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~ INDIGO ~   作者: MiYA
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To be,or not to be … that is the question…


淡雪と八重弁護士は、今夜は出前を頼もうという話しになり、八重弁護士が天丼セットを3人分注文し、40分程で家のチャイムが鳴ったので天丼を受け取り、リビングのテ ーブルに置いた。



LUZIAは天丼が届く前にと、カップやソーサ―をキッチンへ運び、お茶会の洗い物をしていた。



「虹助君 … 今夜は天丼ですよ …」



淡雪が声を掛けると、虹助はソファーからムックリ起き上がり、



「天丼? 好きです… 」



寝ぼけ顔で応えた。



「ふぁっふぁっふぁっ、それは良かった、 では、食べましょう」



淡雪は虹助に割り箸を渡した。



目覚めた虹助は、Augustinの事は一切話さず、今、ぷりぷりに揚がった海老を口に運んだばかりの淡雪に、


「淡雪はん、すんませんが … 俺、飯終わったら帰りますんで … 枕変わると寝れへんもんで …」



淡雪は海老をくわえたまま、虹助を見つめモグモグゴックンと慌てて海老を飲み込み



「虹助君、今日はあんな事があった訳ですから、家に泊まってゆっくりした方が …」



… … 虹助… 君 … ?



淡雪は虹助の瞳の中に、危機感迫る真剣さを感じた …



「何かあったら、直ぐに電話を下さい 」



「はい、すんません …」



淡雪は不安気な顔をしながら、揚げピーマンにカリッと歯を立てた。



止められませんよ …


あんなに真剣な眼をされては…


瞳の奥から感じる強い意志 …


虹助君、何かを始めたいのですね?


大いに結構!見守っていますよ



淡雪は揚げピーマンを口の中で、モゴモゴさせながら微笑んでいた。



八重弁護士は淡雪を見て、私の敵は子供の頃からピーマンだけれど、微笑みを浮かべる程に美味しいのなら、私の記憶に微かに残るピーマンの味が変わっているのかも知れないと、数十年振りにピーマンを口に運び、サクッとピーマンの天ぷらを噛んでみた。



「うっ … あれ、苦味が旨味?」



八重弁護士は、箸に残るピーマンの裏と表を手首を返してクリックリッと見ていた。



「八重弁護士はん、何してまんねん… 食べ物で遊んだら罰当たりまっせ!」



「いえ … 遊んではいないのですが … 実は私 、子供の頃からピーマンが苦手でしてね、ですが、今、口にしてみましたら、旨いの何のって … こんな事ってあるんですね …」



八重弁護士は不思議そうに揚げピーマンを見ると、箸先に残るピーマンをパクっと口の中へ入れた。



「年とると若い頃は肉言っとったのが、魚言うようになるように、好み変わったんとちゃいまっか?」



「そうかも、知れませんね… あっ!そうだ虹助さん、私、今思い出しましたが、先程お伝え出来なくて… あのですね、閣下はハードロックでは無くヘビメタです!閣下が昔、我輩はハードロックなどではない !ヘビ~メタルである!と確かTVで言っていましたので…」



「… そうなん? 間違わんよう、気いつけます…」



八重弁護士と虹助は、そんな何気ない会話を交わしながら天丼を食べ終えた。


淡雪は八重弁護士に、虹助を家まで送って欲しいと頼み、序に子猫の餌やトイレを買 って来て貰えないかと、メモ書きとお金を八重弁護士に渡した。



LUZIAは、本当は虹助と一緒に帰りたいけれど… 子猫も心配だし、虹助も何かをやる気だし、とモジモジしていたが、今日は黙 って虹助を見送る事に決め、何も言わずにソファーで眠る子猫を撫でていた。


