ?」

「犬なんて飼ってないよ、人が住んでいるんだよ」

「人なんて飼っているのかよ、変っているな」

「飼っているじゃなくて、僕とお母さんが二人で住んでいるの」

「お父さんは外で飼っているのか?」

「・・・お父さんの事は言うなよ」

「何だよ、急に暗い顔してさー。父繋がりでお乳の話ならしていいかな?」

「別にお前とお乳の話なんかしたくないよ。それよりもお前の父親、何の仕事しているの?こんなにお金稼いでさ」

「親の乳の話しろっていうの?」

「違うよ、父親の仕事の話が聞きたいの?」

「父親の地獄の鼻血なんて見たことないよ」

「鼻血じゃなくて、父親の話がいいの」

「父親の放し飼いか、そんなの見たいかなー」

「もういいよ。聞いたこっちがバカだったよ」

「だったら、こっちだってバカだよ」

「張り合ってどうするんだよ。いい加減にしろ」

「いい加減にするのはお前の方だろ。俺の父親の話が聞きたいなら素直そう言えばいいだろ」

「さっきからそう言っているだろ」

「だって、上履き履いたまま言うから、ふざけているのかと思ってさ」

「・・・それを言うのは勘弁してくれよ」

「お前がそれを言われるのと同じで、俺に父親の仕事の話を聞くのは勘弁してくれよな」

「分かったよ、もう聞かないよ」

「俺の父親、教会の牧師やっているんだよ」

「ズ、ズコー。聞いてないのに、あっさり言いやがった」

「俺の父親、教会の牧師やっているんだよ。

俺の父親、教会の牧師やっているんだよ」

「一人でエコーかけるな。それにしても教会の牧師ってそんなに儲かるのかよ?」

「教会の牧師じゃなくて、球界の星だったかな?」

「そんなの、聞き間違うかよ」

「うるさい、教会の牧師で文句あるか。あるなら懺悔しなさい」

「誰がお前に懺悔するか」

「俺は牧師の息子だぞ」

「だから何だっていうんだ?」

「俺はチンチンだって言っているんだぞ」

「そっちのムスコじゃないだろ」

「確かに俺は、女の子じゃなくて男の子だから、ムス子じゃなくてムス男だな」

「そういうことじゃないだろ。それに息子の話なんて聞きたくないんだよ」

「牧師の息子のチチの話なら聞きたいのかよ?」

「どういうことだよ。牧師の息子のチチの話って?つまりは父親の話か?」

「俺の乳の話だよ」

「結局、そっちの乳かよ」

「そっちの乳とは何だ。この左乳が実は、俺の父親なんだぞ」

「じゃあ、右乳は何なんだよ?」

「これは核爆弾の発射ボタンになっている」

「なんで核ボタンがお前に付いているんだよ?」

「うるさい。お前に核ボタンの付いた俺の気持ちなんて分かってたまるか」

「こっちこそそんな気持ち分かってたまるか」

「このボタンを押すとだなー・・・」

「押すと何だよ?」

「とても感じてしまうんだ」

「アホか、お前は」

「アホじゃない。俺は金持ちだ」

「また自慢かよ。それにしても何で牧師がこんなに儲けられるんだよ。きっと悪い事でもしているんじゃないか?」

「誰、家のパパの悪口を言うのは?」そう言って、豪華な家の豪華な扉が開いて豪華な女性が豪華に出てきた。そして豪華に続けて言った。

「家のパパの悪口を言っていいのは、あなただけなのよ」と、いわれのない訳の分らない事を言われた僕は「・・・どういう事ですか?」と、ビクビクしながら小声で返した。

すると、マリアがドンと言う。

「この人、俺のお父さん」

「どう見てもお母さんでしょう」と、お母さんに、すぐにドンとツッコまれていた。

「この子はお友達、それとも・・・」マリアのお母さんが、息子のマリアに尋ねる。

「ああ、新しい生贄だよ」と、マリアは平然と答えた。

「それなら家の前で立ち話してないで、家に上がって下さいな。フフフ・・・」と、マリアのお母さんは不気味な笑みを浮かべた。


そして、僕はマリアのお城みたいな家に招かれたのだが、玄関で靴を脱ぐと早速マリアのお母さんにツッコまれた。

「どうして、上履きを履いてらっしゃるの?」マリアがすかさずフォローする。

「これは勇者の靴で、彼は勇者様なんだよ、ママ」・・・全然フォローになっていない。

「そうよね、上履きで歩き回るなん勇気がいりますものね。オホホホ」そう言って、マリアのお母さんは天井近くまで高笑いした。

その恥ずかしさのあまりスイッチが入る僕。人見知りの対人恐怖症が目を覚まし復活した。震えて一歩も動けない。

それを見て、マリアが不満そうに言う。

「何で家に上がんないんだ。、勇者様がお城に入るのは、ロールプレイングゲームの基本だろ?」

「・・・そうだけど」一言返すのが精一杯だ。

「何で震えているんだよ。それはロールプレイングゲームじゃなくて、ロンリープルプル震えるゲームじゃないか。独り占めしないで、俺も混ぜてくれよ」そう言って、二人は玄関で黙って震え続けた。十分間位。別に得点が上がる訳ではないのに。

次第に震えも止まりようやく動けるようになった僕は「お邪魔します」と、言って未知の家に上がった。

「そうこなくっちゃ」と、マリアもようやく動き出して、玄関の扉を開けて外へ・・・

「そっちじゃないだろう」と、ツッコめる位にはなる僕。

そして、マリアの部屋に案内される、勇者様に。廊下には沢山の扉があった、それを見て僕は言葉を漏らす。

「部屋が沢山あるね」

「これは全てトイレさ」

「どれだけ用が足せるんだよ」

「これだけ部屋があると、トイレがどこにあるのか分らなくなって困るんだよ。トイレ見学する時に」

「トイレ見学なんてしないだろう。用を足す時に困れよ」

「こんな細かいギャグも拾える位には回復したか。玄関では顔色悪そうにしていたけど安心したよ。しっかりしてくれよな、生贄なのだから。フフフフ」

「さっきから生贄だーって言っているけど、ギャグだよな?このお城みたいな家にいるとギャグに聞こえなくてさ」

「俺もさっきからギャグに思えなくて怖いよ」とギャグを言いながら、一つの扉を開けた。そこは、僕の家よりも確実に大きいマリアの部屋だった。

「この広い部屋に一人でいると、寂しくなるんだよなー」とマリアが呟く、それが僕には初めての本音のように聞こえた。

「結局は自慢なんだけどな」と、マリアは付け足してはいたが・・・。

そして、部屋でくつろいでいると、見た事もない飲み物や食べ物が、ジャンジャン運ばれて来た、何かのお祝い事の様に。僕は遠慮をしながら、でも興味があったので、ちょっとずつ摘まんで頬張った。

「うまい」思わず口から叫びがこぼれる僕。

「うまいだろ。それは牛の乳とマヨネーズとイカを混ぜ合わせて作った物だからな。頭文字を取ると丁度う・ま・い・になるだろ。まあ、並べ方によってはまういにもなるけどな。どうだ、まういだろ?」

「ああ、まういよ。それよりも本当にそんな物の混ぜ合わせで出来ているのかよ?」

「疑り深いなー。それは梅とマグロとイクラを混ぜ合わせて作った物だからな。頭文字を取ると丁度う・ま・い・になるだろ。まあ、並べ方によってはまういにもなるけどな。どうだ、まういだろ?」

「ああ、まういよ。それよりも本当にそんな物の混ぜ合わせで出来ているのかよ?」

「猜疑心の塊だね。それはうどんと豆とイタリアのスーツを混ぜ合わせて作った物だからな。頭文字を取ると丁度・・・」

「何回このくだりやるんだよ。それにイタリアのスーツ入っちゃっているしさ」

「分かってないなー。一流の物に一流の物を足して作ると、二流の物が出来るんだよ」

「二流になっちゃ駄目だろう」

「何だよ。お前は人の家の食べ物に文句をつけにきたのかよ」

「そうじゃなくて、僕は修学旅行でやる漫才の話し合いをしに来たんだよ」

「真面目な奴だな漫才なんて適当に人の持ち物でも盗めばいいだろ?」

「それは漫才じゃなくて犯罪」

「だったら裸にでもなって適当にしゃべればいいだろ。きっと笑ってくれるぜ」

「それじゃ先生や女子に怒られるだろ。それに漫才は適当にしゃべればいいってものじゃないんだ。念密に練られたネタが必要なの。それには強烈なボケと鋭いツッコミが要求されるんだよ」

「つまり、ボケた老人が寿司の配達をして、そのバイクで何かに突っ込めばいいのか?」

「何の話をしているんだよ」

「ボケにツッコミにネタと言ったらそうなるだろ。それともボケッとしてポケットに手をツッコンみながらネタらいいのかよ?」

「全然違う。とにかく人が笑うようなネタを創作して、練習するんだよ」

「漫才をやる人みたいこと言うなよ」

「漫才をやる人みたいなじゃなくて、実際にやるんだろ。僕達で漫才を」

「その話が本当なら新鮮なネタが必要だな」

「何で今更疑っているんだよ。言い出したのはお前だろ」

「漫才にネタがいるなんて知らなかったんだよーん。漫才なんて言っちゃいけない事を、満載にしゃべっているだけなのかと思っていたんだよーん」

「漫才と満載をかけて現実逃避したい気持ちも分かるけど、逃げてはいけない。何故なら僕等には、後一週間しか残されていないんだからな」

「一週間って事は、あと五日しかないのかよ」

「七日だ。どういう計算しているんだよ」

「だって片手じゃ五までしか数えられないぞ」

「両手使えよ。それに片手でも指を折りたためば数えられるだろ。そもそも数えなくても分るだろうしさ」

「あっ、指折りたたんだら数えられた」

「指を外側に折りたたむな、気持ち悪い」

「分かったから、ワーワー騒ぐなよ。残りの一週間でネタを用意すればいいんだろ」

「出来るのかよ?」

「ああ、俺の知り合いにネタの作れそうな奴がいてな、そいつに頼んでみるよ。全部冗談ていう奴なんだけど・・・」

「僕じゃないか」

「ああ、お前ならきっといいタネを植えられるよ」

「タネ植えてどうするんだよ。ネタの話だろ」

「ああ、分かっている。笑いのタネを植えるという話だ。きっと立派に咲かせて人を笑わせる事になるだろう・・・半年後に」

「半年後じゃなくて、一週間後じゃなきゃ困るんだよ」

「大丈夫、俺がついていてやるからさ、ツンツン、ツンツン」

「指で突かれても、邪魔になるだけなんですけど」

「そんな堅いこと言うなって、冗談」

「下の名前で馴れ馴れしく呼ぶなよ」

「冗談も、俺のことマリア様って呼んでいいぜ」

「なんで敬わなきゃいけないんだよ」

「とにかく、漫才をするならそれ位に仲良くやらないとな、冗談」

「・・・分かったよ、マリア」人見知りの僕は、勇者並の勇気を振り絞って呼んだ。

「マリアじゃなくて、マァ・リィ・アァ・だ」

「発音なんてどうでもいいだろ。それにしても男の子なのに女の子みたいな名前だね、マリアって」

「本当は女の子が生まれる予定だったから、名前はマリアにしようと決めていたらしい。でも、結局は男の子の俺が生まれた訳だろ。だから悔しくて、せめて名前だけでも女の子にしようということでマリアという名前になった訳さ」

「よく分らない理由だな」

「学者達の間では、俺の男性ホルモンの分泌が多すぎるので、マリアという女性らしい名前を付けることで、男性ホルモンの分泌を抑えているという説もある」

「どんな説だよ」

「最も有力な説は、赤ちゃんの時に、他のどんな名前で呼んでも泣き出してしまうのに、マリアと呼ぶ時にだけ泣きやんで笑ったという。これが本当の話だ」

「そうだったのか」

「後で分かったのが、過剰な男性ホルモンを抑える・・・」

「その説はもういいよ。それよりもネタが作れるか心配だよ」

「俺は安心しているけどな」

「どうして?」

「冗談が作ればいい」

「どうして?ネタなんて作ったことないよ、僕」

「今日、冗談は俺に作り話をしてくれたろ、あれをネタにすればいい」

「あれはとっさに出てきた話で、ネタなんてとても」

「大丈夫、他人を信じろ」

「自分を信じろみたいに言うなよ」

「あえてもう一度言う、他人を信じろ」

「分かったよ。結局はマリアの言うことを信じればいいんだろ。つまり自分を信じればいいんだろ」

「そういう事だ」

「回りくどい言い方するなよ」

「よし、この世で絶対笑わない者などいない、抱腹絶倒の極上最高級なネタは冗談が作ってくれるからいいとして」

「敷居を上げ過ぎだろ」

「名前が欲しいね、コンビ名」

「確かにそうだね」そう言って、二人で思い浮かんだ名前を、無限にではないけれども出し合った。

「カイザースラウテルン、ポセイドン、太郎、苺さん、一五三、おなら大統領、高速ポリッシャーおやじ、ゲリのおかゆ、黒い雪、おさわり先生、長嶋茂雄、感情地図、サムライ紳士、女の子の秘密、泥沼三輪車で宇宙一周、ОL姉さんОL、クレオパトラよしえ、ロボット型幼馴染ともこ、下手くそなだけに芸術的なウォシュレット、妻の日記、大晦日の朝、真剣な大人、真面目なマッチョ、ギラギラ、最後の100点、強がる姑、ファミコン彼女、モラルVSカジノ、強火でドロドロ、土で作った幸せの団子、ピタピタのスパッツズ、お婆ちゃんのパスタ、なで肩会社員X、ミッキービックマウス、トルコの意地、係長の反撃、ハッピーステディーけんじ、女の政治、吉岡の威厳、スースーのセーター団、太ももマニアの一日、豪快な口笛、洗濯機と坂本龍馬、トゲのない薔薇、バンジーシャンプー、閃き道を、ゲンコツ爺さんの過ち、図書館のエロ本、聡明な男カツジ、オシャレ坊主の街、鷲掴みにしたいお尻、お尻お尻、子供とお尻、密着お尻、お尻の学校、カリキュラムお尻の時代、人生とお尻、お尻が教えてくれる10の事、マリアのお尻、お尻」

「結構出たな」マリアが便秘の後の様に言う。

「うん、でも最後の方はお尻ばっかりだね」と、僕は自然に返した。

「ケツと呼んでやってもいいけどな」と、殿様の様に偉そうに言うマリア。

「名前どれにする、迷うね」

「俺はこの中にない名前がいいな」

「えー、何の為に選んだのさー」

「冗談、シェイクスピアを知っているかい?」

「知っているよ」

「俺はシェイクスピアの歩き方が大好きでな、だからコンビ名は彼の作品から取りたいんだ」

「歩き方は関係ないだろ。それに見たこともないだろ」

「ロミオかジュリエットっていうのはどうかな?」

「それをいうならロミオとジュリエットだろ」

「ロミオとジュリエットが出会うと悲劇になってしまう。ただ悲劇と喜劇は紙一重なんだ。つまり、ロミオかジュリエットだけなら、究極最大の悲劇から、究極最大にして最高の喜劇に変わるんだ」

「・・・ロミオかジュリエット」

「俺、昔から憧れていたんだよね。ロミオ様―、ロミオ様―、って言いたかったの」

「何故ジュリエットになりたがる。それにそれは演劇だろ。僕等がやるのは漫才だよ」

「大丈夫、勘違いなんかしてないもん。ちゃんと演劇も漫才も両立するからさ」

「・・・時間がないから、漫才だけにしてくれないかな。演劇には付き合いたくないしさ」

「そんなこと言わないで、ロミオ様―、ロミオ様―」そう言って泣き笑いのマリア。その日は二時間も演劇に付き合わされた。もちろん漫才の練習は一切せずにだ。

結局、コンビ名はロミオかジュリエットに決まった。それは僕もちゃんと納得した。ちゃんと納得してないのは、僕が人を笑わせる為のネタを作ることだ。

「もう夜だから家に帰るよ」と、僕はツンと言った。

「結局、私とロミオ様は離れ離れになる運命なのね」泣く泣く声を上げるマリア様。

「嫌でも、明日、学校で会えるだろ」

「なるほど、ロミオとジュリエットも同じ学校に通えば良かったのにね」などと言って、一人深く心底まで納得するマリアだった。

「それじゃあ、今日はありがとう、バイバイ」キチッと別れを告げる僕。

「ソルジャー、昨日は、アリが百匹、パイパイ」キチッとふざけて、今日最後の尻出しをするマリア。

「あなたの顔を見てお別れすると、寂しくなるから」って、潤んだ瞳で言い訳してくれた・・・。


玄関までしか送ってくれないマリアのおかげで、帰り道を少し間違ったけど、とてもいい気分でいれた。青春なのかな、これが・・・。

そんな気分でいれるのは、お母さん以外の人と久しぶりに話したからだろう。人見知りの僕には、いつ以来のことになるだろうか。きっと明日も・・・そう思いながら、家に着いた。

