邪魔するな
Pado-agitera-do-gede- boun-…
bate-qududeo-gizaro-do-…
「ガァーッグッゥウーッ!アァーッ!」
ボォ ~ン … ボォ~ン …
真夜中に柱時計が鳴った …
パカッ … カタカタ …
時計の針の上の小窓が開き …
ホッホーッ クルルックー
ホッホーッ クルルックー
鳩が … 鳴いた …
「何や?可笑しいな… 夜中は柱時計鳴らんようにセットしたんやけどな …鳩まで出よ った… 」
虹助は立ち上がり、柱時計を確めようと椅子を寄せ、椅子の上に立ち上がった。
ドンッ ドンッ ドンッ …
「うわっ!焦るわ~今度は何や?夜中やで … 」
何者かが店のドアを叩く音が響き、虹助はドアを見つめた …
ドンッ ドンッ ドンッ …
ドンッ ドンッ ドンッ…
店の中の空気が重い … 背筋にザワザワと寒気が走る … 虹助は恐る恐るドアへ近づいた。
ドンッ ドンッ ドンッ…
ゴツッ ゴツッ ゴツッ…
「誰や … ?」
虹助の問いに返事は無い…
ドンッ ドンッ ゴツッ ドンッドンッ ゴツッ
ドンッ ドンッ ゴツッ ドンッ ドンッ
激しくドアを連打する …
ゴクッ …
虹助は生唾を飲み、ドアに貼った生地を指先で少しズラし、隙間から外の様子を覗く
「アァ~ーア~ーアァ~」
血の気の失せた青白い皮膚と、黄色く澱む目…
虹助の目線と重なり … 目が合った …
「うわぁー!誰~?なっなっなっなんや ー ー!敵わん敵わん、ブルブルブルッ、無理無理無理無理、絶対、無理っ!」
虹助はスマホを掴み110番通報をする
「はい.こちら110番です、事故ですか?事件ですか?」
「たたたっ助けてー!喰われる~!お巡りさん、早よよこして~!アカン!助けて ー!」
ドンッ ドンッ ゴンッ
「もしもし、何の音ですか?」
ゴンッ ゴンッ ドンッ
「 ア~ーアァーアーアァ~ 」
「何の声ですか?もしもし?」
110番の電話係員は、冷静に状況を聞こうとするが…
「へへへっ変なのが!ドア叩いとる~うわぁっ!助けてー!お巡りさ~ん!」
虹助はパニック、混乱中 …
何とか住所を告げ、警察官が直ぐに向かうと言われ、110番係員との通話を終えた。
電話の最中も、ドアを叩く音は止まらない
震えながらも、アイツをもっと見てやろうと、今度は出窓の生地をズラし、ドアの前を見る …
ドンッ ゴンッ ゴッツン
ドンッ ゴンッ ゴッツン
「うわぁ~何やアイツ~ 手だけやなく、頭使ってドア叩いとる… えっ… あれ… 津田刑事や …」
相手が誰であるか解ると、虹助は少し冷静に津田刑事を見れた。
青白い顔… 顔だけでは無く見えている皮膚の色は全て青白い…
唇は黒い… 真っ黒では無く黒みが強い赤紫
黄色い眼 … 白目が黄色く黒目は黒いが瞳孔が開きっぱなし …
ア~アァー ア~アァー … 低く奇妙な声 …
スーツはヨレヨレ… Yシャツの衿もフニャフニャ… ネクタイは無し …
「墓場から還った言う言葉が、ドンピシャやな…」
ウウウ~ ファンファンファン!
パトカーのサイレンが近付く …
2人の警察官が、津田刑事に声を掛けたが津田刑事はドアを叩く事を止めない…
警察官は2人で、津田刑事をドアから離そうと肩と腕に手を掛けた …
Pado-agitera-do-gede-boun-
bate-qududeo-gizaro-do-
地の底から聴こえるように、反響する得体の知れない声に、警察官も振り返りパトカ ーに近づく …
「グァーッ!アーアァ~アーアァッ!」
津田刑事は両手で頭を抑え、叫び声を上げ苦しみ悶えた…
「あれ、どうした? 十字署の津田だけど」
何も無かったように平然と、津田刑事は警察手帳を見せながら、2人の警察官に近付き …
「何か事件?」
2人の警察官は顔を見合せ…
「津田刑事… 住人からの通報がありま…」
「通報?何で?俺が?何かした? 」
ジリジリと津田刑事は、2人の警察官に近づき …
「あんまり、変な話しをするなよ~仲間だろ~?邪魔するな…」
パァーンーッ!
