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町内のヒーローから過剰に好かれてるぜ! シンイチくん  作者: 三村
激突! 悪の秘密結社ウロボロス! 編
17/26

第五話 ゴールデンホークのリョウ&ジョニス、魔神の腕を迎え撃て!

「――君、ちょっといいかな」


 公園のベンチで腰掛けているリョウに一人の男が話しかけた。

 男の年齢は三十後半、黒いポロシャツをツータックのチノパンにきっちりと入れ、几帳面にクシの入った髪は七・三に分けられていた。

 リョウは咄嗟に腰を浮かせた。見ず知らずの男だったのもあるが、清潔感のある格好が、自分とは根本的に合わないと思った。


「あ、君、待ってくれ。少しでいいから」

「いや、本当に時間がないんで。人を待ってるんで――」

「時間は取らせないよ。きっと、たぶん――いや、君次第だけどね、リョウくん」


 リョウは立ち上がろうとしたその姿勢のまま静止した。


「驚いたかな? 名前だけじゃない、君の使う技についても調べたよ。ホーク・ウィングにホーク・アイ……それと、これは技と言えるかわからないけど致命的な盗癖があるみたいだね」

「……貴様、何者だ。なぜ僕のことを知っている」

「私はウロボロス四天王【一戈いっかのサジ】。君に声をかけたのは、頼みたいことがあってね。もしよければなんだけど――」


 男の着ていたシャツが不自然に盛り上がったかと思うと、内側から真っ二つに裂けた。

 ぼろ切れと化したシャツの中から漆黒の甲冑が顔を覗かせた。


「――ゴールデンホークのリョウ、ひとつ私と立ち合ってくれないかな」


 言ってサジが首を傾げた瞬間、リョウの視界の端で黒い何かが閃いた。

 咄嗟にベンチを飛び越すようにバク転するリョウ。宙に浮いたその瞬間、ばちん、という音と共にベンチが千々に砕けた。


「よく気づいたね。ホーク・パルスってやつかな」

「貴様、その姿――いつぞやのザリガニチンピラの仲間か!」

「ご明察。とはいえ、この姿を見ればさすがに気づくか。命令でね、少しばかりやられててほしいんだ。申し訳ないけれど」


 サジが半歩間合いを詰め、また首を傾げた。

 ――くる! リョウが迎撃の構えをとったそのとき。


「――おーいリョウ、紅ショウガ一袋しかなかったけどいい? あと俺やっぱ牛めしじゃなくてカレーにしたわ。後で肉ちょっとくれよ。俺の福神漬けやるから――って、え、何やってんのお前」