確かにマリアの家に比べると・・・エエい、僕の温か家族―。

「ただいま、お母さん」

「おかえり、冗談、遅かったね。どこに行っていたの?」

「友達の家に寄っていたから遅くなったんだよ」

「そう、友達と遊んでいたのかい?」

「遊ぶというよりお世話しただけ」

「お世話って、執事じゃないんだから」と、お母さんがポアッとツッコんだ。

その時、あのお城みたいな家と尻を出すマリアの姿が頭に蘇って、大笑いしてからまた大笑いした。

「アハハ・・・」それを見て、お母さんも優しく笑った。

いつ以来だろう。自分の家で笑う振りじゃなく、心から笑えたのは。

今日、中学生になってから、初めての友達?・・・相方が出来た。


それから一週間。ネタを考え、マリアのお城な家でおぼつかない漫才の練習をした。もちろん、貴重な時間の大半を、彼よがりの演劇に費やしたのだが・・・。

 そして、とうとう修学旅行の日が来た。真面目な僕は、いつも通り遅刻せずに集合場所に着く、ブレることもなく。いつもなら平気で遅刻をする生徒でも、さすがにこの日はきちんと時間に間に合わせていた。バッチリ。

なのに、マリアは・・・どこをどう探しても見当たらない。

「それでは出発します」と、先生の合図だ。

「先生、お歳暮君がまだ来ていません」対人恐怖症の僕は、顔を極限の彼方まで引きつらせ、言いこぼしながら言った。

「・・・出発します」無情にも先生の声が辺りに響いた。

・・・どうしたんだろう、マリア。病気や怪我じゃなければいいけど、大丈夫かな。それに僕も大丈夫かな。このままだと一人で漫才をする事になるな、とグルリ思い巡らした。

でも、それより単純にマリアが来なくてつまらないなと少し少し少し・・・大分思った。

修学旅行の一日目、結局マリアは来なかった。僕は誰とも会話をせずに、釣り竿の先に付いたルアーのように、ただみんなの行動にフラフラとついて行くだけだった。

夜も就寝時間よりも、誰よりも早くに布団に潜り込こんだ。ただ、少しも眠れなかった。これがいつもの僕さ、っと自分に言い聞かせる。それを何かのCМのように繰り返した。そして、マリアが来ることを流れ星に祈った。

真面目な僕は、二日目の朝も起床時間よりも早くに、パチリッと目を覚まして、朝食の準備を始める。何も面白いことをする気配もなく・・・これが当たり前か。

二日目は奈良の大仏を見学に行った。沢山の鹿が、僕を博愛の元に迎えてくれる。僕はこの修学旅行が始まって、初めて無邪気に浮かれた。

鹿せんべいを大切に買ってきては、永遠と鹿に与え続けた。与え過ぎだろうと、ツッコミたくなる位に、飽きることなく止めどなく与えた。楽しいな、楽しいな、とドンドンドドント浮かれていった。

この時間は自由行動なので、みんなは煙の様に姿を消してしまい、僕は唯一取り残されていた。しかだけに、しかし、そのことにまったく気付かない位に浮かれ酔いしれていた。周りなど見えなくなって当然だ。

そして、とうとう他の学校のイカした不良に、ゴツンとぶつかってしまった。

「どこ見ているんだ、テメー」

「すいません」

「すいませんじゃすまないんだよ。お前、喧嘩売っているのかよ?」

「すいません」と、重ね重ね謝り続ける僕。もう駄目だっと思い詰めた次の瞬間、「奈良の大仏は何処ですか?」と、道を尋ねる観光色の強い声がする。助かったーと、見上   

げてみると、なんとその声の主はあの、あの、あのマリアだった。

「うるせーな、今もめているところなんだよ。邪魔するな」燃え盛る不良。

「あなたが奈良の大仏ですか?」燃やすマリア。

「誰が奈良の大仏だ、コラー」

「大仏は、パンチパーマが特徴だと伺っていたもので」

「テメー、なめているのかよ?」いきり立つ不良達。そして、舌を出して不良達の顔を、ベロベロ舐め回すマリア。

「なめんじゃねーよ、舐めんじゃねーよ」と、嫌がる不良。

「なめたくない、舐めたくなーい」と、もっと嫌がるマリア。

堪忍袋の緒を切らした不良達は放つ。

「お前ら、二人ともこっちに来い」

そして、僕等は人気のない所にコンコンと連れていかれた。

初めはマリアの顔を見て助かったと思ったけど、今は逆にもっともっとひどい目に遭うんじゃないかと、ヒヤヒヤビヤビヤしてきた。

それでもマリアはふざけっぱなしで、不良達の怒りの炎にどんどんと薪をくべていった・・・それがマリアの使命であるかのように。

「ここなら誰にも見つからないな。たっぷり痛めつけてやるか」と、ゴリゴリ脅す不良達。

「炒めないで下さい」と、トンチンカンなマリア。

「野菜じゃないんだから炒めるか、痛めつけるって言っているんだ。とりあえず、その前に金を出せ」

「鐘なんて持ってないですよ。代わりに鈴なら持っていますけど、鳴り物繋がりで」と、お土産で買った鈴を、ポケットからゴロッと取り出した。

「鈴なんていらねえんだよ。金を出せ、金を。鳴り物の鐘じゃねえぞ、お金の金だ。分かるだろう、お金の金。つまり、お金の金だって」と、あまり頭の回転数の良くない、非科学的な説明をしてくれる不良達。

「尻ならいくらでも出しますけど」さらにボケちゃうマリア君。

「ふざけるんじゃねえー」と、怒りに任せて不良がマリアの胸倉を捕まえ・・・避けるマリア。捕まえようとする不良。避けるマリア。捕まえようとする不良。避けるマリア・・・。このやり取りが五分間続き、僕は少しツボに入って笑ってしまった。

そして、とうとう胸倉を捕まえたマリア・・・って、逆だろう、と心の中でワイワイ一人ツッコむ僕。

当然の如く、すぐさま不良達に仲良く囲まれてしまった。言わんこっちゃない。

「すいません、わざとぶつかったんじゃないんです。よそ見していたら・・・すいません」ペタペタペタペタ必死に謝る僕、さすがにここでは人見知りしなかった・・・当たり前だ、っと読者がツッコむ。

「すいません。こいつ女の子のパンティー覗こうとしていたら、ぶつかっちゃったみたいで、許してあげたいでしょう?」と、何の得にもならないフォローで許しをこうマリア。

「あのー、今から僕達漫才するんで、あなた達を笑わせることが出来たら許してくれませんか?もし出来なかったらこいつに、胸を張って何でもして構いませんから」と、革命的な提案するマリア。

それを耳で、生で直に聞いた不良達の感想は、「なかなか面白い提案だ、笑える。その話ゴックン呑んでやるよ。だも、もしも俺達が笑わなかった時には、こいつがどんなに凛々しくなっても知らないからな」と、彼等は紳士に受け入れた。

何でオンリーミー。僕だけに与えられた特権なの、と心の中で叫んだが、心の外には届かなかった。

「有難くない幸せが有難き幸せ」と、マリアは漫才出来る喜びをこうも表現した。

ただ、この状況を照れずに考えて欲しい。怒り狂って理性の欠片もない、牙剥き出しの血に飢えた獰猛快挙の獣達(言い過ぎ)を、聖者の愛で笑わせし癒す事など・・・果たして出来るのだろうか?神よ答えておくれ。

当然、そんな僕の崇高な魂は置いてけぼりを食らい、僕等の記念すべきお初の漫才は、由緒正しくない人気の欠片もない荒れ果てた場所で、笑いを忘却した魂の凍りついた不良達と、何気に遠くからヒョッコリ顔だけ出した大仏様の前で、盛大とは無縁に行われる事となった。有難い大仏様がちゃかり見守って下さる事が、唯一無二の救いとなった。

そして、マリアは希望を目指してこう言うのであった。

「僕等がこうして絡まれてしまったのは、運が悪いからだと思います。なので運が悪いという漫才をします」


〈タクシー〉 a:冗談 b:マリア


a:この間、道を歩いていたら、スーツを着たおっさんが30人位歩いていて、集団で。

b:30人も一緒に何しているの、遠足か?

a:おっさんは遠足なんてしませんよ。何かの後をつけているみたいなんで、その後をつけて行ったんですよ。そしたらみんなで、一人の女子高生をつけているのが分かったんですよ。

b:担任の先生だったとかじゃないの?

a:30人の集団ですよ。しかもこの集団にはある共通点があるんですよ。

b:どんな共通点?

a:みんなが息をフーフー吐いているんですよ。

b:熱い物でも冷ましているのかい?

a:惜しい、みんなで風を起こして、女子高生のパンティーを見ようとする集団だったんですよ。

b:アホだね。

a:アホだなーと思って見ていたら、女子高生のスカートがヒラヒラなびいてきて。

b:見えたのかい、パンティー?

a:いや、それが非常に言いにくいんですけど・・・。

b:是非言ってくれ。

a:彼女、パンティー穿いてなかったんですよ。

b:じゃあ、何を穿いていたというのだい?

a:何も穿いてないんですよ。スカートの下は尻でした。右と左にパッカリ割れていましたね。

b:それはラッキーと言うやつだろう、くじ引きで言う大吉。

a:中吉位だと思いますよ。まあー、でもおっさん達はガッカリしていましたね。

b:なんで尻の前でガッカリ出来るかなー。

a:やっぱり、パンティー見たかったんじゃないんですか。

b:そんなもんか。

a:この話を聞いて卑劣だと思う人もいるでしょうから、一応言っておきますけど、おっさん達も全員ノーパンですから。

b:何でだよ、パンツ穿けよ。

a:もちろん、僕もですけど。

b:せめてお前は穿いておけよ。

a:これでイーブンですよね、ヒフティー、ヒフティー。

b:何で全員漏らしているの?

a:別に漏らしてはいないですよ。

b:じゃあ、何か穿いておけよ、ムズムズする。

a:あれなんですよ、コンタクトレンズみたいな感じなんですよ。

b:どういう事?

a:メガネはかけているのか、いないのか見た目で分かりますけど、コンタクトレンズはしているのか、していないのかが見た目では分かりにくい、というのと一緒なんです。

b:つまり、コンタクトレンズを穿いていたって事か?

a:そうではなく、一見何も穿いてないように見える下着を穿いていたという事ですよ。

b:誰が?

a:全員が。

b:セクシィー。

a:はい、そうです。

それよりも、あんまり人前で漏らすとか言わない方がいいですよ。

b:漏らしている人がいるかもしれないからな。

a:品が悪いですよ、他の言い方しましょうよ。

b:例えば?

a:例えばこうです。この間、タクシー乗ったんですけど。

b:セクシーな?

a:普通のタクシーです。そしたら運転手がカレーを食っているですよ。後少しで食べ終わるところなんですけど、具が残っていてなかなか乗せてくれないんですよ。

b:具だけに、タイミン「グ」悪いなー。

a:運転手も焦って、ウインカー、カッチ、カッチなって、僕も急いでいたので、無理やり乗せてもらったんですよ。

b:それで?

a:助手席にカレーを置いて運転し始めてくれたんですけど、運転手の顔はずっと不機嫌で、表示が空車のままでしたね。

b:なんで満車に替えなかったの?

a:私はまだ空腹なんだというアピールだと思いますよ。僕はそのやり方にピンときませんでしたけどね。

b:替え忘れただけだろ。

a:そうですか?かと言って無神経な訳ではないんですよ。助手席にもちゃんとシートベルトしていましたから。

b:カレーにも、プロ意識高いね。

a:それにスパイスの利いた話なんかもしてくれて親切なんですけど、変なのが、言葉の返し方に違和感を覚える時には座席を倒してくるんですよ。

b:何故圧迫される。

a:その他にもちぐはぐな事を繰り返すんですよ。

高速を低速で走ったり、帽子を深めに被ってはいても浅知恵だったり、仕舞には冷や汗を垂らして大丈夫ですを連呼するんですよ。

b:ちぐはぐだなー。

a:僕は眠かったので寝ようとしたんですけど、気になって眠れなかったんですよ。でも眠かったので寝てしまったんですけど。

b:お前もちぐはぐになっているよ。

a:そしたら、物凄い臭いがするので目を覚ましたんです。そして、パッと助手席のカレーを見たらルーが思いっきり増えているんですよ。まさかと思って表示を見たら満車になっていたんです。とうとう運転手はカレーのうんちくを語り始めました。

b:うんちく、それは運転手のうんが悪い。


僕等の初めての漫才はぐっすり終わった。不良達は最後にクスッとだけプチ笑いをした。

「汚い話するなよな。まあ、面白かったけどさ。とりあえず今日のことは許してやるし、忘れないでやるよ。俺達も修学旅行だから楽しくやることにするよ、じゃあな」そう言って、不良達はクッキリ消えて行った。

「あー、助かった」僕は一気に緊張の糸が切れた。

「あー、助けった」と、マリアはいつもと全然変わらない様子だった。むしろいつもより落ち着いていた。緊張出来ないように改造されているのか、こいつは・・・。

「それにしてもびっくりしたよ。急にマリアが現れてさ。おかげで助かったけど・・・もう修学旅行に来ないのかと思っていたよ」

「・・・ああ、俺も行けるとは思っていなかったよ」と、ごく普通に真剣な?顔を見せるマリア。こいつにそんな顔が出来たとは・・・。

「どうして遅れて来たんだよ?」僕はマリアの胸に聞いた。

「実は俺の子供がいなくなっちゃってさ」

「元々お前に子供なんていないだろ」

「たぶん地球の裏側で、他人の子供がいなくなっちゃってさ。探していたんだよ」

「警察の仕事だろ、それは。それにたぶんって何だよ」

「正義感が先走っちゃってさ。本当はいつも通りに学校へ行ったら、教室に誰もいなくて、みんな学校辞めちゃったのかと思ってさ」

「そんな訳ねえだろ」

「ついに透明学級が始まったのかと思って」

「ついにって、待っていたみたいに言うなよ」

「とりあえず、教室を独り占めできるから○○○したり、×××したりしてさ」

「・・・聞きたくなかった」

「それで家に帰ったら、電話が来て保険の勧誘がどうとかこうとか・・・」

「その話は省けよ」

「その後、担任から電話があって、どんなパンティー穿いているの?って聞かれてさ」

「担任が疑いようもなく変態じゃねえかよ」

「俺はパンティー持ってなかったんで、仕方なくパンティー買いに行って」

「話がズレているよ」

「本当は何で修学旅行に来ないんだ?って聞かれて、ようやくみんなが修学旅行に行っていることに気が付いてさ」

「遅すぎるだろ」

「それから荷造りする為に、パンティーを買いに行って」

「パンティーいらないだろ、それにパンティーって言いたいだけだろ」

「何だ、パンティーって言って欲しいだけなのかと思っていた」

「どんな頭の回路しているんだよ」

「どうにかこうにかして、鹿の臭いを頼りにここまで来た訳さ」

「どんな嗅覚だ、それは」

「何回か間違って動物園寄っちゃったけどな。だから鹿は見飽きているのさ。それよりも集合時間だから戻った方が良くないか?」

「本当だ」そう言って、僕等は別々の方向に別れて・・・

「そっちじゃないだろう」と、空前絶後のとは言えない、何の変哲もない普通のツッコミを強列に入れる僕。

「奈良の大仏、奈良の大仏見たいー」格好良くぐずるマリア。

「ここからでも顔だけは見えたから、それで我慢しろよ」

「奈良の大仏―」そう青空に向かって叫びながら、奈良だけにおならをするマリアを、無理やり引きずり回して連れて帰ったとさ。

それから僕は、マリアと双子みたいにそっくりに行動を共にして、修学旅行を楽しい?思い出に塗り替えていった。

おかげで変てこな思い出の歴史が創造されていくのであった・・・これはとても人には言えないな。


そして、とうとう修学旅行最後の夜を迎える。お楽しみ会の幕開けだ。

「皆さん、修学旅行の最後の夜なので最後まで楽しんでいきましょう」と、陽気な司会があおる。

みんなの気持ちは天まで高ぶっていった。そして、歌やダンス、マジックに一発芸といろんな出し物が押せよ押せよのお祭りでゾクゾクと登場して、みんなをゾクゾクさせた。

その完成度が高くても低くても無神経に?何でもかんでも盛り上がった。ちょっと異常な雰囲気。

そして、順調に大トリの僕等の出番になった・・・大トリ、聞いてないよー。緊張してきた、焦って慌ててマリアに話しかける。

「どうしよう、僕等大トリだって」

「大丈夫だって、俺達がオオトリに見える奴なんていなよ」

「・・・そうかなあ、そう言われればそうだね」

「ああ、俺達はれっきとした人間だよ」

・・・マリアは、完全に大トリを大鳥と勘違いしている。唖然とし過ぎて逆に冷静になった。これはありがとうと言うべきなのか?

