表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~ INDIGO ~   作者: MiYA
40/49

私ノ想ウ姿ニ …


朝が来て、何や解らなんけど…


偉く気分が良くて …


皆、リビングで倒れるように寝とった、要は、雑魚寝やな …



けど、ええ寝顔してたで … ホンマ …


俺は、爺さん家の周り散歩でもしてみよか思って家を出た。


何時もと違う気がした、何やろな …


空気が澄んどる? 否、何か違う気する


家の裏へ行ってみよ思うて歩いた …



「虹助 … 」



小さい声やったけど、はっきり聴こえたんや、俺の名前を誰かが呼んだ。



「はい? 」



後ろやない、足の向く先から呼ばれたから 、俺は探検途中の子供みたいに、小走りで家の裏へ向かったんや …



「巣や … 鳥か …?」



爺さんの家の裏に立ってる、楓の樹から鳥の巣が落ちて来たんや …


不味いで雛いるんやないか?卵割れたら可哀想やな思うて、地面に落ちないように



「オーライ オーライ 」



言うて上手い事、受け取ったんや …


雛、おらんかも … 卵1つ乗っとらんかも… 受け取った巣が、随分軽いもんやから…



「 ちっ、空き巣か … 」



残念やな思うたんや、Cielがいるけど上手い事、(ヌク)めて、卵かえしたろ思うてな… けど … 巣の中見て …



「うぎゃ~っ!うわっ!うわっ!うわぁ~ っ!ぎぃっぎゃ~~っ!」



巣持ったまま、慌てて家ん中戻った。



「起きてー!寝てる場合とちゃうっ!みっみっみっ見てー!うわぁ~!ぎゃ~!」



騒いだら、皆、飛び起きたわ …



「虹助君、何を騒いでいるのです?」



淡雪は車椅子を、虹助に近づけた。



「ふぁ~もう~何~虹助… きゃっ!虹助、冗談な顔は止めてよ~ 面白い顔して~♪鼻水、鼻水~♪」



LUZIAは血走った目と、鼻水が光る虹助の鼻を見て、ポシェットからティッシュを出し近寄った。



「あー良く寝た … 皆さん、おはよう御座います… あれ、どうしたんですか?」



八重弁護士も起きて来た。



「ミィ~ャ~ブルブルッ!」



虹助のブルブルが、Cielに移ったのか、少し心配だが、スタスタターン 、Cielは淡雪の膝の上に飛び乗り、伏せた。



虹助が手にする、巣の中を覗き見て …



「うおおっ!… 驚きました… 」


「きゃ~っ!何持って来たの~!」


「うっ … こっ、これは… 」


「フミャ~ブルッ!」



(タチマチ)ちリビングは、驚きの声で溢れた。



「でっしゃろ? でっしゃろ? なっ、なっ、 これ何や思います?」



「目玉ですよ、これは」


「目でしょ!」


「綺麗な瞳です…」


「ニャ … 」



巣の中には、同じ色の眼球が2個ずつ、全部で14個入っていた。淡雪は決心したように…



「詳しく観て調べてみましょうか … 」



紫色の瞳の眼球を1つ手に取り、マジマジと見つめた …



「ほっほう~ これは美しい… 硝子の瞳ですよ… 虹助さん、買って来たのなら場所を教えて下さい… これは美しい…」



淡雪は、眼球の美しさに魅了され…



「本当ね、始めはキモくて驚いたけど… キラキラして綺麗~♪」



LUZIAは、桃色の瞳の眼球を手の上に乗せ、転がした。



「私は、この色を…」



八重弁護士は、深い青色の瞳を手にして、指先で押したが、ぷにぷにしないので、少し、残念そうな顔をし…



「ミャンッ」



習性とは恐ろしいもので、Cielはコロコロと、黄色の瞳の眼球を、カーペットの上に転がし遊んだ。



虹助は赤い瞳の眼球を手に取ると …



「イメージにピッタリや!俺のキモ可愛」



陽の光に眼球を透かした …



「うおっ、皆、太陽に透かしてみて、早よ っ!」



虹助の言葉に、眼球を陽の光に透かすと…



「助けてくれて、ありがとう!プレゼントをあげるよ!虹助の人形に役立てて!」



カラフルになった灰色の人形達が、ニッカリ笑い、直ぐに消えた …



「よっしゃー!俺、やったるでー!」



虹助の創作意欲が、噴火寸前まで燃えた。



「虹助君、私のアトリエを使って下さい!奥の突き当たりです!」



淡雪の言葉に頷くと、巣を持ち八重弁護士の車の中へ、人形パーツを入れた箱を取りに走った。直ぐに家へ戻ると …



「八重はん、サンキューです!」



ドアが壊され、丸見えのリビングに立つ、八重弁護士目掛け車の鍵を放った。



「キャッチです!虹助さん、ファイト!」



八重弁護士は真剣過ぎて、危ない顔に変わりつつある虹助に、声を掛けた。



「虹助~!頑張って~♪」


「ミィャ~ンゴッ!」



LUZIAとCielの激励も受け、虹助は奥のアトリエを見つめたまま、マラソン選手のように左手を軽く上げ、アトリエへと入った。


虹助は作業台の上に、人形パーツを入れた箱と材料と、道具をいれた箱と巣を置き、真剣な顔をして、丁寧に人形パーツを作業台の上へ全て移した。




「よし… 眼やな … 眼で人形の印象が変わる!眼は人形の命や、人形~の九ちゃん~何かこんなCMあったで… まぁ、いい、今 、ふざけとる場合とちゃう!勝負やな… 」



虹助は人形の頭を、そっと手にした …



「えっと… 人形感、人形感っと …」



虹助は淡雪の書いた人形感を、確かに箱に入れた筈だと探し始めた。



本ナンテ … イラナイ …



「へっ? 俺、何も言ってないで…」



私ガ言ッタノ …


貴方ガ私ノオ父サン?



