第九話 ミョウガ食いすぎの斬九郎、その恋の行方!
公園のベンチに頭を抱えた男がいた。
髪を掻きむしりながら、言葉にならない繰り言を口の中で転がしていたかと思うと、おもむろに懐から紙包みを取り出した。
中には小さな酢漬けのミョウガ。
彼はそれを指に噛みつかんばかりの勢いで平らげると、天を仰いで大きく息を吐いた。
「……おちついた?」
シンイチが声を掛けると、男はまたうなだれ微かに首を振った。
「ダメだ……ちょっとでも油断すると、俺の失われた記憶……人斬りだった前世の記憶が……フラッシュバックしやがるんだ。もう、こんなにも……ミョウガを食ってるってのに……あの血塗られた記憶だけは……!」
そう言うと、また懐から取り出したミョウガを囓りだした。
「あのさ、斬九郎」
「なんだ」
「斬九郎って、前世は人斬りだったの?」
「そうだ……。今でも夢に見る……恨めしそうに俺を見る亡者ども……俺がかつて斬り捨てた奴らが……腕を返せ、首を返せ、足を返せと……俺を!」
「せんせー。ザンクローせんせー! 今日は何時まで公園であそんでいいのー?」
「三時までだよ。帰るときになったら呼ぶから、絶対遠くに行っちゃダメだぞ~?」
……。
「えーと、斬九郎?」
「俺は記憶に抗ったさ……だがダメだ……こびりついて離れないんだ、血の臭いが……何度ぬぐってもぬぐっても……俺を苛み……そして!」
「せんせー、タクミくんが私のおもちゃ取ったー!」「とってねーし、もともと俺んだし!」
「こらこら仲良く遊ばないとダメじゃないか。一緒に遊んだらどうだ? 二人で遊んだ方がきっと楽しいぞ!」
……。
「どこまで話したっけ。あ、血の匂いがこびりついてるとこか。そう……だから俺はミョウガを食うようになった……ミョウガは俺から記憶を奪ってくれる……ミョウガを食っている間だけ、俺は俺でいられるんだ……だが!」
「せんせー! こんなおもしろい石見つけたー!」
「お、すごいぞ! もっと他にもないか探してごらん? ほらほら、みんなで競争だGOGOGO~~! ……だが俺が俺でいられる時間は短い。いずれ人斬りの記憶は俺の人格を食い尽くしてしまうだろう……。俺という人間は……まるで刃の上に立っているようなものさ……で、それがどうかしたのか?」
……。
「やってられるかーーーーーー!」
「え、何シンイチこわい。急に大声だしてこわい」
「僕だいぶ我慢強い方だと思うけど限界だよ。何が悲しくてそんな妄想設定に付き合わなきゃいけないんだよ!」
「いや設定じゃないしマジマジマジ、これ本当マジマジマジマジ」
「図星すぎて早口になっちゃってんじゃねーか!」
「え、どこが嘘だと思うの逆に。前世人斬りはいいよね?」
「そこはまあいいよ。百歩譲ってね」
「人斬りの記憶を封じるためにミョウガ食ってるとこは?」
「アウトだよ」
「アウトなの?」
「意味わかんないんだよ。嘘が最初のコーナー曲がりきれずにクラッシュしてるんだよ。なんで記憶封じるためにミョウガ食ってんだよ!」
「え、だってミョウガには物忘れをひどくさせる効果があるって……」
「迷信じゃねーか! そんなので封じれるトラウマなんかせいぜい『出かけるときにした野糞を、帰るときに踏んだ思い出』ぐらいだわ!」
「ザンクローせんせ~……足すりむいた~!」
「あ、どれどれ? うん、ちょっとすりむいただけだな。絆創膏あげるから、ちゃんと傷口キレイキレイにしてから貼るんだよ?」
斬九郎は子どもに絆創膏を渡して、よしよしと頭を撫でてやった。
