表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~ INDIGO ~   作者: MiYA
41/49

危険なチョコバナナ



アッ、オ父チャン、休憩無シヤ、セナアカン事、未々アルワ、アハハハハ~!



「そや… 困った時は笑う… それも、世の中を生き抜く為の手段やで… 楓は女の子なんやから笑顔は大事や … そりゃ… 人生の荒波にのまれ、豪雨に曝される事も… 」



虹助は軽く眼を閉じ、楓の顔に聞かせていたが …



オ父チャン! 口ハエエカラ、手動カシヤ~ウチガ嫁ニイク前ニ、聴イタルワ!ソヤカラ今ハ、手ヲ動カシ~!



「… 楓は確り者やな~ 」



口煩いオカンのような楓だが、確り者だと、虹助は少し安心した。



関節作ルンヤ~!ピンポン玉ミタイナ、スチロール球ヤデ、真ン中ノ線ヲ先ガ尖ッタ物デナゾッテ、クッキリサセテヤ~



「よし … ぐるっと、くりっとなっと!出来たで!」



ホナ、ソノプラスチックノ保存ケースミタイナ入レ物ニ、油粘土ヲ平ニナルヨウニ置イテ、スチロール球ノ線マイナス3㎜迄、油粘土ノ中ニ埋メテヤ~



「楓、3㎜やなきゃアカンのか?」



虹助は㎜の単位を、正確に埋める事が不安になり、楓に聞いてみた。



ソヤナ、アカン!ウチ、オ父チャンニ、立派ナ人形師ニ成ッテ欲シイネン… 最初カラ 、ソウイウ物ヤテ思ウテ欲シイ… 自分ニ 、甘甘ナ… ソンナンミットモナイ!3㎜言ウタラ3㎜ヤ!出来ンカッタラ … オ父チャンノ元ニ生マレトウナイ … 3㎜出来ル優秀ナ人形師ノ元ニ、生マレタイワ … ウチヲ 、踏ンズケテ壊シテェナ… オ父チャン…



ガァ~~ンッ!



楓の言葉に虹助の頭の中が、暗闇に墜ちるようにグルグルと回った。



そうやって、親父の靴下汚ないとか、パンツ一緒に洗うなとか言われるんやろな… 出来ない=イケテない親父= 駄目親父 …



「楓ー!お父ちゃんは!駄目親父やけど… 3㎜極めたるっ!」



虹助は定規の0~3㎜の長さを食い入るように見つめた。



爛々と虹助の眼が、危なく変わる…



「3… 0から3!0から3!0から3っ!ん~ゃっとっ!0から3!0から3!0からっ!3んうぅ ~んっ!」



虹助は呪いの言葉を呟くように、ブツブツと0から3と繰り返した。



「解ったー!楓で-! 爪や!爪の先からここまでが3㎜や~~っ!」



虹助は感動し、そして、3㎜の長さを自分の躰の何処かに、照らし合わせて覚える事が出来る事を覚り、キッチリ3㎜マイナスし油粘土の中に、スチロール球を埋める事を成功させる事が出来た。



オ父チャン … 楓、信ジテタデ …


オ父チャンハ、必ズヤリ遂ゲルテ …




じぃ~~ぃ~ん …



なっ、泣いたらアカン!


俺は、父ちゃんや …



「かっ、楓~っ!おぉぁ~おぅっおぅっお ぅっ…」



決意虚しく、泣いてしまう虹助だった。



オ父チャンッ! オタリアカ~海獣カッ!オ ゥッ、オゥッ、オゥッ!オゥッ!アハハハハ~ ッ!



楓は虹助の泣き声を真似、笑い転げた。


例え馬鹿にされているとしても、父ちゃんを見て、楓が笑顔であればそれでいい … 虹助は心の底からそう思い、楓の気が済むまで笑わせていた。



オ父チャン!次ハ、油粘土ノ中ノスチロール球入れたまま、カリ石鹸塗ッテ乾カス デ!



「よし、解ったで … 塗るで」



関節作りはカリ石鹸が、確り乾くまで放置し、次は手と足の指を創ると、楓が虹助に教えた。



オ父チャン、ワイヤー0.9ヤ、ソレガ、ウチノサイズヤ!



「これやな … ワイヤー0.9… 」



何故か重々しい雰囲気で、虹助はワイヤーを手に取った。



手ノ製図ノ上ニ、指ノ長サヨリ少シ短ク合ワセテワイヤー5本置イテ、テープデ止メテ(マト)メテ切ル、ワイヤーノ関節に油性ペンで印ヲツケルンヤ、オ父チャン、 指ニハ関節ナンボアル?



