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~ INDIGO ~   作者: MiYA
19/49

悪魔の芸術家・Augustin…


LUZIAは子猫を抱いたまま、淡雪の膝を降りソファーに座った。



「お爺さん、LUZIA … お爺さんにお願いがあるの… 」



LUZIAは悲しそうに俯いた。




「どうしたんです? どうしてそんな顔をするんですか? LUZIAさん… 私に出来る事なら何でもしてあげるから、そんな顔をしないで下さい …」




淡雪は困った顔をして、LUZIAに言った。




「あのね … この間、刃物が刺さったお尻が変なの… だからね、LUZIA…恥ずかしいんだけど… お爺さんに直して欲しいの… 今もキックをしたらメリッて音がしたし… 自分じゃ見えないの …」




LUZIAはモジモジしながら、恥ずかしそうに淡雪に話した。




「ふぁっふぁっふぁっ 、LUZIAさん、それなら私のアトリエへ行きましょう、リビングを出て左の突き当たりの部屋ですよ」



淡雪は、子猫を抱いたLUZIAを膝の上に座らせ、車椅子を動かした。



部屋のドアを開け、作業用の机の上にLUZIAを乗せ、子猫は物入れ用に置いてある木の箱の中にクッションを敷き、その上で休んでもらう事にした。



「LUZIAさん、済みませんが … 見せて頂けますか?」



淡雪が話すとLUZIAはペロンッと、ドレスのスカートを捲った。



「失礼しますよ …」



淡雪はLUZIAのペチコートとスカートを捲り右と左の脇腹の位置で洗濯ハサミで止めた。



「LUZIAさん、スカートは止めましたから手を離して結構ですよ…」



LUZIAはコクンと頷き、手を離した。



淡雪はLUZIAを気遣いながら、おパンツを下げ、ナイフの傷跡を確めた。




「あ… はいはい、大丈夫ですよ、これは直ぐに… 粘土ですね … おやっ …」




淡雪はLUZIAの腰に、指先を軽く押しあて 、横に動かした。




Augustin(オーギュスタン) … !




「そうよ、お爺さん… 知っているのね… この人形は… 呪いの人形師Augustinが作った人形よ… LUZIAにも解らないの、何故、私の魂がAugustinの人形の中に入ったのか … 地球の意思であるとしか… 言えないの … 」




淡雪はLUZIAの頭をゆっくり撫で、それから、石粉粘土を傷口にあて、スパチュラというヘラで伸ばしお尻を修復しながら、




「Augustin… 彼は人形を造り出す事に関しては天才でした … けれど、彼は … 道を誤 った … 悪魔の芸術を求めた… 人形師、否、芸術に携わる者であるなら誰でも1度は望むでしょう… 生きていると言われる作品を創り出したいと … けれど、それは、私達創り手が、魂を削り創作に没頭し、苦悩し格闘し、そうした中で生まれる作品であると私は想っていますから … 彼の、他人を傷つけ、時には死に至らしめたという行為は許せません… ですが、それはAugustinの話しであって、LUZIAさん貴女には、何の罪もないです!悪いのはAugustinですから … 少し振動が走りますが、LUZIAさんが望むなら、私が今直ぐにAugustinの名等消してあげますよ!」



淡雪は沸々と沸き上がる怒りを、何とか堪えLUZIAに話した。




「えへっ♪ LUZIA、可哀想な振りしちゃった♪ あはっ♪ お爺さん、ごめんなさい… LUZIA、作者が解っているってとこ、結構 、 気に入ってるの♪ あはっ♪」



LUZIAは、お茶目にそう話した。


淡雪は目を細め、辛そうな顔をして微笑み



「さあ、後は粘土が乾く迄、辛抱ですよ、 関節ではありませんが、お(シト)やかに… 間違ってもキックはダメですよ… ふぁっふぁ っふぁっ!」



「解ったわよ… キックは止めるわ~ あははっ♪」



淡雪とLUZIAは、互いに悲しみを隠すように笑い合った。



LUZIAさん …


貴女が気にしているのは …


Augustinの呪い…


そう言われているものでしょう?


