THRILLER・ NIGHT … 後編 …
虹助と八重弁護士が、直ぐにリビングを出ようと動き出したが、淡雪が止めた。
「駄目です!リビングから出ないで下さい! 奴等は黙っていても来ますよ… 散らばってしまう方が危険です!」
「では、直ぐに警察に電話を …」
八重弁護士はスマホを手にし、電話を掛けた。
「え、そんな … 繋がらない …」
八重弁護士はスマホを見つめたまま、固まっている …
「無駄ですよ、電話は通じません… 外部と連絡が取れないように細工してから、窓を割ったようですから … 直ぐに此処にやって来るでしょう… こういう時は… ジタバタしない!来ると解っているのなら静に待つのです… 」
普段の優しい淡雪の姿が消え、淡雪は険しい顔をし眼を閉じた
なんや、解らんけど …
淡雪はんの言った言葉 …
格好ええな …
よし!ほな、俺も、苦虫潰した顔して眼を閉じてみよ!
淡雪の言葉が虹助の心に染み、虹助は淡雪を真似て瞼を閉じた。
ザー ザー ザ ザッ-ザー ザザッ
虹助の前頭葉が、ほんわりと温む…
黒い … 脚 … 4本 …
2人の人影 … 半笑いの人形 …
人形の手に銃… 腰に … ダメや見えへん …
人影も… 何か持っとる!凶器!ギラギラ光っとる! 危ない、皆、危ないで!
虹助はバッと瞼を開き、何も言わずソファ ー を押し始めた。八重弁護士が虹助を手伝 ったが、2人は互いに一言も言葉を交わさずソフ ァ ーをリビングのドアの前へズラした。
パ ス ッ …
突然、リビングの明かりが消えた …
ツー 、トン、ツー
テスト、テスト、只今テレパシー送信中
チェック、チェック、ツー、トン、ツー
皆さん今晩は、淡雪 涼一です
そろそろ、侵入者が入って来るようですので、皆さん、私の近くにお寄り下さい、車椅子の下や後ろに隠れて下さい …
淡雪からのテレパシーを…
「えぇ!何や今の… 淡雪はん …?」
虹助は半信半疑で …
「承知致しました …」
八重弁護士は冷静に受け取り …
「ツー、トン、ツー ? 何だか可愛い♪あはっ♪」
LUZIAはツー、トン、ツーがお気に入り
「ミャ~ゴ~」
子猫の筈のCielは、ベロンベロンと爪を舐め、ヤる気満々で受け取った。
ガ チ ャ ッ ガ チ ャッ!ガチャガチャッ!
ドアノブが激しく回り …
ドンドンゴンッゴツッ、ドンドンゴンッゴツッ、ドンドンゴンッゴンッゴツッゴツッ
リビングのドアを何度も叩く…
バ リ ~ ッ ン ~ …
トンッ …
リビングの窓が割れ …
誰かがリビングに侵入した …
「おい… 本を返せ … 」
静まり返ったリビングに、Michaelの声が響く …
カチ…
Michaelが拳銃の、安全装置を外す音が微かに聴こえる、カーペットが敷かれたリビングでは、Michaelの靴音も殆ど聴こえず、何処に居るか解らない。
ドガッドガッゴガッゴッツン ドガ!バキバキバキッバリッバリバリバリッバリッ!
木製のドアが壊され …
ボンッボンッガゴッドンッ!