そんな難解な疑問に挑んでいると、僕等の輝かしく待たれた?栄光の出番が来た。

この修学旅行で不良に絡まれた経験もネタにして、ボインボインと漫才を始めた。


〈甲子園〉 a:冗談 b:マリア


a:最近、不良に絡まれて困るわ。

b:それなら逆に、不良の格好すればいいだろ。

a:それいいね、でも駄目だ。

b:どうして?

a:ほら、学校に行く時に身だしなみ整えるだろ?

b:そりゃそうだ。

a:その時に鏡見ますよね?

b:それがどうした?

a:その時にあまりの恐怖に絡まれてしまうじゃないか。

b:自分に絡まれるか。

a:それだけじゃない。学校に行く途中に窓ガラスや車のミラーなんかもある。そうだよ、きっとなんだかんだで全財産持っていかれて、生活が苦しくなって体調不良になってしまうよ。

b:考え過ぎだって、そんなに心配なら財布持っていかなきゃいいだろ。

a:もし不良が絡んで来たらどうするんだよ。せっかく絡んだのにこいつ財布持ってないじゃないかって、ガッカリするだろ。

b:そんなの別にいいじゃないか。

a:良くないよ、絡まれたらお金を払うのが礼儀だろ。君がもし自動販売機にお金を入れても、商品が出てこなかったら、ガッカリするだろ。

b:それならあなたは自動販売機なんですか?

a:自動販売機に間違われるとは思わなかったよ。

b:ごめん、言い過ぎた。

a:僕は手動販売機なのに。

b:売り子かい。

a:売り子と言えば甲子園。

 (コントに突入)

b:バッター打ちました。大きいホームランです。

a:また入りましたね。もう限界でしょう。

b:気温も40℃を超えました。

a:それに今年も台風の影響でボールがあまり実りませんでした。

b:相変わらずのボール不足が続いています。

a:近年使われているボールは、何度でも使用できるリサイクルボールと言って、素材が今までのボールよりも軽くてよく飛ぶんですよね。それに大変投げづらい。おかげでピッチャーがだいぶ不利になりました。

b:それに去年から、ストライクゾーンが10分の1になったんですよね。

a:それにピッチャーは、目隠しが原則として加えられたんですよね。

b:それに加えバッターには、今までの5倍もある超極太金属バットの使用が許可されています。

a:バッターに有利な条件しかありません。

b:バッターブームの到来から、ピッチャー日照りが続いています

a:昔は河原とかでよく見かけたものですけど、最近はめっきり見かけなくなりましたね、ピッチャー。

b:政府の調べたデーターによると、不良の8割が元ピッチャーという結果が出ました。

a:そりゃグレますよ、こんだけ打たれれば、PTAが黙っていませんから。

b:そうですね、政府の方も真剣にピッチャー制度の廃止を検討しているとか。

a:来年からは、負け投手の去勢が義務付けられる、なんて噂も出ていますから。

b:おーっと、大きい大大大ホームラン。

a:ピッチャーが何か叫んでいますね。

b:お父さんと叫んでいるみたいですね。

a:確か、彼のお父さんは昔ピッチャーをやっていて、甲子園に出場する予定だったんですよね。

b:ええ、でも大会前に怪我をしてしまい出場出来ませんでした。

a:彼はお父さんに甲子園で投げる姿を見せたくて、ピッチャーになったそうなんですよ。

b:ええ、ちなみに、今年から学生以外の球場でも応援は禁止になりました。

a:違反すると罰金一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇円を支払わなければなりません。

b:それに加え、テレビ放送も廃止になりました。

a:彼の勇姿をお父さんに見せる事は絶対に叶いません。何かの陰謀かー。

b:むしろ、この姿は見せないのが正解でしょうね。

a:今年から鳴り物での応援も禁止になりましたから、もしかしたら彼の叫び声だけはお父さんに届くかもしれませんね。

b:それとも届くのはホームランボールの方なのかー。

a:球場には売り子の声だけが響いています。

b:また打たれました、超ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー特大ホームラン、ボールは場外を超え遥か国境を超えていきました。

a:言い過ぎですよ、それにしても何も考えずに見ていると、ゴルフの打ちっぱなしに見えてきます。ポンポン、ポンポンと。

b:私には、花火に見えます。たまやー。

a:ロマンチックですね。おーっとピッチャーがマウンドに倒れこみましたー。寝不足か?

b:限界でしょう、3回KO負けですね。

a:野球のグローブも何だか、ボクシングのグローブに見えてきます。

b:それはないですけども見て下さい、マウンドを枕にして眠るピッチャーを。彼が恐らく負け投手にはなるでしょう。しかし、彼が何に負けたというのでしょうか?

a:天使の寝顔です。彼は今、本当の夢の中にたどり着いたところでしょう。

b:これが夢にまで見た。

a:甲子園なんです。


漫才は終わった、ぞ。

実はネタには自信がなかったが、大トリということもあって、大変盛り上がった。この世の幸、祝福の嵐、だ。大成功。

マリアが言い出した事だけれど、みんなの繰り出す笑顔を見ていたら、漫才をやって良かったなと、心の中心で思えた。

この感激と感謝を骨の髄まで伝えようと、隣でそよぐマリアに・・・ピカーン、マリアは素っ裸になっていた。

「もっと笑ってくれー」と、哀れに叫ぶマリア。

それよりも大きい声で勇敢に叫ぶ女子。「本物の変態―」

そして、物が易々と飛び交い豪華絢爛壮絶盛大な?幕切れとなった。

その後、もちろん僕等は先生にしっぽり叱られた。

僕は、少しでもマリアに感謝しようとした事がズキズキ恥ずかしくなってきた。

この世の終わりの如くはしゃぎ過ぎたみんなは、電池切れの様に動かない。疲れ果てたのか、すぐに泥の様にドロドログーグー眠ってしまった。

ただ僕は、漫才をした時の興奮が全然忘れられず、眠れずにいた。

すると、爆睡していると思っていたマリアが、目を閉じたまま話し始めた。

「実は俺、修学旅行の日に40℃の熱が出て、本当は修学旅行に行けないはずだったんだよね」

「・・・それは本当の話?」

「ああ。医者も原因不明だって言っていてさ。俺は諦めてベットから夜空を眺めていたんだよ。すると、流れ星が俺に言うんだよね。あなたが修学旅行に行けるように頼まれましたって。そしたら、次の朝には熱が引いていたんだよ」

「・・・それは本当の話?」確かに僕は、流れ星に祈ったけれど・・・。

「うーん、きっと本当の話なんじゃないか?」

「きっとってなんだよ、自分の話だろ」そう言って、マリアの顔をググッと覗くと、とっくに眠っていた。

僕は思った。色々あったけれど、楽しい修学旅行になって良かったなって。

そして、マリアを起こさないようにそっと感謝した。あの時の流れ星と眠れるマリアに向けて・・・。


 修学旅行から帰って来て、部活にも入ってないポテトな僕等は、マリアの家でヤイヤイ遊ぶのが当たり前の掟となりつつあった。

マリアのお母さんも「自分の子供が増えたみたい」と、喜んでくれた。

マリアも「自分の子供が増えたみたい」と、ふざけてくれた。

お前の子供にはなれないよ、と心の中でそっとツッコミを添えた。

ただ、修学旅行で味をしめたのか、マリアは漫才をしようと貪欲に催促するようになった。聞き分けがなく仕方がないので、僕はネタを作って二人でチョイチョイ練習した。場所はマリアの部屋か、マリアと初めて出会った臭い学校の屋上で、鼻を摘みながらする事が多かった(本当は臭くないよ)。

そして、いつも通り学校の屋上で漫才の練習をしていると、一人の生徒がフェンスに登って飛び越そうとしているのを、もろに発見した。

「危ない」僕は許される声量以上に叫んだ。

「今更気付いたのかよ、俺は元々危ない奴なんだよ」と、当然勘違いのマリアさん。

「お前じゃない、あそこを見ろ」

「見たけど?」

「俺のあそこを見てどうするんだよ。あっちだ、あっち」

「あー、フェンスに登っている。楽しそう、俺もやる」

「遊んでいるんじゃねーよ。自殺だ、自殺。急いで止めるぞ」そう言って、僕等は全力よりもだいぶ早く駆け寄った。

「自殺なんて止めろ」僕はカンカンに叫んだ。

「えっ、自殺?」彼は元から丸い眼を、さらに丸くして驚いていて、僕を驚かした。

「自殺しようとしていたんじゃないのかい?」

「違うよ。そこに腰を掛けて空を見上げようとしていたんだよ。気持ち良さそうだろ、嫌なことも忘れられそうだろ」

「びっくりした。でも危ないよ、そんな所に登ったら」

「・・・危ないのはお前の隣の奴だろ?」そう言われて、隣を見て見ると、マリアが礼儀正しく裸になっていた。

「・・・何しているの?」僕は思はず、裸の紳士に説明を求めた。

「お前が自殺しそうだって言うから、俺が裸になって魅惑してやったんだろうが」

「確かにお前に目がとまるけども」

「それに言ったろ、危ないのは俺の方だって」

「・・・確かに今なら分かるけど」

「アハハ・・・。君達面白いね」そう言って、彼は声高らかに笑ったんだ。

「危ないから降りておいでよ」そう言ってアプローチして、僕は彼をフェンスから降ろす事に成功した。

「いやー、それにしても久しぶりに笑ったよ。ありがとう」

「どういたしまして」何となく、風に吹かれながら照れる僕。

「最近ずっと笑っていなくてさ。嫌な事ばっかりなんだよ。学校は退屈だし、家に帰れば親はうるさいしさ」と言って、悲劇のヒロイン越えの悲痛な顔をする彼・・・の脇腹を、ここぞとばかりにくすぐるマリア。

「アハハ、止めろ。苦しい、アハハ・・・」

「笑うなんて簡単だろ?」誇らしげに、指で鼻をほじりながら言うマリア。

「そういう笑いが欲しいんじゃないんだよ」そう言って、もくもくと怒られる僕等。

「そんなに怒るなよ、代わりに笑わせてやるからさ。なっ、冗談」

そう言って、僕に合図(尻を綺麗に揉む)を送るマリア。さっきまで練習していた漫才を披露しようというのか・・・分かったよ。

「お前は親子関係が上手くいってなくて悲しいんだろ。それなら俺達が漫才をして笑わせてやるよ。フェンスに登りたがるお前にぴったりの、煙突に登る男の漫才で」そう言って、僕等は彼に捧ぐピリピリの漫才を始めた。


〈親子〉 a:マリア b:冗談


a:それにしても子供育ててみたいね。

b:それならレンタルしてみてはいかがですか?

a:誘拐ですか?

b:誘拐じゃなくて、知り合いの子供を少しの間預かってみるという事ですよ。

a:でもそれじゃあ、可愛がっている内に愛着が湧いて、返すのが嫌になるだろう。

b:だったらどんどん借りてポイントを貯めていきましょうよ。

a:ポイントが貯まるとどうなるの?

b:もれなく無料で新作が借りられます。

a:レンタルビデオみたいな言い方しているけど、どういうこと?

b:新作君は男の子じゃないですか、オシメの取れた漏れない子。

a:借りられるか、それに知り合いに子供いる人がいなくてさ。

b:それは残念ですね。

a:そう、それにできれば自分で作った子供がいいんだよね。でも一人で作れるものじゃないからさ。

b:だったら、粘土で作ればいいじゃないですか?

a:粘土臭い子供は嫌だろ。それに無口だぜきっと。一緒にお風呂に入っても、上がる時には一人になってしまう。別に岩盤浴がしたい訳じゃないんだよ。

b:子供に癒されているじゃないですか。

a:別の癒しが欲しいの。それに俺は、将来立派な銅像になるような子供を育てたいの。

b:それなら銅で作りますか?丈夫ですし。

a:生きているうちは普通でいいんだよ。普通というより立派でいいんだよ。それに銅像と何すればいいか分からないしさ。

b:胴上げでもすればいいでしょ、カリっと揚げて。

a:あげるの意味が違うだろ。

b:それならもみあげ刈り上げればいいでしょうが。

a:あげあげうるさいな、どうはどうした?

b:どうはどうでもいいでしょう、子供の話なのだから。

 (コントに突入)

a:おい、煙突なんかに登って危ないじゃないか。

b:うるさい、僕は鳥だー。

a:あんたが鳥だーって言うから、鳥が逃げちゃったじゃないか。

b:僕は自由を求めているんだ。

a:つまり、自由じゃないって事だな?

b:そうだー。

a:素直だね。それよりこんな昼間から騒いで、仕事はどうした?

b:僕はフリーターだ。

a:そんな所に登って親が心配するぞ。

b:親はブリーダーだ。

a:似ているけど関係ないぞ。それよりも早く降りてきなさい。

b:降りるから一つだけ約束して下さい。

a:何をだ?

b:僕が煙突に登って騒いでいた事を、親には言わないで下さい。

a:親を心配させたくないのか?

b:いえ、親が真似するといけないんで。

a:どんな親だよ。

b:僕等親子は仲良くないんです、そのストレスが溜まって煙突に登ってしまいました。

a:どこの親子もそんなものだよ。

b:僕は毎日親と一緒に風呂に入るんですよ。

a:仲いいじゃないか。

b:義理です。

a:義理じゃないよ。

b:義理です。

a:どうして?

b:だって義理チョコ風呂だもの。

a:義理だね。

b:親子丼風呂がいい。

a:それはそれで気持ち悪いだろ。

b:それに言いたい事が後15428個あるんです。

a:男の子は文句なんて言うなよ。

b:僕は男の子じゃないかもしれないんだ。

a:どうして?

b:だってすぐ女風呂に入りたくなっちゃうんだもん。

a:それが男の子だよ。


「アハハ・・・」そう言って、笑い転げてのたうち回る彼・・・笑い過ぎだろう。

「面白かったー。ありがとう、もう自殺なんてしないよ」

「やっぱり、自殺しようとしていたのか」寒気で鳥肌が立つ僕。

「いや、嘘だよ。今のは忘れてくれ。それにしても、今みたいにいつも誰かが笑わせてくれればいいのにな」

「そんなのお安い御用さ」そう言って、彼の脇腹を的確にくすぐるマリア。

「アハハ、それ止めて。苦しい、アハハ・・・」そう言って、また懲りずに怒られる定めの僕等。

「笑いたければ、裸になればいいのに」自分にとっての当り前が、世間の常識とはかみ合わないのだという事を、悟れないマリアがまた変なことを言い出した。

「名案だ」そう言って、何のためらいもなく彼は学生服を脱ぎ出した。その時マリアは言うまでもなくすでに裸だった。そして、彼は僕に凍てつく様な鋭い視線を向ける・・・。分かりましたよ、脱げばいいんでしょ、脱げば。

結局、僕等3人は何のメリットもないままに、お利口さんのマリアに導かれ裸になった。

「命」そのマリアの悲しい合図で無理やり命の人文字を作る三人、命は大切にね。

そして、命の授業は終わった。

「嫌な事があったらいつでも屋上に来るといい、俺達が漫才で笑わせてやるからさ」勝手に自由な愛の約束をするマリア。

それを聞いて彼は、とても幸せそうに言った。「ありがとう、俺の名前は卒業するぞ。よろしくな」

「俺の名前はフェンス登るぞ、よろしくな」混沌無形のでたらめを言うマリア。

「お前はそんな名前じゃないだろ。僕は全部冗談で、こいつがお歳暮マリア。よろしくね、するぞ君」そう言って、溶ける様な熱い握手をする三人・・・いや、二人。マリアの姿がない。すると、フェンスに高々とよじ登るマリア発見。

「卒業するぞの真似―」ここぞとばかりにからかいまくるマリア。

「いい加減にしろ」そう言って、フェンスからマリアを引きずり?した・・・。色々な意味でほっておけないな、こいつは。

そして、僕等は真の友達になった。嫌な事があると不定期的に、フェンスに登りたがるするぞ君を見つけては、希望を与える漫才を披露することが、度々増えていった。

こうして、僕の中学校生活も少しずつ充実?していった。

 

陽気に振舞い油断しているそんな僕等にも天敵のバレンタインディがやって来るのだった。

「嫌だなー、バレンタインディ」つれない溜息の僕。

「冗談はチョコ嫌いなのか?」チョコを大量に頬張りボロボロとこぼしながらマリアが言う。

「チョコは好きだけど、貰えないから嫌なんだよ」

「それなら自分で買えよ」

「バレンタインディのチョコを自分で買うなんて、とても出来ないよ」

「そんな事言ったら、誰もあげられないだろ」

「女子はあげる側だから構わないの」

「えー、バレンタインディのチョコって女子があげるものなの?いつも貰えないから、俺があげる側だと思って、毎年あげていたよ」

「男子がチョコをあげるなよ」

「義理人情に厚い奴があげるものじゃないのかよ?」

「確かに義理チョコもあるけれど。それにしても今年も貰えないんだろうなあ」

「そんなに欲しければ、貰えばいいじゃないかよ」

「別に断って貰わないんじゃなくて、モテないから貰えないの。それにそんな簡単に貰えるなら苦労しないよ」

「それなら楽させてやるよ、俺に任せな」、と口からよだれを床まで垂らしながら力説するマリア、ある意味説得力があった。

バレンタインディ当日、でももう帰る時間。

「あーん、あーん、あーん、やっぱり今年も貰えなかったよーん」と、僕は駄々をこねつつうなだれていると、マリアがグッと腕を掴んできた。

「冗談、行くぞ」

「何処に?」

「スーパーに決まっているだろ。今ならチョコが大安売りだ」

「嫌だー、恥ずかしいー」

「ギャグだよ。それよりもあれを見ろ。同じクラスのチョコ渡すよが、今から人気者の先輩にチョコを渡しに行くところだぞ」

「だから何だよ」

「いいからついて来いよ」そう言って、急ぎ足でスーパーに向かった・・・。

「行くかよー」暴れ牛の如く暴れる僕。

「ギャグだよ。ほら、早くしないとチョコ渡すよが、チョコを渡し終えちゃうぞ」そう言って、チョコチョコと小走りをしてチョコ渡すよを捕まえた。

「何よ、あんた達。私忙しいんだけど」雲がかかり不機嫌になるチョコ渡すよ。

「俺だって忙しいんだよ」そう言って、真白なスケジュール帳を、ドーンと見せつけるマリア。

「ふざけないでよ。私は今から一生懸命愛情を込めて作ったチョコを、先輩に渡しに行くところなんだから」

「そんなの分かっているよ。俺達はそれを阻止しに来たんだから」

「何ー。今日は女の子にとって命懸けの日なのよ」

「俺達だって命懸けなんだ。それに人気者の先輩にチョコ渡してどうするんだよ。先輩を糖尿病にするだけだろ。それだったら、その愛情込めた狂おしいチョコを俺達にくれよ」

「ダメー。この日の為に、徹夜して作ったチョコちゃんなのよ」

「分かっているって。俺達もタダでくれとは言わない。今から漫才をしてお前を笑わせることが出来たら、そのチョコちゃんを俺達にくれよ、ベイビー」そう言って、マリアはこれっぽっちも返事を聞かないで、渡すよを屋上に連れ出した。