虹助は、じっと自分の両手の指を見つめ



「おっ、俺のは… 3 … 」



この手で俺が殺しました… そう告げる犯人のように、顔を強張らせ、ブルブルと手を震わせ楓に応えた。



オ父チャン… 何ヤラカシタンヤ?


… 空気重イデ… マァ… エエワ …


手ヲヨウ観テッテ… オ父チャン… オ父チ ャンッ!近過ギルデ~ 川デ水飲ンドルンカ? ソレトモ、掌臭ウンカ?チャウデー!ウチノ手ヲイメージシテ欲シイネン…



「よっ、よしっ!すまんな楓… 父ちゃん初めての事だらけやから… 集中するとこ間違えるんやな … でも、メゲへんでっ!」




粘土で手の指を作る作業は、根気のいる作業だった。1本1本、指の形を創る … 常に頭の中に手首から指先迄の形を意識していなければならず、気を抜くと太さが同じ指を創ってしまう、失敗の連続で虹助は嫌気が差していた。




オ父チャン… カリ石鹸乾イタデ、石膏ヲ混ゼテ、カリ石鹸塗ッテ乾カシタ、プラケースニ流シテヤ~!ソレハ明日迄、放置ヤデ



虹助は黙って頷き、石膏を混ぜプラケースに流し入れた。



再び指の創作に没頭する虹助 …





「虹助~ご飯よ~♪」



LUZIAが昼ご飯が出来たと、虹助の(コモ)るアトリエのドアの前から、声を掛けたが返事が無い、LUZIAはそっとドアを開け、アトリエの中を覗いた。



「き! 」



LUZIAは驚き、声を上げそうになったが、何とか我慢をした。


虹助は作業台の前の椅子に座り、LUZIAの立つドアに背中を向けているが、虹助の前にも左右にも発泡スチロールの上に、祭りの出店に並ぶチョコレートバナナを小さくしたような謎の物体が 、針金を差し立たせてあった。




にっ、虹助 …


何を … 創っているの … ?




LUZIAは不安になり、スタスタと速歩きでリビングへ戻り…



「おっ、お爺さん… にっ、虹助が変なの創 ってるわ… 危険な物よ …」



LUZIAの顔は真っ青に変わり、声を震わせ淡雪に話した。



「危険とは … ? まさか … 」



淡雪は芸術家としての眼で、危険 = 陰部が頭に浮かび 、同じくLUZIAの話が聞こえていた八重弁護士は …



「危険? … そんな …」



危険 = 粘土爆弾が頭に浮かんだ。



「それは芸術として、問題も多く波紋を呼びます… 私の眼で確めなければ …」



淡雪は直ぐに車椅子をアトリエに向けた



「あ、私もご一緒します!」



八重弁護士は、犯罪を犯してしまう前に何としても止めなければ!正義感から虹助の居るアトリエへ向かった。


LUZIAはソファーに座るcielに …



「シッ… Ciel … LUZIA … もう1度、アトリエに行く勇気が無いの … 一緒に来て…」



Cielはブルブルと顔を振り、嫌だと主張していたが、LUZIAは…



「ありがとう …」



嫌がるcielを無理矢理抱き上げ、淡雪と八重弁護士の後を追った。




そっと、アトリエの中を覗く…


虹助は黙々と手先を動かしては、自分の右手を斜め前に出して眺め、又、下を向き黙 々と手を動かし、今度は左手を観て、又俯き黙々と手を動かしていた。


虹助の周りのチョコバナナは、LUZIAが見た時よりも更に増え、若干、角度が変わっていた。



淡雪は、笑い出しそうになるのを堪え、八重弁護士は、虹助が手元で何を作っているかを気にし、聖歌合唱隊のように左右に伸び上がり覗き、LUZIAは居心地が悪く躰を震るわすCielと、一緒に震えた。



「虹助君!」



虹助は背後からの淡雪の声に、ビクッと数㎝椅子から飛び上がり…



「心臓ドッキィ~!なりますやん、何でっか?」



虹助は不機嫌そうに、振り返った。



「お昼ご飯です… 一緒に食べましょう…」



虹助は困った顔をして …



「 あ、すんません… 楓 … 父ちゃん、腹減 ったから飯食ってくるからな、何か欲しいもんあるか?帰りに持ってくるで? 」



ドッ~キィ~ッ!



淡雪も八重弁護士もLUZIAも、目を皿のように丸くして虹助を見て驚いた。虹助は人形の首を右手で掴み、顔の高さまで上げ極 々自然に、人形に話し掛けてた …



「ほな、行って来るで… すんません、皆さん… お待たせしました」



淡雪は咄嗟(トッサ)に判断し…



「ふぁっふぁっふぁっ、行きましょう…」



涙目で笑い、八重弁護士とLUZIAも、淡雪に合わせ、顔を引き吊らせ笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