消費税について話そう
登場人物
宮司銀:一昨年の入社試験で筆記トップで入社したが、遠慮のない発言と、絶対に誤らない姿勢に問題があり、エリートコースから外れ、この営業部に回される。
本来、パソコンの知識などない彼を辞めさせる為に割り振られたウェブコンテンツ作り
だったが、一人で黙々と仕事をするのが将にあっていたらしく思いの他天職に、
持ち前の頭の回転の速さと、普段の外見からは想像できないセンスの良さで、わずか1年で社内でも指折りの仕事の速さを誇る程の腕前に
会社全体の飲み会には参加せず、人の話を聞くときに手を止めない、相手が偉かろうが、画一的な手続きを要求するなど、性格は相変わらず。
多趣味だが、他人と共感するような趣味は持たず、計画的に無駄遣いをする為に、独り身なのに普段は倹約家、食費を削ってでも趣味にはお金をかける
宗像鉄平:銀の上司で3営業部の課長。昨年、高校時代から付き合っていた2つ下女性との結婚し、幸せいっぱい。性格は非常に人間が出来ており、唯一といっていいほど銀に苛立たない人徳者。とはいえすごくいい人過ぎて、で他人が困っていると本能的に助けてしまう事で営業にはあまり向かない。
また、正義感が強く、かつて上司や同僚ともめ事を起こした経緯があり、彼の人間性に好感を持つ一方、彼のことを嫌う人間が多い。
おこづかい制で月1万5000円
古賀遥:銀の同期のデザイナー。美術大学を3浪して入社した苦労人。
入学後もお金持ちが多い観光で金銭的に恵まれていなかった彼女はバイトづくめで大学生らしい思い出などない。就職するために受けた会社は200社以上の苦労人。
入社後も、真面目な性格のせいでストレスを溜めることが多く、一時入院したりしていたが、ある時とうとうストレスが爆発し、4月の定期異動でここに回された。
同期だが、うるさく自己中な銀のことは嫌いだが、自分のことを親身になって考えてくれる鉄のことは尊敬しており、本気で不倫してくれないかなと妄想していている。
「先輩、どうでもいい話なんですけど、」
銀はいつものように昼を過ぎたころに仕事に余裕が出てくるとパソコン越しに、書類作成にいそしむ鉄平に話しかける。
銀は仕事に集中する時は黙々と行うが、そうでもない時は口を動かしながら仕事をする。それでも人よりも仕事は早いが、話しかけられる方はたまったものではない。
「ん、なんだ?面白いのか」
とはいえ、ここに銀が来て一年以上、ずっと向かいの席に座り、人間の出来た鉄平は他の人の邪魔をしないように自ら堤防になる為、流し気味に話を聞いてあげる。
「いいえ、全然どうでもいい話なんで、今日の朝、コンビニに行ったんっすよ。」
「珍しいな、お前、朝ご飯は食べてくるし、昼食べないだろ」
「いや、今日発売の仮○ライダーの○番くじ、一回はやっておかないと、あ、ちなみに、今俺のパソの上に入るのがそれの景品、オレンジ○ームズっす。本当はメロン兄さんが欲しかったんですけど、金に物を言わせるのは俺の流儀に反します。」
「そうか、」
「というか本題はそうじゃなくって」
「無駄話に本題もあるのか」
「で、ですよ、その時にですよ、レジでたばこのまとめ売りをめっちゃ押してるんですよ」
「まぁ、そりゃ増税前だからな」
「まぁ、俺は煙草は嫌いですけど、近くで吸わなくて、マナー守れば、税金納めてる訳ですし、それ自体は別にいいんですけど」
「まぁ、俺も、仕事中にたばこ休憩って抜けなければ別に文句はないけどな。」
「あれ、あれもおかしくないですか、あれ何で仕事の内ですか、コミュニケーションみたいなの、柳川のぶちょーとかひどいっすよね。あれ、」
「まぁ、ストレスもたまる立場だからな、少しぐらいはしょうがないんじゃないか、」
「いや、いや、いや、いいですか、まず10時頃に1回、昼休み後、30分以内に1回、3時に1回、5時頃までに1回、一日最低4回行くわけですよ、それで移動時間も含め最低10分戻ってこないわけでつまりは最低で40分。それを月換算20日はやるわけですから、最低換算で13時間超ですよ。つまりは1日以上サボっているわけですよ。
それに比べて真面目な俺は、休憩時間もゲームはしてますけど仕事してるわけですよ。それに時間の管理も出来てるから、ちゃんと18時に間に合うように計算して仕事してるわけですよ。」
「銀そこら辺でやめとけ、だんだん声大きくなってきてるし、話題的にまずい」
「いやいや、聞こえるとか関係ないっす。で、ですよ、俺が時間通りに帰ろうとしてたら、下でタバコ吸っててもう帰るのか的なニュアンスでいうわけですよ。
こっちは大変なのにって、でもあれ18時ちょうどにタバコに抜けて、30分はだべってますからね、それでその後打刻して帰るわけですよ。」
「、、、銀、お前まさか、その事本人にそんなテンションで言ってないよな。」
「大丈夫です。特に反論はないそうです。納得してもらいました」