 ジョニスは定食屋のテイクアウト袋を持ったまま、睨み合う二人をぽかんと見た。

 リョウは視線をサジに据えたまま、横走りにジョニスに駆け寄った。


「ジョニス! いいところに帰ってきてくれた!」

「いや、いいところにって……お前、知らないやつ呼ぶなら先に言えよ……俺すげー変な感じになるじゃん……」

「違う違う違う、知り合いじゃない。敵だ、怪人だ! さっき麻雀のときちらっと喋ったろ? あの怪人の仲間が襲ってきたんだよ!」

「いや知らんし……仲間がいるなんてその時言ってなかったし……とりあえず俺帰るね……?」

「待って待って帰るなって。明らかに襲われてる友人おいて帰るなって」

「七味だけ渡すね……?」

「なんでメインの方をナチュラルにパクろうとしてるんだよ。違うだろ、襲われてるんだから僕と一緒に闘ってくれって話だろジョニス!」

「――君」


 サジがジョニスを指さした。


「ジョニスくんとか言ったね。ヒーロー名簿で見たことのある名前だ、君もヒーローか?」

「えっ? えっ……と、まあ、はい」

「そうか。予定外ではあるが問題ない。リョウくんと一緒に少しばかりやられててもらうよ」

「あっ! えっと、その、俺は別に……そういうんじゃなくて……」


 ジョニスは構えるサジを諸手で制した。サジは首を傾げた。


「そういうのじゃない? 君はヒーローじゃないのか?」

「いやヒー……ローっちゃ、ヒーローなんすけど」

「だったら戦ってもらう。二対一だが気にするな。私は構わない」

「いや俺、その、ほら、飯買って帰るとこだし、戦うテンションとかじゃないし……」

「戦わないのか?」

「いや~~~~……でも見殺しにしたら後で変な感じになるじゃないすか、絶対。それもちょっとな~~……」

「では戦いたまえ」

「そんな簡単なことじゃないんすよね~~……ちょっと考えさせてもらってもいい――ヒッ!?」


 ばちん、という音と共にジョニスの足下が盛大に爆ぜた。


「ジョニスくん……君、いくつ?」

「へぇっ? に、二十五、だけど」

「二十五……二十五歳にもなって、その程度のことも自分一人で決断できないのか。友人が敵に襲われ助けを求めており、その敵も二対一を承服している状況下で、これ以上何を考える必要があるのだ。君、仕事はなんだ」

「えっ、いや、仕事は、ヒッ、ヒーロー……ぉわっ!」


 また足下が爆ぜ、ジョニスは飛び上がった。


「ヒーローが仕事か。だったら今は仕事中ということだな? 君は仕事を放棄するのか? 本当にヒーローが仕事なのか? 月の平均収入はいくらだ、君!」

「しゅ、収入? いやそんなの……うぉっ! わ、わかんねーよ、お、多いトキで十五万ぐらい? ――危ねっ!」

「十五万……? それでは足りないだろう。家賃光熱費保険料年金住民税それにもろもろの食費や交際費などの雑費を引いたらいくら残る。貯金はできているのか? 将来設計はあるのか? 今付き合ってる女性は? ご両親の年齢は!?」

「そんなこと何であんたに――あだっ、あっぶねえ!」


 ジョニスがよけたその後ろで花壇が破裂した。


「質問しといて答えてる最中に攻撃するのやめろよ、卑怯だろ!」

「卑怯? なるほど、君はそうやってあらゆる責任を環境のせいにし続けてきたんだな。未知や未経験に難癖をつけて放置し、それで問題を解決した気になっているんだ、そうだろう」


 サジはジョニスに向かってずかずかと間合いを詰めた。


「私は君のような若者が大嫌いだ。人の背中を見ながらでないと歩く向きすら決められないほど臆病なくせに、一人前の口をきく君のような若者が! リョウくんを先に倒すつもりだったが気がかわった、まず君の性根を――たたき直す!」

「ひぃっ!」


 あまりの剣幕にジョニスはその場にへたりこんだ。

 しかしサジは前傾したまま動かない。


「どうした、サジとやら。得意の攻撃は出さないのか?」


 リョウがいつの間にかサジの背後に回っていた。彼はサジの後頭部から伸びる鉄線をより合わせた鞭のようなものを、力尽くで押さえ込んでいた。


「……気づいたか」

「あれだけ見せられればな。お前の攻撃の正体はその真っ黒な鎧――いや、それを鎧と思い込んでいたのが間違いだったんだ。貴様は鎧なんて初めから着ちゃいなかった。それは身体に何本も巻きつけた鞭だ! 貴様は首を振ることで、その鞭を操っていたんだ! だがこうして根元を押さえれば何もできまい!」

「いい観察力だ。しかし少し間違っている」

「うおっ!?」


 リョウの身体が宙に浮いた。その四肢に黒いものが絡みついていた。


「まず第一に、これは鞭ではない、腕だ。そして第二に、私は【一戈のサジ】――その名の示すとおり、私はこのささやかな武器をたった一本しか持っていない」


 後頭部から伸びる黒い甲殻に覆われた巨大な手が、リョウを掴んだままぐんぐん高度をあげていく。


「私に使用された怪人細胞は【タカアシガニ】――後頭部から伸びるこの腕は、無限の射程を持つ!」


 リョウを掴んだ手は思い切り振りかぶり、そのまま電柱に向かって力任せに放り投げた。

 リョウは咄嗟にホーク・ウィングを展開し急制動をとった。すんでのところで激突を免れ安堵するのも束の間「そういえば君は飛べるんだったね」サジの後頭部から巨大な人差し指だけが伸び、リョウの足首を掴んでそのまま地面へと叩きつけた。


