Hi dee ho~w~!
八重弁護士は淡雪が話し終えると、再び車を走らせ虹助の店の横の、駐車スペースに車を入れた。
淡雪の考えで、八重弁護士とLUZIAは頑固爺を説得させ、店に連れて来たと話すようにと決め店のドアを開けた。
あ… 失敗しました …
淡雪は直ぐにスマホを取り出し、古狸に電話をした。
「あぁ、古狸さん? 淡雪です… 済みませんが… 店を開けた時に鳴る鈴なんて…あっ! そうですか、それも是非お願いします…」
淡雪は古谷に話し通話を終了した。
「あっ… 淡雪さん… あの、俺 … 」
虹助は、淡雪に謝りたくて仕方が無いのだが、何故か言葉が出せない…
「虹助君、無理をしなくて良いです… その言葉は私が棺桶に入った時にでも、聴かせて下さい… それよりも素敵ですね~この人形達!とても楽しそうですね!」
淡雪は瞳を輝かせ、虹助の置いた人形達を見つめた。
「この子達は仲良くて、何か色々… 学校の事とか恋の話ししてる風です… 皆、年頃なんで … 」
虹助は人形を置く際に描いたIimageを、淡雪に話して聞かせた。
「うんうん、素晴らしい… それから?」
淡雪の眼は、益々輝く…
虹助は順に説明をして行くが、最後に1体だけ、ピエロの面をつけた人形が淋しそうに他の人形を見つめるように、少し離れた場所に置かれていた。
「この子は… 1人ですか… ?」
淡雪は虹助に聞いた。
「あっ、はい… その子は1人です… どの輪 にも馴染めんから… 1人です …」
虹助は応えた …
「そうですか… では、その子は軈て必ず人気者になりますよ、孤独を愛する者です… 馴れ合いを嫌う、孤高の精神を持つ道化師です、世界中の人々が、この子の話しに夢中になりますよ、この子は持って生まれた感性を磨き 宝石のように輝き出しますよ、えぇ 、私には解ります… 私はこの子の生みの親ですからね、ふぁっふぁっふぁっ!」
淡雪は満足そうに笑っていた。
それから間も無く古谷が、息子と2人で柱時計と熊避けの鈴を運び、店を訪れた。
古谷は淡雪から人形劇の話しを聴き
「人形劇ですか、では必ず観に来なければ!淡雪さん、アイディアですが撮影して販売しては如何です? この店と家の店限定で …」
古谷は、思いついた儲け話しを持ち掛けたが、淡雪は納得せず、この話は流れた。
柱時計を設置すると、古谷親子は帰って行 った。
LUZIAは虹ライトの木箱を持ち、店の中をウロチョロと歩き回り、ライトを置くベストポジションを探し、虹のライトは、店の彼方此方を照らし、最終的には店のドアの横にある、大きな出窓に置く事で落ち着いた。
虹ライトを照らし、改めて店舗を見渡す…淡雪、虹助、八重弁護士にLUZIA、多分、子猫も… 皆、微笑み満足気な顔を浮かべていた。
「さて、私と八重弁護士は今日は此でかえりますね、あっ、子猫は… LUZIAさんにお願いしましょう」
淡雪はニッコリ笑って話した。
「ダメよ… 子猫は… やっぱりダメっ!でも子猫は…」
LUZIAは困り果て、泣きそうな顔をした。
「LUZIAさん、虹助君、私の家は暫く… 何ていいますか… 危険かも知れないのでね、 八重さんが… 寝泊まりをしてくれます… 典子が可笑しな動きをして、私が典子を訴えるとなった時は、そうして頂くと前からお願いしていました… ですから、何も心配は要りません!私の家の人形展を開催していた場所を、八重さんに提供し、八重弁護士 事務所として使って頂きますのでね、勿論 、LUZIAさんも虹助君も、いつ来て頂いても結構ですし、私も勿論、遊びにきますよ !ですからね、子猫はLUZIAさんと虹助君にお願いしますよ」
「あっ… お爺さん、でも… それじゃ、名前だけつけてあげて!お願い… 」
LUZIAは半べそをかき、淡雪に言った…
「名前ですか … そうですね … ciel はどうですか? 日本語で空です…」
「うん、ciel ♪ とっても可愛い名前よ♪ありがとう、 お爺さん!ねぇ、虹助も気に入 った?」
「シエル … 俺が虹助やから、何か親近感湧きますわ~アハハッ!なぁ~シエル、お前は気に入ったか?」
ミャン~♪ ミャンミャン♪
虹助の胸に掛かる布の中から、ヒョコッと顔を出し、cielは可愛い鳴き声を上げた。
子猫のCielの活躍で皆が和み、店の中に優しい時間が流れた …
「では、後で八重弁護士がcielのトイレを持ってお邪魔しますからね… それでは…」
淡雪と八重弁護士は、淡雪の家へと帰って行った。
「LUZIAはん、シエルとリビングでTVでも見とって下さい、もう少ししたら俺も上がりますから」
「うん、解ったわ … じゃ、リビングへ行っているわね♪」
LUZIAはcielを抱き、リビングへ向かった
虹助は、店の中を見回した…
ライトが照す壁に、美しい虹が映る…
虹助は虹を見つめていた。
サッ …
サササッ …
ササッ…
黒い影が虹のライトを横切る …
虹助は振り返り、出窓に置かれた木箱を見るが何もいない … 虹助は再び虹を見ようと壁に目を向けた。
Hi!虹助 … Hi dee how~!ha ha ha !
