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~ INDIGO ~   作者: MiYA
30/49

飽く無き探求心


LUZIAは、パタパタと階段を駆け上がると 、リビングのソファーに寝せた子猫を抱き上げ、3階の部屋へ入った。


子猫をベッドに下ろすと、LUZIAは十字架のペンダントヘッドを右手に持ち、


「酷いわ~あんまりよ~虹助がLUZIAを突き飛ばしたのよ~あぁ~うわぁ~ん!虹助の脳天に(イカズチ)を落として~うわぁ~ん!弾道ミサイルでビリリン攻撃をキメテちゃってよぉ~うわぁ~ん!大体、今回は変よ… 虹助の周りには沢山の援護者が現れたわ… michael(マイケル)の時と全然違うわ~help m~e~!うわぁ~ん 」



余程辛かったのか、Cielがキョトンと見つめる程、LUZIAはうわぁんうわぁんと泣き 、仕返しをしてくれと十字架にすがりつき、泣き疲れたLUZIAは、いつの間にか自室のベッドで眠ってしまい、目覚めるとcielを抱きソロリソロリと足音を忍ばせ、リビングへ降りた。



カッ… チャ…ッ …



静かにドアを開け、キョロキョロとリビングの中を物色するが、虹助の姿は見当たらない… ソロリソロリとリビングへ侵入し、虹助の部屋のドアに耳を当てた…



「馬 … いない… 」



LUZIAは念の為、ゆっくり静かに虹助の部屋のドアを少しだけ開き、部屋の中を覗いた。



「やっぱり … 馬、居ないわ… 」



LUZIAは虹助の部屋のドアを閉め、先ずはTVを見ようと、リビングのソファーへ向かう…




「… うん?何これ … 」



虹助からの置き手紙を読み終えたLUZIAは 、今度は階段を下り店舗へ向かい、足音を忍ばせ階段を降りると、静かにそ~っと店を覗き込んだ…




「 … がっ、骸骨 …! 」




Crimson Ghostが、虹助の手の中で揺れている…



ズッゴ~ ブルブルブルッ…


ズッゴ~ ブルブルブルッ…




「馬、発見 … 」



行き倒れたように眠っていた …



LUZIAはお腹が膨れる程、息を吸い込み



「虹助ー!お部屋で寝なさーい!」



大きな声で、虹助に声を掛けた。



「うわぁ~っ!何っ? あっ… LUZIAさん… おはようさんです、あの、昨日…すんません… 突き飛ばしてまって… 本当、すんません … これ!創ったんです!crimson Ghost!どうでっか?」



虹助はニコニコと、子供のように人なつっこく笑いLUZIAに聞いた…



「えっ… 」



LUZIAの胸元に掛かる、十字架のペンダントがほんわかと熱を持ち、淡雪の光の心象が脳裏に浮かぶ …



「その… 笑顔 … 」



「何でっか?LUZIAはん?」



虹助が不思議そうに、LUZIAを見つめる



「ううん、何でもないの… LUZIA、骸骨の事は解らないけれど… 虹助、凄いわ、だって初めて創ったのに…」



「いや~そんな~人形創ろう思ったんやけど… 外側より先に骨や思って … Crimson Ghost 創ったんです…ハハハッ! 」



虹助は起き上がり床に座わり、LUZIAはcielを抱いて虹助の前に座り、Crimson Ghostをマジマジと見つめた。



「… 凄っ… 骨が1本1本、丸くなってるわ … 関節も … 虹助!この骨、美しいわ… 虹助 はBONESね!」



「いや~そんな~俺、未々、創りますんで、LUZIAはん、見とって下さい!」



虹助の瞳の輝きの中に、確かな自信が心に宿った事を、LUZIAは犇々(ヒシヒシ)と感じていた。



ヌンッ…



「あっ、すんません… 今開けます!」



出窓の向こうから、八重弁護士が店の中を覗いている事に気づき、虹助は店のドアの鍵を開けた。



「おはよう ございます!虹助さん、LUZIAさん、朝早くから済みません、これ、朝食です」



八重弁護士は、コンビニの袋を虹助に手渡した。



「態々(ワザワザ)すんません…」


「いえいえ、所で虹助さん… はっ!それはもしや、misfits… ? Crimson Ghostではありませんか? 凄いですね、虹助さん!いや~淡雪さんにも見せたい!全くもって残念 … 」



八重弁護士は目頭を抑えた …



「いやいや、どう言う意味です? 淡雪はんに何かあったんですか?」



虹助は八重弁護士に詰め寄った



「はぁ… 実は… 体調を崩されましてね… 今朝も、頼むから虹助君の様子を見て来て下さいと… 淡雪さん、ご高齢ですし… 万が一の事も考えまして … 」



八重弁護士は俯いた …



「そんなに悪いの? お爺さん?」



LUZIAもCielを抱いて詰め寄った…



「今朝は… はい …」


「あっ、あの、八重弁護士はん、これ…持ってって下さい! 見せたって下さい!」



虹助はCrimson Ghostを、人形を入れて来た箱の中に散らばる梱包材に包み、八重弁護士に渡された、コンビニ袋の中に入っているサンドイッチと牛乳を出してテーブルの上に置き、そのコンビニ袋に梱包したCrimson Ghostを入れ、八重弁護士に差し出した。



