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呼び出し

 朝礼前 私立翡翠高等学園 職員室


「新君、先生は別に駄目だと言っている訳ではないんだよ」

「……はい」

 ジョーカーが襲ってきた翌日、僕は紅緋の宿る指輪の件で加藤先生に職員室に呼び出されていた。


 翡翠学園の教室は例外無く外窓が大きく自然光が差し込みやすく作られている。また、壁は白色と白緑色を使って屋外のような開放感を醸し出している。

 職員室も同じ作りで朝の光が窓から入って来て清々しさを醸し出していたが、多くの先生たちはそんなことを気にも止めず朝礼の支度で忙しそうに動き回っていた。

 そんな光景が目に映る中、僕は担任の加藤先生の前に立っている。


「先生、数日前から気になっていたんだが」

「はい」

「その指輪の色は学校にはめてくるには派手すぎるとは思わないか?」

「そ、それは……はい」

「それならば学校にいる時くらいは外してくれないか? 私が預かっておこう」

 加藤先生は爽やかに笑いながら手を出す。

「すみません。それは出来ません!」

「そうか……まあ校則違反では無いのだからいいんだが、あまり目立たないようにしなさい」

「はい。分かりました。では、失礼します」

 そう言って僕は職員室を後にした。


「加藤先生、新君は大人しくて良い子ですし、あれくらいのお洒落は宜しいんじゃないですか?」

 加藤先生に年配の女性の先生が優しく話しかける。加藤先生はにこやかに笑った。

「はい。そうですね。御助言ありがとうございます」

 そう言いながら右手でシガレットケースからタバコを取り出し左手でライターを手繰り寄せる。そしてタバコに火をつけて口元に運んだ。


「うるせぇんだよ。クソババアが……」

 誰にも聞こえない小声で呟いた。その声に呼応して何処からか加藤先生の耳にだけ聞こえる声がする。

「早く喰いたい……」

「分かっている。そうあせるな!」

 加藤先生の口から吐き出された煙が朝の清々しい空気を汚していた。




 朝礼前 私立翡翠高等学園 一年一組


「それで、新君は何で先生に呼ばれていたのかな?」

 クラス委員長の東雲楓は僕の顔を覗き込むように聞いてくる。

「えーと、それは……」

「なんでもいいだろ!」

 僕が答えに困っていると隣から和哉が助けてくれた。

「楓! お前は余計なことを詮索し過ぎだ!」

「えーっ! だって、クラス委員長なんだからみんなの事をしっかり把握しておかないといけないでしょう?」

 楓は和哉の言葉に少し膨れっ面になりながら反論する。

「まあ、お前の立場も分からないではないが」

「でしょう! だ・か・ら、新君! お姉さんが聞いてあげるから言ってみなさい」

 楓は興味津々の様子で一段と僕に顔を近づいてくる。そんな楓に和哉はうんざりした顔をしながら言った。

「楓、調子に乗りすぎだ!」

 和哉がそう言った瞬間、時間の流れが変わった。

「和哉!」

「ああ、妖魔だな」

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