虹助の目の前にチャッキーが浮かぶ …
「うわっ!チャッキー突然過ぎやで、驚くわ~!」
ha ha ha ! ha ha ha !
チャッキーは店の中を飛び回り、淡雪の人形達の頭やお腹を、ボカスカと殴りつけた
「チャッキー!止めっ!ダメやっ!」
虹助は怒りチャッキーを止めようと、バタバタと店の中を走り回る…
「こらっ!チャッキーっ!待てっ!」
ha ha ha ! ha ha ha ! Hi dee ho~w!
笑いながら逃げ惑う…
「虹助~!どうしたの~?」
パタパタとLUZIAが、階段を下りる音が響く …
ha ha ha ! Hi dee ho~w~!
チャッキーは1体だけ離れて置かれた、孤独な道化師人形の背に回り、虹助を見つめ
Habit 淡雪 is jealous …
淡雪が妬ましいくせに … と話しスーッと消えた…
ドクッン …
虹助の心臓が大きな音を立てた …
ドクッ、 ドクドクドクッ…
辺りの景色が掠れ、虹助はヘナヘナと床に座る…
「虹助っ! 」
LUZIAの声が脳天に響く …
「あぁ… すんません… ちょっと目眩して…」
「虹助… 大丈夫?」
グワンッ…
LUZIAの声に、虹助の脳が大きく揺れた
「いゃ、何でも無いんで… ちょっと、疲れただけやから …」
LUZIAは心配になり、虹助の腕を掴んだ
「触んなやっ!」
「きゃっ!嫌~!」
虹助はLUZIAの手を振り払ったが、勢いあまりLUZIAはドアの前へ飛ばされた。
ガチャッ…
「おぉっと~ LUZIAさん? どうしました ? 」
店のドアが開き、八重弁護士がLUZIAの背中を支えた。
「なっ … 何でもないっ… 」
LUZIAは涙を落としパタパタと、階段を駆け上がってしまった。
虹助は床に座り、俯いたままだった …
「虹助さん? 私と淡雪さんが店を出た、ほんの35分と40秒の間に何がありました ?何故、LUZIAさんは泣いているのですか? 」
虹助は何も応えず、俯いていた …
「はぁ~ 解りませんね… 何が原因です?私の感覚からすると、LUZIAさんは何らかの理由で、ドア付近まで飛ばされたように思いましたが? 私の間違い、勘違いでしょうか? 」
虹助は俯いたまま …
「俺が… 突き飛ばした … 」
「故意にですか?」
八重弁護士が虹助に聞いたが、虹助は何も話さなかった …
「虹助さん … 淡雪さんが話していましたよ、嫉妬は恨みに変わり易いと… それは心を歪めるそうです… 私には芸術の世界は解りませんが… どんな世界にも通用する言葉では無いかと思って聴いていました…歪んだ心は、人を腐らせるなと… 私も実際、生きて来て、そう思います… それは何かや誰かに当たったとしても、どうにもなりません… 自己解決、自己解消しか無いですよ…偉そうに済みません… それで、これ、淡雪さんから預かって来ました、虹助さんに渡して欲しいと、何でも、人形作りに必要な材料が全て揃っているそうです… 虹助さん 、ド素人の私が言うのも何ですが… これで 人形を、作りまくって下さいよ … 3日くらい眠らなくても平気でしょう?LUZIAさんにした事を思えば … では、私は此で … 多分、毎日、虹助さんが嫌でも顔を出しますので宜しく、では、失礼します … 」
ガチャンッ …
八重弁護士が店のドアを開け、外に出ると直ぐに虹助は、店の鍵を閉めた。
「はぁ … 」
八重弁護士はため息をつき、車へ戻ると
「あ~ぁ、淡雪さんの言う通りですよ… 材料を届けても、有難うを言う余裕も無いかも知れませんよ …か… まさかと思っていましたけど… 併し、淡雪さんは凄い… エスパ ー涼一 ?なんてね …」
八重弁護士は荷物を届け、淡雪の家へと戻って行った。




