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赤ちゃんはどこから来るの?(3)

「別の言い方をすれば、生命が自然に誕生するなんて、゛ありえない゛と、言っているのと変わらないわ。だとしたら、私達、地球に住む生き物は、宇宙で唯一、誕生した生命体なのかしら?」

 

「哲学的な話になって来たなぁ……」


「コウノトリさん? どうして地球に生命が誕生したの? 宇宙に、知的生命がどれだけ存在するかを導き出した、ドレイクの方程式でも、計算すると、この宇宙に、地球と同じ文明レベルを持つ星は、0か10億個らしいの」


「ご、ごめんよ。計算は苦手なんだ……」


「宇宙は広大よ? 太陽は地球の109倍の大きさの70万キロメートル。地球から太陽までの道のりは1億4960万キロメートルもあるの。光の早さで言うと、8分の遅れがあるわ」


 コウノトリさんの目が点になります。

 でもアインちゃんには関係ありません。


「さらに大きい太陽系は、半径がおよそ366億キロメートルあって、それだけでも途方もない広さなのに、太陽系の集合体、銀河系はも~と大きい10垓キロメートル。光の早さで10万光年もあるのよ! 想像出来る? そんなに大きい銀河がい~ぱい集まって更に大きい宇宙を作っているわ」


「う、う~ん想像出来ない。5歳児の話に付いて行けない僕は、おかしいのかな?」


「もし、宇宙の大きさと同じくらい大きい、顕微鏡があって、地球の生命を見ようとしても、小さ過ぎて、顕微鏡のレンズを覗いている存在は、生命体を見つけられないわ。きっと、生命が存在していることにすら、気付いていないのかも?」


「頼むから、僕を家に帰してくれ? 話を聞いていたら、気分が悪くなって来た」


 コウノトリさんは羽でお腹をさすりますが、アインちゃんは無視します。


「もし、地球以外に知的生命が存在しなかったら、どうして、宇宙で小さい、と~ても、小さい地球だけ、人間が存在するの?」


「なんでだろうね……興味ないけど……」


 冷ややかなコウノトリさんに、アインちゃんは詰め寄ります。


「誰だって、生まれて来た意味があるとか、自分は特別な存在なんだって思うわ。自分達は世界に祝福され、神に選ばれた存在なんだって、思い込むはずよ?」


「そ、その人間は多分、君みたいに頭が異次元なんだろうね? 聞いてるこっちは気が狂いそうだけど」


 嫌みを言うようになった、コウノトリさんにかまうことなく、アインちゃんの話は突き抜けます。


「そんな、傲慢な人類がやることは、神を目指し、自分達が神になること……でもね、コウノトリさん? 人類は神にはなれないの」


 うつむきながら、悲しげお喋りするアインちゃんの顔は、落ち込んだ普通の幼児に見えますが、次に出た言葉は、やはり、5歳児らしからぬ内容です。


「生命に寿命があるように、地球にも寿命があるわ。いつか、大きな星が地球にぶつかってバラバラになるか。死を向かえる太陽が、超新星に変身すると、膨張して、周辺惑星を炎の波で飲み込んでいくわ。その時、地球に存在する、全ての生命も焼かれてしまうわ」


 もうコウノトリさんには、話に入る余地はありません。

 アインちゃんの話は止まる様子がありませんでした。


「人類は永遠に神にはなれないのよ。この宇宙では、ちっぽけで非力な存在だから」


 悲しい表情を浮かべた、金髪青目の幼女は、お話が脱線したことに気付き、元に戻します。


「ごめんなさい。生命はどこから来たのかってお話よね?」


 アインちゃんはかぶりを降ります。


「ううん。生命という概念はいつ生まれたの? 最近の研究で、DNAの塩基は、宇宙から地球へ降って来た、隕石の中にあったという仮説があるのよ。知ってた?」


「そんなこと聞かれても……知ってても飲みの席ですら、話のネタにならないよ? ほとんど中二病のネタだよ?」と、コウノトリさん。


「DNAは、タンパク質を具現化する、重要な因子よ? 隕石で運ばれたDNAの塩基は、地球のタンパク質と結合し、タンパク質に働きかけて形作らせるわ」

 

 アインちゃんは見上げて、お星様で飾られたお部屋の天井を眺めて、叫ぶように言います。


「宇宙からDNAが来たってことは、そのDNAが誕生した星があるはずよ? だったら、その星にも、地球と同じような生命体が存在するかもしれないわ!」


 再び、マヌケづらのコウノトリさんに目を移すと、ふっくらしたほっぺたの幼女は、話を続けます。


「これは私が考えたんだけど! 生命を持った星が、別の星とぶつかって、バラバラになると、隕石になって、宇宙のあっちこっちに飛んで行くの! もちろん、その星のDNAを乗せてね」


 アインちゃんのお話に飽きたのか、コウノトリさんのまぶたは段々落ちていき、居眠りをしてしまいました。


 アインちゃんはコウノトリさんのほっぺたをはたきます。

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