ドアを蹴破られ …
パ ッ … チカ チカッ …
リビングに明かりが戻り、津田刑事と得体の知れない男が、壊れたドアから現れた。
淡雪は本棚の前に止めた、車椅子に座りゆっくり車椅子を回して振り返り…
「おや? 何方様でしょうか? 私、年なもので… すっかり老いぼれておりましてね…」
「おい、爺さん …」
Michaelが、淡雪に銃を向け近づいた …
「Michael … それ以上、前に出るな… 」
Michaelはグリグリと目を回し、あ~ん?と言うように斜に構え、顎をシャクリ上げ素早く振り返る、得体の知れない男は 、サングラスを外し、ニット帽も脱いだ。
「Gu~e~de~!ホホホ~ホ~ホ~!ホホホ~ホ~ホ~!じゃぁ、ずっと一緒にいたんだね~流石~ホホホ~ホ~ホ~!」
Michaelは大喜びし、Guedeと呼ばれる男の周りをパッチンパッチン、手を叩きながら回り、口に布テープを貼られた、津田刑事も肩を揺らし、喜んでいるように見えた。
淡雪はじっと眼に怒りを溜め、Guedeを見ていたが、ふっと表情を緩め…
「Guedeさんと仰るのですか? 右の額、髪の生え際に…OWI …?痣ですか?タト ゥーですか? 梟ですね… 気にされたのなら、済みません… はてさて … 何処かでお会いしましたでしょうか… 耄碌しておりまして … サッパリ覚えが無いの…で… 」
「小芝居は止めろ … 骸骨の首飾り、人形、それと… 人皮装丁本を渡せ… 用はそれだけだ … 」
Guedeは虎のような眼をし、淡々と淡雪に告げた。
「本? 本でしたら… この棚に …ええ、シェイクスピア、解体屋 鉄治、ゲーテの詩集も有りますが… 解体屋 鉄治だけは御勘弁下さい!気に入ってまして… ふぁっふぁっふ ぁ っ!Guedeとゲーテ… 似ておりますね~ふぁっふぁっふぁっ!」
「こっの~爺っ!オチョクリやがって!」
Michaelが淡雪に銃を向け、トリガーを引いた。
パ ン ッ パ ン ッ
「グェッ God d~a~mn~!アーアァー」
2発の銃弾は、津田刑事の口を貫通した
「はれっ?へっ?違う違う… お前なんて狙ってねぇよ!」
Michaelは淡雪と津田刑事、そして最後に信じてくれよと訴える被告人のような眼差しで、Guedeの顔を見た。Guedeは頷き…
「争う気は無い… 私が求める物は全て、君には相応しく無いものばかりだ … 君とは求める物が違う… 私が求めるのは… この世に最も相応しい美 … 愚かな愚者どもに相応しい美しさだ …」
Guedeは目を見開き、口を大きく開き話した。
「そうです…貴方と私は求める物が、全然 、全く、まるで、てんで、それが何ですか ?別に…と言うくらいに違います!ですから… 私はですね… 貴方が心の底から嫌いなんですよ …貴方の美なんて消えてしまえ! そう思いましてね… 貴方が何れだけ、私達に苦しい思いをさせて来たか… 貴方、ご自身で解っておられますか?… OWI… 梟… 悪魔崇拝者であり… 悪魔の芸術を愛した者!悪魔の囁きを聴いた者! 」
淡雪の怒りが突風を巻き起こし…
「ぎゃっ!うわぁ~あぁ~っ!」
「ガァ~アァ~ア~ アァー」
Michaelと津田刑事の躰が宙に浮かび …
バ タ ンッ
「ぎゃっぃっ!クソッ!」
ビ タ ン ッ
「アッグゲッ ーアーアァ ー」
2人を天井に打ちつけた …
「降ろせ~クソッ爺~っ!お前なんか八つ裂きにしてやる~っ!」
「ンガ~アァーアァーアァー!」
津田刑事も何か言っているが、サッパリ解らない…
違うわ … でも … いえ…
他人かと思ったけど … 間違えたりしないわ
淡雪の車椅子の下から、LUZIAが這い出し淡雪の横に立ち上がった。
ツー 、トン、 ツー …
LUZIAさん!お願いします、戻って下さい !危険ですよ!