淡雪はLUZIAを膝の上に乗せ、虹助と八重弁護士を玄関まで見送りに出ると



「虹助君、明日、そうですね8時30~9時頃には伺いますからね、お店に人形達をおきましょう!あぁ、何かあったら必ず電話を下さい、お願いしますよ!」



虹助に声を掛けた



「はい、解りました、そんじゃ明日…」



虹助はペコリと頭を下げ、八重弁護士と一緒に淡雪の家を後にした。



「LUZIAさんは優しいですね、虹助君の気持ちを察したのでしょう? 明日、虹助君の所に行くのが楽しみですね…」



淡雪は少し淋しそうな顔をしているLUZIAに、優しく声を掛けた。



「平気よ!ふっふ~ん♪ ふっふ~ん♪」



「ふぉっふぉっふぉっ、そうですね、平気なようですね …」



鼻唄を歌い強がるLUZIAを見て、淡雪はとても愛らしいと感じていた。


リビングに戻ると淡雪はLUZIAに


「LUZIAさん、私も少し何か創りたくなりました… 奥の部屋に行きますが、ドアは開けておきますからね、八重弁護士が直ぐに戻ると思いますが… それまで子猫とリビングで待てますか?」



LUZIAはコクンと頷き



「お爺さん、LUZIA平気よ、頑張ってね♪ 本を読んでいてもいい?」



リビングの本棚を指差し、LUZIAは淡雪に聞いた。



「えぇ、何れでも好きな本を読んで構いませんよ、それに2階でミシンを使ったってかまいませんからね… 」



淡雪はニッコリ笑い、LUZIAの頭を撫でると奥の部屋へと向かった。


LUZIAは本棚から、シェイクスピアの本を取り出し



「あなたに読んで聞かせてあげるわね♪そうだ… あなたに名前も付けなくちゃね♪」



子猫に話し掛けると、シェイクスピアの朗読を始めた。



「To be,or not to be … that is the question… 生きるか、死ぬか … それが問題だ… キャーッ!素敵よね、でね、ハムレットは悩むのよ~♪」



LUZIAは1人楽しそうに、迷惑そうな子猫を尻目に話して聞かせた。



アトリエに入ると淡雪は、作業台へと向かい、大きな画用紙に何やら風景を描きはじめた。



「ふぁっふぁっふぁっ、よしよし、この調子です …」


淡雪はまるで子供のように、無邪気な目をして …



虹助君、私ね、閃きましたよ …


虹助君のお店でね、人形劇を開催するのですよ、そうすればね、子供達が来てくれるでしょ? こんな世界もあるんだなって … 心に何か残せたなら大成功ですよ、長く忘れていてもね、いつか大人になった時に振り返える日が来ると思うのですよ … 楽しい思い出と言うのも人の心の慰めになるでしょ う? だからね、虹助君、君も頑張る、私も頑張る、そんな物達が集まるとね、最高に素晴らしい事が起こる! 芸術の世界は限りなく拡い 、 人の心を動かす物が全て芸術である!私はそう想いますからね… 今夜は2人で頑張りましょう、そして何より楽しみましょう!こんな気持ちは、久しぶりです … 有り難う虹助君… 有り難うLUZIAさん… 有り難う八重さん … 私を導く芸術に感謝致します …



淡雪は心に新な夢を抱き、ニコニコと楽しそうに大きな画用紙の上で鉛筆を動かしていた。



虹助を家の前で降ろした八重弁護士は、虹助の家から車で5分程走り、日用品を扱う大型スーパ-・ホリデーの駐車場に車を止め、スーパーの出入口で買い物カゴを持ち店内へと進み、ペット用品のコーナーに着くと淡雪に渡された買い物メモを開いた。


猫のトイレ・猫のトイレ用砂・餌入れ・水入れ・子猫用餌・子猫用ミルク・餌入れ・水入れ・首輪・ベッド・玩具・その他何かあれば、お願いします。



「餌入れ、水入れは… 各2でしょうか… ?洗い代え?」



八重弁護士は悩んだが、餌入れ、水入れは各1つと決断し,メモに書かれた物を一通りカゴに入れ、玩具は猫ジャラシとちゅ~太というネジを巻くと走る鼠型の2種類をカゴに入れ、レジへ向かい、会計は淡雪から預かったお金で済ませ、店を出て駐車場へ向かった。


何気に空を見上げると…


連続して流れ星が夜空に走った…



「ニビル… ? な~んて … 最近、随分騒がれているようですが … ニビル来たらどうしようもないですよ… 確か… 23でしたか?さぁ、大変だぁ~ 、ですが、戦争よりはましかも知れませんね … ロケットマ~ン … あっ、もしもし黒電話さん? 聞いてます?なんてね… 」




八重弁護士は独り言を呟き、美しい星々を暫く眺め 、ふっと笑った …



その後車に戻ると、淡雪の家へと向かい車を走らせた。



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