「ちょっと、もー、しょうがないなあ。早く終わらせてよ、漫才」プクーと、風船の様な膨れ面をする渡すよ。

そんな彼女を破裂させずに笑わせられるのか?自信はないが、とりあえず、チョコ狩り漫才をムニュムニュする事にした。

マリアが述べる。

「手作りチョコを作ったお前なら分かるだろう。料理は命懸けで作るものだってな。そういう漫才をするから、とくとご覧あれ」


〈料理〉 a:冗談 b:マリア


a:この間、十人位で食事していたんですけど。

b:宴会ですか?

a:ええ、まあ。そしたら大トロの刺身が一切れ残ったんですよ。

b:取り合いですね。

a:ご察しの通り。底知れぬ凄まじい人間の欲から生まれる、骨肉の争いに発展しそうな予感を肌で感じたもので、公平にジャンケンで勝った者が食べられる事にしたんですよ。

b:それで?

a:みんなでジャンケンしたんですけど、人数が多過ぎてどうしてもあいこになってしまうんですよ。

b:そりゃそうだ。

a:勝敗が決まらないんで、両手出す奴とか出てきちゃって。

b:それは有利になるのかい?

a:分かりません。ただ物凄いあいこの数を重ねて、だんだん訳が分らなくなってきて、よく登山に行く奴がいるんですけど、そいつが「ここは山だー」と、叫び出して。

b:どうして?

a:たくさん出ている手が、野山に咲く花に見えてきたらしい。

b:おかしいな、それで。

a:今度はよく海に潜る奴がいて、そいつが「ここは海だー」と、叫び出して。

b:どうして?

a:たくさん出ている手が、海中のサンゴに見えるらしくて。

b:おかしいな、それで。

a:結局、みんなで叫び出して、「ここはジャングルだー」と、いう事になって。

b:だいぶズレたね。

a:中には冷静な奴もいて、「ジャングルじゃなくて、ジャンケンだー」と、叫んでいました。

b:そいつに刺身あげなさい。

a:結局、みんなで平等に自分の手をしゃぶったんですけどね。グートロにチョキトロにパートロですよ。

b:物凄いね。

a:空のお皿もなめずり回して、ペロペロぺロリンペロリンチョ。

b:頭も空っぽ。

a:料理は作る方も、食べる方も命懸けなんですよ。

 (コントに突入)

b:料理は火加減が命です。

a:はい。

b:料理はゆで加減が腕です。

a:はい。

b:味付けが腕時計で、盛り付けが食生活で、後片付けは食事前にする事。

a:厳しいです。

b:料理は命懸けでするものよ。

a:命という事は、火加減という事ですね。

b:そうよ。

a:先生のおかげで、料理の腕がどんどん上がっていきます。

b:腕ということは、ゆで加減という事ね。

a:はい、私は一流の料理人になって、二流の料理を出し、三流のレッテルを貼られ、五流の人に四流の扱いをされ、六流の後片付けをします、食事前に。

b:それは飛びっきりの正解だわ。でもその前に今まで覚えた料理の作り方を一度全部忘れてみなさい。そして、常識にとらわれずに頭の中に思い浮かべた物を順番に、グツグツ全部煮込むのです。それをじっくり、じっくり床に垂らして、部屋中に垂らすのです。それを虚しさに変えなさい。それがあなたの料理です、是非。

a:先生にとっての料理とは何でか?

b:私にとっての料理とは、今まで覚えた料理の作り方を一度全部忘れて、常識にとらわれずに頭の中に思い浮かべた物を順番に、グツグツ全部煮込むの。それをじっくり、じっくりお皿に乗せた物よ。そして、あなたの料理は、今まで覚えた料理の作り方を一度全部忘れて、常識にとらわれずに頭の中に思い浮かべた物を順番に、グツグツ全部煮込んで、それをじっくり、じっくり床に垂らして、部屋中に垂らす物。それが虚しさに変わる事があなたにとっての喜びなのです。さあ、やってみましょうか。まず思い浮かべた物を言ってごらんなさい。

a:ニンジン、タマネギ、先生・・・。

b:煮込みましょう。

a:私が先生に会ったのは数年前。

その頃の私は、自分の作る料理に自惚れていて、天狗になっていた。だから味覚も天狗に近かった。天狗以外のお客さんは逃げて行った。だんだん寂しくなって、みんなに愛される料理が作りたくて、山を駆け回り、木々を渡り歩き、人々をからかった。また天狗になっている。

そんな時に知り合ったのが先生だった。タヌキの紹介だ。天狗達はタヌキをほっとけって、タヌキ達は天狗に構うなって、仕舞にはばかしあいを始めた。周りには先生以外の人間はいなかった。だから、先生に近づいた。別に料理が作りたかった訳じゃない。

b:初めて会ったのは数年前。

何者にも怯えていた。だから、スープ飲ませた。そしたらうまい、うまいって喜んだ。作り方教えたらもっと喜んで、才能があったからどんどん教えた。よく見たら天狗じゃなくて人間だった。

a:先生の全てが欲しかった。でもこんなこ事になるなんて。

b:私はデタラメを教えた。こんな羽目になるなんて。

a:私にはできません。

b:料理は命懸けでするものよ。さあ私を煮込むのです。

a:思い浮かんだ物、ニンジン、タマネギ、先生・・・それに私、私も煮込まれます。

b:そう、それなら二人で温泉にでも行きましょう。

a:はい。

私達は料理じゃない、料理人だ。


「アハッ」奇跡、渡すよの膨れ面が笑顔に変わる。

「もー、あんた達のせいで先輩帰っちゃったじゃないか。仕方ないからこのチョコは、あんた達にあげましょう」そう言って、ハート型の激甘そうなチョコを、半分にして渡してくれた。

「ありがとう」と言って、生まれて初めての手作りチョコにヤイヤイ喜ぶ僕。

「そんなこと言って本当は、俺のこと好きだったんじゃないか?」と、乗れるだけの調子に乗るマリア。

「何言っているの、あんた達に渡したチョコの形見れば分かるでしょ。それが私からの気持ちよ」そう言って、渡すよはにっこり笑った。真中で真っ二つにいびつ割れたギザギザのハート・・・確かにその通りだろう。

「恥ずかしがる事はないぞ、包み隠さずに裸になろう」そう言って、すでに裸になっている律儀なマリア。

「超変態―」渡すよの風を切る豪快なビンタが、マリアの間の抜けた顔面に高速で直撃、鼻血が舞う。

チョコの食い過ぎじゃなくても鼻血は出る、とほのぼのと感心していると、僕の愛しのチョコちゃんがない・・・マリアが幸せそうにむさぼっり食っている。

「返せー」屋上には、僕と渡すよの声がダブルでこだました。

何はともあれ、忘れづらい思い出がまた一つ増えましたとさ。

 

それからグルッと一週間後。あれれれ、意外にも、そのチョコ渡すよが話しかけてきた。

「ねえ、あんた達、今週の日曜日暇?」

「忙しい」そう言って、真白なスケジュール帳を、ドーンと見せつけるマリア。

「この前、チョコあげたよねえ?そのお返しにもう一度漫才してくれないかなー、ホワイトデーの日にじゃないけど」

「ホワイトデイに漫才したい、ホワイトデーに」駄々こねこねマリア君、十五歳。

「今週の日曜日に、私のお姉ちゃんの結婚式があるのよ。そのの披露宴で漫才して欲しいの」

「やってもいいけど、お返しに何かしてくれよ。俺と結婚とかさ」キリッと凛々しくなるマリア。

「・・・分かったわよ。結婚はしてあげられないけど、私のお兄ちゃんが持っている、あんた達の好きそうな雑誌やビデオをあげるわよ。ただ、マニアックなのもあってあんた達には刺激が強すぎるかもね」

「・・・それ位で勘弁してやるか」と、ムッツリ顔になるいやらしいマリア。そういう僕も、ムッツリ顔になって負けじといやらしかった。

何だかよく分らないが、僕達は結婚式の披露宴で漫才をする事になった。おめでたい。

結婚式当日。

「新郎のご友人によるお祝いの歌でした。ありがとうございます。続きましては、新婦の妹の渡すよちゃんのご友人による、お祝いの漫才です。どうぞ」そう紹介されて、僕等はジリジリと漫才を始めた。


〈結婚式〉 a:冗談 b:マリア


a:子供の頃、どんな夢がありましたか?

b:お菓子の家に住みたかった。

a:甘い考えですね。そんな家に住んだら体中ベトベトになりますよ。

b:もっとロマンチックに考えましょうよ。

a:僕の夢は現実的でしたね。アマレスリングの選手になって、あまさんと結婚する事でしたから。

b:それも何か甘い感じがするなー。

a:他には、アメリカに行ってアメーバの研究をすることですかね。

b:アメだのアマだの何か聞いているだけで虫歯になりそうだな。

a:虫歯で思い出したけど、この前、電話で予約して歯医者に行ったんですけど、ないんですよ。

b:何が?

a:虫歯。

b:何しに行ったの?

a:自慢でしょうか?

b:自慢になるかー。

a:それにこの前、電話で出前取ったんですけど、ないんですよ。

b:財布がないのかよ?

a:違います、食欲がないんですよ。

b:何で出前頼んだの?

a:自慢でしょうか?

b:自慢になるかー。

a:最後にこの前、家に友達が遊びに来るって言うんで、待ち合わせ場所に向かったら、雨が降り出して傘持って行ったんですけど、ないんですよ。

b:今度は何がないんだよ?

a:友達が傘を持って、ないんですよ。自慢したかったんでしょうか?

b:自慢になるかー。

a:悔しかったんで、泣きながら家に着いたんですけど、ないんです。

b:いい加減にしろ、今度は何がないんだよ?

a:家が溶けてないんです。

b:お菓子の家みたーい。

a:お菓子の家も甘いけれど、もっと甘いのが結婚生活。

 (コントに突入)

a:それでは新郎新婦への同情です。

b:門出から同情してどうすんだよ。

a:失礼いたしました。新郎新婦の登場です。

b:パチパチ、パチパチ。

a:新郎新婦によるケーキ入刀です。

b:いきなりケーキ入刀かよ、順番おかしくないか。

a:新郎の口づけは、景気よく乳頭に向かっていきます。まずは口元、首筋、そして、乳頭の順番になります。では、どうぞ。

b:ケーキ入刀の意味が違くないか?

a:新婦のお父様が今、大粒の涙を流されました。複雑な心境でしょう。

b:そりゃあ、人前で娘の乳頭さらされたら複雑な気持ちになるだろうよ。

a:それでは指輪の交換と参りましょう、実は新婦は金属に触れると、精神的エネルギーを消耗する金属アレルギーでして、今日はちくわの交換となります。

b:ちくわ交換してどうするんだよ。

a:ちくわとは竹で出来た輪の竹輪になります。

b:ホゲー、そういう事かいな。

a:これは余談となりますが、新婦は幼少時代には、金属に触れると精神的エネルギーを消耗する、金属アレルギーではありませんでした。しかし、一つ上の姉がバイクで暴れるキーが原因で、新婦は金属アレルギーになりました。つまりこれは金属姉ルギーであって、その姉は親族との仲が悪く親族アレルギーでして、この式を欠席しております。

b:何だよ、この余談は、ギーギー、ギーギー。

a:結婚式もいよいよクライマックス、それでは新郎新婦、結婚。

b:何だ、この掛け声は。

a:鉄コンで造られた教会で、新郎は新婦にゾッコン、ゾッコン。

b:何故、全員でやるかなー。

a:それでは新郎新婦、大将。

b:それを言うなら、新郎新婦退場だろ・・・って、本当に大将みたいのが出てきちゃったよ。

a:ガムに、バイオ、痴漢、マスタード。

b:神に愛を誓いますかだろ、完全にセリフ間違っちゃたよ。

a:着替えます。

b:誓わずに、着替えだしてどうするんだよ。

a:新婦の着替える姿を見て、新郎が鼻血を出しました。その血が床に滴り落ちます。これが本当の血痕。

b:もういいよ。


会場がポアーントト、笑いに包まれた。ホッと安堵する僕に対してマリアは、調子に乗ってアンドロイドさながらの羞恥心のなさから服を脱・・・強制的にマリアの腕を掴んで退場した。

「何で裸になろうとしたんだよ」僕は冷や汗ダラダラで、ダラダラしないで、すぐと問いただした。

「裸になった方が、笑いが増だろ」

「そんな事したら、約束の報酬が貰えなくなるだろ」意外にムッツリスケベな僕が、顔を大いに覗かせる。

「・・・確かに、裸になるよりも裸を見た方が楽しいもんな」

渋々納得する凛々しいマリア。

そして、事なく式を終えた。新郎新婦はとても幸せそうで、こんな所で漫才が出来て僕も幸せでした。

後日、とうとう約束のブツが・・・

「はい、これが約束していた報酬よ」

「あれっ、何これ?」

「お笑いの雑誌とビデオ」

「これのこと言っていたのか・・・」虚を突かれた僕、てっきりエロ・・・だと狂信的に思い込み過ぎていた。

さらに意外だったのがマリアの快い反応だ。

「おっ、思っていた通りの物だな、有難く頂いておきますか」

なんだよ。最初からお笑いの雑誌やビデオだと思っていたのかよ。何故あの時ムッツリ顔をしたんだよ。それよりも分け前をどう分けようか、などと髪を掻きながら頭を悩ませていたら、案の定マリアは、報酬を全て僕に渡して、まるで最初からいなかったかの様に、とっとと姿を消していた。

結局、報酬は必然的に僕が全て貰うことになった。正直あんまり嬉しくなかったが、家に帰って見てみると、もろにハマリ寝不足の日々が続く位に、夢も見ずに夢中になってしまった。

特にお笑いコンビ「笑い人間」は僕の至高のお気に入りとなった。その中でも、ボケ担当の絶対笑わすは、別格の霊長類だった。

ちなみに絶対笑わすは、みんなからお笑い界のお父さんと呼ばれている。僕にも新しいお父さんが出来た気がした・・・なんてね。

僕は自ら彼の虜となり魅了されていった、もう離さない。

そしてまた、何かの導きの如く、漫才に惹かれていくのだった。キワキワキュイーン。

 

僕が他の事には目もくれずに、漫才に陶酔しきっていると、いつの間にか卒業の時期になっていた。キラリン。

当然、僕とマリアはまだ未熟者のあんよが可愛い二年生なので、卒業はしなし出来ないけど、一学年上の卒業するぞ君がめでたく卒業することになった。

「卒業おめでとう」僕はするぞ君の肩を叩いて、声をかけた。

「ありがとう」鼻水ズルズルで、泣きそうになりながらするぞ君は言った。

「やっと卒業かよ。俺なんかとっくに卒業していたけどな」人類には理解不能のセリフを、当然の如くに吐くマリア。

「小学校の話じゃないぞ」一応むげにせずに、ツッコんでおいた。

「アハハ、でも俺の事なんて、すぐに忘れられちゃうんだろうな」悲しく淡い顔をするするぞ君。

「そんなことないよ、一生忘れないから。なあ、マリア」

「ああ、俺なんて記憶喪失になっても忘れないよ」

「それは言い過ぎだろう。別にこの場合は言い過ぎてもいいのかな?」

「アハハ、そう言ってもらって嬉しいよ。ありがとうマリア」トロリ嬉しそうなするぞ君。

「何か勘違いしてないか?俺は記憶喪失になっても、記憶喪失になった事を忘れないと言っただけだ」

「訳分らん事言うな」遠慮なくツッコませて頂きます、僕は。

「訳分らん事言わせるな。それに忘れ物位誰だってするだろ。忘れないなんて無理なのさ」

「それとこれとは別だろ」

「そんな事はないだろ。現に俺はするぞ君の事をすでに忘れている」

「失礼だろ。それに忘れてねえじゃないかよ」

「違うよ、自分が記憶喪失だった事を忘れたんだ」

「忘れた事を思い出しているじゃないか」

「バカだなー、俺達が忘れなくてもするぞ君に、俺達が忘れられるかもしれないだろ。だから忘れられないようにこうして騒いでいる訳なんだよ」

「どうせいい訳だろ」

「アハハ、どっちにしても嬉しいよ。俺は君達のことを忘れないからな」そう言って、笑った後に泣きそうになる、世話のないするぞ君。

マリアは語る。「そんな顔するなよするぞ君。今から漫才するから俺達のこと忘れるなよ」僕等ははなむけの漫才をガンガン始めた。


〈忘れない男〉 a:冗談 b:マリア


a:ピピピピ・・・。

今何回ピを言ったでしょうか?