鉄平は思わず作業の手を止めて頭を抱える。おそらくまるで演説が如くに滔々と理屈を重ね、揚げ足取りがごとく、ほとんど間を置かず語ったのだろう。
どうりで最近こっちに来るより呼び出される方が多いはずだ。
「お前そんなんだから出世に縁遠いんだぞ」
「んなんで出世したくないっす。というより、別に今の給料でいいです
会社の立場よりも自分の正当性です。わかった上でやってるわけですから先輩が気を使う必要はないっすよ。先輩の教育が行き届いていないとかも言ってなかったでしょ、あれはそこは分かってるんで、自分が指導しても俺が曲がらないことも、轡を付ける自身もですよ。で、ですよ、そんなことはどうでもいいわけですよ。また話そらなさないでください。全く。」
「わかった。俺もそろそろ仕事をしたいから、その本題のどうでもいい話、手早くな、」
「で、今度8%に上がるわけじゃないですか、そのおかげで販促物やらサイトの表示変更やら大量に仕事が来てるのは、仕事が増えて楽しいからいいんですけど」
「おまえ、それで楽しいとか他の人に言うなよ、楽しいのはお前だけだからな」
銀はゲーム感覚で仕事をしているため、追い詰められるほど燃えるし、自分の有能さを自覚し満足し、俺は余裕ですけどなにか?的なことをやりたい人間だ。
「無能の事なんぞ知ったことじゃないです。」
「作業的には有能でも、人間性を重視する営業でお前の自己中な私人優先な言動は結果として、営業という仕事で見たら無能だけどな。」
「さすがっすね、心にしみる、トゲのあるいい切り返しですわ。イイね!ですね。」
全然反省してないが、そんなことはもう慣れっこだ。
「で、ですよ、今度8%に上がるということはですよ105円のものが108円になって3%増えるじゃないですか。で、そのあと10%にあがるじゃないですか、俺すごい発見したんですけど。」
「なんだ?」
「8%にあがるのはまぁ、しょうがないし、まぁ、いいかなって思えるんですけど10%にあがると10%取られんのって精神的苦痛は5%から8%に上がる時より8%から10%に上がるときのほうが大きいわけですよ。
でも、実際は8%にあがったほうが10%に上がった時よりも税金の負担額は大きくなるんですよ」
「?は、何当たり前のこと言ってんだ。3%上がるのと2%上がるなら3%のほうが大きいのは当たり前じゃないか」
「違います。そういう計算の話じゃなくて、精神的苦痛の話ですよ。
俺バカな子じゃないで計算できますからね。それこそ、先輩よりも計算できますからね。俺、先輩と違って、頭いいんで」
「おまえ、、、」
「そうじゃないくて、実際と正資金的苦痛のギャップに関しての疑問なわけですよ。」
「まぁ、俺はどっちも嫌だし、言ってる意味が正直わからなんが、税率が2桁になるからまぁ、そう感じるんじゃないのか?」
「、、、、なんで俺の結論言うんですか、マジ最低ですね。」
「え、それが言いたかったの」
「まぁ、似たような感じです。つまり8%に上がった時は、3%増えるのか、まぁ、3%ぐらいならいいか、で済むんですけど10%に上がった時は100円のものを買ったら10円取られ、1万円だと千円取られるって思うわけですよ。
1万円のおもちゃを買って300円余計に取られるぐらいは、まぁ、1万円のモノ買って300円くらいは、って思えるんすけど1万円で千円、、ジャ○プ4冊分じゃないかってなるじゃないですか。」
「何なんだその価値観はサラリーマンらしく、昼飯2回分とか、そういう換算はできないのか?」
「俺の金銭観は百円の単位でジャ○プ換算、500円で単行本換算、千円単位で、映画、5000円単位でゲーム換算ですよ。それ以上は日本銀行券で考えます。
はぁ、前にも言ったでしょ。」
「覚えてねぇよ。」
「いいました、俺は千円札よりも500円玉2枚の方が価値が上だと思うって、」
「あぁ、なんか言ってたな重量感がとか」
「あとデザイン性もですし、、まぁ、そこは大切なことですので、脳の活性化のためにも記憶を掘り起こしてください。」
「気が向いたらな」
鉄は、メガネを拭いてかけ直し、コーヒーをいれに行こうと、給湯室に目をやる
「あ、やばい、先輩が飽きかけてる。」
「伝わって何よりだ。で、話は以上でいいか?」
「まぁだいたい、はい、じゃ、まとめ8%に上がる時はプラス3%の加算感覚ですけど、10%の時は1割余計に取られるっていう0円からの思考で精神的苦痛が大きい異常です。」
「そうか良かったな、俺には理解できないが、お前の中ではそうなんだろ、満足しか?」
「OKっす。」
「とりあえず、俺が言えるのは銀、黙って仕事しろ。そろそろ、古賀さんが戻ってくる。今のテンションだとお前また怒られるぞ」
「うっす。」
鉄平はコーヒーをいれに行くついでに、仕方がないと柳川部長のところに銀のことを謝りに行く。面倒な部下のせいで余計な仕事が増える。
俺サラリーマンしてるな、鉄平はそんなことで密かに自分に哀愁を感じる今日この頃