「うは~っ!にっにっ人形が… 」



椅子から落ちる程、仰け反り驚く虹助、それもその筈、今、聴こえたような気がする声は、創りかけの人形の顔から聴こえたのだから…



「お前、喋れんの… ?」



虹助は眼を見開き、創りかけの人形の顔に聞いた。



喋ッテナイワ …


オ父サンガ感ジテイルノ、私ノ声ヲ…



「お父さん … 始めまして父の槐 虹助です… 独身ですが、子持ちです… 逆マリア?」



ふざけた男だが、これでも虹助は真剣だ。



私ハ私ノ想ウ姿ニナリタイノ …


オ願イ… オ父サン …



虹助は娘の告白に緊張し、ゴックンと生唾を飲んだ。



「解った、これは現実や!お父ちゃん、お前を立派な姿にしたる!故郷に錦を飾るで ぇ~ っ!」



虹助の故郷は梅木街から、然程離れてはいないのだが、虹助に気合いが入るのは良い事なので、続きを …



横顔ヲ見テ、私ノ首ノ真ン中ニ縦線を引イテ …



「はい … 」



次ハ耳ヨ、眉カラ鼻クライ迄ノ長サナノ



「… はい」



虹助は、人形の顔から感じる声に導かれ、着々と創作を進めていた。



額の上、髪の生え際から耳の上を通り、後頭部、丁度、耳の中間辺り迄斜線を引いた。



オ父サン、刃ノ薄イクラフトノコデ、今、引イタ線ノ通リニ、私ノ頭ヲ切ッテ …



「頭切る?… 出来ん… そんな、惨い事… 父ちゃんには出来ん~っ!娘の頭ノコで切る事出来るか~っ!」



虹助は困った父だった …



オ父サン、私、私ノ望ム私ニナリタイノ…コノママノ姿デイル方ガ辛イノ …



何とも健気な娘である、トンビが鷹を生む瞬間のような親子愛 …



「解ったー!俺は父ちゃんや~っ!娘の望む未来を創るんや~っ!」



虹助は手先の変わりに、顔をブルブルと振り、薄刃クラフトノコを使い、娘の頭を切り落とした。


次は頭の底、首の穴から頭の中の発泡スチロールを、切り落とした頭の上から押し出し、頭の中の厚みが均等になるよう、娘の導きの元、創作を続けた。



オ父サン… 私ノ顔ヲ視テ…



虹助は娘の顔と向き合い…



「べっぴんはんやで~」



娘の晴れ着姿を見る、父のような気分で話した。


眼ノ中ノ粘土ヲ削ルノ…


彫刻刀ヤ三角刀 … 小平刀モ使ッテネ…



「うっ、うううっ… 今度は眼、抉るんか… お父ちゃん、辛くてな… うっうううっ… でも… 娘の願いや … 父ちゃんやるで… 」



虹助は涙を拭い、彫刻刀を眼の上に滑らせ粘土を削った。



「泣けるで~っ!うっうっ…」



虹助は叫びながら、今度は彫刻刀の丸平刀を使い内側から、眼球が入るように削り、穴を開けた。


瞼の厚さを視ながら削る、力を入れ過ぎると瞼が割れると伝える、娘からのワンポイント・アドバイスを念頭に置き、慎重に手を動かし、眼に空洞を造った。



オ父チャン、次ハ、頭ノ中カラ棒ミタイニ伸バシタ粘土、眼ニ合ワセテ丸ク、丸~ククッツケルンヤデ~!ガフガフシタラ、アカン!ピタットヤデ!



「やっぱり、俺の娘やな~、お前は父ちゃん似のべっぴんはんやで~!」



我が娘であると、完全に自覚した虹助は、カラフル人形達から、プレゼントされた、キラキラ光る赤い眼球を、眼の位置にピッタリ合わせ、次は顎のラインを造る為に丸平刀で削り、その後、後頭部までを平刀で削った。



父チャン、休憩ヤ …


眼ノ粘土ガ乾イタラ再開ヤデ~!



「あぁ、解った … お前の言う通りにしたる!沙織 …」



沙織 … ウチ、ソンナ名前嫌ヤデ!嫌ヤ嫌ヤ!嫌ヤ、嫌ヤ、嫌ヤー!



娘は虹助の付けた、沙織と言う名が気に入らず、嫌だと連発して虹助に訴えた。



「えぇっ!名前まで決めとんのか?それじゃ、お父ちゃん出番ないやろ … まぁ、仕方ないな… 自分を持っとるいう事は悪い事やない!何て名前なん?」



(カエデ)ヤ!ウチハ楓ヤ!娘ノ名前忘レルナンテ、父親失格ヤデッ!大宰カッ!



娘の言葉に、自分に似ているが… 果して幸せになれるのかと、娘の行く末に不安を抱かずにはいられない、父、虹助だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