噴水の水飛沫のように…
肉片と、鮮やかに赤い血液が飛び散った…
ドサッ …
頭の欠けた人間が、車道に転がる …
津田刑事が警察官の頭を、拳銃で撃ち飛ばした…
「津田ー!銃を捨てろー!」
もう1人の警察官は、津田刑事に拳銃を構えながら後退りパトカーへ近づく…
「何で 捨てるの? 命令してるの?」
警察官はパトカーの無線に手を伸ばした
パーンッ!
「連絡されたら、俺、困るよ~ 虫ケラが沢山くるから…」
ズルッ ズルズルズルッ …
無線のマイクを手にしたまま…
濃紺の制服の胸元に、黒い染みを広げ…
スズッ … スズスズ ッ ズサッ…
警察官は、パトカーのボディーに背を着けたまま、道路に崩れ落ちた …
津田刑事は、無線を手にしたまま崩れた警察官を蹴飛ばし…
「任務終了、唯の酔っ払いでしたので、自宅へ送りました。此から戻ります!」
無線のマイクに話し、虹助を見てニヤッと笑い右手の中指を立てた
「なっ… 何でや …」
津田刑事はパトカーに乗り、警察官2人の死体を残し走り去った …
朝陽が昇る、ほんの少し前に …
近隣住民からの通報なのか、別のパトカーが直ぐにやって来て、警察官と刑事が店を訪れた
虹助は、今、眼にした事を全て話すと…
「また、後程… お伺いする事があるかも知れませんので… その時はご協力願います …」
波瀬と言う刑事が、虹助に感じよく話した。
野次馬が集まっとる…動画を撮る奴もいるんか … レポーターにでもなった気でいんのか… 無神経な奴等やな… モラルを持てや!お前の家族が何や解らん間に撮されて、お前が偶然その動画流されてんの観たら、笑えんのか? 止めてくれ!言っとる家族が無理矢理撮されとったら? 事情解らんくても、止めてやって欲しい思うんやないか?思わん奴は人間やないで… 腐っとるわ!
虹助の心に、沸々と怒りが込み上げ…
「人間や無い奴、意外に多いんやな … 人間の皮被ったレプティやな …」
※ レプティ = レプティリアン
虹助は、店の外に集まる野次馬を眺め、熟感じて呟いた …
警察官2人の死体も運ばれ、警察の鑑識官が店のドアをパタパタと、丸いボンポンの付いた棒で指紋を採り、車道でもカシャカシャとデジカメで写し、朝の6時頃には野次馬達も消えた。
「はぁ~ 疲れた~ 何この疲労感… どっと来るわ~ 」
虹助はやっと店の椅子に、腰を降ろした
ドンドンドンッ!
ビ ク ッ
虹助はドアを叩く音に、椅子から飛び上がる…
ドンドンドンッ!
「虹助さんっ!虹助さ~んっ!」
八重弁護士の声が、ドアの外から聴こえた
「はぁ~良かった… また来たかと思った」
ピンポンピンポンピンポ~ン
八重弁護士は、住居側のドアへ回ったのか、チャイムを連打する…
「ハハハッ! ある意味、八重弁護士の方が怖いわ… はいはい!今、開けます~」
虹助は住居側のドアを、笑いながら開けた
カチャッ
「あ~虹助さん、良かったです… 朝、TVをつけましたら家が映っていたので、淡雪さんは鼻と口から牛乳を吹き出しますし、私なんて目からも出ましたよ、牛乳… 」
八重弁護士は早口で、大変驚き、牛乳騒動が起きたと虹助に伝えた。
「ハハハッ! 俺やないけど… 心配させてすんません… 」
「何があったんですか?」
虹助と八重弁護士は店の中へ移動し、虹助は八重弁護士に事の次第を話した。
「では… その津田という刑事が?」
「はぁ… Augustinの人形探しとる…その人形がMichael言う人を殺した言うて…」
「嘘よっ!LUZIAがMichaelを殺す訳ないわっ!絶対に嘘よ~っ!」
LUZIAの声に振り返ると、住居側の玄関の前にネグリジェ姿のまま、涙を眼にいっぱい溜めて真っ赤な顔をした、LUZIAが立っていた …
「LUZIAさん、誰も疑っていませんよ、ですが、相手が何を目的として現れたのかを知らなければ… 」
八重弁護士は、慌ててLUZIAに話した。
「そうや、LUZIAはん、俺かて疑っとったら、さっさとLUZIAはんを相手に渡して終わりですわ、殺しなんて絶対せん!思っとります!」
虹助はキッパリと言い切った …
「ありがとう … 信じてくれて…」
LUZIAはポロポロと涙を落とし…
「でも… 悲しい… うわぁ~ん!お~いおいおい~うわぁ~ん!酷~い~わ~っ!」
小さな怪獣のように、泣き叫んだ …