トン、ツー 、ツー …
お爺さん、Michaelに話があるの…
淡雪とLUZIAは、テレパシーで交信をした。このテレパシー交信は、勿論、虹助にも八重弁護士にもCielにも聴こえている …送信者はツー、トン、 ツー 、受信者はトン、ツー、ツー と細かい決まりがあるようだ。
LUZIAの姿を、天井に貼り付いたまま見つけたMichaelは …
「魔~女~っ~ぐぁ~ っ!ギリギリッ!降~ろ~せ~っ!魔~女~っ!」
喰いつきそうな勢いで、歯をギリギリ鳴らした。
Pado-agitera-ao-gede-
zigao-arig …
Guedeが呪文を呟き、LUZIAの躰が宙に浮かぶ …
「きゃっ!嫌っ!」
「LUZIAはんっ!」
虹助が車椅子の後ろから飛び出し、大きく飛び上がり、宙に浮かぶLUZIAの頭と躰を胸元でキャッチ…
「LUZIAさん!虹助さん!」
吊り上げられるように、今度は虹助が爪先立ちになる、同じく車椅子の後ろから飛び出した八重弁護士が、虹助の腰にしがみ着いた。
「ペッ、ペッ、ミィ~ヤ~ゴ~ン~」
爪にペッペッと、唾をかけたCielが…
カリカリカリカリッガリッ
「ぎぃやぁ~Ciel~っ!背中~!Ciel~!」
爪を立てて八重弁護士の背面を一気に登り
カリカリカリカリガリッガリッ
「うっぎっ… 痛~いっ!ぐぅ~う~う~シエ~ル~!爪~!さっ、刺さっとる~ 刺さ っとる~て~!」
虹助の頭のテッペンでバランスを取り…
「ぎぃゃ~ひ~ひ~っ!」
虹助の頭を後ろ足で蹴りあげ、大きくジャンプ!
LUZIAの肩に着地し…
「c~ie~l~ おっ、重いわ~ 降りて… 」
LUZIAの声にも何喰わね顔で、Guede目掛けて大きくジャ~ンプッ!おおっと~!GuedeがCielを、今です、たった今、チラ見だ ~マタタビ子猫のCiel!Guedeを相手にキメるのか~?決まるのか~?
Parado-Lizio-biequ -zakyiero
ド ン ッ ド ゴ ッ !
おおっと場外、場外からの乱入です!キメたのは~?乱入者、淡雪だぁ~っ!Guedeを場外の机に飛ばし叩きつけた~Guedeは頭を振っている ~ 脳震盪か?振って振って~未だ振っているが~?立ち上がらない~!カンカンカンカンッ!おおっと~ここで試合終了のゴングです!Cielはタンッとカー ペットの上に降り…
タッタッタッタッ、スタ~ ン …
淡雪の膝の上に飛び乗り、ペロペロと爪の手入れをしていた。
ズ ザ ザ ザ ザ ッ トンッ
カーペットの上に八重弁護士が倒れ、その上に虹助が崩れ落ち、虹助の背中の上にトンッとLUZIAが座った。
気を失っているのか、Guedeは立ち上がらない…
「Guede!Gu~e~de~ッ! クソッ~爺 ! お前~流~石~魔~女~の仲間だなっ!卑怯者~っ!極悪、非道のクソッ爺~!あ~ん! G~ue~de~!あ~ん!あ~ん!」
「グッガッガッガッがッゴゴゴゴゴッゴッ トンッ… OK~ God da~mn~!OK~!」
Michaelは泣き出し、津田刑事は、多分、壊れた… ?
「マッ、Michael… あっあの、LUZIAは…貴方を助けに… 」
LUZIAはMichaelと、話し合おうと声を掛けた。
「煩ぇ~魔女ー!何が助けに… だよ!殺したくせに!俺を!殺した!くせにっ!お前が現れてから、依存症も治した、仕事にもつけた、嬉しかった!まともな人生を歩けるってなっ!でも… お前は… 幸せの中にいる俺から肉体を奪った!魔女の好物は、幸せの中にいる人間の魂が絶望を知った、その瞬間に砕き粉々にして… 希望も夢も無く … 生まれ変わる事も出来ない… 暗闇の世界に叩き落とす事なんだってなっ!Guedeが全て教えてくれたよ… だから、あんたは俺が死んだ時、側に居なかったんだろ?自分は焼け死なないように!お前の言う事なんて、2度と信じるもんかー!消えろー!魔女ー!焼け死ねー!お前がお前がお前が~ お前が焼け死ねーっ!」
Michaelの怒りの波動で、リビングに強く悲しい風が吹いた。
「おっ… ぉっ… ぉ…願い… Michael… あっ、 貴方を傷つけたくなんて無かったわ!殺したいなんて思う訳がないわ!うわぁ~ん!うわぁ~ん!LUZIAの事~解ってくれな~い!解ってくれな~い!うわぁ~ん っ !」
小さな怪獣が泣き出した。
目には映らない空気の流れが、激しく変わる中で、淡雪の集中力にも波が現れた。
「煩~せ~ぇ~!消えろー!お前が砕けろ ー!うぅ… 爺! うぅ~うぇっ…」
「ア~ア~アーア~ア~」