b:分かんないよ。

a:もう忘れている。

b:そんなの覚えている人いないよ。じゃあ、自分で何回言ったか覚えているのかよ?

a:僕、何か言いましたっけ?

b:それ位は覚えておけよ。それにしても何も忘れない人なんていのかね?

a:いますよ。僕の知り合いに忘れない男っていう人が。

b:へー、どんな人?

a:忘れました。

b:お前は忘れ過ぎだろ。

a:忘れ過ぎるということはどういうことか分かりますか?

b:分らん。

a:ピピピピ・・・。

今何回ピを言ったでしょうか?

b:分らないよ。

a:このように油断するという事なんです。

b:何回言ったかなんて覚えている人なんているのかよ?

a:それがいるんですよ。僕の知り合いに忘れない男という人が。

b:ピピピピ・・・。

 (コントに突入)

a:おじさん、何しているの?首輪だけ散歩して、犬いないよ?

b:忘れられないんだ。

a:それに変な髪型、今時ちょんまげなんて。

b:忘れられないんだ。

a:今の時期にアロハシャツ、変っているね。

b:君にだってあるだろう、忘れられない事が。

a:あんまりないなー、僕。

b:子供の頃は私もそうだった。でも大人になると忘れられない事が増えていくんだよ。特に私はそれが人よりも激しくて、忘れられない男と呼ばれている。

a:忘れない男。

b:君は家に帰る道を忘れるかい?

a:最初は忘れたけど今は覚えているよ。

b:そういう事さ。男はみんな忘れない男予備軍なのさ。だが時に人は忘れてしまう。愛し合った事。助けあった事。そして、誓い合った事を。私はねえ、昔犬を飼っていたんだが今はいない。それでも散歩を忘れない。それにちょんまげをすることで侍達の熱い魂とトレンドを忘れない。ちなみにこのアロハシャツを着ることで、ある人との友情を忘れないんだよ。

a:おかしいよ、完全に常識を忘れているじゃないか。

b:君は忘れる男だねえ。でも私は忘れない。

あの日抱いた温もりを。

a:お風呂に入れば忘れちゃう。

b:道で他人の子供が、お父さんと呼んでくれた日の事を。

a:本当のお父さんだと思ったんだよ。

b:手術をして、一命を取り留めた時のあの痛みを。

a:そんな事覚えていたら生活出来ないよ。

b:麻酔が効いていて、痛みがなかった事を忘れない。

a:都合いいなー。

b:何を言われようと構わない。家の家系は先祖代々忘れない一族なのだ。

家の鍵をかけ忘れなかった祖父。

窓の鍵をかけ忘れなかった祖母。

自転車の鍵をかけ忘れなかった父。

残りの鍵をかけ忘れなかった母。

a:鍵ばっかりだね。

b:私は忘れないが、君は忘れてしまうんだね。

a:僕が忘れるのは、会えないで悲しい気持ちを忘れる為。でもそんな格好していたら目立つよね。それに噂にもなるし。それはいつでも僕に分かるようにしてくれていたんでしょ、お父さん?

b:私は忘れない、お前を抱いた時の温もりを。それに義理の父親である私を、お前が始めてお父さんと呼んでくれた日の事を。

a:それに僕の身代わりとなり、怪我をしてまで助けてくれた事も、忘れてないよ。

僕等は訳あって離れ離れになったけど、またこうして会えたんだ。

b:ああ、でも一つ忘れた事がある。

a:何?

b:家の鍵をかけ忘れてきた。

a:もういいよ。


輝くするぞ君は、泣かずに笑った。

「またいつか漫才をしてくれよな」と言って。

するぞ君は、春から遠く離れた高校に通う事になっている。学生寮に入るらしい。だから、するぞ君に会える事は滅多にないだろう。

それでも僕等は忘れない。するぞ君の事を・・・僕は忘れないが正解かな?・・・マリアもきっと忘れないはず。

卒業するぞ君、卒業おめでとう。

ついでみたいに言うのもなんだけど、マリアと会ってから色々あって、僕はこの時にはもう人見知りの対人恐怖症を卒業していた。

 

季節は春になり、僕等はおこがましくも三年生になった。当然クラス替えが行われ、僕とマリアはなんと別々のクラスになった。ねえー、ねえー、神様のいたずらかしら?ウフ。

一人のピンになってしまった僕だったが、すでに人見知りする事もなく、自然にクラスの中に、グラスの中の水の様にうちとけていった。

新しくかけがえのない宝物の様な友達も出来て、今までとはまた違った?色のある学校生活を送っていた。

その代りに、マリアと遊ぶ機会は空腹のお腹の如く、どんどん減っていくのだが・・・。もちろん、漫才をする事もなくなっていった。

ただ、僕が漫才を嫌いになったのかというとその逆で、どんどん夢中人になっていったんだよ。・・・もっぱら見る側での話だけど。

特に絶対笑わすの出ている雑誌や番組は必ずチェックしていた。愛しています。

そんな六月のジメジメした梅雨のある日、一つの重大発表が世間を賑わせた。ザワザワ。

なんと・・・僕の崇拝する芸人、絶対笑わすが主催する漫才の大会「マンンザイグランプリ」が開催されることになったのだ。

出場資格は、年齢や人数制限はなく、プロやアマチュア、老若男女問わず、コンビ結成10年目以内なら誰でもOKというものだった。

それに何と、優勝賞金1000万円というから驚きだ。ガクガク。

それを聞いて僕の漫才魂は思った。もし上手くいったら、あの崇拝する絶対笑わすの前でお漫才が出来る。それに優勝しようものならば賞金1000万円だ。貧乏な僕にとってはまたとないチャンス。

弾む僕は早速、マリアに声をかけた。

「マリア」

「おー、久しぶりだな。するぞ君」

「誰がするぞ君だよ。するぞ君はもうとっくに卒業しただろ」

「だから言ったろ、俺は忘れないって」

「頼むから今は少し忘れてくれ。それよりも聞いたかあの話?」

「ああ、聞いたよ。なんでも上の会員から下の会員に商品を売ると、枝分かれ式に会員が増えていって、上の会員が絶対儲かるって話だろ」

「それはネズミ講の話だろ。そうじゃなくって絶対笑わすが主催する、マンザイグランプリの話だよ」

「ああ、知っているよ」

「知っていたのかよ」

「今お前から聞いたからな」

「それを知らなかったっていうんだよ」

「もう漫才止めたんじゃないのか?最近全然やんないしさ」

「止めた訳じゃないよ。ただ最近は今までと違って、普通の友達が出来たから普通に遊んでいただけさ」

「人を普通の友達みたいに言うなよな」

「お前は普通じゃない方の友達だろ、というか特別だよ・・・」

「それはするぞ君、本人に言ってあげろよ」

「するぞ君の話じゃなくて、マリアの話だよ」

「でもお前はするぞ君と一緒に、ずっと漫才をやってきたじゃないか?」

「相方はマリアだろ、どんな記憶力しているんだよ」

「マリアはもう卒業してしまったはずではないか。ブルブル、ブルブル。そのマリアがいるはずがないではないか、そのマリアがー」

「うるさい、恐怖におののくな。お前がマリアだ自信を持て。それよりもマンザイグランプリの話だよ、一緒に出ないか?」

「一緒に出て何するんだよ。生まれそうな赤ちゃんを気づかない振りでもするのかよ?」

「それは安産知らんぷり。そうじゃなくて、マンザイグランプリなんだから漫才するに決まっているだろ」

「そんな大会に出てどうするんだよ。女の子になれる訳でもないのにさ?」

「女の子になれるなら出るのかよ?」

「だって女の子になったら、パンティー覗きたい放題じゃないか」

「それは男の子の発想だろ、もろに。それよりも聞いてくれよ。予選を勝ち抜いて決勝まで行けば、テレビで放送されるんだよ。つまり、僕等の漫才が全国の人に見てもらえるんだ。そしたら卒業して遠くに行ってしまったするぞ君にも届くだろ。それにだな、優勝するとなんと賞金1000万円が貰えるんだよ、凄くないか」

「人見知りだったお前が良く言うよ。それに1000万円貰うよりも、1000万円あげたい気分なんだよ今は」

「どんな気分だよ。あのなあ、お前には分らないかもしれないけど、貧乏な僕にしたらお母さんを助けるチャンスなんだよ」

「分かってないのは、冗談、君の方だよ。俺がここで君の誘いを断ることによって、君のチャンスが潰せるビックチャンスなんだ、許してくれ」

「そんなこと言わずに頼むよ。付き合ってくれたら何でもするからさ」

「言ったな、何でもするって。それなら漫才をして貰おうか?」

「そうこなくっちゃ」

「その代り覚悟しろよ、優勝するって」

「初めからそのつもりだ」そう言って、僕の希望となったマリアは、僕を強引気味に連れ出した。

「どこに行くんだよ?」

「いいからここまで来い。いいか、押すぞ」そう言って、強く強くただ強く、無感情に非常ボタンを押しきった。

「火事が発生しました。速やかに校庭に避難して下さい」と、校内放送が迅速に入る。

「何やっているんだ。火事が起きた事になっちゃてるじゃないかよ」

「これでいいのだ」そう言って、マリアは頑丈に笑った。

そして、全校生徒が校庭に易々と避難した。

「今回火事は起きておりませんでした。誰かがふざけて非常ボタンを押したのが原因でと思います。心当たりのある者は、手を上げなさい」と、生活指導の先生が怒りのエネルギーを、幅広く撒き散らせながらお怒りになられている。

「はい。僕達がモンゴル相撲をしていたら、つっぱりが勢い良過ぎて、つい押してしまいました」と懺悔したマリアが、僕を引き連れて、怒りの汁がほとばしる先生の元に歩き出した。

「お前達、どうなるか分かっているだろうな」先生が凄んでみせる。怖いよーん。

「分かりませんし、分かりたくありません。だから、正直に謝ります」そう言って、マリアは先生のマイクを、手首のスナップを利かせて取り上げた。

「僕等のせいで火事騒動が起きたので、火事についての漫才をします。面白かったら許して下さい」そう言って、僕等は全校生徒の前でワイワイと漫才を始めた。


〈路上〉 a:マリア b:冗談


a:同じバナナがA店では200円、B店では100円で売られています、どういうこと?

b:A店は人が収穫したバナナ、B店は猿が収穫したバナナ。

つまり、A店は人件費がかかるけど、B店は人件費がかからない、だから安いんです。

a:そういう事か。

b:売る側にも色々と事情があるものなんです。

 (コントに突入)

a:安いんだよー、安いんだよー。

b:何が安いんですか?

a:これだよ、これ。

b:へー、これの青色とかってありますか?

a:今残っているのはこの赤色だけなんだよ。

b:今残っているのはこの消防車だけですか?

a:そうだよ、今は消防車が旬だからね。

b:パトカーだったら買ったのになー。

a:どうしてだい?

b:昔、警察官になるのが夢だったんですよ。

a:そんなこと言わないで、消防士になりなよ。

b:いえ、昔、川で溺れているところを警察官に助けて貰った事があるので、それで憧れていたんですよ。

a:そんな事言わずに、消防士に助けて貰った事にしてくれよ。

b:無理ですよ。

a:そこをなんとか、まけてくれ。

b:値切らないで下さい。

a:本当は火事場で消防士に助けられたくせに。

b:勝手に人の記憶を書き換えないで下さい。

それにしても、何でこんな路上で消防車なんて売っているんですか?

a:これには深い事情があるんじゃよ。実は家が火事になってしまってな。無一文になってしまったんじゃよ。急いで持ち出せる物だけを持ち出したら、火事の現場にあった消防車を持ち出しちゃったという訳なんじゃよ。

b:駄目じゃないですか、返して来て下さいよ。

a:ギャグじゃよ、ギャグ。ただなあ、おじさんは本当に無一文なんじゃよ。所有物はこの消防車だけなんじゃよ。でも消防車は食べられませんから、お腹すきます。お金欲しいです。だから買っておくれ。

b:大変そうですね。

a:兄ちゃんがこれを買ってくれたら、おじさんも生活していけるんじゃよ。これで家計が火の車なのを救えてこそ、真の火の車消しとして、消防車としての本望が叶う訳なのじゃよ。

b:そう言われても。

a:兄ちゃん、彼女はいるのかい?

b:妻がいます。

a:それなら買っていきな。家事をする時に役に立つからさ。安くしておくよ。

b:火事と家事がかかっているんですね・・・。分かりました、買います。

a:本当かい、毎度。

b:今度、僕等の結婚記念日があるんですけど、

何かびっくりするようなプレゼントがしたくて、この消防車でドライブしたらいい思い出になります。

a:何言っているの、兄ちゃん。こんなの運転したら捕まっちゃうよ。そこまでしてパトカーに乗りたいの?

b:やっぱり、そうですよね。

a:それにこんなの普通の駐車場に入んないよ、どうすんの?

b:ああ、何で買ってしまったんだろう。

a:売っといてなんじゃが、衝動買いさせられたな。

b:はあー。

あっ、警察が来た。

a:あー、止めろ。消防車なんて盗んでない、あー。

b:おじさんが警察に連れて行かれちゃった。

あれ、でもまたおじさんが戻って来たぞ。

a:兄ちゃん、今度はパトカーが手に入ったんだけど買わないか?

b:もういいよ。


全校生徒、爆笑だ。嬉しいよ僕ちゃんは。

「先生許してあげてー」の声まで上がった。感謝、感謝、おかわり頂戴。

しかし、その後許されるはずもなく、職員室でみっちり怒られる、僕等は哀れな漫才戦士であった。

それでも、最後にチョピッと「漫才は面白かった」と、お褒めの言葉を頂いたよ。先生分かっていますね。

ただ、腑に落ちない僕はマリアに問いただした。

「何で非常ボタンなんて押したんだよ?」

「マンザイグランプリの前に、出来るだけ大勢の人の前で漫才をしておきたかったんだよ。それに鈍っていた勘もさらに鈍っただろ」

「さらに鈍らせてどうするんだよ。勘を取り戻したかったって言いたい訳?」

「そうそう」そう言って、マリアは縦にぶっ倒れた。

「そんな所で寝るなよ」そう言ってツッコむと返事がない。マリアは本当に意識を失っていた。

緊急事態発生。僕は先生を呼んでマリアを保健室に連れ込んだ。

「ただの疲労だと思います。一晩安静にしていれば大丈夫でしょう」と保健室の先生は、優しく毛布をかける様な言い方をした。大事を取り、マリアは家族の人に迎えられて病院へ向かった。直行、直行。

その日、僕は心配で一mgも眠れなかった。が、次の日。

「いやー、偶然にも看護婦さんのお尻を1000回も触っちゃったよ」と、必要以上の元気良さを見せてくれるマリア氏。僕は、こいつの心配をしていたのかと、地球に向かって反省した。

そして、元気になった元祖マリアが発言する。

「冗談、今週の日曜日マヒ?」

「マヒするかは分かんないけど、きっとしないだろうね」

「マヒじゃないんなら俺に付き合えよ」

「それはつまり、ヒマなら付き合えって事か?」

「優勝するんだろ」鼻をほじりながらマリアは言った。

 

