「普段何してんの?」は上から目線、興味がねぇなら聞くんじゃねぇ!
「興味がねぇなら聞くんじゃねぇ!」
今日は早々に荒ぶっている。
「銀、まだ仕事始まったばかりだぞ、」
「なんに切れてるんですか?」
「どうせ、昨日の新入社員の歓迎会だろ。」
「あー、なるほど、銀くん、会社全体の新入社員の歓送迎会に巻き込まれたからって八つ当たりしないで。ジャンケンで決めるって言い出して、負けたの自分でしょ。」
「そりゃいくたくないけども。それは古賀の姉さんも一緒で、自分だけ特別で行かなくていいは不公平感爆発なので、気に入らんですバイ。」
「ですばいって、変なところこだわるわね。あと、年上だけど、今度姉さん呼ばわりしたら殺すからね。」
「こいつは変なこだわりばっかだよ。頭の固いバリバリの昭和脳基準のマイルールが最優先。銀、とりあえず、後から聞いてやるから今は仕事しろ。」
「いやいや、今話しますよ、俺はそれでも全然仕事できますから、てか、どうせ、今日は暇でしょ、どっちにしろ明日の稟議ないし、来週まで営業会議ないから、今日は先輩資料つくなくていいの知ってんですからしっかり付き合ってもらいますよ。」
「いや、でも、古賀さんの邪魔になるから、」
「私は別にいいですよ。いちいち聞いてませんし、何より、少し気になりますし、だって現時点で、なんのお咎めも無しってことは、宮司くん、おとなしくしてたって事でしょ」
「確かに、、、」
「えぇ、そりゃ大人しくしてましたよ、怒られるのが俺だけなら俺の好き勝手にしますけど、今回は少なくともここの代表で行ってますからね。余計なことしないようにしてましたよ。わざわざ一番端っこで、ずっとジュース飲んでましたよ、からあげとかほとんど食べれませんでしたよ。」
「あぁ、ご飯食べれなかったことに関して怒ってんだ。」
「いや、ちゃいますからね、そうじゃなくて、人がせっかく問題起こさないように、人を不快にさせないように、端っこでおとなしくしてあげてたわけですよ。そしたらですよ。
酒に酔った馬鹿が、新入社員連れて俺んところに来るわけですよ。」
「ちなみにその馬鹿って?」
「教育担当の岡垣、、部長だっけ、課長だっけ?」
「課長。」
お前を教育したのも岡垣課長なのに、そんなことも知らないのかと、鉄平は頭を悩ますが、遥はその名前を聞いて銀が怒っていること同意する。
「まぁどっちでもいいわけですよ。てかあいつ仮にも教育担当なら、店員さんに傲慢な態度とんなよ。持ってきてもらったらありがとうございますだし、食べ物玩具にするなよ。マジでよく俺手を出さなかったなですよ。
人にもの教える前に、社会の常識ぐらい守れよドカスか、これだから最近の年寄りは」
ホント良かったと、鉄平はもう一度頭を抱える。
銀は前に上役が飲んだコーヒーの缶を机の横のゴミ箱に入れるのを見て説教をし、ちゃんと給湯室に捨てさせたり、路上でタバコを側溝に捨てるのを本気でキレて、クズ呼ばわりしたりと、まぁ、相手が悪いのだが、相手がなにものであろうと絶対に許さない人間だ。
この男、環境意識は人の数倍高いし、彼の価値観の中でだが、人に見られていようがいまいが人に恥じるような真似をするながモットーだ。
それからするともし、酒の場で悪ふざけをした上司にぶちきれていてもおかしくはなかった。いや、おそらくセクハラやパワハラまがいのことがあっていたらおそらく今日はこうしてられなかっただろう。
とすれば、銀が怒っているのは、彼からすれば時間の無駄な、自分の自慢話か、○○っていうのはみたいな何かを代表しての説教くさい話をされたのか
「で、なんで怒ってんだ、とりあえず、全部出しとけ、じゃないとほかの人の前で態度に出されたらたまったもんじゃねぇ。」
「了解っす。まぁ、要はですよ。酔っ払って俺の前の席に来たわけですよ。
で、偉そうに、俺のことを変人呼ばわりして、人を話しのネタにするし、自分の自慢話を始めるわけですよ。まぁ、ムカつきますけどそれはいいでしょう、好き勝手に言わせておけば、事実とちがかろうが、空気を読んで特に否定もしませんでしたよ。