「さっきから気になってたんだけど、なんで斬九郎に子どもが寄ってくるの?」
「え、だって俺、ひまわり組の保育士だし」
斬九郎は上着のボタンを外し、下に着たエプロンを見せた。
『ひまわり組 ざんくろうせんせい』とプリントされたエプロンには、熊のアップリケが縫い付けられていた。
「……しろ」
「シンイチ?」
「人斬り設定に対して努力しろーーーーーー!」
「え、だめ? 保育士だめ?」
「前世が人斬りなら、もっと、こう……あるだろ! 影のある……危険さを匂わすような職業……あるだろ、あるんだよ! なんで僕が頭ひねらなきゃいけないんだよ!」
「シンイチ目がこわい。人斬りの目みたい」
「じゃあ学んでよ! 今日の僕から少しでも何か持って帰ってよ!」
おもむろにシンイチは立ち上がった。
「あれ、シンイチどこ行くの」
「帰る。呼ばれたから来たけど、こんな茶番なら付き合ってらんないよ」
「えっ、いや、ちょっと、待って、待ってくれ。今日は本当は頼み事があって」
「――あら、真柴先生。そちらの子はお知り合いですか?」
「あっ、う……梅子先生!」
斬九郎は立ち上がり直立不動の姿勢をとった。彼の前に、同じくエプロンをつけた女性が立っていた。
「シンイチくんは知り合いで、たまたまここで会ったんでちょっと世間話をアハハハ!」
「そうですか。私は向こうでこの子たちを遊ばせていますので、何かあったら声をかけてください。それでは――」
女は軽く会釈すると、両鬢を掻き上げながら踵を返した。立ち姿は見とれるほど美しく、綿雪めいた肌は、その周りだけぼんやり光っていると錯覚するほど白かった。
「……キレイな人だけど、あの人も同じ保育士?」
「そうだ。露木梅子先生。蟹座の25歳。ちゅーりっぷ組の担当で本の読み聞かせが得意。子どもたちからの人気も高い上に、身長169cm体重49kg スリーサイズはおそらく上から82-58-83で股下は目測で81cm。保育園から徒歩20分のところにあるレジデンスわかばの402号室に一人で暮らしている。自炊派で、洗濯物は下着を内側、タオルを外側にして見えないように干す。テレビはあまり見ないが、TSUTOYAの袋を持って帰ってくることが多いから映画が好きなのではと推測する――ん、シンイチ、表情が暗いけどお腹でも痛い?」
「警察の無力さを噛みしめてるだけだよ」
「実は頼み事ってのは、あの梅子先生に関係してて……その……」
斬九郎はおもむろにシンイチに向かって頭を下げた。
「頼む! シンイチ、梅子先生の連絡先を聞き出してくれ!」
「帰るよ」
「わー待ってくれシンイチ! なんでなんで? ダメ? なんで?」
「なんでって聞けるの凄いよ。誰だってストーカーの片棒担ぎたくないだろ」
「シンイチ誤解してるストーカーじゃない全然ストーカーじゃないよ。梅子先生のことを考えてる間は記憶のフラッシュバックが起こらないんだよ、多分あの人が俺の記憶を封じる鍵なんだ。君は困ってる人が助けてくれって言ってるのに、断るのかい?」
「人を刺したいから包丁買ってきてくれ、って言われたら断るだろ」
「やだな刺さないよ~。梅子先生が俺を受け入れてくれたら刺さないって~!」
「だから闇が深すぎるんだよ!」
「頼むよ、自分でも二千通り以上試したけど、全部梅子先生の番号じゃなかったんだよ」
「怖えーよ! 前世なんか目じゃないぐらい今世がヤバいんだよ!」
追いすがる斬九郎の手を振りほどき、シンイチが公園を出ようとした――そのとき!