日曜日。僕が無理やり連れてこられたのは古ぼけた老人ホームだった。

「ここで何するんだよ?」

「老人達に本物のボケを学ぶんだよ」

「笑えないだろ」

「そう、それと同じで、俺達のふざけたボケなんて、真剣にボケている人にとっては笑えないのだよ」

「それじゃあ、どうするんだよ」

「それでも笑わすんだろ。まあ、笑わない時はくすぐってでも笑わせるけどな」

「そんな事したら怒られるぞ」

「だから、怒られないように漫才で笑わせるんだろ。そして、そんなに笑わせないでくれって怒られようぜ」

「結局怒られるのかよ」

「マンザイグランプリで優勝するには、色々な年齢層の人にうける漫才をしなくてはならない。つまりこれは、ムシャムシャ修行なのだ」

「それを言うなら武者修行だろ、何かを食っている音みたいになっているから」

「えーい、弱音を吐くな、強音を吐け。ここでの漫才が終わったら、動物園に行って動物達を笑わせに行くぞ」

「動物は元々笑わないだろう」

「笑わない人を笑わせてこそ、真のお笑いだろ」

「人じゃなくて、動物達なんですけど」

「人も動物だろ。猿からスライダーしたんだから」

「スライダーじゃなくって、シンカーだろ、さらに言えば進化だろ」

「そうだ。それにシンカーが生み出されたのは、威張るライバルバッターを攻略する為だったと考えられている。だから、バッターが人間の先祖とも言える」

「バッターも人間なんだけど」

「バッタもバターもバッターではないという事だ」

「よく分かんないけど、漫才をしに行くんじゃないの?」

「あー、約束の時間を・・・まだ過ぎてないのか」

「何、とんずらしようとしているんだよ。珍しくビビったのか?」

「ビビってなんかいないよ。ただちょっとチビッただけだ」

「もっと達が悪いじゃないか」

「さっきから言っているだろ、本物のボケを学びに来たって」

「分かった、分かった」そう言って、若気を放つ僕等は老人ホームの中に潜り込んだ。まずは礼儀として丸い院長に挨拶をする。

「交番は?」のっけからボケマリアだ。

「それを言うならこんばんはだろ、さらに言うなら今の時間はこんにちはだろ」今日も張り切ってツッコミますよ、僕は。

「アハハ、こんにちは、お待ちしていましたよ、どうぞこちらへ」そう言って、丸い丸い丸い院長は僕等をピコっと歓迎した。

その時、僕は疑問に思っていたことを丸院長に聞いた。

「僕達が何故ここで漫才をする事になったんですか?」

「それはマリア君がどうしてもここで漫才がしたいと、あまりにも真剣に言うもので、漫才をしてもらう事にしたんですよ」

「そうだったんですか」そう言って僕は、うなずくマリアを見て首を傾げた。だって、今までマリアの真剣な姿など、見た事がないからだ。ありえん。

「違ったかな。確か、物凄い真剣な顔をして、トイレ貸して下さい、と頼まれたんだっけかな。そのお返しに漫才をしてくれる事になったんだよ」丸みでオシャマな院長が、笑いながら丸くなる。

僕はそれの方がマリアらしいと疑わずに納得した。マリアは少し赤くなった。トマト。

そんな事を話していると、老人達の集まるホールにのうのうとたどり着く。

「それじゃあ、漫才の方、お願いしてもいいかな?」院長丸はそう言って、老人から見れば一人歩きして間もない赤子同然の?僕等を、簡易に作られたステージに立たたせた。

「僕達、ロミオかジュリエットと言います。今日は皆さんに漫才を披露しにやって来ました」と、群がる老人達に背を向けてしゃべり始めるマリア。ボケ防止のボケをかます。

「壁にしゃべりかけてどうするんだよ」と、いつも通りツッコんだが、誰一人笑わなかった。ここではふざけたボケが、真剣なボケだと思われてしまったのか?やり場のないマリアは得意の尻出しを惜しみなく披露した。

「ペロリッ、見つかっちゃったー」誰も笑わない。それどころか若さに満ち溢れたマリアの尻を、みんなで今にもしゃぶりつきそうなほど羨ましそうに眺め・・・ている訳でもないか、今日はどうも僕の思考回路もおかしいみたいだ。きっと急な事にみんな驚いただけさ、そう思いながらチョンチョンと漫才を始めた。

 

〈自由〉 a:マリア b:冗談


a:自由の女神欲しくない?

b:そんなの貰ったら、不自由になるだけだろ。それよりも本当の自由が欲しいよ。

a:ご自由に。

 (コントに突入)

b:なかなか来ませんね?

a:次のバスが来るまでまだまだ時間があるわ。ちなみに、次のバスが今日の最終バスよ。

b:そうですか。

a:平日は四本、休日は三本、それだけよ。それでもバスを待つ人は少なくて、大抵一人か二人。今日はあなたと私だけみたいね。

b:そうですか。

a:あなたは見かけない人ね。旅行、それとも何かの用事。それにしても珍しい、よそからこの村に来るなんて。

b:お婆さんはお出かけですか?

a:家出よ。お爺さんと二人で暮らしているんだけど、喧嘩して出てきちゃったの。

b:心配していますよ。

a:大丈夫よ、いつもこのバスを一周したら帰るのが決まり事なの。

b:愛しているのですね、お爺さんを。

a:愛しているだなんて、長い間過ごしていると一緒にいるが当たり前になってくるの。だから私には一周が限界ね、それ以上離れ離れになると苦しくなるのよ、これって愛かしら?

b:空気ですね。

a:愛ではなくって?

b:愛はもう少しネチョッとしたものなんですよ。

a:いやらしいのね。

b:ええ。

a:でも、内のお爺さんは割りとネチョッとしていますのよ。

b:愛かもしれませんね、それは。

a:洋服がよく、素肌にまとわりついていますもの、ネチョッとね。

b:それはジトッではないでしょうか?

a:愛ではなくて?

b:六月の梅雨の時期のジトッ、悪くはないですけど、愛とは程遠い。

a:私にはよく分らないわ。

b:愛は泳がないんですよ。

a:泳ぐのはコイね。

b:どうでしょうかね、ただ池の鯉が苦しそうに口をパクパクと空気を求める姿、あなたのは鯉の恋かもしれませんね。

a:人間ではなくって?

b:あなた次第ですね。

a:あなたといると時間が長く感じるわ。

b:気のせいですよ。

a:そうね、時間は平等であって欲しいものね。でなければここで待っている意味がなくなりますものね。

b:僕と一緒にいられるのにですか?

a:私はあなたの事を何も知りませんわ。だから、あなたの事はよく分からない。

b:あなたに分かるはずもない。自分でも自分のことが分らないのに・・・・。

a:良かったら何か聞かせてくれないかしら?

b:歯ぎしりの音でも構いませんか?

a:そのユーモアは、歯のない老人には通じないものよ。

b:なるほど、失礼しました。

a:代わりに、この村に来た理由を聞かせて?

b:暗い話になりますよ、構いませんか?

a:ええ、この年になると都合よく耳が聞こえなくなったり、物忘れをするものなの。便利でしょ?

b:そうですか。

a:さあ、聞かせてくれないかしら、待つのはバスだけにしたいの。

b:実は・・・僕はこの村で生まれ育ったんです。ただ自由が欲しくて都会に出て行ったんです。でも自由なんてなかった。十年ぶりに実家に帰ろうとこの村に来たんですけど、帰り道を忘れてしまして、別に用事があった訳でもなく、何となく帰って来ただけですから・・・このバスで都会に帰ろうと思っています。

a:両親には会っていかないの?きっと会いたがっているわよ。

b:いいんです。本当は勝手に実家を飛び出して、急に帰って来たと思ったら、借金の肩代わりなんて・・・やっぱり、頼めませんよ。

a:あっ、バスが来た。

あなたはこのバスに乗るべきじゃないわ。両親に会っていきなさい。あなたには愛が必要よ。帰り道は思い出せたかしら?

b:・・・ええ、でも愛ならここにあります。

a:さようなら。

b:さようなら。

お婆さんとのキスは入れ歯の味がした。僕はこの村に残ることにした。何故ならこのバスの運転手が帽子も制服も着ていなかったから。この村には自由がある、きっとそうさ。


結局、誰も笑わんかった。

ただ、少し涙を浮かべる人もおった。

「あれで良かったのかなー?」

僕はマリアにグイグイ聞いた。僕は何となくあれで良かった気がする。

「誰も笑わないって事は、動物だったんじゃないか?それよりも、次は本物の動物達を笑わせに動物園行くぞ」と、張り切るアニマルマニアマリア。

「結局、動物園に行きたいだけだろ」そうごく普通にツッコんだ僕は、何だか少し優しい気持ちになった。

 

マンザイグランプリの予選まで一か月を切った。モサモサな僕等は、待望の夏休みを迎えていた。

そして、マンザイグランプリで着る衣装代を稼ぐ為に、マリアの見つけてきた引っ越しのバイトを、一緒にセッセッとこなしている最中だった。応援してね。

「そっちの壺運んどいてくれ」と、バイトリーダーに指示される、汗まみれのドロドロでグチャグチャな働く僕等。

「それにしても短期のバイトとはいえ、よく中学生の僕等を雇ってくれたね」と、素朴に疑問をヒョイッと投げる僕。

「何言っているんだよ、俺達は大学生じゃないか」と、暴投気味の豪速球で答えを返すマリア。

「・・・そういう事か」

「チュウがくせえより、大がくせえだろ、俺達は」

「ダジャレかよ」

「本当はお前がマンザイグランプリの優勝賞金で親孝行コウコウするから、高校コウコウ生という事になっている」

「バレないようにしないとな」

「ああ、俺なんて自分の親にまで、自分は高校生だって騙してきたんだから」

「騙す必要がないし、騙されるかよ」

「まあな、騙されはしなかったけど、騙されそうにはなっていたぞ」

「どんな親だよ」

「それよりもこの壺をしっかり持てよ、きっと高価な物だろうから」

「確かに、こんな壺割ったら大変な事になるぞ」

「ああ、きっと逆立ちをしてショウベンさせられるぞ。それでベンショウ、なんちって」

「それはくだらな過ぎるだろ」

「それなら、洋風の民宿に泊まれとか言われるかもよ、ペンション」

「弁償からどんどん遠くなっていくよ」

「ツボの話だけにこの話はボツにして」

「アハハ、それにしてもやたらと軽いけど、その大切に運ばなければならない壺は何処にあるんだ」

「ガシャーン」壺が割れてしまった。なんでやねん。

「あっ、見つかったよ、良かったね」冷や汗を垂らしながら言う優秀なマリア君。

「良くねえよ。粉々になっちゃったじゃねえかよ」

「粉々になって良かったじゃないか。だって壊したのが壺だってバレないだろ。おせんべいの欠片か何かに見えるよ、ほら」

「どうするんだよこれ」

「正直に謝るしかないだろ、この壺を作った人に」

「そうじゃなくて、持ち主に謝るんだろ」

「もう壺が割れてないのなら、持ち主もいないって事だろ。だから謝らなくていいんじゃないか?」

「そういう訳にはいかないだろ。元持ち主に謝らないと」

「ごめんなさい」

「僕に謝ってどうするんだよ」

「だって、さっきまで壺を持っていたのはお前だろ、だからお前が元持ち主だろ?」

「その持ち主じゃない。そんな事言ったら、お前だって元持ち主になるだろ?」

「ごめんなさい」

「自分に謝ってどうするんだよ」

「おい、何を騒いでいる。ちゃんと仕事しろ・・・。お前達、壺を割ったのか?」とうとうバイトリーダーに見つかってしまった。神よ許したまえ。

「正確に言えば地面が壺を割りました」言い訳する立派な?マリア。

「そんな言い訳が通じるかー」激怒するバイトリーダー。血管が脈々と浮き出て顔が真っ赤です。

「ソーリー」

何故か英語で謝るマリア。彼は怖いものをシ・ラ・ナ・イ。

「日本語でも通じるわー、でもそんな謝り方が通じると思うなよ」とバイトリーダーに、火山が噴火した如く怒られていると、「どうしたんですか?」と言って、何も知らない平和ボケな壺の持ち主がヒョッコリ登場。

「実は壺を割ってしまして・・・」本当に申し訳なさそうに、真実を告げるバイトリーダー。よっ、役者だね。

「これは先祖代々伝わる家宝の壺なんですよ」うなだれる持ち主。何か画になるシーン。

「今の方が斬新なデザインじゃないですか、最先端って感じで。それにパズルみたで楽しいなー。なんちゃって」と誤魔化すけど誤魔化せないマリア。君はまだ若い。

「ふざけていないで謝りなさい」怒鳴るバイトリーダー。もはや使命。

「ソーリー」

「日本人には日本語で謝れ」

「すいませんでした。・・・あの、今から僕達漫才をするんで、それが面白かったら許してくれませんか?」

「ハアッ?」驚く持ち主。最近の若者の考えはさぞ理解出来ないだろうよ。

「ツボだけにあなたのツボに入るような漫才をしますので」そう言って、僕等はペコペコ漫才を始めた。


〈引っ越し〉 a:マリア b:冗談


a:悩みの相談があるって言っていたけど、どうしたの?

b:実は角が生えてきて。

a:大変だね、見当たらないけど。

b:僕に生えたんじゃないんだ。

a:誰に生えたの?

b:部屋の端っこに生えたんだ。

a:君はどんな部屋に住んでいるんだい?

b:サイに住んでいるんだけど・・・。

a:サイか。

b:もっと広い部屋に住みたいと思うんだけど・・・。

a:それならゾウだね。

b:ああ、でも引っ越すのって大変だろ?

a:確かにね、群れだからな。

b:一人暮らしがしてみたい。

 (コントに突入)

a:ピンホーン。

b:はい。

a:今日隣に引っ越して来た者です。よろしくして下さい。これはくだらない物じゃなくて、つまらない物ですけど、どうぞ。

b:ありがとうございます。

a:挨拶したばっかりで何なんですけど、頼み事をしてもいいですか?

b:はい。

a:実は自分の部屋に鍵を置いたまま鍵がかかっちゃって、部屋に入れないんですよ。大家さんも出かけちゃっていて、後もう少しで帰って来るらしいんですけど・・・。その間世間話でもしませんか?

b:いいですよ、それなら私の部屋に上がって下さいよ。

a:お邪魔します。うわー、すげえー。俺の部屋よりもテレビでけー。それにベットもでけー。いいなー、どうして俺の部屋とは違うんですか?

b:これは自分で買った物です。

a:うわー、最新の冷蔵庫、それに最新のパソコン。なんですか、この部屋は?俺の部屋と交換しましょうよ。引っ越し、引っ越し。

b:困ります。

a:何で俺の部屋より豪華なの、引っ越し、引っ越し。

b:あなたも自分の部屋を豪華にすればいいじゃないの。

a:そうは言うけれど俺、田舎から引っ越して来たばかりでお金なくって、それに引っ越しよりも好きなのがみこし、みこし。

b:何がしたの?

a:みこし、みこし。

b:みこしがしたいのなら外でしてよ。

a:冷たいですね、都会の人。熱々の田舎に帰りたい。

b:ごめんなさい。気分直しに何か飲みますか?

a:コーヒー下さい。

b:ごめんなさい。私コーヒー飲まないからないんだけど。

a:姉さんは大人ですよね、コーヒー飲まないで何飲むんですか?

b:お酒なら沢山あるんだけど。

a:俺は酒にめちゃくちゃ強いですよ。酒豪、酒豪。

b:私も強いわよ。

a:それなら飲み比べしましょうよ?

b:でもまだお昼だから遠慮しておくわ。

a:じゃあ、僕一人で飲みますねって、これじゃあ、飲み比べになんないじゃないですか。

b:フフフ、一人で盛り上がっているわね。

a:姉さん、笑うと可愛いですね。

b:初めて言われた。

a:もしかして初めて笑ったんじゃないんですか?

b:そうかも、なんてね。

a:えー、本当に笑った事ないんですか?それじゃあ、今までくすぐられた時はどうしていたんですか?

b:私、くすぐられた記憶ないのよ。

a:記憶飛ばしちゃうんですか?

b:そうじゃなくて、そんな思い出がないって言ったの。

a:思い出がないなんて、記憶喪失じゃないですか、完全に。救急車、救急車。

b:ふざけないでよ、迷惑ですから。

a:すいません。俺、自分の親にも迷惑かけっぱなしで、ようやく一人前になる為に一人で引っ越して来て、それでも引っ越しより好きなのが・・・。

b:みこしは止めて。

a:何で分かるんですか。エスパーでもやっているんですか?

b:みこしはもう沢山。

a:そんな、俺、みこしなしでこれからどうやって生きていけばいいんだ。

b:知らないわよ。

a:こうなったらみこしの出来る所に引っ越しだ。

b:何言っているの、今日引っ越して来たばかりじゃないの。

a:荷物まとめよう。

b:それは私の荷物。

a:じゃあ、僕の荷物は一体何処にあるというんですか?

b:自分の部屋でしょう。

a:自分の部屋に入れないなんて、飼い犬に噛まれる様な真似をしてしまった。もっとエサをやっておくべきだった・・・犬のエサありますか?

b:ないわよ。もういいわ、私が引っ越します。

a:どうしたんですか、急に?

b:あなたみたいな人が隣に住んでいたら、この先が思いやられます。だから私が引っ越します。

a:そんな事言わないで、俺があげた物でも見て機嫌直して下さいよ。

b:そう。せっかくだからさっきくれたの開けるわよ、って中に入っていたのは賃貸情報誌じゃないの。

a:便利ですよ。

b:何―、これを読んで引っ越せっていうの。頭に来たー。

a:うわー、すげー力で机持ち上げた。姉さん、その馬鹿力なら俺の部屋の鍵開けられますよ。

b:うりゃー、ガチャッ。

a:すげえ、ドアが開いた。

b:私をからかった仕返しにあなたの部屋を荒らしてやる。みこし、みこし。

a:止めて下さいよ。僕だけの部屋じゃないんですから・・・。

b:そう言って、彼は引っ越して来た。それに私も引っ越した。今は彼と二人暮らし。


「アハハ」そう言って、グラグラしていた持ち主は蘇った様に笑う。

続けて「仕方ない、わざとやった事ではないから・・・」と、持ち主はどうやらこんなにも荒みきった哀れな僕等を、名前も知らない何かの愛で、許してくれたみたいだ。

「内の会社で弁償いたしますから」そう言って、誠心誠意謝るバイトリーダー。彼は偉いねー、抱いてあげようかしら。

「いいんですよ、元から価値のない壺なんですから。ただ先祖が作ったという思い入れがあるだけで・・・。残念ですけど、笑わせて貰ったので許しますよ」と言って、晴天の下、持ち主は歯をクッキリ見せて笑ってくれた。野猿みたいだ。

