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覚醒

 夕暮れ 学園からの帰り道


「紅緋、今日は指輪に戻らないの?」


 僕の横に並んで歩いている紅緋に聞く。

「うーん……と、なんだろう……今は未來と一緒に歩きたい気分なんだ」

「そっか、それじゃあ一緒に帰ろう」

「うん」


 嬉しそうに笑った紅緋の顔は夕陽の柔らかな光に包まれ輝いて見える。

「紅緋、本当に肘は大丈夫なの?」

「えへへっ、ほんとは少し痛い」

 照れ笑いしながら紅緋は左肘を右手で摩る。

「痛い時には痛いって言えばいいんだよ。僕だって紅緋の痛みの半分くらいは背負ってあげることはできるから」

「うん」

 紅緋は頬を赤らめながら僕の言葉に返事を返す。


 時間の流れが遅いせいかこのまま永遠に夕陽が沈まないんじゃないかと思えるような時間を、紅緋とこうして一緒に話しながら歩けることが僕にとっても嬉しい時間であった。


「でも、未來の手から出たあの光はなんだったんだろう?」

 紅緋は不思議そうに小首を傾げる。

「僕にも分からない。神凪生徒会長が言っていた僕の心の内側にあるものというのと関係しているのかな」

「あの生徒会長、きっと何かを知っているんだよ! 彼女は絶対に気をつけた方がいいと思う」

「紅緋は神凪生徒会長には厳しいなあ」

「そ、そんなこともないけど……」

「でも、確かにジョーカーが出現する前に何かを言おうとしてたよね」

 神凪生徒会長のことになると途端に機嫌の悪くなる紅緋に苦笑する。


「そうだろ。でもね、未來の心の中に何がいようとあたしにとって未來は未來。何も変わりはしないから」

「ありがとう」

 耳まで真っ赤にして恥じらいながら話す紅緋を見ていると僕まで恥ずかしくなってきた。


 昼間の暑い空気が夕方になって程よく冷めて心地良い風となって頬を撫でる。僕たちは少し無言のまま並んで歩いた。会話も無いのに紅緋がそばに居るだけで心が満たされる感じがするのは何故だろうか?


 不思議な感じだ。


「これで僕も少しは紅緋の手助け出来るよね! この手から出る光で」

 僕は左手に力を込める。しかし、左手には小さな光すら発せられることは無かった。

「あれ?」

 僕の口から拍子抜けした声が漏れた。慌てて僕は左手握ったり開いたり振ったりしながら気を込めてみる。でも、やっぱり何の変化も無い。


「どうしたんだろう?」

 そんな僕を見て紅緋はくすくす笑った。

「未來はまだ能力が覚醒していないんだよ」

「でも、さっきはちゃんと光が出たのに」

 納得いかなさそうに自分の左手を見ている僕によりいっそう笑って言った。

「ちょうど今変わろうとしているんだよ。今の未來から新しい未來に」

「新しい僕?」

「うん。そうだな〜……妖精王のアリシア様みたいな天使の様になるのか……、妖の王みたいな悪魔の様になるのか」

 紅緋は可愛い顔を崩し、目を指で吊り上げ口を大きく開き歯を剥き出しにして僕に迫ってくる。


「べ、紅緋! 驚かせないでよ!」

「あはは…………冗談だよ」

 そう笑って紅緋は走り出した。

「ひどいな! 紅緋、待ってよ!」

「未來、あたしに追い付いてみて」

 沈みかける太陽を背に軽やかに僕の前を大きな声で笑いながら走って逃げる紅緋。


 僕は笑顔で走る紅緋の姿が好きだ。


 僕はこの笑顔を守る為にもっと強くならなければいけないんだと思う。たとえ、僕が僕じゃない何かに変わったとしても…………。

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