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生きている証明

 放課後 私立翡翠高等学園 三階渡り廊下


「と言う事だ。で、どうするんだ未來?」

 僕は間髪入れずに答える。

「行く! 紅緋がそこにいるんだろ? たとえ何が待っていようと行く!」

「そう言うと思った」

 和哉はくすくす笑いながら僕の背中をバシッと叩く。


「行ってこい!」

「うん!」

 僕は和哉に貰った金色の棍を返して音楽室に向かって走った。


 夕陽の真っ赤な光が窓から差し込み窓の無い所の真っ黒な影とのコントラストが走っている僕を不安にさせる。


 紅緋は大丈夫なんだろうか?


 怪我なんかしてないだろうか?


 もし大丈夫なら何故僕たちの前に姿を見せてくれないのだろうか?


 僕はそんな不安を振り切るように音楽室の扉を開けた。


「待っていましたよ。未來くん」

 正面に五線譜の書かれた大きな黒板が、その横にグランドピアノが置かれていて、部屋の後ろには太鼓や鉄琴などの大型楽器が整頓して並べられている。そんな音楽室の中央で笑顔を見せてジョーカーは僕を出迎えてくれた。

「紅緋を助けてくれたって本当なんですか!」

 僕は敵であるはずのジョーカーに不躾に尋ねる。そんな僕の問いに笑顔を崩すことなく、いや、まえにも増して優しい笑顔で答えた。

「そうですね。あの時……」




 五日前朝 私立翡翠高等学園 屋上


 ジョーカーは屋上の貯水タンクの裏から漆黒と未來たちの会話を聞いていた。


『紅緋の心はそこの人間界の少年に惹かれつつある。このまま放っておくと取り返しのつかない事になってしまうだろう。だから私は三界相互不可侵のルールに則って紅緋をジャッジメントする』

『おまえは馬鹿か? 紅緋が未來のこと好きなだけだろ? 普通じゃねえか! それともジャッジメントさんはこの二人が付き合うと世の中が崩壊すると真剣に思ってるのかなぁ?』

『うるさい! ルールはルールだ! 誰にも曲げることは出来ない!』


「漆黒の思いは固いようですね…………」

 貯水タンクに寄りかかり腕を組んで空を見上げ溜息をつく。


『ルール、ルールって言うことはそれだけかよ! そんなにルールが大事か? それにそのルールが間違っていたらどうするだ?』

『もういい! 生まれ持ってルールから外された者の苦しみなどお前に分かる訳もあるまい!』


「少し良くない展開になってきましたね」

 ジョーカーは今まで寄りかけていた体を起こし右手の人差し指で空中に円を描いた。


(ミラー)


『紅緋、その鏡に映しだされた姿が今の本当のあなたの姿よ』


「合わせ(オポジットミラーズ)


 ジョーカーの声に合わせて、漆黒の出した鏡の対面に寸分違わない鏡が現れ、漆黒の鏡の紅緋の姿をジョーカーの鏡が吸い取る。


審判(ジャッジメント)


「イリュージョン」


 漆黒の鏡が壊れる瞬間にジョーカーは右手を開き肩の高さから下へとその手を下ろす。その動きに合わせてジョーカーの鏡は上部から消えてく。

 そして全部消えた時点で今度は自分の横を見て、下げた手を上げる。ジョーカーの鏡がその場に下部から出現した。

「やれやれ、これからが大変ですね」

 紅緋が封じらている鏡を抱えてジョーカーはその場を離れた。

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