それ以上に笑ったのは僕等だった。アハハ。

「はあー、助かった。弁償しろとか言われたら、中学生の僕等にはとても払えないもの」つい口を滑らせる僕。かっこいい。

「何、お前等中学生なのか」そう言って、睨むバイトリーダー。もう、チビッちゃうぞ。

「頭の中身は小学生並です」と、間違ったフォローを、恐れを抱かずに堂々とするマリア。凛々しい・お・と・こ。

「いい訳になっとらん」と、最後までバイトリーダーに怒鳴られる栄光の僕等だった。

もちろん、僕等はバイト代を貰えませんでした。でも代わりにゲンコツを貰いましたとさ。本当についているよね、まったく。

 

嗚呼、季節は巡り、とうとうマンザイグランプリの予選が始まろうとしていた。

僕等は結局、ありのままの学生服で出る事になった。

ただ、悲しみの道化師マリアは、衣裳が着られない事を、とても残念そうにこう語った。

「せっかく、新しい学生服で出ようとしたのにさ」

「どっちにしろ学生服かよ」

「別に鎧着て漫才やってもいいんだぜ、俺は」

「防御力を高めてどうするんだよ」

「結局、何を着て出てもいいんだよ俺は、どうせ最終的には全部脱いじゃうんだからさ」

「あのー、裸になるのだけは止めてくれるかな、失格になっちゃうんで」

「そこまで言うんなら仕方がない。もう俺は裸にならないよ」

「そうしてくれると助かるよ」

「これからはお風呂に入る時も、服を着たままにするよ」

「そこまでしなくてもいいから、ステージの上だけそうしてくれるかな」

「分かった、ステーキの上ではそうするよ」

「何の話だよ」

「ステーキを食べながら、ステキなステッキを買う事にするよ」

「ステージから話がズレ過ぎだろう」と、たわいもない事に、鼻じゃなくて花を咲かせていると、予選会場に辿り着いた。

会場は人を笑わせようとする強烈な猛者達で、ごった返していた。ゴゴゴゴ・・・。

大人数の団体や奇抜な格好をした人達、各々が自分の面白いと思うスタイルで挑んでいた。みんなの面白オーラを直視していたら、僕は急に不安に襲われた。助けてー。

「面白そうな人がたくさんいるね、僕達大丈夫かな?」動揺する僕は、マリアに震えながらき、き、き、聞いてみた。

「このままだと、みんな優勝するんじゃないかな」目を細めながら遠くを見つめてマリアは、人間味のある発言をしたのであーる。

「優勝できるのは一組だけなんですけど・・・」

「えー、そうなの。じゃあ、どうやって決めるんだよ。お笑いなんてそれぞれの好みがあるのにさー。ここは公平にくじ引きで決めたらいいんじゃないか?」

「それじゃあ、漫才の大会にならないだろう。もちろん、運も必要だとは思うけど」

「それなら安心しろよ。俺は昔から運がいいから。小さい頃、よく階段から転げ落ちていたんだけど、いつも決まって無傷だったんだよ。それによく車にはねられていたんだけど、全然怪我した事ないんだよ」

「本当に運のいい奴は、そもそも階段から転げ落ちたり、車にはねられたりしないだろう」

「それにしたって、きっと何かが俺を見守っている証拠だろ。それに家の家系は特別運がいいんだよ。だって俺の家がお金持ちなのは、宝くじが何度も何度も当たりまくるからなんだぜ」

「そうだったのか、それを聞いたらなんだかやる気が出てきたぞ」

「同感だね。俺もやる気が出てきて脱ぎたくなってきたよ」

「・・・マリアはほどほどでいいよ」

「ほどほど、ほどほど、ほどほど、ほどほど・・・」そう言いながら、セクシーポーズをとるマリア。グラビアアイドルにならないかい?

「何しているの?」

「お前が、ほどほどが体にいいって言うから」

「別に体にいいとは言ってないだろ。それにそのポーズは何なんだよ」などと話をしながら、行儀良く真面目に?自分達の出番を待っていた。もちろん、他のコンビの漫才をドキドキしながら観察してして。

僕の感想は、やはりみんなレベルが高くて面白い。多種多様な漫才があって、大変興味深かった。オイオイ、本当によくやるぜ、みんな。

「いやー、今のコンビの漫才面白かったね。あの顔芸なんてとても真似出来ないよ」無限の笑いに染まりながら感心する僕。

「確かに絶対真似出来ないよな」そう言いながら、顔のパーツを中心に集めてクシャクシャな面でうなずくマリア・・・。こいつもただ者じゃない。

「でも、今まで出てきたどのコンビよりも、今漫才やっているコンビが一番面白いな。だって透明人間漫才なんて見た事ないだろう。

まあ、透明だから見えないんだけどな」などと、訳の分らない事を、僕の肝に向かって言うマリア。

ステージを見ると、透明人間漫才が行われていた・・・。誰もいないって事は、僕達の出番じゃないか。そう言って、慌ててステージにマリアを摘まみ上げて、ドロドロと漫才を始めた。


〈桃太郎〉 a:冗談 b:マリア


a:この間、珍しい物を見ましたよ。

b:何ですか?

a:セミの抜け殻。冬にですよ、珍しい。

b:君は世間知らずだね。

a:何がですか?

b:いつの時期にもたくさん落っこちているでしょう、抜け殻。

a:どこにも見当たらないけど。

b:そこを見なさい、シャケにコンブにオカカ、おまけにシーチキンマヨネーズまであるじゃないかよ。

a:それは抜け殻じゃなくて、コンビニのおにぎりのビニールじゃないか。

b:セミの抜け殻見つけて喜ぶ暇があったら、街のゴミでも掃除しろよ。

a:うるさいこと言う奴は、セミの抜け殻入りおにぎりでも食っとけ。

b:相方にそんなおにぎり食わせる奴があるか。

a:そう言えば、おにぎりで思いだしたけど、この間、偶然にも鬼見ましたよ。

b:嘘だー。

a:君は世間知らずだねー。

b:どこで見たか言ってみろよ。

a:まずは家でアイスを食べていまして。

b:はい。

a:一時間近く。

b:長すぎるだろ。

a:食べ終わったので、もう一度食べ始めて。

b:まだ食うの。

a:それでもアイス食い尽しちゃったから、コンビニへアイスを買いに行ったんですよ。

b:いくらなんでも食い過ぎだろう。

a:そして、外に出たら、人々が逃げ惑っているんですよ。

b:鬼が出たのか?

a:人々は健康の為に、仮想で鬼に追われながらのジョギングを楽しんでいたんですよ。

b:ややこしい。そんな事する人いるかよ。

a:すると、人々が鬼気迫るジョギングをしている横で、嬉しそうにハトとお爺さんに豆をあげる人がいたんです。

b:ハトは分かるけどお爺さんは何しているんだよ。

a:その豆をあげている人が赤鬼だったんですよ。

b:人じゃなくて鬼じゃないか。それに節分で豆をまかれる側の鬼が豆をあげるかよ。そもそも、それは本当に鬼なのか?

a:角が生えていたし、全身真赤でしたから。

それに私は赤鬼だよ、と言いながら豆あげていましたから間違いないでしょう。

b:何で自己紹介しながら豆あげるんだよ。

a:それよりも僕は豆よりアイスが欲しかったので、急いでコンビニにアイスを買いに行ったんですけど、アイスが全部売り切れていたんですよ。

b:アイスが全部売り切れる事なんてあるかよ。

a:実はさっきのジョギングしていた人々は、アイスを買いに急いで走っていただけだったんですよ。

b:そんなに人々がアイスを愛すか。

a:僕はアイスもやる事もなくなっちゃったので、とりあえずアイスのクーラーボックスに入る事にしたんですよ。

b:人が入る所と違うだろ。

a:クーラーボックスの中って、静かでとても冷たいんですよ。吐く息で、窓は真っ白になる。そこに自分の名前と好きな人の名前を書いて相合い傘でくくりるんです。そして、目を閉じる。すると街には雨が降り出し、みんなは傘を買い求めていく。結局、傘は一本だけ残った。クーラーボックスの中で意識の消えかかった僕は、微かにその傘を眺める。そして、好きな人と一緒にその一本の傘に入り、雨の街を歩くところを想像したんだ。すると、何故だか涙が溢れて、雨が止む事のない様に願った。しばらくすると残りの傘も買われてしまった。それは雨が降り止まなかったから。

b:何だよ、その切ない話は。

a:僕はクーラーボックスの中で人生の終わりを迎えようとしていた。そこに一人の男が近づいて来た。

b:まだ入っていたのかよ。

a:「僕はアイスじゃないんだー」そう言いながら、今まで殻にこもっていた自分と共に、クーラーボックスを飛び出した。

b:アイスと勘違いするかよ。

a:すると男は、「アイスじゃないのかよ」と言って、肩を落とし店から姿を消した。

b:お前を、何味だと思ったんだよ。

a:不覚にも飛び出してしまった僕は、誰かにクーラーボックスを奪われるのではないかと、極度の恐怖感に襲われた。

b:誰も入るか。

a:「僕は本当にアイスなのにー」そう言いながらクーラーボックスの中に・・・。

b:クーラーボックスの話はいいから、鬼の話してよ。

a:するとそこに、おにぎりを持った桃太郎が現れた。

b:おにぎり持って、鬼切る気満々じゃないか。

a:桃太郎は僕に尋ねる、

「鬼を見ませんでしたか?」と。僕は答えた、「知りません」と。だって、たとえ鬼でも、ハトやお爺さんに豆をあげるいい奴を裏切れはしないから。

b:やっぱり、ちょいちょい出てくるお爺さんはおかしいだろ。

a:そして、僕はアイスを買うはずだったお金を叩いて、大きな桃を買い、中に入った。

b:何かの中に入るの好きだね、あんた。

a:そして、川に流され、洗濯中のお婆さんに拾われて、僕が桃太郎となり、鬼が暴れた時には責任をもって退治しようと決めたんだ。

b:何の話だよ。

a:もしその時が来たのなら、きび団子ではなく是非アイスを頂きたい。

b:結局、アイスが食いたいだけだろ。

a:そうです。鬼なんてどうでもいいんですよ。だって僕の目的はアイスを食う事なんだから。

b:めちゃくちゃだな。

a:ちなみに、言ってなかったですけど、山に芝刈りに言ったお爺さんは、ハトと一緒に豆食っていた人だぜ。

b:もういいよ。


何とか無事に漫才を終えた。本当にギリギリ君だったのさ、みんな。

「やっぱり、透明人間漫才よりも俺達の漫才の方が面白いだろ」そう言って、マリアは汚く鼻水を飛ばして、グシャッと愚者みたいに笑った。

「自分達の出番だって気付いていたのなら早く言えよ」乳首に冷や汗が出る僕。

「何言っているんだよ。俺達が慌てて出て来たからみんなが笑っていたじゃないか」と、得意げな顔をするマリア殿。

何はともあれ、漫才をやり終えたのでヒュルリと緊張が解けた、と言いたいところだが、結果発表が残されていたので、またドキドキが胸を叩き始める。

やがて、すべての出場者が漫才を終えて、結果発表がムクッと行われた。


「かんぱーい」そう言って、二人は缶ジュースを合わせた。

「まさか一回戦で落ち・・・ずに合格するとはな」上機嫌のマリア。

「紛らわしい言い方するなよ。僕達は合格したんだぜ、合格」はしゃぐ僕。

「合格、合格、合格、合格・・・」僕よりもはしゃぐマリア。

「合格、合格、合格、合格・・・」負けじと張り合う僕。

このやり取りが十分間は続いた。

「ハア、ハア、あんまり合格、合格、騒いでいると、これからが結果発表で、合格したくて祈っているみたいな気持ちになるだろ。俺達は合格したんだから、缶ジュースでも飲んで落ち着こうぜ」とうとうマリアが折れた。

「ハア、ハア、確かにそうだね。もう僕達は合格したんだから。乾杯、マリア」僕はそう言って、缶ジュースを合わせ・・・。

「合格、合格、合格、合格・・・」また懲りずに始めるマリア。

もちろん、僕も「合格、合格、合格、合格・・・」

このやり取りがさらに十分間も続いた。

どうあれこうあれ、僕達は一回戦を突破した。

 

二回戦当日。

待ち合わせ場所にマリアが来ない。理解不能だぜ。もう十五分も遅れている。時間は待ってはくれないぜベイビー。

病気や怪我でもしたのかと心配になり、携帯電話に何度も連絡したけれど全然出ない。変な気分になる僕ちゃん。

仕方がないので、マリアの自宅に愛の電話した。

「プルルル・・・。はい、お歳暮です」マリアのお母さんが出なすった。

「あの、全部ですけどマリア君いますか?」

「マリアならさっき慌てて家を出て行きましたけど、家出かしら?」

「家出じゃないと思います。今から僕達、会う約束していたもので」

「そうでしたの。それにしても全部君は何の用事で電話して来たのかしら?」

「約束の時間にマリア君が遅れているものですから、何かあったのかと心配になりまして、電話したんですけよ」

「そうでしたの。それならマリアに伝えておきますね。約束の時間に間に合わせるようにと」

「えっ、マリア君、まだ家にいるんですか?」

「さっき家を飛び出して行きましたのよ。なので帰って来たら伝えておきますね。約束の時間に間に合わせるようにと」

「・・・帰って来てからでは遅いんですけど」

「そうでしたの。でも伝えたくても、さっき超高速のスピードで出て行ってしまったもので、夜逃げかしら?」

「・・・夜逃げではないと思いますよ。夜じゃないですし。とりあえず、マリア君は家を出たんですよね?」

「ええ、やっぱり家出だったのかしら?」

「家出じゃないですから。待ち合わせの場所に向かっているんだと思います。あの、失礼します」そう言って、電話をカリっと切ると、遠くの彼方から大きな声がするのだ。

「じょうだーんー、じょうだーんー」違和感丸出しの変なイントネーション・・・愛しのマリアだ。

「ごめん、遅れて。今日の一回戦の事考えていたら眠れなくてさ。寝坊しちゃったよ」

「今日は二回戦だ」

「そうとも言う」

「そうとしか言わない。それにしても何回もかけたんだから携帯電話に出ろよ」

「慌てて、家出て来たから携帯電話忘れちゃってさ。家出だよ、家出」

「やはり血なのか・・・。親子揃って同じ事を。それよりもそろそろツッコんでいいか?」

「何もボケていないぞ」キョトンとする、無防備なマリア選手。

「何でパジャマのまま来たんだよ?」

「パジャマのまま出かけると、家に帰った時に着替えなくてすむんだよ。不思議だね」

「パジャマ姿で漫才するのかよ?」

「ああ、そうだよ。こらからは学校もパジャマで行くよ」

「学生服で来いよ」

「何言っているんだ。休日なのに学生服で出歩くなんておかしいだろ」

「パジャマ姿で出歩く方がおかしいだろ。それに一緒に学生服で出ようって言ったのはお前だろ」

「それを裏切ったのも俺だけどな」

「誇らしげに言うな」

「それよりも、こんな所で漫才していていいのか?」

「あー、時間がない。遅刻するー」

「あー、ずるい。それは今朝の俺の真似だろ」

「遊んでいる場合じゃないだろ。いくぞ会場に」そう言って、僕等は方向性の違いから別々の道を走り始め・・・

「地球一周する気か。そっちじゃないだろ、こっちだ、会場に行く道は」と、僕はツッコミながら何とかマリアを会場に連れて行った。

会場に着くとマリアがユラッと笑った。何故なら、一回戦同様に透明人間漫才が行われ・・・つまり、僕等の出番だ。慌ててステージに駆け上がった。ドドドド・・・・。

そして、息を整える暇もなくジュルジュルと漫才を始めた。


〈レンタルビデオショップ〉

a:冗談 b:マリア


a:これ返却で。

b:一本、返却されていないDVDがあります。

a:おかしいな、どんなタイトルですか?

b:延滞学園です。

a:そんなの借りてないよ。

b:おかしいですね、延滞される方は必ず借りる事になっているんですけど。

a:どういう事ですか?

b:内の店の決まりでして、延滞料金100万円払って頂きます。

a:そんなに払えませんよ。

b:困りましたね。内の店も商売でやっているものですから、タダでDVDを貸す訳にはいきませんよ。それではただの人のいい近所のお兄さんになってしまいますからね。

a:店長に代わって貰えますか?

b:店長は今、レンタル中でして、もうしばらくで返却されると思うんですけど。

a:店長もレンタルしているの。

b:店長だけでなく、内の店は土地や建物もレンタルですから。毎月支払いもちゃんとしているんですよ。

a:それは本格的な。

b:とりあえず、店長が帰って来る間、こちらのDVDでもご覧になってお待ち下さい。

a:何のDVDですか?

b:内の店長の半生を実話に基づいて描いた涙の青春友情物語です。

a:そんなのあるの?

b:はい、ではご覧下さい。

 (コント場面の切り替え)

a:はあー。

b:おい、お前の家、物凄く貧乏なんだってな?

a:うん。

b:お前のお父さんって、いつもボロボロの服を着て人に頭を下げているんだってな?

