人皮装丁本…
「けどMichaelさっきは、LUZIAはんが居る家へ行くのは嫌やて泣いてたやないか?そんなんで闘えんやろ… 違うか?」
「だから貴方に力を貸して欲しいんだ!この家に、人間の皮膚で出来たカバーの付いた本がある筈なんだ…人皮装丁本… 絶対あるんだ! 魔女はあの本を他人の物のように見せかけて、最後は自分の元に戻るようにするんだ… 貴方に教えて欲しいんだ、あの本は何処?魔女を封じ込めるには必要なんだ… お願い協力してよ … 質問には何でも答えるから… お願いだよ~僕を信じてよ~あ~ん!あ~ん!」
「Michael … その人皮装丁本 … どうやって使うねん … 」
虹助は厳しい顔をしてMichaelに聞いた…
「魔女の魂をこのスカルに封じ込めたら、その上に本を開いて被せるんだ、それから火をつけて燃やす、そうすると魔女は封印されるんだよ!」
Michaelはニコニコして、虹助に教えた。
「何で知っとんねん … 誰かから聴いたんか? Michael … 」
「うん、僕の魂を助けてくれたGuedeが教えてくれたんだ… 僕の魂を砕きに戻った魔女から、僕を守ってくれたんだよ!魔女は僕が死んだ事を確認して、僕の遺体を取りに来たんだ… その事を察して助けてくれたんだ」
虹助は少し考えて …
「なぁ、Michael… そのゲーデいうんは…人間なんか? 何処におるん?」
「Guedeは人間だよ!何処に住んでいるかは教えられないんだ… 彼はとても人嫌いで… けど、傷ついた魂は放っておけない優しい人なんだ … 」
Michaelは堂々と、胸を張って虹助に話をする…
「おいちゃん… 思うんやけどな… 話し合いは出来んもんかな… ? 互いに誤解があるなんて話は沢山あるやろ? 先ずは話し合いやないか?」
「僕には… 貴方の気持ちが良く解るよ… 僕も生きていた頃は… 多分貴方のように、魔女を信用していたから… 話し合いは出来ない! 魔女は僕の魂を砕こうと、十字架のペンダントに引きづり込むから!」
十字架のペンダントに引きづり込む?
パソ友はピョンピョン喜んで入ったで…
可笑しいな …
虹助はパソ友弘也との、最後の別れを想い出していた …
「Michael … 本はない … おいちゃんが、ある場所に棄てた… 気味悪くてな …だから無い…」
虹助はMichaelに、嘘をついた
「ある場所? それは何処 … 」
虹助は何も言わず、じっとMichaelを見つめた… Michaelの目つきが鋭く変わる…
「言わないって事なの? 僕は何でも話すって言ったのに? 貴方は言わないの? 僕の言う事なんて、端から信じる気が無いんだ!へぇ~だったら… 喋らせんじゃねぇーよ!」
Pado-gizaro-do-gizare-gede…
bare-agitera-basaq-do-
虹助は、地の底から聴こえるようなおぞましい声に動揺する事なく、床に胡座をかいてドカッと座り、唯、じっと悲しそうにMichaelを見つめていた。
「ハハッ!ねぇ、聴こえるだろ?Guedeの声だよ … 迎えに来てくれた … ホホホ~ホ~ホ~ッ!ホホホ~ホ~ホ~ッ!君も僕を信じるよ、Guedeが来たんだから!ホホホ~ホ~ホ~ッ!ホホホ~ホ~ホ~ッ!」
Mr Right… 否 … Michaelは狂ったように笑った …
その頃 … 淡雪の家では …
「ヘロディには言えぬが … サロメのあの腰!それにあの美しさ … ムフッムフッ…」
八重弁護士は亡き父の影響なのか、やたらと演技が上手かった。
ヘロデ王にすっかりなりきり、LUZIAを舐め回るように見つめる … 思わずロリコンですか?と聞きたくなる程の演技力だ。
「16の誕生日を過ぎた頃から…義父ヘロデ王の私を見る眼が変わったわ … まるで気色悪いレプティのように私を視るわ … お母様は気づいている … 今もヘロデ王の隣から死神みないに冷やかな視線を向けているわ… もう … うんざりよ …」
LUZIAは、八重弁護士扮するヘロデ王の視線から逃れるように、淡雪の家のリビングのソファーの後ろから、大きな窓へと向かう …
「はぁ … 」
LUZIAはため息を漏らす …
「悔い改めよ!ヘロデ王~!不倫の果てに実の兄であるピリッポス王を亡き者にし、ヘロディア等と契りを交わす悪行三昧!ポンポンポンッ!助さん格さんやってしまって頂戴ね、飛び猿登場 !由美入浴絶対見逃せない!悔い改めよ!ヘロデ王~!否、アンティパ~スッ!」
古井戸から響きわたる声に …
「あれは… 誰なの… ?」
LUZIAが古井戸を見張る兵士に問う …
… … … 人数不足にて無言… …
「まぁ!それは本当なの?あの声の主が… 神の御子の洗礼を受けた、聖ヨハナーン … お前達、直ぐにヨハナーン様を古井戸からお連れして!」
… … … 無 言… …
「初めまして、聖ヨハナーン… 貴女にお会い出来て光栄です … 私は …」
「知っています! 貴女はサロメ王女 … 忌まわしきヘロディアの娘 … 」
ミャンッミィヤ~ンッミャンッフーッ!