「がっは!」

「お、おい、リョウ大丈夫……?」


 地面をのたうつリョウにジョニスが声をかけた。


「認めたくないが……奴は強い。一人では分が悪い。手を貸してくれ、ジョニス!」

「えぇ……でもなあ~~……」

「気持ちはわかるが、頼む! 俺とお前なら絶対に勝てる。思い出せ、俺たちはいつも連携してピンチをくぐり抜けてきただろ、ジョニス!」

「でも……俺まだ食ってっし……」


 リョウは顔を上げた。花壇に腰掛け牛丼を頬張るジョニスと目が合った。


「……なんで食ってんの?」

「えっ」

「え、じゃないよ。え、じゃなくてさ。なんっ、でっ! 食っ! てんっ! のーーーー!?」

「いや、なんか時間できたから」

「できてないだろ! お前親友が目の前でボコられてるのを空き時間って捉えるのかよ! それにあーーーー! お前それ僕の牛丼じゃないか、あーーーー! 食うなら自分のカレー食えよ!」

「いやでも大丈夫大丈夫、ほら紅ショウガは残したから」

「だからなんだよ。馬が生き残っても乗ってた将軍が死んでちゃ意味ないだろ! お前、僕がいつも紅ショウガ食べるために牛丼頼んでると思ってたのか!」

「違うの?」

「そんなわけないだろ、紅ショウガは副産物! ついでなの! お前イソジンでうがいするために風俗行くやつ見たことあるのかよ!」

「いや、でも食っちゃったし――」


 言いかけたジョニスを、巨大な拳が牛丼ごと打ち抜いた。


「口を開けば言い訳ばかり……本当に見ててイライラする若者だ。牛丼が気になって戦えないというのなら、どうだ、食べる必要をなくしてやったぞ。さあどうする。戦わねばもう一撃お見舞いするぞ!」

「じょ、ジョニス! 大丈夫かジョニス!」


 倒れたジョニスにリョウが駆け寄った。


「ジョニス、しっかりしろ。これでわかっただろ、アイツは俺たちを両方潰す気だ、一緒に立ち向かおう!」

「痛っつ~~……あ、これ……痛っつ、痛っつだわ……アゴ折れたわ絶対……」

「えっ、いや大丈夫だろ。ちょっと見せて」

「どう? 折れてるだろ。折れてるよな」

「いや折れてない折れてない、大丈夫だって」

「嘘だろ……折れてるよ……折れてるし過敏性腸症候群だよ……」

「折れてないし後者はお前の持病だし、大丈夫だよ、ホラ立てよ」

「でもホラ、赤いし、血、出てるなこれ……血、出てるもん……」

「出てないから。紅ショウガだから」

「いや……もういいわ……俺、今回はいいわ……」

「えっ、いやおい、今回は、ってなに。ジョニス?」

「俺……帰るわ」

「えっ」

「金は今度返すから……」

「いや、ジョニス、帰るって、おい! ジョニーーーーーース!」


 ジョニスを止めようとするリョウを、背後から魔神の腕が鷲づかみにした。


「フン。思った通りの根性無しだ。だが戦意喪失したなら好都合、予定に変更はない。命令通り君と一対一だ、よもや君は彼のように戦わないなどと言い出したりは――」

「く、くそっ、ホーク・ウィング・トルネード!」


 猛烈な竜巻がサジを包み込み天高く舞い上げた。しかし「――人が喋っているときに竜巻を起こすとは何事だ!」サジはリョウを地上へ放り投げると、そのまま巨腕で難なく受け身をとって着地した。