「虹助さん、有難う御座います!必ず後程 お返しに伺いますので、お借りいたします … では、一旦、失礼致します …」



八重弁護士は颯爽と車に乗り、走り去った



「ねぇ、虹助… 後でスマホを貸して貰える?LUZIA、お爺さんと電話で話しをしたいから…」



「そんなら、これ…」



虹助は直ぐにスマホを、ズボンのポケットから取り出し、LUZIAに渡した。



「後で電話する時、虹助もお爺さんと話すでしょ?」



LUZIAは虹助に聞いたが、虹助は首を横に振り…



「今、俺は話す事無いんで… 唯、材料や道具とか店の事は、礼言いたいけど… 会って顔見て言いたいんで… 今は … 」



「うん、そっか … 解ったわ …」



虹助は苦笑いを浮かべながら、店の鍵を閉め、LUZIAと一緒にリビングへ向かう階段を上がり、ソファーに座りうつらうつらと半分眠りながら、サンドイッチと牛乳を摂り…



「俺 … 寝ますわ …」



LUZIAに声を掛け、寝室のベッドまでヨロヨロ歩きベッドに沈んだ。



スズッゴ~ブルブルブルッ…


スズッゴ~ブルブルブルッ…




ぶるふると唇を震わせ、眠りについた…




八重弁護士が、淡雪の家のドアを開けると…



カチャッ…



「どうでした?何か出来てましたか?初作品は?下絵でしたか?まさか、何もしていなかったとか… ?八重さん!どうだったんです!」



淡雪がワクワクした顔をして、玄関で八重弁護士を待ち構え、質問を浴びせ、少しキレ掛けた、どうやら、体調不良は嘘のようだ …




「あっ、あの~私は未だ、ドアも閉めていませんし、靴も履いたままですし… 玄関に上が ってもいないのですが… 」



八重弁護士は、苦笑いしながら淡雪に応えた …



「あ、あぁ… そう…ですよね… ふぁっふぁっふぁっ!これは失礼しました … リビングで 聞かせて下さい …」



淡雪は車椅子を、リビングへ向け移動させ、八重弁護士は後を追うように、靴を脱ぎリビングへ向かった。


八重弁護士は、虹助に渡されたCrimson Ghostを、コンビニ袋から静かに取り出し 、梱包材を外してテーブルの上に置いた。



カタカタカタッ… ポロッ…



「うわ~!どうしよう~!淡雪さん!腕もげた~っ!」



八重弁護士は腕が取れた事に動揺し、騒ぎ立てた …



淡雪はCrimson Ghostには触れず、じぃっと眺め …



「これは… 取れますよ、竹串で刺しただけですからね… 接着剤等で止めてませんから … 」



冷静に述べた …



「はぁ~ 良かったです… 安心しました」



八重弁護士は淡雪の言葉で、我に返り冷静さを取り戻した。


淡雪は尚もじぃっとCrimson Ghostを見つめ…


「彼は … やはり、中々ですよ… 八重さん … この骨の丸み… 人体のバランスの加減… よく此処まで繊細なものを … 素晴らしいですよ… 」



淡雪は食い入るように、Crimson Ghostを見つめた。



「併し … 人形ではありませんでした… 私は少し残念ですが …」



八重弁護士の言葉に、淡雪は憤慨(フンガイ)した顔をし…



「いえ、此が正解ですよ… 立体を創作するには、その仕組みや中身を知らなければなりません、虹助君は正しい選択をしました … 人間の躰は見える部分だけではありません、皮膚の下に肉や血管があり、その下に 骨があります、骨格が確り出来ていなければ、いくら肉や皮膚で補っても、美しい形を創り出すのは困難になります… 逆に骨組 や骨格が確り出来ていれば、後は粘土の増減だけで済みます骨組が悪いと(イビツ)になるのですよ…それを補うのは本当に苦労します… (マサ)に骨が折れます…ふぁっふぁっふぁっ! 嫌々、中々ですよ… 骨ではありませんが、ウィトルウィウス人体図… Leonar(レオナルド) do da vinci(ダヴィンチ )先生でさえも人体を描いています… 飽く無き探求心 … 彼の次の作品が楽しみです… あぁ、そうそう、後で虹助君の所に顔を出す時に… 今日は3箱持って行って下さい… お願いします…」



淡雪はキラキラした瞳のまま、嬉しそうに八重弁護士にお願いをした …



「はい、解りました」



八重弁護士は、淡雪さんを昔から知っているけれど、こんな表情を見た事は無いな…何だかとても、魅力的な表情だな… 言葉にするなら… 慈愛 … そう、慈愛がピッタリだ …と思いながら淡雪を見つめ頷いていた。





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