「Ciel?どうしたの… ?」
Cielが突然ソファーを飛び降り、LUZIAのドレスの裾に絡みついた、Cielの異常な鳴き声に、LUZIAはサロメ役を中断しcielを抱き上げた。
フーッ!ミャンッフゥーフーッ!
「Ciel… どうしたんだい? 何をそんなに怒っているんです?」
淡雪はLUZIAの腕の中に抱かれる、Cielを覗き込んだ …
「本当ですね、どうしたのでしょう?いつもは大人しいのに …」
八重弁護士もCielを覗き込む…
ミャォ~ンッ!
Cielは無理矢理、LUZIAの腕から逃れ玄関へと走った。
カリカリカリカリッ!
Cielは、玄関のドアを開けろと言っているのか爪を立て…
「ダメよ!Ciel … 」
LUZIAは直ぐにCielを追い、八重弁護士も淡雪も玄関へ向かう
カリカリカリカリッ!
カリカリカリカリッ!
「Ciel … 」
LUZIAの声も聴こえないのか、Cielは一心不乱にドアに爪を立てる…
LUZIAの胸元を飾る、十字架が熱を持ち…
「きゃ~っ!何~ ?」
十字架がグイグイと、LUZIAの首を引っ張り、勝手に玄関のドアへと足が進む…
「LUZIAさん! ああ … どうした事です…」
淡雪が悲鳴のような声を上げ …
「LUZIAさんっ!」
八重弁護士はLUZIAを抑えようと、手を伸ばした…
バンッ …
鍵を閉めていたドアが、勢いよく開き …
「うわっ!」
「きゃっ!」
八重弁護士とLUZIAは勢い剰り、玄関の外に転がった…
「ウニャ~ッォ~ォ~ォ~ンッ!」
「猫が… 遠吠えですか… ?」
Cielが狼のように鳴いた…
「痛いっ!痛いわっ!何すんのよっ!」
LUZIAは立ち上がり、熱を持つ十字架を掴み文句を言い、CielはLUZIAの足元に近づくと、スリスリと甘えて頬を寄せた …
「いっ痛いですね… 」
八重弁護士は立ち上がり、洋服に着いた土をパンパンと払った。
LUZIAのペンダントが、更に熱を持つ…
「解りました!」
LUZIAは十字架を握りしめ、目を閉じ深く大きな深呼吸を繰り返す …
ザッザッ ザーザーザーッ
LUZIAの頭の中に、砂嵐が流れ
何処からか呪文のような、声か聴こえる…
Pado … ? 何これ … 虹助っ!えっ? 人形…
ホホホ~ホホ~! … そんな …
LUZIAはバッと目を開き…
「弁護士さん!家へ!お願い!」
「LUZIAさん、落ち着いて下さい、何か見えたのですか?」
八重弁護士はLUZIAに聞いたが、空かさず淡雪が …
「八重さん!LUZIAさんの言う通りに!今は考えている時では無いようです!急いで下さい!LUZIAさんと早く行きなさい!」
「あ、いや、はっ、はい… 」
淡雪に急かされるまま、八重弁護士はLUZIAを車に乗せ、虹助の家へ向かった。
「Ciel … 」
隠れていたのか、家の陰からチョコンとCielが顔を出し …
タッタッタッーンッー
玄関の手前で車椅子に座る、淡雪の膝に飛び乗り …
ミャンッ ミィミィッ
甘えた声で鳴いた…
「一番の役者は… お前かも知れませんね… Ciel … 」
淡雪は優しく、膝の上に座るCielを撫でた
「あ、そうそう … Guedu-pada-zi-dara…」
バタンッ ! ガチャン …
淡雪の言葉で、玄関のドアが閉まり…ドアの鍵が勝手に掛かった …
「ふぉっふぉっふぉっ… 」
キィーキィーキィー ッ
淡雪は笑いながら車椅子を動かし、リビングへ向かった…




