俺は鳩?
虹助と八重弁護士は、荷物を積んだ車で虹助の家へと向かっていた。
「あの、虹助さん、先程はお恥ずかしい所をお見せ致しまして… 」
八重弁護士は、車を走らせながら困った顔をして虹助に話した。
「ハハハ、オモロかったで、ええもん見せて頂きましたわ、ハハハ!」
虹助は、笑いながら応えた。
八重弁護士もホッとした顔をし、少しだけ微笑みを浮かべ、車のハンドルを握っていた。
車が店舗の前に止まると、
「今、鍵開けますわ、店舗の鍵家ん中なんで、裏から開けますんで…」
虹助は助手席を降りると、店舗の裏側へ回り、自宅側のドアの鍵を開けた。
ガ チ ャッ
鍵を開けると、左手に見えるリビングへと続く階段を素通りし、店舗へ続くドアを開け、店舗の中を端から端迄歩き、道路に面した店舗のドアを内側から開けた。
カッチャン
「すんません、お待たせしました」
「いぇ、では、お店の中に運びましょう」
八重弁護士と虹助は、荷物を車から降ろし店舗の中へ運んだ。
「あの、八重弁護士はん、俺、テーブルとか組み立てても構いまへんか?」
虹助は、折角なら明日の手間を減らそうと思い、八重弁護士に話した。
「はい、構いませんよ、降ろす荷物も、後少しですから」
八重弁護士は微笑み応えてくれた。
荷物を全て運び終えると、
「虹助さん、私も手伝いますよ!」
虹助に声を掛けた。
「いや、そんな … 少しなんで俺やりますから、八重弁護士はん、すんませんけど… 先 戻っとって下さい… 淡雪はんとLUZIAはん 2人でっしゃろ? また、何かあったら困るんで …」
「は … はぁ … そうですか…解りました… それでしたら、私は先に戻りますね …」
八重弁護士は、先程と少し様子の違う虹助に戸惑ったが、虹助が真剣な顔をして話したので、残るとも言えずに淡雪の家へと戻って行った。
虹助は、店舗の中で1人黙々とテーブルを組み立てていた。
「人形… 俺の人形は… どんな顔しとるんや… ? 髪型… 肌の色…目の色 … 鼻の形 …口元は … ?男か女か?大きさは?着てるもんは? … 解らん事ばかりやな … 」
テーブルを組み立て終えると、虹助は目を瞑り深呼吸を繰り返した。
「さっきの店、思い出さな … 」
虹助の脳裏に柱時計が浮かび …
ボ~ォ~ン ボ~ォ~ン
時計の針は12時を回った …
ポッポ- クルルックッ
ポッポ-クルルックッ
時計の針の上、小さな扉が開き、その扉から鳩が飛び出した。
飛び出した鳩は、ポッポ-と鳴き、クルル ックッでクルンとその場で1回りした…
チクタク … チクタク …
チクタク … チクタク …
柱時計だけが、真っ暗な店舗の中にポツンと佇み、時を刻んでいた …
虹助は柱時計の鳩のように…
クルンと回りながら、店の中を見回す…
クルルックッ、クルルックッ …
「可笑しいやん、あんなに見えとったのに … お爺さんの時計以外何もない… 何で? 可笑しいて… 見せてぇや…俺の店… 俺の人形 … 俺の夢 … 」
クルルックッ、クルルックッ、クルルック ッ… クルルックッ、クルルックッ、クルル ックッ …
ぐるんぐるんと、鳩も虹助も目が回る程に 、何度も何度も店を見回すが…
柱時計と鳩以外は、何も映らない …
「俺 … また … ダメなんかな … 」
ふぅ~と虹助は頭を抱え、大きな溜め息を漏らした。
チクタク… チクタク…
ポッポ- ポッポ- ポッポ-
クルルックッ、クルルックッ、クルルック ッ… クルルックッ、 クルルックッ…クルルックッ、クルルックックルルックッ…
鳩は狂ったように、ぐるんぐるんと回り 、何度も鳴き叫ぶ …
「鳩は … 俺か… ?」
虹助の心に奇妙な思いが過った…
コツ … コツ… コツ… コツ …
闇の向こうから …
何かが虹助の方へと近づいてくると …
鳩の鳴き声がピタリと止まった
テテテンテンテン テテテンテンテン~♪
突然、暗闇にオルゴールの音が響く …
「わっ!何、急に …It's a sm~all world … ?」
虹助は驚き、思わずオルゴールの曲名を叫んだ …
コッコッ… コッコッ …
足音が … 速まる …
虹助の心臓もバクバクと音を立てる …
目を開けたら、終る …
俺の頭ん中の世界やからな …
けど … 今、目を開けたら …
今迄と何も変わらん気がする …
俺の頭ん中 、いや、心の声聞くんや!
絶対、何か見たる! 絶対やっ!
テ~テテテ テ~テテ~♪
オルゴールの音が… 止まった …
コッコツコッ… コ…ッ…ッ…
虹助の直ぐ近くで、足音が止まる …
虹助はビクッと躰を縮め…
心臓が口から飛び出てしまう程に緊張し 、恐怖を感じながらも闇に目を向けた…
… えっ!えぇ-っ!
Hi ! I'm … chucky…
D~o yo~u wanna pl~ay … ?
A~HA~ ?
「うっ、うわぁ~っ! チャッキーや!」
チャッキーは、右眉と口の右端を吊り上げ 、ニヤリと笑い、ギロリとした目で虹助を睨むと、後ろに隠れている右手をウワッと振り上げた…
「うわぁ~ チャッキー!NO-や-!グサ ッとダメ! … って … へ っ ? グサッと来んわ … 」
虹助が、チャッキーの手が当たっている胸元を見ると… チャッキーは、真っ赤な薔薇を1輪、虹助の心臓に押しあて …
I Love you … 虹助 …
まつ毛をバッサバサ揺らし… 告った …
♪~♪~♪♪~
アンチェインド・メロディーが 流れ …
辺りの景色が一変した…
虹助とチャッキーは、やたら楽しそうに両手を繋ぎ、七色の花畑の中で2人は見つめ合い、笑いながらクルクルと回る…
あはは! ha ha ha!
何やこれ …
恐怖と愛 … ? 人情沙汰や …
下手すりゃ惨劇やで …
待てよ …
解った! 見えたでっ!
俺の人形! テーマは恐怖と愛やっ!
キモ可愛人形やなっ!よしっ!
虹助はチャッキーのお陰で、自分の求める人形のIimageを探し出す事に成功した。
「チャッキー!有難う!見ててや、俺、頑張るでー!」
最後にチャッキーとハグを交わし、虹助はゆっくりと目を開けた。