「――お困りのようだなシン坊!」
水飲み場から銀色の水柱が上がったかと思うと、螺旋を描きながらシンイチの前に着地し、人の形をとった。
「き、君は、シンイチの知り合いかい……?」
「俺っちはダザイ、流体金属のダザイ。シン坊の家族さ! ――……」
*
「う、うっ……九郎っち、あんたそんなに辛い思いをしてたんだな……!」
斬九郎から事の顛末を聞いたダザイが目を潤ませた。
「よおしわかった! いっちょ俺っちがあんたに力を貸してやるよ!」
「え……本当か? ありがとう!」
「記憶に苦しめられているって意味じゃ他人とは思えねえしな、そうだろシン坊!」
「話しかけないで。いま警察への言い訳考えてるとこだから」
「……しかし協力してくれるのは嬉しいが、どうやって連絡先を聞きだそう?」
「やっぱりかっこいいとこ見せるのがいいんじゃねえか? 俺っちがチンピラに化けて梅子先生に絡むからよ、そこを九郎っちがバシッと助けて『これからも俺が助けてやるからメアド教えて』って言えば一発よ!」
「ダザイ、いくら恋は盲目っていってもそんな計画じゃさすがの斬九郎も……」
「それだ、それしかない!」
「恋は視力だけじゃなく判断力も奪うの?」
「しかし計画は完璧だとしても、ダザイくんチンピラなんかに化けられるのかい?」
「俺っちをナメんない! なんでもござれの流体金属さ、例えば――ほれっ!」
掛け声とともにダザイの身体が変化し、目の前に梅子の滑らかな裸体が現れた。
「えっ、ちょ、ダザイ何やってんの!?」
「うおおおおお! ダザイくん、君は奇跡みたいな存在だ!」
「うるさいよ変質者! ダザイ、いいから早く元に戻れって!」
「シンイチ待ってくれ、スリーサイズの答え合わせだけさせて! 答え合わせだけ!」
「そのストーカー特有の概念怖すぎる!」
シンイチに言われ渋々ダザイは元に戻った。斬九郎はダザイの変身能力に惚れ込み、計画の実行を是非にと頼み込んだ。言っても引き下がりそうにないその様子に、シンイチも不承不承、計画に協力することにした。
「……ちょっとでも犯罪の匂いがしたら、僕はためらわず警察を呼ぶからね」
「わかってる。大丈夫さ」
シンイチと斬九郎は植え込みの影から梅子の様子をうかがった。
計画ではそろそろチンピラに化けたダザイがやってくる頃だ。
「よぉ~ネエちゃん! いいケツしてんなネエちゃん、ネエちゃんよお~!」
「――きた」
子どもを遊ばせる梅子の背後から、人影がぬうと現れた。
それは、リーゼントカットの髪型に、スカジャンとジーンズという出で立ちの、三メートルはある、全身銀色の、巨人だった。
「銀色だしでけえーーーーーー!」
叫びかけてシンイチは口を手で抑えた。
銀色の巨大チンピラはリーゼントをぶらぶら揺らしながら梅子に迫った。
「ネエちゃん子ども遊ばせてんのか~? 俺っちとも遊んでくれよお~!」
「なんなんですか、あなた」
「俺っちは見ての通りチンピラだぜ~! 我ながらうまくチンピれてんだろお? わかったら俺っちと遊んでくれよお、そんなガキの遊びじゃなくて……わかるだろ? 男と女が密室で二人きりになってやる……チェスってやつをよお~~!」
「なんなんですか、あなた」
「二回言った。そりゃ二回言うよ」シンイチは斬九郎の方を向いた。「斬九郎、準備はいい? 事態がめんどくさくなる前に、ケリをつけてよ」
「梅子先生……梅子先生……怒ってる顔も素敵だ……怒るとき腰に手を当てるんだね……少しでも自分を強く見せようとしてるのかな? かわいいよ……かわいいよ……」
「計画無視して勝手に満足するのやめてくれない?」