偉くないっすか?」
「、、あ、、あぁお前がそこまでできるとは正直想定外だ。」
「でしょ、で、多分話すことがなくなってきたんでしょうね、沈黙が訪れるわけですよ。
それで他の席に行けばいいのに、俺のいるテーブルにはあのバカ以上に偉いのがいなかったから居心地がいよかったんでしょうね。長居し始めるわけですよ。
したら新入社員の子が、気を使って話をつなごうと、俺に趣味とか聞いてきたんですよ。
まぁ、話してどうなるものでもないし、余計にテンションが上がってひかせるわけにも行かないですから、適当に映画と自転車のツッコミどころの少ない趣味を上げたわけですよ。
趣味に貴賎はありませんけど、マンガ、ゲーム、プラモとかは言わないほうがいいでしょ。」
「まぁ、そうだな。同じ趣味の子がいて盛り上がる可能性はあるが、岡垣課長は漫画は子供の見るもの、そんなもの読むヒマがあるならビジネス書を読めっていう人だからな。」
「でしょ、今回は俺かなり空気読める子なんで、で、そしたら当然最近見た映画は何か聞かれるからとりあえず、ツッコミどころの少ないメジャータイトルと、少しは話の足しになるかと思って少しマイナーな単館でやってた実話ものを挙げたわけです。
まぁ、結果としてそこまでは良し、普通の世間話ですよ。
そして今度は自転車の話なんですけど、そこで、俺の乗ってる自転車をみたいって言うから写真を見せたわけですよ。そしたら新入社員の女性の子が大学のサークルでサイクリングやってたみたいで、俺が持ってるのが50万くらいするって知ってて、」
「え!なに?あんたのあれそんなにするの?」
「会社に乗ってきてるは10万くらいの、ちなみに50万は定価で俺は中古で買ってるから実際はその半分以下、」
「それでも10万するの、あんたどこにそんな金があるのよ。」
「いや別にホイホイ買ったわけじゃないからね、俺大学の頃年間バイトで130万くらい稼いで、自宅で、奨学金とってたからそこから買ったの、俺が一番リッチな頃の一番高い買い物。だから、それをしのごの言われる理由はないよ。俺車も中古の軽だからな。」
「普段無駄遣いしてるのに、」
「銀はこう見えて、しっかり家計簿とかつけてるから普段何も考えずにモノ買ってるように見えるけど、それも月きめた金額以下に収めてるから。」
「当たり前ですよ。ちなみに毎月買うおもちゃは定額遊興費、普段かっているコンビニの食玩とかは不確定遊興費、不確定といっても毎月給料もらった時点で、その月の必要経費と貯金、食費を差っ引いた残りの範囲内、不確定は何に使ってもいいって意味と、今回みたいな会社の飲み会とかあったらその分ここから減額されるからそういうふうに区分分けしてる。大学自体からの推移もちゃんと付けてるからね、この遊興費の割合が一番高かったのが大学時代、だからそういう高いものはここに就職してからは全く買ってない。
就職したら実家暮らしでもないから万が一に備えて貯金の割合増やしてるから、まぁその分細々したものを買う頻度は高くなったから古賀さんから見たら考えなしに使っているように見えるかもしれないけどね。」
「ちなみに、家計簿もそうだけど、銀の家はすごいよ。マジで豆に掃除している、ドンびくくらい綺麗におもちゃとか本とか並んでるから、本は少年コミックとか少女コミックとかで分けて、出版社順作者の50音順、おもちゃもシリーズ別の通し番号順に並んでるし、冷蔵庫の中の調味料系も開封日まで記載してある」
「そうじゃないと入りきれないし、管理するのが好きなんですよ。」
「、、、うわ、細かい男、結婚できないわよ。」
「本人にその願望がないので必要ありません。それからちゃんとしてるのを、財布の中にレシートを溜め込むような人に否定されたくありません。」
「な、なんで知ってんのよ!」
「見えただけだよズボラさん。あと机の中のボールペンとかちゃんと管理してないから持ってるのに買ってきたりするんだよ。」
「はいそこまで、関係ない話になってきてるよ、で、自転車の話になってどうなったわけ」
