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~ INDIGO ~   作者: MiYA
43/49

楓、お披露目…



そうして、楓の叱咤激励(シッタゲキレイ)を受けながら、虹助は楓の望む姿を創りあげていった。チャッキーのように、ゴツイナイフを持たせたいと言う虹助の願いに対し、ウチはメリケンサックを首飾りにして欲しいんや!と楓が話し、互いの意見を擦り合わせながら、やっと完成させる事が出来た。



「かっ、完璧や … 楓 … 」



父として完成した楓の姿に、虹助は目に涙を滲ませ感動していた。


黒髪は超直毛で胸元迄長く …


額の左側に亀裂が走り、上部の頭は割れ、生々しい血まみれの脳が見える …


瞳は虹助が手を加え、中心は黒く周りは灼熱の赤 …


小顔で鼻筋はスッーと通り …


唇は小さめで、少々、アヒル口 …


頬は幼い子供らしく、ぷくっと膨らみ…


頬紅はふわっとボカした、オレンジ色 …


首から鎖骨はシュッとし、少女ながら凛とした女性を思わせる、確りとした線を描き


左手には虹助作の、サバイバルナイフを握り、右手にチェーンを引き摺る …


爪は黒のマニキュアが塗られ、スワロフスキーのドクロが、10本の爪にギラギラと輝く …


首飾りのメリケンサックには、オニキスとラピスラズリの宝石が、5本の指の間に装飾され …


漆黒レースのドレスは、膝下迄の長さでその下に黒革のパンツを履き、黒い編み上げブ ーツを履いている …



何とも言いようのないガラ悪さで、もしも 、外出しようと家のドアを開け、歩いて来るのが見えたなら、即座にドアを閉め鍵とチェーンも忘れずに掛け、通り過ぎるまで静かにやり過ごし、万一 、ドアを叩かれ、チャイムを鳴らされでもしたら、心臓が半分口から飛び出すに違いない… 息を潜め居留守を使い、唯々、去るのを待ってしまうだろう…



オ父チャン…


アリガトウ!ウチノ望ム姿ヤ …


コレガ、ウチヤ~ ッ!


楓も心から喜んでいた 、そんな楓に父である虹助は …


「楓 … 父ちゃんから、お前に言っておかなならん事があるっ!いいか、楓 … お前は女の子や、門限は夜7時!人は見掛けやないけど、悪さに誘うような人形とはツルムな !弱い者虐めは最低や… それから … 悪い男には騙されるなっ!これが一番大事や… 父ちゃんは楓の言う事を、お前が嘘言ってようが全面的に信用して、疑う事は無い!父ちゃんは、お前の味方や!だから、何があ っても正直に話せや … 」



待ッテェナ、オ父チャン、ウチ動カレヘンノニ … 門限モ何モナイワ~ アハハハッ!オ父チャン、不安神経症カッ! ハハッ!


虹助は今にも楓が、動き出しそうだと感じ話したのだが、楓に動けないと言われ、安心しほっと胸を撫で下ろした。


その後、淡雪の家のリビングでお披露目となった。虹助は楓を、リビングのテーブルの上に置いた。



ゴクッ



「むっ、むっ、娘の楓です!」



相変わらず緊張すると、生唾を飲み込んでしまう虹助だった。



淡雪は楓には触れず、車椅子をクイックイ ッと動かし、楓を眺め…



「… 初めまして、楓さん … 」



淡雪は楓に声を掛けた。



オ父チャン!何ヤ、コノ爺サン … 楓ノ事、ジロジロ見トルデェ … 気色悪イワ~何トカシテヤ~ オ父チャンッ!



「うっ、ううんっ、かっ、楓、あんな、この方は、父ちゃんの爺さんで、淡雪 涼一はん言う立派な芸術家で、人形師でもあるんや、お父ちゃんは楓をコンテストに出そう思うとる!何処に出しても恥ずかしくない、確り者の立派な娘や!だから、見られる事に慣れとき、いい機会やで!チャンスや!」



八重弁護士は、ズボンのポケットからハンケチを取り出し、額に当て冷や汗を拭い 、 LUZIAとCielは、じぃっと虹助の顔に穴が開く程見つめていた。


淡雪は暫く楓を見つめ、小刻みに頷くと…



「虹助君、素晴らしいと想います… 今にも襲い掛かって来そうな攻撃性 … ですが何故か… 攻撃性に反する純粋さや乙女らしさを感じる … メリケンサックと言う武器を首飾りにし、チェーンをジャラジャラ下げ、ナイフ迄持っているのに、ネイルアートは欠かさない!指先は綺麗にキラキラ… その乙女心 … 虹助君!楓さんは… 今、青春真っ只中ですね … 父と祖父として、否、家族として、確り見守りましょう … 楓さん… 10年後の自分へ是非、手紙を書いて下さい…これは祖父として、楓さんにお願いします… ああ、手紙の始まりは、拝啓でお願いしますよ、私、アンジェラのあの歌… 好きなんですよ… 泣けますから … 」