「梅子先生を見てると……心がざわつく……胸が熱くなるんだ……これは……やはり彼女が俺の前世の記憶に……何か関係が……?」
「ねえよ。自前の病気だよ」
シンイチはダザイに視線を戻した。計画ではダザイが「助けなんか来ねえよ」と言うのを合図に、斬九郎が登場する手はずになっている。
「よお、ネエちゃん、怖がってんのか? 俺っちが怖ええのかあ~~ん~~?」
「特に用がないなら帰ってください。人を呼ぶわよ」
「呼んだって誰も来るわきゃねえだろうが~! 助けなんざ来ねえんだよお!」
「合図だ。斬九郎、行って!」
「お、おう!」
「助けなんてよお、まだ来ねえんだよお~! もうじき来るかもしれねえけど、そんなに早くは来ねえんだぜ~~! 来たとしても一人だぜ~~!?」
「合図が下手すぎる、斬九郎早く!」
「助けなんて呼んでねえでよお、このチンピラと遊ぶピラよ! 俺っちと遊んだ方が何倍も楽しいピラぜ~~?」
「斬九郎急いで。ダザイのチンピラキャラが固まってないことがバレる前に早く!」
見つからないよう梅子の背後を迂回する斬九郎の姿を、祈るような目でシンイチは見つめた。
「さあさあ、どうするピラ! 助けが来るのを泣き叫んで待つピラか~~?」
「――うるせーな……なにやってんだテメー」
シンイチは思わず植え込みから顔を上げた。聞こえたその声は斬九郎のものではなかった。品のない、ガムを吐き捨てるようなその喋り方――。
「ま、まずい、本物のチンピラだ!」
スカジャンに身を包んだ金髪の男は、ダザイの前に立った。
「人が気持ちよく公園で寝てるときによお、うるっせえんだよテメーはよお! なんだでけえ図体しやがってクソが!」
「ジャンジャジャーン! 斬九郎登場! 梅子先生もう大丈夫ですよ、俺が来ましたよ。来い、悪党! この俺が相手、だ……え?」
遊具の後ろから勢いよく飛び出してきた斬九郎が、二人のチンピラを見て固まった。
「これはまずいぞ。ダザイ、ダザイ気づいてくれ! 一旦戻ってこいダザイ!」
シンイチは立ち上がり、自分の顔を煽ぐような仕草で合図した。シンイチに気づいたダザイはかすかに頷いた。
「――なんだお前、俺っちたち二人に刃向かうつもりピラか~~!?」
「違う違う違うダザイ違ーう! これ盛り上げろって意味じゃないんだよダザイ!」
「俺っち、たち……だと? なんだテメー、勝手に俺の仲間になりやがって。さてはテメー……気の合う奴だな、ああん!? この町で初めて俺が友だちになれそうな奴じゃねえかテメーよお!」
「当たり前ピラよお、一緒にこの女とチェスするピラ~~!」
「この女……? ひゅう、なんだよ俺が昼寝してる間に、ずいぶんマブい女がいるじゃねえかよ。なあネエちゃん、こんなとこでガキ遊ばしてないでさ。俺たちと遊ばねえか?」
「……お、おい、悪党ども」
「オセロでもいいピラぜ~?」
「おい、おいってば……」
「三人だからオセロってわけにゃいかねえなあ?」
「テニスでもいいピラよ~!」
「ジャンジャジャーン! おい悪党どもいい加減にしろ、この斬九郎が相手だ!」
「さっきからゴチャゴチャるっせーんだよカスが! ぶっ飛ばされたくなかったら消えろ!」
「はいすいません消えます。殺さないで。絶対殺さないで」
チンピラの啖呵一発で斬九郎はその場に踞った。
シンイチは頭を抱えた。ここまで手に負えない事態は彼の人生で初めてだった。
「なあ、いいだろネエちゃんよお」
「やめて、さわらないで」
「そんなこと言わず、俺と意気投合しようぜえ?」
「やめろ、ウメコせんせーをいじめるな!」
「あん? なんだこのガキ、邪魔なんだよ離れろ――」
