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勇者になれなかった俺は第三勢力として魔王勇者狩りを始めました  作者: 終焉の焔
勇者になれなかった男の初めての異世界生活
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勇者召喚の日ー1 勇者候補召喚されたし。

なんかヒロインが主人公好きっぽい感じになっていますが…

異世界転生後に登場するのはだいぶ後の方です。

今日は待ちに待った修学旅行だ!


ある男はそうはしゃぎ地球世界最後の日を迎えた。


グラウンドに一番乗りで到着したその男は1人爛々と躍りながらいや、踊りながら時を待つ。


適当に頭に浮かんだダンス的なものを踊る。―傍からではただの民族的舞踊にしかみえないが―手を自然体に伸ばしそこからお世辞にも軽やかとは言い難く飛翔した。

そして手を広げると決まったという感じにドヤ顔して見せた。


傍から見れば下手極まりないダンスをドヤ顔でやっているわけで正直気持ちが悪い。


その男の名前は龍王谷(りゅうおうだに) (しょう)

見た目普通。勉学中の上。特技特になし。

以上普通の人間だ。


しかし、その者に僅かながら賞賛の拍手が送られた。


それにやばっと反応し将は音源の方へ振り向いた。


そこにいたのは1人の可憐なる少女。

整った顔立ちに大和撫子の特権である長い黒髪をなびかせているその少女はこの世の物とは思えない程の美を持っていた。制服を折り目正しく着用し、まさにお嬢様といった感じの彼女は現に成績優秀なおかつ性格も明るく誰にでも優しいという事で入学当初から断トツの人気を誇っていた事は言うまでもない。


名を緋咲(ひざき) 弥生(やよい)と言う。


そんな天上最上位の彼女が地上底辺…いや地下最底辺の将に何故賞賛が送られたのか…その理由を知るものは世界でただ一人弥生しかいない。


「おはよう。龍王谷くん。朝からダンス?それより今日は早いね。そんなに楽しみだったの?」

「え、うん。まあ」


そう将はダンスを見られた事の羞恥と朝から弥生と話せたという興奮で顔が焔にそまった。よくわからん混沌とした感情のなか曖昧に返事をした将は我に返り話をそらさんと試みる。


「緋咲さんこそ早いね」


そう話を明らかに反らしてみせた将に弥生は何も触れずに答える。


「私、子供の時からこうゆう日の前日って眠れないんだ」


そう弥生は天使のごとく微笑んでみせる。

関係はないがさっきから思っていたので言わせてもらおう非常にビキニアーマーが似合いそうな子だ。


「そうなんだ。緋咲さんも結構子供らしいところあるんだね」

「うん、まあね。これはどうにも」


弥生はそういって笑ってみせる。ここに他の男子がいればおそらく将は羨望と憎しみが具現化した鈍器で殴り殺されていたであろう。この場合の鈍器は金属バットであり羨望と憎しみ製の物ではない。


「やーよい。あらあらこれはお熱い事で」


そう二人しかいないグラウンドに将にも聞き覚えのある声が響いた。

それは幼い頃から馴染んだものであり、いつまでも変わらないのが驚くべきである。

その声の主は弥生達のすぐ側にいた。


少し高めの身長、そして綺麗に整った顔立ちは細く、美少年といった印象を受けるかも知れないが歴とした女だ。ショートボブに切り揃えた黒髪はロング以外の髪型では最上位ではないかと思える程に似合っている。弥生に比べては少し小さい胸はあどけないがそれ以外は何処をとっても並ではなく可愛さでは弥生に劣るが綺麗さなら弥生をも凌ぐだろう。

名を天川(あまかわ) 歌織(かおり)という。


個人的な見解だがこちらは騎士の装束が似合いそうだ。

因みに将の幼馴染みであり弥生の親友である。


「もう…馬鹿…何言ってんの」


顔を真っ赤にして抗議する弥生を歌織ははいはいと受け流す。

それをポカンと将は何時(なんどき)の主人公と同じくその真意に気付かなかった。絶賛主人公性鈍感症感染中であり、はやく専門の医療機関に行くことがお勧めされる。そんな医療機関はないが。


そんな調子で暇な時間を談笑で潰した。





「出発しまーす」


そう待ち望んだ時が来た。


将の席は何故か弥生、歌織といった女子に挟まれているというので何か巨大な陰謀を感じる。もちろん将なんかにそんなもの動かせるわけが無い。

因みに修学旅行の企画運営は主に修学旅行実行委員なるものが行っている。

そして弥生はその委員長で歌織は副委員長だ。いやはや権力とは恐ろしいものとつくづく思わせられる。しかし、将に男子からの疎まれと憎しみの心が向けられるのは必至であり。またしても将には命の危機が迫る。今度は疎まれが具現化するのだろうか。


そんな感じでもバスはいよいよ速度を上げた。


将達が再びの談笑で盛り上がった後バスは高速道路に足を進めていた。

そして窓から見える風景は長閑な田園となっている。


「田舎だね…」


将はその様に呟いた。


「一度ぐらい住んでみたいね」

「でも不便じゃない?小学校少ないよ」


弥生の意見に歌織は頭の後ろで腕組みしながら答えた。


「なななな、なんで!小学校が関係あるのよ!」

「子供いらないの?」


狼狽する弥生を愉しむように歌織は決定的な一言を突き付けた。


「そういう事は言ってない!一人で住むからいいもん」

「でも、緋咲さん程の可愛い子が勿体無いと思うよ」

「なななな…何を…言ってるの…全然だ…よ」

「はあ、天然でこんな事できるからいいわね…妬けるわ…」


狼狽する弥生の隣でそう歌織は一人でごちる。


ーその時だった。

そのバスに乗っていた生徒全員の足元に謎の青白い魔法陣が現れた。魔法陣はグリモワールに出てくるものと同じ魔法陣だ。あまり謎ではなくなった気がするがそれはそれ。超常的現象に慄き生徒たちはただ恐怖を口にすることしかできない。教師はというと非科学的極まりない事態に口をあんぐりと開けてただことを見ている。

そしていよいよその輝きは頂点に達し前が光で見えなかった頃生徒達の姿は忽然と消えた。

いまから始まる苦難の連続を乗り越え笑うことのできる生徒はいるのか。異世界への扉が開かれる今、少年少女たちの運命の歯車は今大きく重々しい音を立てた。









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