天井に貼りついていた、Michaelは少し沈んでは貼りつき、又、沈んでは貼りつきと繰り返され、すっかり船酔いのように気持ちが悪くなっていた。津田刑事は低い声のタ ーザンのように、ビブラートを効かせ 、地獄を蠢くような、恐ろしい声がリビングに響き渡った。
「クックックッハハ ! 限界か?淡雪 … 」
Guedeは笑いながら立ち上がり、ポンポンと服に着いてもいない、埃を払った。
「淡雪… 何と嘆かわしい… 人間には限界があるだろう… 実は… 私も…お前の事もお前の作品も大嫌いでね … お前は… そう例えるなら… 偽善者 … 人は人を憎むものだ!人は人を妬んで、拒んで、苦しめ 、悩ませ~恨んで~呪って、最後に殺す… それの何が?何処が?罪なんだ?神という者に聴きたいね~!何故その感情が悪であるのか… 何故!人間に悪の感情を与えたのか… 私が神であるなら 、そんな悪の感情等は与えない、始めからイ・ラ・ナ・イ… 全知全能であるなら出来る筈だ!… 何故 、生まれながらに、悪の感情が人間の心に備わっている? 答は1つだろ … 人間にとって必要であり … 最も美しい感情だからだ … それが私の哲学!だからお前のように!女々しさこの上ない作品も、お前の事も!始めから大嫌いだった … 醜さの中に溢れる美しさ… う~ん、それこそ美学であり哲学!解るか、淡雪?クククッハハハッハーハッハッ! 」
Guedeは、声、高々に勝ち誇るように笑った …
ツー、トン、ツー
ツー、トン、 ツー
皆さん、淡雪 涼一…
最後のテレパシーを送ります …
私はこの後、目の前にいる邪悪な者達を消 し去る覚悟でおります …
私が両手を高く挙げるのを合図としましょう、その後、胸の前に手を降ろし奴等を必ず消し去ります…
大変危険でして…
皆さんにも、危害を与えてしまう可能性が御座います …
この後、長々と私が講釈を述べますので…
その間にリビングの割れた窓から、屋外に逃げて下さい… 出来なくても窓に寄っていて下さい…
出来れば避難をして頂きたいのですが …
皆さんに、お会い出来まして …
大変、楽しい時間を過ごしました…
まるで、私が昔、無くした家族が帰ってきたような、幸せな時間でした …
皆さんの、今後の人生に幸あれ!
感謝致します、有り難う御座いました …
トン、ツー、ツー
トン、ツー、ツー
LUZIAも八重弁護士もCielも、そして、虹助も頑張り、何とか淡雪とテレパシーを交わそうとしたが… 淡雪は意識を変えてしまい 、交信は出来なかった。
「ご熱弁頂きました所、誠に恐縮も致しませんが言葉の綾ですがね、私、淡雪 涼一、 全身全霊で!貴方の仰る美学?哲学?全否定させて頂きます!貴方には… 欠落、欠損と言うべきでしょうか?ふぁっふぁっふぁ 理性が無い、全く、絶対、絶望的に無いのですよ!ご自身でお気づきでしょうか?人を憎む感情と言うのは、確かに否めない感情です… 勝手に心が感じてしまいます…ですから、理性が必要なのですよ、その憎しみの中から何を学べるか… これが哲学ですよ、貴方の仰る美学、哲学と言い張る殺人行為!そのまま現実になったなら… 地球はそら恐ろしい地獄絵図ですよ、貴方は芸術と言い欲望のまま殺人を繰り返し 、その手で殺した人々の、躰の1部を用いて芸術とした!そら恐ろしい世界を創ろうとしたのですよ!欲望のままに… 芸術を愚弄しないで頂きたい!貴方は芸術界の恥です… 貴方はご存知かどうか解りませんが … 人間の中枢を司る脳幹、この部分は人間の本能を支配します、食や欲等です… 貴方の言う世界は此処で止まっています、その部分は別名 、爬虫類脳 … 併し人間脳と言われる部分が爬虫類脳の上を覆っています、面積は爬虫類脳等より広範囲で理性を司るのです!貴方は欠損しています… 貴方はレプティそのものです… 貴方に芸術等と語 って欲しくもありません!外道で非道、美しさの欠片もありませんよ … 貴方は永遠の十字路に立っているのですよ … Augustin …」
「ククッ… クククッ… やはり解ったか? 顔を少し変えたくらいでは、お前の眼は誤魔化せ無いな… 流石、 神に選ばれた芸術家、 天才、あと何だ? はぁ ~ 称賛王か?まるで神のような扱いだったよな!それがどうした?お前等に何を言われた所でAugustinの心に、カスリ傷もつきはしないぞ!ククク ッハッ~ハッハッ! 」
Augustinは満足そうに、高笑いをした。
すーっと淡雪の両手が挙がる …
アカン … やめてくれ … 淡雪はん!