チンピラが足にしがみつく子どもを引きはがそうとした瞬間、空気の破裂するような音が響いた。チンピラの頬に、真っ赤な手形が張りついていた。
「テ……メェ、このアマ何しやがる!」
「子どもに何かあったら、私はあなたを絶対許さない」
「んだとコラァ、調子くれやがって女のくせによお!」
「せんせーをいじめるな!」「せんせーからはなれろ!」「皆、わるものをやっつけろ!」
子どもたちが次々とチンピラの足にしがみついた。
身動きの取れなくなった彼の目を梅子は正面から真っ直ぐ見据えた。
「帰りなさい。反対側のほっぺたにも、同じアザを作りたくなければね」
「ち……くしょ、テメェ、くそ、覚えてろよ! テメェにビビったわけじゃねえぞ、ただビンタされた所がだんだん痛くなってきて、ちょっと泣きそうだから帰るだけだかんな! ゼッテー覚えてろよバーカ!」
「あれっ、帰るピラ? お、覚えとくピラよ~~! あと、そこの九郎っちにメアド教えてあげてほしいピラ~~!」
子どもたちの野次を受けながら、チンピラと銀色の巨人は退散した。
後には、ふう、とため息をつく梅子と、その後ろでうずくまる斬九郎だけが残った。
*
「はあ、結局アドレス聞けなかった……」
仕事から帰る道すがら、斬九郎は大きなため息をついた。
チンピラ計画は見るも無惨な結果に終わり、斬九郎の想いは遂げられなかった。闘いもせずうずくまり続けた斬九郎に、梅子は特に何も言わなかったが、子どもたちからは白い目を向けられた。
「ああ……もう、嫌われたかな、嫌われたろうな……頭が痛いよ……あ、あれ?」
斬九郎はあちこちのポケットを探った。
「な、ない。ミョウガがない。公園で落とした? まいったな、あれがないと……くそ、頭が……割れるように……」
「――オウ、テメー。そこのテメーだよ、テメー!」
斬九郎は頭をおさえながら振り向いた。見覚えのある金髪の男が、金属バットをかついだまま睨んでいた。
「テメーあの生意気な女の仲間だな? お前に恨みはねえが、恥かかしてくれた仕返しをたっぷりさせてもらうぜ、あの女の代わりによお!」
「なんだ……お前……やめろ」
「うるせえ、恨むんならあのクソ女を恨むんだな! ――あ、あれっ」
チンピラは素っ頓狂な声をあげた。先ほどまで手に握っていたはずの金属バットが、いつの間にか斬九郎に奪われていた。
「て、テメッ、いつの間に!」
「……やめろと言っても聞かねェ輩にゃ、ちいと熱めのお灸がいるな」
斬九郎は金属バットを腰だめに構えると、抜刀するような仕草で引いた。しゅる……と衣擦れのような音を立てて、バットの柄だけが抜けた。
「は、へえ……? な、なんで、か、か、刀!? そんな、なんで!?」
チンピラは目を白黒させた。斬九郎の手に握られたバットの柄からは、濡れたような白刃が伸びていた。
「なんでェ坊主、刃物見んのは初めてか?」
言うと斬九郎は手首を翻した。チンピラの視界で白刃が踊る。「ヒッ!?」という悲鳴があがるのと、バットの柄が元の位置に戻るのは同時だった。
「帰ェんな坊主。今日のところは忘れてやる」
そう言って斬九郎はバットを投げた。チンピラは呆然とした顔でバットを拾った。試しに柄を引っ張ってみたが、うんともすんとも言わなかった。
チンピラは、片眉を剃り落とされたことにも気づかず、去って行く斬九郎の背中をしばらく見つめた。
*
「――九郎っちアドレス聞けたかなあ、なあどう思うシン坊?」
「わからないよ。……それよりさダザイ、もっかい梅子先生に変身してみてくれない? 服着てないバージョンで」
「え、なんで?」
「いいから」
「なんでなんでなんで?」
「いいからいいからいいから」