「さて、次は何を出す? ホーク・ナックルか? ホーク・パルス? いずれにしても君の技は全て――んんん?」


 竜巻の巻き上げた砂塵の向こうに、サジに背を向け猛ダッシュする赤い影が見えた。


 *


 路地から路地へ、住宅街を縫うようにリョウが疾走する。


「か、勝てるわけがない。とてもじゃないけど、一人じゃ太刀打ちできない! ジョニスじゃないが……ここは逃げるしかない!」

「――リョウくん、見損なったぞ! 君なら私に立ち向かうと思っていたが、一人になった途端逃げを打つとは! 朱に染まれば赤くなるというが、君もあのジョニスとかいう若者と同類というわけか!」


 頭上で響くサジの声にリョウは身を縮こまらせた。しかし攻撃が来る様子はない。

 リョウはホーク・アイでサジの様子をうかがった。サジは巨腕をバネのように使って、屋根から屋根へ恐ろしい速度で飛び回りながらリョウを探しているようだった。


「――リョウくん、出てきたまえ! ヒーローならば正々堂々と勝負をしたらどうだ! それとも何か、この町には君やジョニスのように姑息なヒーローしかいないのか!」

「そんな安い挑発に乗るものか……」

「――その逃避に何のメリットがあるというんだ! たとえ負けたとしても、立ち向かったという事実こそが人を成長させるんだぞ!」

「なんとでも言え、絶対に出て行かないぞ」


 リョウはホーク・アイとホーク・パルスを駆使しながら、サジの死角をひた走った。

 あと少し、もう少し、あそこに行きさえすれば――。

 呪文のように繰り返しながら遮二無二足を動かした。


「――君はそうやって逃げ癖をつけてしまうからいけないんだ! 私が君を鍛えてやる! そうすれば、君は精神的にも成長し、抱えた込んだストレスを万引きなどという下らない犯罪で解消することもなくなるだろう!」

「――おい! 誰が万引き常習犯だ! 誰が隠れ前科百五十犯だ! 言っていいことと悪い事があるだろう!」

「――そこか、リョウ!」

「あーーーーしまったつい我慢できず!」


 リョウが身を隠したブロック塀ごと巨大な拳が粉砕した。土煙の中から赤い影が脱兎のごとく駆け出す。


「逃がすか!」


 サジはそばにあった電柱を掴み、身体を引き寄せリョウの行く手を塞いだ。


「――とうとう年貢の納め時だな、ゴールデンホークのリョウ」


 逃げ場を塞がれたリョウにサジが迫った。


「さあどうする? 走って逃げるか? 飛んで逃げるか? いずれにしても私の手はそれより速く君を捕まえる。立ち向かう意外に選択肢はないぞ、リョウくん」


 サジが半歩間合いを詰めた瞬間、リョウは膝をつき祈るように腕を組んだ。


「ひ、ひいいい! 違う、違うんです! 俺は急にタイツ姿のやつに、無理やりこんな格好をさせられただけで、人違いなんです!」

「……まったく、ほとほと君らは私をガッカリさせてくれる。姑息な手段で逃げるばかりでは人間的成長は得られないし、私を倒すこともできない。そろそろ理解したろ、ゴールデンホークのリョウ?」


 言ってサジは後ろを振り向いた。その視線の先には、崩れたブロック塀の先へ伸びる巨大腕と、それに掴まれたもう一人のリョウの姿があった。


「な――なぜ、僕がここにいると!」

「ホーク・デコイ。確かそんな名前だったな。一般人を自分そっくりの姿に変えて囮にし、死角から闇討ちする……そんな姑息この上ない作戦に私が引っかかると思ったかね」


 掴んだリョウを思い切りアスファルトに叩きつけた。


「ぐぉえっ――!」

「今のは君の姑息さに対する罰だ。これから私は君をちょいと締め上げて気絶させる。殺しはしない。目が覚めたら君の性根をたたき直すカリキュラムを組もう。毎朝乾布摩擦からだ。そうやって心を調えるんだ、きっと気持ちいいぞ! 何か異論はあるか?」

「……から……っんだ」

「なに? なんだって?」

「だから……嫌だったんだ……どうせこうなるって、わかってたのに……」

「後悔か。うむ、したまえ。後悔は心の筋肉痛だ。乗り越えたあとには成長が待っている」

「いつもだ……ガキの頃から……二人でやった悪さが見つかったときも……アイツが連携して逃げようっつったら……俺を囮にするってことなんだ……クソ! お前の考えることなんか、昔っから手に取るようにわかるんだよ――リョウ!」

「――なに?」


 ――ホーク・ウィング・トルネード!


