Mr Right
八重弁護士とLUZIAとcielも、淡雪の家へ行き、1人黙々と手を動かし人形を創る虹助は、発泡スチロールから全てのパーツを削り出し、人形感と見比べながら人形の胴体 ・頭・顔・手・足と粘土を盛りつけて行き 、粘土を乾かす段階に入った。
「ふう~やっと休憩取れそうやな… 本にも 確り粘土は乾かすように!書いてあるしな、丸1日は置いた方がいい書いてあるな … よし、ほんなら、朝飯頂いてっと…」
虹助は八重弁護士が、買って来てくれたハンバーガーとポテトと牛乳を食べ始めた。
「モグモグ、あ~そや、淡雪はんからの封筒 … 何入ってんやろ?」
モグモグと口を動かしながら、虹助は封筒の中を覗く …
「んんっ!ゲホゲホッ!う~苦し~… 驚いてレタス詰まったわ… なんで~金なんか… 手紙も入っとる…」
虹助は茶封筒の中から、手紙を取り出し折り目を広げた。
ヒラッ…
手紙の中から写真が1枚、静に床に落ちたので、虹助は写真を拾い上げ見てみた …
「これは ? 淡雪はんと骸骨が肩組んで写っとる … 淡雪はん、ゴッツ笑っとる… 淡雪はん若いなぁ~ハハハッ、グーって親指立てとるわ~ハハハッ」
満面の笑みを浮かべる淡雪の写真を、作業台に置き、虹助は手紙に目を通した。
虹助 君へ
創作活動は順調なようですね、大いに頑張って下さい。
この写真は、私が芸術の幅を拡げる為、絵画から造形を始めた際に、最初に創り上げた作品です。
作品名は、軋む月の番人 …
虹助君の作品を見て、懐かしく思いました
まるで、昔の私を見ているようです…
それと … もう1枚の別紙には、人形のコンテストの情報の案内が載せられています。
創作意欲に燃え、励み、心の中では無く、虹助君の手の中に夢を握って下さい。
見守っていますよ …
それと… 現金も少々入れました …
済みません… 出過ぎた事とは思いますが、何かの役に立てばと思い … 同封致しました
ああ、使わなければね、香典で返して頂いても結構ですから … 冗談です …
使って頂ければ幸いです…
淡雪 涼一
虹助は手紙を持つ右腕で、目もとを拭い…
「すんません … 迷惑かけて… すんません …俺 … 頑張ります! 」
虹助は、淡雪の優しさに更に頑張り、淡雪を安心させるんだ!と心に誓った。
ピ~ンポ~ン
「あれ、チャイムや… 何やろ?」
虹助は涙を袖口で拭い、住居側のドアへ向かった…
「はい? 誰~ ?」
「すいません、エレファントです~!」
「あっ、今、開けますわ…」
カチャッ …
「すいません、海外からお荷物が届いています~」
「あっ、はい…」
虹助は送り状を確認した。
荷物はフランスからで、淡雪の名前で虹助宛てに送られていた…
「はい、間違いないんで …」
何やらエレファントの配達員は、キョロキョロと店の方、虹助の背後を見ている…
「何でんの?」
「あっ、済みません… あの~ 先日、此方に伺った者が、可愛いらしいカラクリ人形が 対応してくれたと話してまして … 私も見てみたいな~と …」
虹助は首を傾げた …
「カラクリでっか?」
「はい~ ロボット声の可愛いお姫様の人形だと聴きました~」
お姫様? LUZIAはんか!
「あぁ~ 今ね外出中やわ… ハハハッ、帰ったらエレファントにファンがいる伝えときますわ~ハハハッ!」
虹助は笑いながら、冗談ぽく話しエレファントの配達員は、ガッカリした顔をして段ボールを1箱虹助に手渡し帰って行った。
「何から何まで… 淡雪はん… すんません」
虹助は、受け取った段ボール箱を店に運び
「フランスからやから … あっちにあった人形、直接送ったんかな? それとも… 材料?」
虹助は段ボール箱を開けた。
虹助は段ボールの中を覗き込む …
「何や? 箱の中に箱 … マトリョーショカか? ハハハッ、何やろ出してみよ …」
段ボール箱の中に入っている、箱を持ち上げると、箱に文字が書かれ…
「Mr Right … ミスターライト? 光るんか? 何か箱ん中に人形入っとる… この人形の名前が、ミスターライトなんかな?正しい人言う意味やな… 何か… チ ャッキーの映画思い出すな… まぁ.気のせいやな、この人形も箱から出して店に置く言う事なんやろな… 」
虹助はMr Rightの箱を開け、人形を持ち上げた…
髪は腰までの長さで色は黒 … バサッと下ろしたままだ…
瞳は … 緑の外輪で内側は黒… 何ともエキゾチックな雰囲気
首には … スカルが幾つも繋げられた首飾り?
洋服は… 黒いマントに赤いシャツ、黒いデニムに黒いスニーカー …
見た目で判断は出来ないが、本当に… 正しい人なのかと思うような姿だ …
H i !I a~m… …
「うわっ!喋った… でも、止まった …電池 切れたか?」
虹助はMr Rightの背中を見ようと、人形を裏返した…
ho ho ho~ho~ho~!
ho ho ho~ ho~ho~!
「うわーっ!何~っ!怖いわ~ 突然来るんやな … 心臓ドッキィ~いうたわ~ 」
虹助はMr Right人形を床の上に置き …
「悪いけど… おいちゃん、英語得意やないねん… 日本語喋られへんの? 無理やわな~ ハハハッ!Aiやあるまいし…」
バサバサッ…
「えっ!瞬きするんや … へぇ~凄いな~」
ギーガチャン ギーガチャ …
ピロロロロロロロピコンッ …
Mr Rightの目の玉が白目に変わり、白目の中に数字が流れた …
「なっ… なんや … 」
ピッコーンッ!
