白虎
茜は大きな声で月白に命じた。
「い、いや、それでは茜の生命の力が……」
月白が茜の命に抗う。
「私のことはいい! それよりも目の前で大切な人たちが苦しみ、傷ついていくのを見るのはもう嫌なの!」
「そうか、そうだったな。分かった。頼む」
ゆっくりと月白は茜の方を向いて優しく哀しく微笑む。その笑みに茜は満面の笑顔で答えた。
「封印せし我が名、神凪茜の名において我が生の力と引き換えに、今、封印を解いて真の姿を現せ白虎よ!」
混乱を招いている屋上に透き通るような澄んだ茜の声が一瞬の静寂を生み出す。
和哉は痛みに耐え、未來を抱きしめながら茜の言葉に驚愕した。
「白虎だって……!」
ドームの外にいる月白は十数倍に大きくなり、全身を青白い炎のようなもので包まれている。そして凛とした顔つきは紛れもなく神獣のものだ。
「少年たち、待たせてすまなかったな」
そう言いながら造作もなくエナジーウォールで作り出されたドームを壊しながら中に入ってくる。
「和哉、よく未來を助けてくれた。あとは私が引き受けるから君は傷の手当てをしなさい」
「……分かった」
和哉は抱いていた未來の手を緩め立ち上がろうとしたが、身体に受けた傷のせいでよろけて膝をついてしまった。そんな和哉を浅葱が慌てて助け起こし神凪生徒会長のところに連れてくる。
和哉が助け出されたのを見届けてから、白虎は未來を自分の青白い炎で包み込んだ。青白い炎は未來の周りに立ち込めていた黒い霧を消し去り、白虎は未來に優しく語りかける。
「未來、目を覚ますんだ。まだ諦めるのは早い。紅緋は生きている」