淡雪は涙を拭いていた …



「はい、親として楓を見守ります!」



虹助も涙ぐみ、淡雪の言葉に応えた。


淡雪と虹助の態度に、どうして良いか解らずに子猫を撫でるLUZIAを見た楓は …



オ父チャンッ!何デアノ子動イテンネン?アノ子、人形ヤロ?人形メイクヤ無イナ?何デナン?何デ何デ何デェ-ッ!教エテヤ ~ッ!



楓は虹助に聞いたが…



「楓、父ちゃんばっかり頼ってたら、お前の為にならん!友達になりたいなら自分から行くんや!」



解ッタ!オ父チャン、聞イテミルッ!

ヨウ、ソコノ姉チャン、アンタヤ!アンタ!何ヤソノファッションッ!社交界カ ッ !場違イヤデェ~ アンタミタイナ、嬢チャンガ来ル場所ヤナイッ!トットト帰リ~!



何故、LUZIAは動けるのか?という本題には一切触れず話し終えた楓は、満足そうな顔をしていた。



先程まで、LUZIAは楓の言葉を感じていなかったが、同じ場所と時間を共有する事により、空気の振動に変化が起こり、楓の言葉は全てLUZIA、淡雪、八重弁護士、Ciel、勿論、虹助にも聴こえていた。



LUZIAの、Cielを撫でる手が止まった…


ユラユラと髪が立ち上がる …



「LUZIAはん!す …」



虹助が楓に変わり、LUZIAに謝ろうとしたが、淡雪が虹助の口に手をあて、虹助の言葉を遮った。



LUZIAの髪が炎のように揺れ…



「ねぇ… 今の言葉… 私に言ったのかしら~?」



ピカッーッ! ゴロゴロゴロ …


晴天だった空に雨雲が押し寄せ、真っ黒な空に稲光が走った …



ウチハ、思ッタ事言ッタタゲヤッ!



楓はLUZIAに謝る所か、挑発してしまった



「へぇ… 貴女、人形になって何年?」



目は緩ませず口元だけ笑い、LUZIAが楓に聞いた …



昨日、完成シタンヤ、ダカラ… 人形ニナッテ1日モ経ッテナイワ~アハハハッ!



楓は笑ってしまった …



「そう … それならLUZIAは、人形界の先輩よね? 先輩を立てる事を知らない人形が、どうなるか… 貴女、知ってる?」



LUZIAは帰国子女モデルの、イビり事件のような言葉を楓に言った。舞台はガールズコレクション会場では無いが …



ソンナン知ランデ~アハハハッ!



LUZIAの目付きが変わり …



「1、バラバラになる … 2、焼却炉で焼死 … 3、謝る … さぁ~賢い貴女は何れを選びますかっ?あはっ♪」



姉チャン、4番、笑ウナイヤンッ!入レトキ~アホ~アハハハッ!



ピキッ …



LUZIAのコメカミに、亀裂が走る音が聴こえた気がした…



「じゃぁ… 笑うなのね… 本当にいいのね」



ギ ク ッ…



LUZIAの凄みのある声と気迫に、楓の躰が勝手に震えた …



何ナン … ? 足カラブルブルスルワ… 姉チ ャン… 凄ミアルナ~、 ウチ… 敵ワンカモナ



楓は恐れるという事を、初めて学んだ …



「お~っほほほっ!楓さん … 悪い事をしたなと思った時は 、ごめんなさい、済みません、申し訳御座いません、失礼致しました … 時と場合によって、謝罪をしなければいけないのよ~お~ほほほっ!LUZIAが教育係になって、キッチリ教えてあげるわ~♪お~ほほほっお~ほほほっ!ゲホッゲホ ッ !」



LUZIAは少々、ムセ込んでしまったが、その事は気にもされず、虹助も淡雪も八重弁護士も、女の世界は、そら恐ろしい世界で 、空気読めよ!と言う環境が常に待ち構えているのだな、空気が読めなければ辛い思いをするのだろうな … 女性は大変なんだな…



此から始まる、LUZIAの教育に期待しつつも不安を感じ、ガタガタと躰を震わせていた。





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