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Epilogue*何も知らないまま
私は〝ボク〟を殺した。
多くの人は、お前は何を言っているんだと思っていることだろう。しかしこれは事実なのだ。私は人を殺めた。
心臓から血を流して動かなくなった〝ボク〟を横目に、私はおもむろに持っていた鋏で自らの髪を切った。〝ボク〟とお揃いの―しかし決定的に違った―膝まであったツインテールは、胸ほどまでの長さに乱雑に切られ、私と〝ボク〟は〝他人〟になった。
今まで他人を騙して生きてきた。それは誰にも知られてはいけない、私と〝ボク〟の秘密だったのに。
〝ボク〟を殺した後、私の胸を渦巻く感情は、悲しみでも嘆きでも怒りでもなかった。
「……これで、〝私〟は〝ボク〟じゃなくなったんだね。」
―――喜び、だった。
鋏がカシャンと音を立てて地面に落ちる。構わずに〝ボク〟へ近づく。
もう二度と、私は〝ボク〟になれなくなった。私が〝ボク〟を殺したから。
それでも私は、
「〝××〟を愛していたんだ」
そうして私は〝ボク〟の心臓に刺さっていたままだったナイフを抜き、そのまま自分の心臓を。
刺した。