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~ INDIGO ~   作者: MiYA
12/49

ニュース速報


淡雪はアルバムを1頁ずつゆっくりと捲り 、槐家の歴史を眼で追っていた。


虹助 誕生 3100g …


やった!産まれた!分娩室から我子の産声が聞こえた。


俺も親父になるんやな…


俺、頑張るからなお前も元気に育てよ!


父より …



良い母になる!言い切れる自信は無いけれど、努力は惜しみません。


だから、健康にすくすく育ってね


母より …



虹助誕生の写真の下の余白に、虹助へ宛てた両親からのメッセージが書かれていた。



淡雪の眼に涙が滲む …


アルバムの最終頁には、静音の想いが綴られていた。


私は母の顔を知らない …

母は私が3才の時から、

ずっと精神病院に入院していたから…

祖父母の家で育てられたけれど…

1度も会った事がない、祖父母は母の話しも父の話も聞かせてはくれなかった。


光介さんと出会い、祖父母の家を飛び出した … 良かったと思っているから、後悔もしていない、光介さんと一緒に暮らせて本当に幸せです。


虹助が産まれて幸せも増しました。



「静音 … 光介さんに出会えて良かったね … 私は虹助君に会えたよ… ありがとう…」



淡雪は、目を細め泣いているように微笑み 、アルバムの写真を全て見終えると部屋の灯りを消した。



3階の部屋へ戻ったLUZIAは、ちょっぴり嬉しそうに、



「明日は、お爺さんのベッドとか買いに行かなくちゃ♪」



何か欲しい物でもあるのか、買い物に行けるとわくわくしながら眠りについた。



各々(ソレゾレ)の想いを抱きながら、夜が白々と明けた。



キ…ィ… キ…ッ… キ… ィ…


淡雪はなるべく車椅子の音を立てないように、部屋を出てリビングの先にあるトイレへ向かった。



虹助は目を覚ましたが、今、起きてしまうと 、今後、淡雪が家の中を1人で車椅子に乗り行動する事を邪魔してしまうのではないかと考え、躰を起こさずにいた。



淡雪が無事にトイレに入ると、虹助は躰をゆっくり起こした。



3階からは、LUZIAがリビングに向かい階段を下りる微かな足音と、夜明けのスキャ ットが聴こえて来た。



カチャッ



「good morn~ing ♪ 」



LUZIAは黒いレースフリルのドレスを着て登場した。



「おはようございます LUZIAはん」



「おはよう虹助、今日はお買い物よね?お爺さん住むでしょ?だったらお買い物よね ~♪」



買い物に連れて行けと言わんばかりに、虹助に聞いた。



「えぇ、そうしましょ!LUZIAはん、すんませんが、金貸して…」



「Non・no・Non!虹助、それ以上は言わない、解っているわ♪」



LUZIAは右手の人差し指を立て左右に軽く動かし、虹助に応えた。



キ…ィ… キ…ィ…キ…ィ…



淡雪が車椅子の音を気にしながら、トイレからリビングへ向かうと



「Bonjou~r ♪ お爺さん♪」


「おはようございます!」



LUZIAと虹助が淡雪を迎えた。



「Bonjour LUZIAさん、おはようございます虹助君」



淡雪は嬉そうに微笑み、2人の挨拶に応えた 。



LUZIAはニッコリ微笑みTVのリモコンを押した。



テテレッテテレッ テレ~!



皆さん、おはようございます!


オハオハニュースの時間です。


今朝は速報が入っています…


えぇっと…


世界的に有名な芸術家の淡雪 涼一さん 83才が昨夜未明、梅木街にある自宅兼アトリエから何者かに、連れ去られたとの速報です。


なっちーなが、淡雪氏のご自宅へに向かっています。


呼んでみましょう、なっちーな!なっちーなっ!



