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~ INDIGO ~   作者: MiYA
23/49

お絵描き…


虹助は住居側のドアを開け、鍵を閉めると階段を上がり、リビングの電気をつけソフ ァーに座った。


ローテーブルの上の袋から、淡雪の書いた人形制作の本、淡雪 涼一 ~人形感~と言う本をじっくり読み始めた。


LUZIAのように睡魔に襲われる事は無く、虹助の眼が魚に変わる事もない … 唯、黙々と読み続け、2時間かけて全て読み終わると、更に1時間かけ、今度は本に書かれた内容から、必要な物のメモを取る…


・設計図用の方眼紙

・人形の芯材料

発泡スチロール

軽い紙粘土

ラップ

竹串

ステンレスの針金

コットン

木工用ボンド


この他に造形に必要な材料、塗装に必要な材料、それに淡雪の本の中から虹助が必要と感じた、人形制作のコツ等も書き出した



「方眼紙は買わなならんけど… 紙に描く事は出来るわな… 下書きやな…」



虹助は寝室のクローゼットを開き、バッグの中からノートとペンケースを持ち、リビングへ戻り、お絵描きを始めた。



頭の中にはハッキリと、虹助の想うキモ可愛人形が映し出されているのに … ノートに描かれた絵は … ほんわかぱっぱ… ほんわかぱっぱ … の青い耳なし猫 …


「ある意味 … キモやわ… しっかし何やこの絵… ハハハッ!笑ってまうわ … よし、次や!」


お絵描き続行 …


2作目 … 完成 …


「耳は付いたけど … アカンわ、オサビシ山やで、テント張っとる奴やわ …アカン…」


そうして、3・4・5・6・7・8作と続き …



「ダメや~アカン… 描けば描く程、解らんくなるわ~ あ~ チャッキー助けてや~」



虹助はあまりの絵心の無さに、頭を抱えた



I Love you … 虹助 …



チャッキーが脳裏に浮かぶ …



「あっ、そや、チャッキー描いたろ!チャッキ~チャッキ~ チャッキ~な~」



虹助は再び寝室のクローゼットへ向かい、バッグの中からチャッキーのDVDを取り出すとリビングへ戻り、今度はDVDのパッケ ージのチャッキーを見ながら描いてみた。



俄然、ノートに描かれる絵が変わる …



「今度は… まぁまぁやな…チャッキーに似とるわ… けど… 何かが足りんわ … 何やろな? 」



虹助はパッケージの写真と、自分の描いた絵を何度も見比べた。



「う~ん、何やろ … チャッキーは目むいとる… 俺のは… 目が開いとる… あっ… そや目や… 目力や… チャッキーには目に狂喜がある、けど、俺のは… 狂喜が無い… これじゃ 唯のそっくりさんやな… よし、目に狂喜や!」


10・11・12・13作目 …



「よしっ!チャッキー出来たで~ おぉ~瓜二つやな!けど… 俺の方が… ちょっと怖いな… ハハハッ!これは楽しいな~」



虹助はチャッキーを上手く描けた事で、気を良くし、頭の中に住むキモ可愛人形を描き始めた。


先程の絵とは何もかもが違う…


チャッキーを観察しながら描いた事に、何一つも無駄は無く、子供の人形は頭が大きく、額が広い事や、躰と頭のバランスが悪い事、目・鼻・口は顔の中心より下気味に作られている事等々、虹助には何れも此れも発見続きだった。


「アハハ~目はこうや、鼻はこうやな… 口はニヒル笑いやな… 」



頭に住む虹助のキモ可愛人形と、虹助の思考、そして鉛筆を持つ指先の神経 …


全が繋がり連動された時 …


槐 虹助のキモ可愛人形がノートに描き出された。


下膨れ気味のベース形の顔に、ふっくら膨らむ頬 … 頬紅はふんわり健康的なオレンジ 色 …1点を見据えるような大きな目… 白目は真っ白では無く黄色みがあり、目の玉は大きい、外側が赤く内側は黒い … 鼻筋は通 っていて小鼻はぷくっと少しだけ膨らんでいる … 口は多少大きめで上唇は厚く、左側だけ引き上げ笑っているが、開いた口元から覗いて見える歯はギザギザ … 顔の右半分は美形の人形だが、左半分は頭頂部から額の半分程迄欠け… 左目の上迄亀裂が走り 、左の顎も欠けていた … 髪の長さは胸元程で前髪はキッチリ眉の上で切り揃えられている… 色はシルバーグレイとブラウンの2色が混ぜてあり、髪質はサラサラのストレ ート … けれど … 左側の頭が欠けているので左の前髪は無い… 火傷で縮れた毛が数本頭頂部についている程度でなんだか痛々しい … ドレスは白く衿と胸元にフリルが付いている、腰回りには、同じ生地で作った太めのベルトを後ろで蝶々結びにしている … ドレスのスカートには太めのプリーツが入っていて、清楚感が溢れる… 靴は黒の… エンジニアブーツ… ?



