勇者召喚の日ー5 ギャングからの馬奪取と住宅発見。
将は延々と続く荒野を歩いていた。
巨大なクレーター状になった大地を進む。
かれこれ歩き始めて一時間、歩いても歩いてもその窪みは続いている。
将は自分の魔法の威力に舌を巻きながらも後悔していた。
はあ…疲れた…飛行魔法とか便利なもの無いかね…
そうボヤくがそんな魔法は該当しないらしく空間ウィンドウは開かない。
遂に諦めかけたその時、馬のかける音が聞こえた。
それも一匹では無い。十匹はいるだろう。
それはこちらに向かってきた。
来たのだが…手には銃…そして…こちらに照準定めてる!
将は取り敢えず来た方に引き返す様に走り出すが直ぐに足がもつれてこけてしまった。
これも運動音痴LEVEL99が織りなす技である。
くっそどうする…仕方ない…人は殺したくなかったが…
魔法を発動する!
するとそれに呼応するかの様に空間ウィンドウが虚空から出現した。
そこには先程と同じ名前の魔法が書かれている。
馬は是非頂きたい。
上の人間だけを殺傷できるものは無いか?
そう自分で自分に問うと空間ウィンドウが答えた。
自動的に魔法が選択される。
「これでも喰らえ!『雷撃』」
将がそう叫ぶと天はそれに答えて雷鳴を轟かした。
そしてその雷撃は見事ギャング団の内一人を撃ち殺す事に成功した。
それを見て狼狽した他のメンバーは「退却!たいきゃーく!」と叫びながら元来た道に帰ってしまった。
都合良く馬を入手した将はその馬に跨ると駆け出した。
が…落馬した。
運動音痴LEVEL99はまともに乗馬もでき無い様である。
仕方ない、歩くか…
そう諦め将はとぼとぼ歩き出すとその行く手を阻む様に空間ウィンドウが出現した。
ーー動物洗脳魔法を発動しますか?ー
動物洗脳魔法!
それがあれば俺は何とかして行けるんじゃ無いか⁉︎
発動する!
そう迷わずに頭の中で選択すると馬は急に苦しみだした。
そしてポテッと倒れたかと思うと直ぐに立ち上がった。
その姿は身震い一つしておらず呼吸してるのかと疑問に思う程だ。
将はそれに再び跨る。
「走ったら落ちるから歩け」
そう将がダサい命令をすると馬はゆっくりと歩出した。
馬を手に入れ歩き出してから一時間後。
ようやくクレーターの淵にたどり着いた。
しかし、一難去ってまた一難。
断崖絶壁である。
高さは2メートル程だが、運動音痴LEVEL99に登れるわけもなく…
うーん、この崖をスロープ状に破壊したら楽に登れるんじゃないか?
前方に発射できるキャノン系の魔法はっと…
そう将が考えると自動で検出された魔法が空間ウィンドウに表示される。
ーー『融解の炎弾』を発動しますか?ー
「勿論だ」
そう将が頷くと将の手前に紅い魔法陣が浮かび上がった。
そこから炎々とした黒い焔が出現したと思うとそれは地面を斜めに消し去り空、何処かへと消えていった。
そしてまた無駄に最上位魔法を発動した将はふうと息を吐くとふと自分の右斜め上にMPゲージらしきものが出ている事に気付いた。
なんだこれ…?
魔法使ったしMPのゲージかな?
でも一切減って無い…うーむ。
将はこのとき知らなかったが最上位魔法は最低でも50000MPが必要だ。
それでも減ってる様子がないのはカンスト限界突破故だろう。
ま、考えていても仕方がない。もう日が暮れはじめている。
「行くぞ我が馬」
そういい、また馬に跨った。
傾く陽光に向かい勇者になれなかった男と強奪された馬は歩いて行った。
そしてそれからまた一時間。
陽の一片の残光も残らない頃ようやく、集落を発見した。