 その叫びとともに巨大な竜巻がリョウとサジを呑み込んだ。


「この技は――馬鹿な! あのデコイ……あの命乞いをした偽物は……偽物ではなかったのか! しかし、では私の前にいるこの男は――」

「よお、あんたの嫌いな若者だぜ、クソオヤジ」

「ジョニス! 貴様ら私を騙したな、よくも、こんな姑息な手を! だがせっかくの不意打ちも無駄だ、この程度の高さ、私の腕を持ってすれば――」


 サジは受け身を取るため、ジョニスの拘束を解いた。


「――そうするのは知ってた。着地の衝撃を和らげるためその馬鹿でかい腕を使うのはもう見たぜ。リョウが俺に見せてくれた」

「見たから、知ったからなんだというんだ。待ってろ、態勢を建て直しすぐに君らを……」


 サジは空中で身をよじった。受け身を取ろうと腕を振るも言うことをきかない。いや腕ばかりではない、身体全ての自由が封じられていた。


「な、なんひゃこれはっ、から、からだが、うご、うごきゃないっ」

「――レッド・ローズ・パラライシス。周りをよく見てみるんだな、貴様がいるのはただの竜巻じゃない。深紅の薔薇咲く、毒花の嵐だ!」


 ジョニスのマントから放たれる無数の薔薇の花弁が、竜巻の中で無限の螺旋を描いた。サジは己の身体を見た。鎧のない剥き出しの体節に張りつく毒の薔薇を見た。


「な、なぜ、いつのまに、こんな作戦をたてる時間など、な、なきゃったはず!」

「一度見たことなら、一度知ったことなら、一度経験したことなら――何も言わなくたって顔を見りゃわかるんだよ、俺とリョウならな!」

「――そういうことだ、サジ」


 竜巻から放り出されたジョニスの身体を、リョウが空中でキャッチした。


「俺たちは確かにハンパ者かもしれない。だがな、互いの欠点を補い合うことで誰よりも強くなれる。俺たちヒーローはそういうものだ。この町は、そういう町だ!」

「く、くそ、こんな、こんなことが――――!」


 サジは身動きの取れないまま地上へと激突し、けたたましい音と土埃が舞った。

 リョウはその近くにそっと降りた。


「……死んだ?」

「いや気絶しただけだ。たぶん。だって前この技使ったときも死ななかったじゃん」

「食い逃げバレたときな。あんとき店のオヤジは川に落ちたから……でも今回もろに地面に落ちたじゃん。やばくない? やだよ俺、カニの葬儀とか、宗派もわかんねーし」

「いや大丈夫だろ、なんか凄い丈夫そうだったし」

「つついてみてよ」

「えっ。やだよ、ジョニスがやれよ」

「お前のが近いだろ、いいじゃん、ちょっとだけ。死んでるかどうか確かめるだけだって!」


 じゃり、という音と共にサジの腕が持ち上がった。押し問答をしていた二人は同時に後ずさりした。


「しゅ……首領様……申し訳……ございま……せん」

「しゃ、しゃべった」「うわごとか?」「たぶん」

「……よかったやっぱ生きてんじゃん! な? 言ったろ生きてるって、俺言ったもんな!」

「まあ一安心だな。しかしコイツ何で僕らを襲ってきたんだ」

「わかんねーよ。おい、カニ野郎! お前なんで俺らを襲ったんだ」

「答えられるわけないだろ、気絶してるのに」

「足……止め……時間稼ぎ……」

「答えた」「答えたわ」「どんだけ真面目なんだこの人」

「しかし足止めって、いったい何のために――」


 ジョニスの言葉を遮り、雷鳴のような音が轟いた。

 文字通り晴天の霹靂にジョニスとリョウは顔を見合わせた。

 落雷したと思われる百貨店から、猛烈な勢いで黒煙が噴き出していた。

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