遥と言い合いになりそうだったので徹平が止める。
「で、それでですよ。俺もちょっと自転車の話ができる人がいるとは思ってなかったんで、少し、盛り上がってきて、その子ずっと東京で、こっちは初めてだってことで、オススメのルートとかそういう話なって話の主役が岡垣課長から俺になってきて岡垣課長がだんだんと不機嫌になって行ったんです。
そしたら、『へー、普段そんなことしてるんだ?他には何してるの?』
みたいなことを聞いてきたたわけですよ。
で、俺の持論ですけど、普段何してるの?系の話は完全に上からくる
です。あれ完全に自分の日常が充足しててお前はつまんねぇ毎日があるでしょ、けいな感じですよ。で、俺もせっかくまともに会話してなのに、その年になって自転車って何が楽しいの、車使えばいいじゃん、車って言えば俺の車がさ、みたいな感じで自分の話に持っていこうとしたわけです。
だからどう楽しいか、ちゃんと説明してあげて、その他の趣味も勢いで言っちゃったわけですよ。」
「で、引かれたのか?」
「いや、それが俺、遊びは本気で時間つぶしなんかじゃなくて本気で好きだからやって熱意が伝わったらしくて、新入社員以外の人も結構食い付きが良かったわけですよ。
まぁ、俺が話がうまいというのもありますが、知らない世界の話はたいてい面白いものですし、普段表面しか知らないもの、例えば、映画で行けば、その監督の過去作とか傾向とか、その作品のメイキングの話とか、普通じゃ気づかないオマージュ、後は穿った見方で笑いどころとかそんな感じの話ですよ。そんな感じで、話していったわけです。」
「確かに、あんたの映画の話は面白いわね。見たくなるもの」
「古賀さん聞いてくれないだけで、漫画とかの話もあのクオリティでできるからね。
で、どうもそれが予想外だったらしく、俺岡垣課長と話すことほとんどないけど、話しても聞く気がない、下に見てる、ああいう人だから無駄なんで話したことなかったんですよ。
そしたらあの人俺がよっぽど何もしてない人に思ってたんでしょうね。
予想外の俺の饒舌に引いてたんです。
で、ますます機嫌が悪くなって、いいよな独り身は俺とか妻と子供がいるから大変だよ。みたいな話をしてきたわけですよ。
で、俺は結婚してないけど、これだけは言わせてください、
言うほど大変じゃないだろ、あんた家事も手伝ってなければ、子供を塾に送ったとか、買い物に連れて行ったとか特別な感じで言ってますけどそれただの日常ですから、
特別報告するようなことじゃないですから、
俺に普段何してるか聞いてきたんで、逆に普段何してるんですかって聞いてあげたら案の定その程度ですよ、特別なことも何もないそんなことを話すわけです。
で、だんだんと結婚をしていないことを無責任だ的な感じでそこの一点で人を下にみてきて大変だばっかり言って、奥さんの悪口ばっかり言うもんだから、でも好きで結婚したんですよね。自分で考えてその人と一緒にいたいそう思ったから結婚したんですよね。それが自分の思い通りにならないから大変だみたいな言い方よくないですよ。
っていったら、まぁ、結婚すればわかるよ。
って、なんだよそれ、俺はあんたと違ってちゃんとそこは想像できるし、想定もできるそしてそれを受け入れる覚悟もある、結婚しないことで受ける不利益も、結婚することで生まれる幸せも理解した上で、今の自分を選んでいるわけですよ、それを否定される言われない。それに自分が既婚者の代表みたいな言い方すんじゃねぇ。ってだんだん
マジでイラってきたからやんわりと自然体で否定を繰り返していったわけですよ。
悪意のない感じで、そしたら最終的に
宮司くんは気楽でいいね、でもそろそろ将来のことも考えたほうがいいよ。
いつまで若くないんだから、趣味とかももう少し世間体を気にしたほうがいいよ。
そんな趣味とか生活とか世間じゃ認められないよ。
って言いやがったんですよ。
あれまじで殺していいですか?そもそも人に何してんのって聞いてきたの自分ですよ。