Augustinの人形は全て名前が彫られ、その上に焼き印を押されている …



彼の人形は皆、何かしらの形で血や骨、時には眼球や爪、それに、髪など … 人間の1部分が使われていて、Augustinは最高の芸術と語った … 確かに彼の作品は違っていた… ですが私は、Augustinを認めません!悪魔の芸術など決して認めません!彼の印を消そうとすると呪い殺されると言われていますが … LUZIAさん、虹助が芸術家として育つか、私が死を悟るか… どちらが先か解りませんが… 必ず私が消してあげますから!今は口にしませんが約束致します。



淡雪は心の中で決心し、優しい笑顔を浮かべ、子猫を撫でるLUZIAを見つめていた。






八重弁護士は店舗の前に車を止め、店のドアを開けると、生き物が腐敗した強烈な匂いに鼻を突かれた。



「虹助さんっ!うっ… 何の匂いだ…」



八重弁護士は直ぐに、店舗の窓とドアを開け 、床に沈む虹助に何度も声を掛けた。



「虹助さん!虹助さん!」



八重弁護士は、耳を虹助の心臓に押しあてた…



トク…トク…トク… トックンッ… トク…



「ん? 今… 脈が変だったような … 」



八重弁護士は再び耳を押しあてた …



トックンッ… トクトク… トックン …



八重弁護士は首を傾げ、



「虹助さんは…不整脈気味なのかもしれませんね … 起きたら聞いてみないと… それにしても酷い匂いですね …」



その後も八重弁護士は、虹助に声を掛けたが、一向に起きる気配が無い …



「目覚めませんか …」



八重弁護士は虹助を担ぎ、車の後部座席に乗せ、虹助のポケットから鍵を取り出すと 、開けた窓を閉め、店舗と自宅側のドアの鍵も確り閉めて淡雪の家へと向かった。


数分、車を走らせる距離の中…


八重弁護士はあの腐敗臭を、以前も何処かで嗅いだ事があると感じ、思い出そうと必死にその記憶を探していた。



「思い出せない… 時間切れか 」



八重弁護士は、アトリエ前の駐車場に車を止めると運転席のドアを開けた…



カチャッ …



「あ … Augustin … そうだ、Augustinのアトリエだ!」



私が高校生の頃…

悪魔の人形師と言われる、彼の謎を追ってみようと友人達と話し合い、夏休みに当時 日本で開催されたAugustinの芸術展を観に行った … 私は多感な年頃でもあり、Augustinの作品に魅了され、貯めていた貯金全てと… 私の人生の一大事が起きたと、父の留守中に母を泣き落とし、旅費を無心しフランス旅行へ出た。


私にとっての汚点 …


黒歴史ではあるが、お陰で良い社会勉強が出来た…


Augustinは…


最低、最悪、この世の果てですね… と言う言葉がピッタリのゲス野郎ですが … 此を好む金持ちセレブが如何に多いか… 実際、悪魔のようなAugustinのアトリエがそのまま残され、見学も有料で可能でしたし … 彼の人形の大多数を、世の中のセレブと言われる大物達が、コレクションとして競 って所有していたり … Augustinの人形は出回っていない物の方が多いのですが … そんな下手物非道種族が世の中を回していると学ぶ事が出来た訳です …


でも… 何故、Augustinのアトリエと同じ匂いが…



「Augustinが店に訪れた?まさか、そんな事は… 彼は自殺したのですから… ある訳がない… かな… ?」



八重弁護士は、自分の心に疑問を投げ掛けたまま、今更だが虹助を連れて行かなければと、虹助を担ぎ淡雪の家のチャイムを押した。



キ~ン~コ~ン






もしも…


Augustinが生きているとしたなら …


彼は何を望むのだろうかと考えながら …




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