a:うん。

b:それにお前の母ちゃんって、何故かは知らないけど、夜中にウロウロ出歩いているんだってな?

a:うん。

b:だからみんなにイジメられているんだろ、お前。

a:うん。

b:俺はここら辺の番長をやっている者だ。弱い者の味方。つまり、正義の味方って奴よ。もしイジメられそうになったらすぐ俺に言え、そのイジメっ子を捕まえて、全員レンタルビデオショップの会員にしてやるからな。

a:うん。

b:それに俺はお前のお父さんもお母さんも認めているよ。だってボロボロになるまで会員証を使う会員も、夜中にフラフラ立ち寄る会員も珍しくないからな、歓迎するよ会員として。

a:番長の頭の中は、レンタルビデオの事でいっぱいだね。

b:ああ、俺は番長を卒業したら自分の家のレンタルビデオ店を継いで、店長になるのが夢だからな。

a:きっと叶うよ。

b:その時はお前も内の店の会員になれよな。

a:うん・・・でも自信がないな、会員になる。

b:何言っているんだ。初めは誰だってそうさ。何度も借りていく内にポイントが貯まり、だんだんと自信が付いていくものなのさ。

a:うん、でも僕は病気なんだ。次の発作が起きたらもう助からない。だから借りてもちゃんと返せるか自信がないんだ。

それにお父さんもお母さんも、僕が病気のせいで苦労しているんだ。

b:そうだったのか、偉いなお前の家族は。 

もし借りたい物があったら言ってくれ、どんな時も俺が代わりに返してやるからさ、絶対に、約束だ。

a:うん。

b:今から俺の家に来ないか?面白いDVDがあるんだけど?

a:うん。

その日僕は、番長と一緒に映画のDVDを見た。その映画の内容は、色々な事件が起きて、人々は困難に陥るんだけど、最後に物凄い奇跡が起きてみんなが助かる、素敵な話だった。ハッピーエンド。

僕達もこの物語の登場人物だったら良かったのにな。そしたら最後にはみんな幸せになれたのに・・・。僕はもう助からないだろう。そうなったら僕の為に苦労している両親も少しは楽になるのかな?もう悲しい話は沢山です。神様、この映画の様に最後は奇跡が起きて、みんなを幸せにして下さい。

 (コント場面の切り替え)

b:店長のDVDはいかがでしたか?

a:悲しい話ですね。

b:それでも番長の友人はみんなが幸せになる事を望んでいたのですよ。だからあなたは悲しまないで下さい。

a:そうですね。

b:番長は今夢を叶えて店長になりました。そして心に決めた事があるのです。

a:何ですか?

b:レンタルしたのに返さない客は絶対に許さない。それとどんな話でも最後にはハッピーエンドにするという事を。

a:そうですか。

b:店長が帰って来た。

店長、この客が延滞料金を払わないんですけど。

a:あれが本当に店長なのかよ、番長を卒業して完全にやくざになっちゃっているじゃないですか。この話は本当にハッピーエンドになるのかよ。

b:安心して下さい、痛い目に遭い過ぎてハッピーになってきますから。

a:もういいよ。


漫才を終えた。ザビガルゴゴトシュ。時折笑い声が聞こえてきたものの、それはマリアがパジャマ姿だったからと思えてならなかった。そう僕はチキンボーイ。

漫才の出来が気になって仕方が、が、が、が、な、い、なな、い、ない。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

ただマリア名人に言わせておけば、パジャマ姿だろうと何だろうと、人が笑えばそれでいいとの事。その時の彼は名人面だった事、名人面事。


二回戦の結果発表。

「かんぱーい」そう言って、二人は缶ジュースを合わせた。

「まさか二回戦で落ち・・・ずに合格するとはな」上機嫌のマリア。

「一回戦の時も同じ事言ってなかったか?それにしても僕達は合格したんだぜ、合格」はしゃぐ僕。

「合格、合格、合格、合格・・・」僕よりもはしゃぐマリア。

「合格、合格、合格、合格・・・」負けじと張り合う僕。

一回戦と同じやり取りが三十分間は続いた。ただ、一回戦と違う事は、マリアがパジャマ姿だという事。それと星がとても綺麗に見えたという事。

 

三回戦当日。

この日は、二回戦に遅刻して来た事も考慮して、かなり早い時間に待ち合わせをする事にした。計画的だよね、ウフフ。漫才の練習が出来る事も兼ねているのさ、ヘイ。

それはまだ誰も人がいない真空時間だ?小鳥達がチュンチュンと鳴いているぜ。まるでオーケストラの歓迎が降ってくるきたいだ。

さすがに少し早過ぎたかな、と究極反省していると、遠くから人影が見えるぜ、ハニー。どうせマリアだろう?

「おーい」僕が爽やかにそう叫ぶと、感服なきまでに無視された。

キィー、悔しかったので、もう一度大らかに叫んだ。

「おーい」よく見るとマリアなどでは微塵もなく、ジョギングをする見知らぬ健康おじさんだったのさ、フフフ。

「なんでやねん」と一人ボケ、一人ツッコミを所構わずかます僕だった、デヘヘヘ。

ただ、これは今日の小さい方のツッコミでしかなかった・・・。どういう事?

大きい方のツッコミはというとね・・・。

地球時間で数時間後。

マリアが来ないぞ。

携帯電話に連絡しても、自宅に連絡しても誰も出ないのだ。神隠しか、ちくしょうめ。今度ばかりは真剣に心配したんだ。

万が一、病気や怪我だったら・・・。神よ、言われなき彼を救い給え。

こんな事を数時間の内の永遠中考え続けさせられる、いたいけな僕は途方に暮れる。

仕方のない事、受け入れて前に進むべきさ、と漫才どころではなくなりかけていたんだよ吾輩は。だが、だが、その時、その時、

「おーい」と、遠くからジョギングをする人影。いつかの夢、マリア様の登場だ。

「ごめん、遅刻したかも」

「遅刻したかもじゃなくて、完全に遅刻だろ。何時間待たせる気だよ」

「お母さんに起こして貰おうと思ったら、お父さんと旅行に出掛けていたの忘れていたんだよね」

「自分で起きろよ。それに携帯電話に何回もかけたんだから出ろよな」

「そんなに何回も電話した事を自慢するなよな」

「これは自慢じゃないよ」

「俺なんて何回もかかってくる電話の誘惑に、打ち勝って出なかったんだぞ」

「打ち勝つな。それより心配したんだぞ、病気や怪我だったらどうしようって。漫才どころじゃなくなっていたんだぞ・・・。でも今のお前の姿を見ていると、そんな気持ちが吹っ飛びそうだよ」

「あんまり褒めるなよ」

「何でパジャマ姿なんだよ。それに今度は枕も持ってきているじゃないか」

「これがあったらどこでも寝むれるだろ、たとえステージの上でもな」

「ステージの上で寝るなよ」

「ギャグだよ、ギャグ。ZZZZ・・・」

「言っているそばから寝るなー」

「それよりも、こんな所で漫才していていいのかよ?」

「あー、時間がない。遅刻するー」

「あー、ずるい。それは今朝の俺の真似だろ」

「遊んでいる場合じゃないだろ。いくぞ会場に」そう言って、僕等は方向性の違いから別々の道を走り始め・・・

「地球一周する気か。そっちじゃないだろ、こっちだ、会場に行く道は」と、僕はツッコミながら、何とかマリアを会場に連れて行った。

まったく二回戦と同じ展開である。

続きも同じ展開に、とはいかせるものか。

二回戦の時よりも足の回転数を上げて早くひたすら希望を胸に走る。僕はまるでオリンピックの選ばれしランナーの様。

セーフやで。僕は何とか間に合ったのさ。まだ前のコンビが漫才をしていた。さよなら遅刻よ、達者でな。こんにちは漫才、いざ参らん。と、今回は助かったのだと大いに感激しとった訳ですよ。ただね・・・。マリア君が見当たりませーん。

マリアは二回戦と丸っきり同じ速度で走っていた。その姿はまるで、優れた精密機械の代表で走るサイボーグの様に・・・悪夢みたいに同タイムだ。

そして、結局ですね「透明人間漫才に間に合った」と、平和に笑うマリア。

「つまり、間に合わなかったって事じゃないか」と、馴染みのツッコミを入れて、いつも通りにステージに駆け上がると、マリアが枕を持ったままだ。君と言う男は・・・。

「マクラを持ったまま漫才したら、お先マックラじゃないかーい」と、強烈で地盤を揺らす様なツッコミを、遠慮なくおおいに入れて、マリア専用枕を場外に弾き飛ばし、最悪の事態を免れたぞよ、わらわは。

寂しそうに枕の行方を見届ける我が友マリアをよそに、ブリブリと漫才を始めた。


〈嘘〉 a:冗談 b:マリア


a:昨日、ここに妖精がいたんだってさ。

b:誰が言っていたの?

a:高橋先輩。

b:高橋先輩って誰?

a:高橋先輩、知らないの?

有名なんだけどな。

b:何で有名なの?

a:嘘つきで有名なんだよ。

b:嘘つきで有名って事は、嘘つくって事だよな?

a:ああ。

b:その話嘘なんじゃないか?

a:先輩の悪口かよ。

b:そう言う訳じゃないけどさ。

a:鳥だって一日中飛んでいる訳じゃないんだぞ。嘘つきだって嘘だけついている訳じゃないんだからな。

b:確かにそうだけど。

a:少なくとも、先輩は嘘をつくけれど、人の悪口は言わないぜ。

b:ごめん。

a:気にするなよ。先輩といっても本当は後輩だから。

b:どういうことだよ?

a:年を誤魔化しているのさ。

b:何の為に?

a:正直者にならない為にさ。

b:何故正直者になりたくないのさ?

a:自分の気持ちに正直でいたいからさ。

b:正直者になりたくない気持ちに正直だって事か。

a:ああ。

b:何で高橋先輩は嘘つきと呼ばれているんだよ?

a:高橋先輩の家は物凄い貧乏なんだよ。食べる物もろくになかった。

だが、いつかの高橋先輩の誕生日に、親が無理をして物凄く豪華な料理を振舞ったんだ。

でも高橋先輩はその豪華な料理を一口食べてはまずいと言って、食べるのを止めてしまったんだ。

それからは貧しくて美味しくもない料理を美味しい、美味しい、と言って食べるようになったんだ。

b:どういう事だよ。

a:誕生日に出された食事はとても美味しかった。それは初めて食事と呼べる物だった。でも、その料理を美味しいと言ってしまったら、親が今後無理をして豪華な料理を出してしまうのを恐れて、嘘をつくようになったんだよ。

b:いい人じゃないか。

a:ああ、でもこの話はとても信じられそうにはないんだよ。

b:どうして?

a:高橋先輩は嘘つきだから。

 (コントに突入)

b:薪をくべてくれ。

a:はい。

b:それにしても変わっているね、あんた。

a:自分では普通だと思っているんですけど。

b:人生変わるよ。

a:覚悟しています。

b:薪を。

a:はい。

b:お前みたいのが今まで何人も来たが、無事だった奴はいない。

a:0ですか?

b:ああ、一人を除いてはな。

a:一人だけ。

b:その一人は俺だと言いたいところだが、俺もギリギリだった。

a:そうですか。

b:昔は、胸毛がな、胸毛があったんだが、あまりの事に、ほら。

a:ツルツル。

b:だろ。

a:そういえば頭もツルツルだー。

b:これはなー・・・昔からだ。

薪。

a:はい。

b:もっとだ。

a:はい。

グー、グー。

b:何だ、腹が減っているのか?

a:実は、森を抜けてこの小屋に来るまでに、何も食べれていないもので・・・。

b:この森を甘くみたな。そこに俺の食料がある、食べてもいいぞ。

a:蒸しパンですか。

b:贅沢がしたいのなら出て行け。習得したいのならその蒸しパンを噛み締めろ。

a:はい、柔らかくて噛み締めにくいです。

b:言っておくが、俺のオッパイもそれ位柔らかいぞ、覚えておけ。

a:はい。

b:それでは少し試させて貰うか。

a:はい。

b:ここで教わった事は誰にも話してはならない、守れるか?

a:はい。

b:他人に教えないのは基本だが、もし俺に教えてくれと頼まれたらどうする?

a:教えません。

b:そうだ、俺は知っている事だが、いかなる時も教えてはならない。たとえ俺が駄々をこねて甘えてきてもだ、いいな。

a:教えない自信があります。

b:失礼な、人は見かけによらないぞ。特に俺は末っ子だ、油断するなよ。

a:はい。

b:質問はあるか?

a:はい、習得するのにどれ位の時間がかかりますか?

b:人それぞれだな。短い者で一か月、長い者で十年、それ位に個人差がある。お前次第だ。

 ただ、一人だけ一日で習得していった者がいたけどな。

a:その一人は、先ほど言われた一人ですか?

b:ああ、特別だった。そして、唯一の女性だった。

a:女性で、しかもたった一日で・・・。

b:ああ、最初は四つん這いで現れたんだ。

a:野性的な。

b:急いでいたから、両手も使って駆けて来たらしい。

a:普通に走った方が早くないですか?

b:ああ。ただ、気持ちの問題らしい。その後も、奇声を上げるは上げないは、ヨダレを垂らすは垂らさないは、大変だったのそうでなかったの。

a:どっちなんですか?

b:両方だ。俺が話をしているのにラジコンの車で遊んでいる。そんな問題の多い奴だった。

a:そうなんですか。

b:ただな。俺は昔、車にはねられた事があってな。そのラジコンの車をよく見ると、偶然にもその時の車と同じ車種なんだよ。しかもそのラジコンの車を、俺の左足だけにぶつけてくるんだ。偶然にも俺が昔はねられたのも左足だけなんだよ。

a:気味が悪いですね。

b:他にも俺を子供の時のあだ名で呼んできたり、肉親でも知らない様な俺の秘密を知っていたり・・・。俺は恐ろしくなって、思わず「帰れ」と叫んでしまったんだ。すると彼女は寂しそうに、「帰る場所はもうない」と言うんだ。

a:どういう事なんですか?

b:実は彼女は未来から来たらしい。彼女の住んでいた時代には、もうこれは途絶えてしまったそうだ。

a:そうだったんですか。彼女はそんなに遠くから来ていたのですね。

b:いや、意外に近い近未来から来たそうだ。つまり、これは近い未来には途絶えてしまうということだ。

彼女は泣いていた。

a:可哀相に、涙まで流して。

b:極度の花粉症だそうだ。

a:紛らわしい。

b:俺には花粉症という強がりにも見えたけどな。結局、女性の涙は分らないもの。彼女は泣きながら言っていた。私の次に来る者が存続の鍵を握ると、つまりお前の事だ、高橋。

a:小さい頃から憧れていました。

よくお母さんが言っていたんです。

電車の優先席に老人が座れるのも、失くした物が見つかるのも、愛し合う人達が結ばれるのも、全て妖精のおかげだって。

b:信じられるか、高橋。

a:はい、僕も立派な妖精になりたいです。

b:それなら高橋。まずはようせいになるんだから、嘘をつくのはもうようせい。


「はあ」と、溜息をつく僕。

何だかんだあったけど、何とかやりきったと胸を撫で下ろした。

「はあ」と、溜息をつくマリア。

何だかんだで、枕の行方が分からなくなり肩を撫で下ろした。

この時思った。僕はこの男と漫才をしていていいのだろうか・・・。


三回戦の結果発表。

「ざんぱーい・・・じゃなくて、かんぱーい」

「優勝おめでとう」感極まるマリア。こんな彼もたまにはどうですか?

「まだ優勝してないだろ。三回戦突破おめでとうだ」と、缶ジュースで喜びに酔う僕、こんな僕もたまにはどうですか?

「何だよ、優勝だと思ってビシッと決めてきたのにさ」

「パジャマ姿じゃないか」

「何だよ、テレビに映ってなかったのかー」

「助かったじゃないか」

「ビデオに録画してきたのにさー」

「何の番組をだよ」

「それよりも、後何回漫才すれば優勝出来るんだよ」

「次の四回戦を突破すると、12月24日のクリスマス・イヴに行われる決勝戦に出られるんだよ。その決勝戦に出られるのは8組だけ。その8組で漫才をして面白かった上位3組で最終決戦をして、それに勝った者が優勝出来る訳なんだよ」

「つまり、後一回漫才すればいいって事だな」

「後三回。落ちる気満々じゃないかよ」

「じゃあ、とりあえず、三回の内の一回をここでやっちゃうか?」

「ただ三回やればいいんじゃなくて、お客さんや審査員の前で後三回漫才やるんだよ」

「三回連続でやればいいのかよ」

「そうじゃなくて、飛び飛びに・・・飛び飛びにって言うのもおかしいけど、一回ずつやるんだよ」

「じゃあ、その一回をここで・・・」

「そうじゃねえよ」

このやり取りを一時間繰り返した。

でも、辛くはなかった。・・・辛かったけど、浮かれていたのさ、三回戦を突破した魔法に。どうだい可愛いだろ。ほんまもんの僕等ってさ。いたいけなエンジェルなんだよ、ことごとく。

ちなみにアマチュアで三回戦を突破したのは、僕等だけだった。

こ・れ・は・快・挙・さ・うへへへへ。

 

(後編に続く)

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