あれはきっと俺を下に観るために聞いてきたんですけどそうはならなかった
したらとたんに興味をなくして、自分の方が大変だとか話の内容に興味をなくすんですよ。
だったら最初から聞くんじゃねえよって話ですよ。」
「、、、で、結局どうなったんだ?」
「そのあとですか?別に怒ってないふりをして、全然心に響いてないよってていで、趣味な話をほかの人と続けました。あの手のバカは自分の言葉に価値があると思ってるからそれがながされるとすっげぇいらつくからいそれが一番効くんですよ。
で、結局そのまま俺のテーブルは今やってるテレビと漫画の話と、逆に新入社員の子の大学の頃の話で最後まで盛り上がって、岡垣課長は途中でどっかにいっちゃいました。
アレなんですか、自分が相手にされなかったら、新入社員ほっぽり出して、あれ最低ですよ。」
「銀」
話が終わると、遥が銀に話しかける。銀は怒られると思い強気で「なんですか」と答える
「よくやったわ、」
遥は同様の経験があるのか、それこそもっとやれの勢いで同意してくる。
遥は大学時代からよくそういうどうでもいい話題を無理やり振られ、まともに返すことができず、下に見られ嫌な思いをたくさんしてきた。
それこそ、岡垣課長からは同じように飲み会の時にはそういうまるで自分を見下して、自分が上に立っているかのような物言いをよくされている。
そんなんだからすぐに精神を病むんだ、これだから女はみたいな最低な感じを思い出し、完全に銀の怒りに同調していた。
「先輩、今回は絶対に謝らなくていいですからね。」
「まぁ、そうだな、今回のはお前は悪くないし、腹の中がどうであれ、それを露骨に表に出してないわけだし、特にいうことはないな、いや、ひとつある。よくやった。」
そして鉄平もまた岡垣課長にではないが、会社の飲み会、結婚直後の飲み会を思い出していた。
その場で鉄平は上司や既に結婚していた同僚から、結婚するといかに大変かや、結婚するとロクなことはないみたいな言い方をされ、遠まわしにではあるが、自分の奥さんを馬鹿にされているような言い方で、頭にきたことを思い出した。
自分が好きで一緒にいたくて、結婚した。そして今でも絶対に一生死ぬまで幸せでい続ける自信がある。喧嘩もしたことなんてない、それが経験が浅いからだといわれも下がそんなことはない。相手に敬意を持って、感謝を持ってお互いに分かりえていればそんなことも必要ない。多少の考え方の違いはあっても話し合いで分かり合えるし、認め合えるし、妥協点だってあえる、許すことで許される。
結婚をしたことで何一つ後悔なんてしていない。
だからそんな思いを必死に伝えようとしたのにまだ何も分かっていないと笑われ、かっこいいと揶揄され、馬鹿にされた。
結婚は自分がしたくてしたことであって社会のステータスとかそんなくだらないことじゃない。愛しているから、一緒にいたいからそれだけだ。
別に結婚の話だけじゃない、銀の趣味にしたってそうだ、銀は本気で好きでやっているそれは笑われるようなことでも馬鹿にされることでもない、社会的な責任を果たした上で、義務ではなく、自分の意志でやりたいことをやっている、それは素晴らしいことだ笑われることはないし、会社にどうこう言われるものでもない。
だが、銀はそんな銀の思いとは関係なく、あの時の自分と同じように話のタネになること期待され話しかけられた。
結局何のためか、簡単なことだ。馬鹿にし、見下すためだ。
そんな状況に銀が出くわし、普段なら、自分の正義感を振りかざし、事を荒立てる銀が、自分や古賀さんの代表で言っている自覚を持って行動してくれた。
それがわかるから、もし、今回のことで、岡垣課長の評価が悪くなったとしても銀を怒る気にはならなかった。
「銀、からあげ食べらなかったんだろ、今日の昼、唐揚げ食いに行こうか?よかったら古賀さんもどう?」
「い、行きます是非!!」
銀よりも先に遥が答える。
「おごりっすか?」
鉄平は無言で見えないように財布の中を確認する
「冗談ですよ、マジにしないでください。」