「やったで!描けたわ … 完璧なキモ可愛やな… キモやなかったら… LUZIAはんより…べっぴんさんやなっ!ハハハッ!」



虹助はキモ可愛人形を描き終えると、満足したのか微笑みを浮かべ気絶するように眠ってしまった。



ズズズッゴォ~ブルブルッ…


ズズズッゴォ~ブルブルッ…



時刻は朝の6時30分を過ぎていた …




八重弁護士がスーパー・ホリデーから淡雪の家へ戻るとリビングでは…



「おぉ、ROME~O~ 貴方は何故、ROMEOなの… ?」



両前足で耳を塞ぐようにソファー踞り眠る子猫の横で、LUZIAはソファーの上に立ち上がり、左手は胸の前に右手は大きく前に伸ばし、瞳をキラキラと輝かせJULIETを演じていた。



八重弁護士は辺りを気にしながら、リビングに足を進ませ…




「ジュッ… JULIET… 君は何故、JULIETなんだい … 」




頬を赤らめ照れ臭そうに、お経のような1本調子で呟いた…



「Oh… ROMEO… 私の愛しいROMEO… 」




どうやらLUZIA演じるJULIETは、仮死の毒を飲むシーン迄、話しが飛んだらしく …



「ゴクッゴクッゴクッ … おやすみなさい … ROMEO … 」



LUZIAは子猫に頭を向けソファーに横たわる …



「えぇと … 確か… JULIETが死んでしまったと誤解したROMEOは … えぇ、あ… そうそう!JULIETのお墓の前で毒を飲むんでしたね … 」



八重弁護士は買い物袋を床に置き…



「うっ、うんっ… JULIET~ッ!あぁ… 私の愛しいJULIET~ッ! 君は… 私の太陽! 」




八重弁護士はテナー歌手のように響く声で 、クルッとLUZIAに背を向けた …



「いや、君は… 夜空に浮かぶ月 …」



またクルッと、今度は横を向き



「違う … 」



3歩、歩いて … クルッリンパッとLUZIAを見て …



「君は … 夜空を飾る輝く星 … あぁ …JULIET… 私の愛… 私の全て … 今、君の元へ … ゴクッゴクッゴクッ … 」



バタッ …



八重弁護士は迫真の演技を見せた …


ボッとLUZIAの心に火がつき … ソファーからムクッと起きあがると、ヨロヨロと歩きながら …



「ROME~O~ ! 私はもう一度… 貴方に逢えると信じていました… あぁ… 私のROMEO… 貴方が永遠の眠りについたのなら… 私の太陽は消え… そよ風は訪れず … もう2度と… 小鳥達の(サエズ)る声も…聴こえはしないわ … この空に、暗闇だけが拡がるばかり… 悲しい… わ… ROMEO … 貴方は私で… 私は貴方だった … 私達は1つに重なる2人だった … 愛しています、ROMEO … 貴方を失い… 生きてなど行けないわ … グサッ… 」



バタッ …



LUZIAは、胸元にナイフを突き立てる演技をして床に倒れた。


八重弁護士は顔を上げ…



「JULIET~ッ… 」



LUZIAに駆け寄り、立てた膝の上にLUZIA乗せナイフをLUZIAの胸元から抜き、LUZIAをそっと床に寝せる演技をし…


立ち上がると…



「私の太陽も… 私の月も… もう…私に微笑みはしない… JULIE~T~ッ!」



八重弁護士は抜き取ったナイフで胸を突き刺した。



「あ…ぁ … 愛しの… JU … LI … E … T …」



バタッ …



LUZIAはムクッと起き上がり、床に倒れる八重弁護士の頭の上から



「弁護士さん、死に過ぎ… ROMEOは1回だけでしょ!」



八重弁護士はハッ!と起き上がり



「えぇ? そうでしたか?ROMEO AND JULIETは、こうして何度も自殺してゾンビになり、仲違いしていた両家の家族に復讐するという話しでは… ?」



LUZIAは小鼻を膨らませ



「違う! 全然違うわよっ!2人の死により互いに悲しみを背負った両家は、仲直りするお話よっ!シェイクスピアがゾンビ書く訳ないでしょっ!バカじゃないっ!ところで弁護士さん… 何故そんなに演技が上手なの?」



「アハハ、いえ、それ程でも~ 恐縮です~アハハッ… 所で淡雪さんは …」



八重弁護士は笑って誤魔化し、LUZIAの質問に応えようとせずに話しをズラした。



「お爺さんは奥のアトリエよっ!」



LUZIAはツンとして応え、ぷんすか怒りながら、買い物袋の中の子猫グッズを取り出し始めた。



「アトリエか … それでは邪魔は出来ませんね… あっ、LUZIAさん、私も一緒に …」



ツンケンするLUZIAの機嫌を何とか直そうと、八重弁護士はLUZIAを手伝った。


子猫の食事とトイレが済むと、八重弁護士は淡雪に寝部屋を聞きに行き、LUZIAは淡雪の寝室の隣の客室に、八重弁護士はリビングの隣の客室へと笑顔で応えてくれたが 、アトリエのドアを半分程開けていたので 、八重弁護士のROMEOは淡雪に筒抜けに聴こえていた。



「ふぁっふぁっふぁっ、名演技でしたよ、ROMEO… いや、八重さん、人形劇もお願いしますね!」



淡雪は話したが、八重弁護士には何の話やらサッパリ解らず、



「はぁ …」



一応返事をしていた。


LUZIAは、どうしても子猫と一緒にリビングで寝ると言い張り、リビングのソファーで眠った。


淡雪は八重弁護士とLUZIAと子猫が眠った後も、楽しそうに背景を描いていた。



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