はい、(イカル)さん、なっちーなです♪


私は今、芸術家・淡雪 涼一さんのアトリエの前にいます。先程、淡雪さんの姪子さん の典子さんがインタビ ューに応じて下さいましたので、そのVTRをどうぞ …



TV画面に、虹助がアトリエで見た美人秘書が映った。



「伯父さ~ん!あ~うっううっ… 」



「典子さん、淡雪さんは、どのように連れ去られたのですか?」



なっちーなが、淡雪を呼びながら泣き崩れる典子にマイクを向けた。



「叔父さんがお風呂を上がって… ベッドに横になってから、少し今後の活動について話しをしていたんですけど… 覆面をした男が数人… 家に入って来て… うっうっ … 私は頭を固い物で殴られまして… 気がついたら救急隊員の方が… 私が気を失っている間に … 叔父さ~ん… あぁ~ うっうっうっ…」



美人秘書の典子は、TVの中で泣き崩れ説明をした。



3人はTVの前で固まっていた …



「嘘だ … 典子 …」



淡雪は、目を丸くしてTV画面を見つめたままポツリと呟いた。



「そうよ、違うわ… 」



LUZIAもキョトンとした顔をしTV画面から目を離さずに言った。



ゴクッ …



虹助は生唾を飲み込み、



「取り敢えず… 警察に電話した方が …」



青覚めた顔をして淡雪とLUZIAを見つめ呟いた。



「そう… ですよね、このままだと、もっと可笑しな事になってしまいますから… 私、電話をします… 」



キィー キィーキィー



淡雪は車椅子を動かし、スマホを取りに虹助の部屋へ向った。


テーブルの上に置いたスマホを手に取ると110番に電話を掛けた。



「はい、こちら110番です、事件ですか? 事故ですか?」



「あ、はい… 事件…?になっているようなのですが… 私、淡雪 涼一と申します… 今、 TVを見まして電話致しました。 あの… 私、 誘拐や拉致等はされておりませんが … 姪は 何か勘違いをしておりますようでして …」



淡雪は居場所は告げず、今は典子と連絡を取りたくは無いので、後で弁護士を通じて話しをすると話した。



「では、ご本人の意思で家を出たという事ですね?」



110番対応者は電話口の向こうで呆れたように淡雪に聞いた。


淡雪はその言い方にグッと怒りが込み上げたが、



「ですから、後程、弁護士を通して連絡致します…」



何とか冷静に話し通話終了のボタンを押した。



「全く … 何ですかあの対応は…嫌な言い方をするものですね …」



言葉を漏らしリビングへと戻った。


リビングへ戻ると虹助とLUZIAが心配そうな顔をして淡雪を目で追った。



「ふぉふぉふぉっ、全く、典子といい警察といい困ったものですよ、今、警察に連絡しましたから、これで取り敢えずは大丈夫でしょう…」



淡雪はニッコリ微笑んだ。



「お爺さん… LUZIA …」



LUZIAはしょんぼり俯いた。



「何故ですか? 何故LUZIAさんが… そんな悲しそうな顔をしないで下さい…私はLUZIAさんのお陰で助かったのですよ、典子は何を考えているのか… 本当に申し訳ありません…」



淡雪はLUZIAと虹助に話した。



虹助は重たい空気を何とかしようと、



「そや、簡単に朝飯作りましょ!」



ソファーから立ち上がり、キッチンへ向かった。



虹助のレッツ・クッキングやで~!


今朝は簡単に… そやな、フレンチ・トーストにしましょか?


ほな、行くで …



ボールに卵割る、そやな2~3個やろな、牛乳入れる、あんまりジャブジャブさせたらアカンでプールやないからな、で、砂糖入れる、分量聞かれても困るねんな~全部適量やっ!そんで、ボ ールん中を泡立て器でグルグル混ぜるんや 、小さいスプーンでちょっと(スク)って舐めて味見してな!俺は少し甘めが好きやねん!そんで食パンな1枚を4当分にすんねん、十字に切るんやで、後で切る人もおるけど、俺は結構パンの中迄、浸ってるのがいいからな、切った方が早う中まで染みるやろ?今日は食パン3枚やな、そんで、ボールん中に入れて浸して… 後はなフライパンにバター溶かして浸した食パン焼くんや 、焦げやすいからガスの火は弱めやで!んで、好みの焼き加減で出来上がりや!


今日は皿に置いたフレンチ・トーストの横にサラダも添えよか、サラダ言っても千切 った野菜をチョコンと置くだけやで、野菜は一旦洗えよ、そんで出来上がりや!



虹助は出来上がったフレンチ・トーストと牛乳をコップに入れ、リビングのローテーブルへ運んだ。



「頂きます」


「いただきます!」



淡雪は終始笑顔で、虹助の作った朝食を食べていた。




虹助も満足そうに微笑み、LUZIAは2人をチラ見しながら、我慢出来ずに歌わずにはいられなくなり、ポストマン・パックを楽しそうに歌った。




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