俺、こないなっても、何にも出来へん …
これなら … ヘタレのままやないか …
そや、デコが熱もったら … もしかして…
スリスリスリスリシュシュッ
スリスリスリスリシュシュッ
虹助は一心不乱に、両手で額を擦り始めた。
助けたいんや … 見てて欲しい …
生きてて欲しいだけや …
俺の爺さんに!
虹助は何かに憑かれたように、デコを擦った…
「もっとや、もっと激しい熱や!火吹け~俺のデコ~ッ!これがホンマのスリスリスリラー・ナイトや~!」
首飾りの骸骨がカタカタと、笑っているように音を鳴らした…
虹助!虹助!
骸骨を1ツズツ額ニ当テテ!
早ク早ク!
僕達、私達、キット力ニナレルカラ!
灰色の人形達が、窪んだスカルの目の中から虹助に話し掛ける、虹助は左手でデコを擦りながら、トリップしちゃった顔をして 、右手で首飾りの骸骨を額にあてた … 虹助の異様な姿に、淡雪の目が奪われ手を挙げたまま固まった。
ジ ュ ッ …
額にスカルを着けると、虹助のデコ熱が音を鳴らした …
ジ ュ ッ
虹助、真似テ!
Padituo-
「パディトゥオー」
虹助は灰色の人形達の言葉を真似た…
ジ ュ ッー
mizaqudeo-
「ミザクゥデェオー」
左手で額を擦りながら、1つずつ、右手でスカルをあてて行く
ジ ッ ジッジッ
aroio-
「アロウイオー」
ステーキハウスのような音がした…
ジ ッ
Pudugezeroa- !
「クゥデゥゲゼロウアー!」
首飾りの骸骨の目から、灰色の人形達が次々と飛び出し、縦横無尽にリビングを飛び回り、Augustinに、Michaelに、津田刑事に襲い掛かる
「止めろっ!噛みつくなっ!痛っ!」
「あ~ん!痛っ痛っ!Gu~e~de~!」
「ア~ア~ア~ア~God da~mn~!」
灰色の人形達は、空中で手を繋ぎ輪をつくると、3人を囲み、グルグルと周りながら歌った…
Pa~da~ gor~ia~ ho ho ho~ !
Par~stu~ Par~stu~ oh~!
yahohoi yahohoi yahohohoho~♪
gi~deo~roa~ ho ho ho~!
ziza~ zias~gizaro~ oh~!
yahohoi yahohoi yahohohoho~♪
灰色の人形達は、楽しそうに歌いながらグルグルと廻る、視ている者達の心も躰もいつの間にか、笑顔になり楽しくなり躰でリズムを刻んでいた …
「精霊の… 唄 … か… 」
Augustinは呟き、そして、観念したように項垂れた …
耳を塞いでいたMichaelと津田刑事は、そのうちに手を叩き肩を揺らし、楽しそうに笑 っていた …
灰色の人形達が1体、又、1体、色づいて行く… 手を繋ぎ輪をつくる、人形達全てに色が戻ると、人形達は廻るスピードを上げ 、歌もスピードに連れ早くなる…
そして、丸い虹の輪を創った …
漂う空気が 風になり …
風が唸るように鳴いた …
真空の風の中に、吸い込まれるようにAugustin、Michael、津田刑事、3人の姿は、朝陽が窓を照す頃、虹の輪を創る人形達と一緒に見えなくなった。