目が光線を放ち白目の数字が消え、光線が消えると、目の玉も元に戻った…
初めまして!僕はミスターライトっ!ホホホ~ホホ~!
Mr Rightは日本語で、虹助に話し掛けた
「へぇ~凄いわ~ 淡雪はん、凄い人形創らはったんやな~」
はったんっ!はったんっ!
Mr Rightは虹助を真似た…
「ハハハッ!これは凄可愛やな!はったんっ!はったんっ!ハハハッ!」
虹助は直ぐにMr Rightを気に入り、愛らしさに微笑んだ …
ポッ …
Mr Rightは頬を赤らめた …
「うわぁ~驚きやな~ 生きてるみたいや … 他にも何か出来るんかな… 説明書は箱の中かっと …」
虹助はMr Rightの箱の中を見てみたが、説明書は入っていない、箱の裏には何やら書いてあったが… 虹助には読めなかったので 、淡雪に聞いて見ようと、電話を掛けた。
ツーツーツー
電話は通じない、どうやら淡雪は話し中のようだ … 虹助は考えた、明日になると人形を創り始めるので、今日のうちに聞いておかなければ…
「そうや!Mr Rightを持って淡雪はんの家へ行けばいいんやな、ほなら、全て解決やな… お礼も言わな …本当は2作目出来てから思っとったけど… 今日や、 そうしよう~」
虹助はMr Right人形を箱に入れ、淡雪の家へ持って行こうと、人形に手を伸ばした。
「嫌だ!嫌だ! あの家には魔女がいるから、僕、行きたくないよ~ あ~ん!」
Mr Rightは泣き出した …
「うわっ!魔女って … 誰の事や…?」
虹助は目をパチクリさせ、Mr Rightに聞いた。
「LUZIAって言う魔女だよ!うぁ~ん、僕をこの人形に閉じ込めたのは、LUZIAって言う魔女なんだー!うぁ~ん!」
「そんなアホな … 」
虹助は苦笑いをした …
「どうして? どうしてLUZIAは信じるのに、僕の話は疑うの? 僕がスカルを下げているから?僕の容姿が妖しいから?違うよ 違うよ!これは全部、あの魔女が着せたんだっ!僕の言う事なんか誰も真に受けないように… 全部、魔女が仕組んでるんだよ~ 解ってよ~ 信じてよ~お願いだよ~うぁ~んっ!うぁ~んっ!」
Mr Right人形は泣いていた。
虹助は心の中で …
誰にも、信じてもらえんのは …
辛いわな …
そやけど …
LUZIAはんが魔女とも思えんしな …
「よし!それなら、おじちゃんの質問に答えてくれ、おじちゃんそれ全部聴いて決めたいんや、ええか?」
「はいっ!」
Mr Right人形は、涙を赤いシャツの袖口で拭い、真剣な顔をして虹助を見ていた。
ずっ … 随分、眼力がある子やな … あぁ、そや質問やな …
虹助も真剣な眼差しで、Mr Rightを見つめた…
「じゃ… 名前は?」
「僕の名前はMichael … Michael Jefferson…」
マイケルは真っ直ぐに、澄んだ瞳で虹助に答えた …
「そやな、待てや、メモるわ… 大事な事やからな …」
虹助はノートに、Michaelのフルネームを書いた。
「それじゃ、次や、何処に住んどった?」
「westchester のMount vernonだよ… 」
虹助はメモを取る …
「それじゃ、LUZIAはんとは… どないして出会ったんや…?」
「うん … 解った話すよ … 僕ねダンサーを目指していたんだ … Michael J に憧れて … けれど、彼が亡くなって… 僕は目標を失って … お酒と… 薬に… 溺れたんだ… 肉体的にも精神的にも不安定な状態で … そんな時に魔女がやって来たんだ … 地球からの使者だとか言って… でも、僕、そんな状態だから… 最初は幻覚かと思っていたんだ、魔女は必死に僕を救ってくれたよ …薬や酒から…でも、嘘だった!魔女は… 最後に僕の魂を砕こうとしたんだ!僕は酒と薬から立ち直った、魔女の力だと思うけど … そしてダンスの講師の仕事をするようになったんだ… そんなある日の夜 … 魔女は僕に… 僕の大好きなMichael J のTHRILLERを一緒に踊ろうと言ったんだ … 僕は魔女をすっかり信用していた、何の疑いも持って居なかった… なのに… 魔女は … 隣の家のガス爆発に見せかけて、僕を殺したんだ …」
Michaelの眼は、真剣そのもの …
「何の為に … 何の為に殺すんや?」
「信じて貰えないかも、知れないけど… 僕はIndigoと言う、特別な魂を持つ人間だったらしいんだ … Indigoには使命があって、 Indigoの魂を持つ1人1人が、その魂の想いを成し遂げると、地球のオーラが変わるんだ… 魔女は、地球のオーラを小さくして 、そして軈ては全て消す為に現れたんだ!僕には解る … 貴方もIndigoでしょ? 光輝けば魔女に殺されるよ!本当だよ!僕は殺されたんだから! 」
虹助は、どちらの話が本当なのか、直ぐには判断が出来なかった … 暫く虹助は頭を抱え考えていたが …
「なぁ、Michael … そんなら、何で家に来たんや … 家にはMichaelが魔女や言うLUZIAさんが住んどる、普通に考えたら1番避けたい家やないか? 何でや?」
「それは … 魔女を此処に封じ込める為だよ!僕はIndigoの代表として、魔女と闘う!」
Michaelはスカルの首飾りを、右手で胸の前に出し、虹助に見せながら話しをした。




