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いざ、店舗再生へ着手!

「よし、状況は理解した」


 山済みの書類たちから顔を上げる。レジはもちろん、簿記のようなシステムも未発達だったので、山のような取引履歴を一つ一つ洗っていくこととなった。

 電気やガスがそこまで普及しているようには見えないが、店内には調理器具や冷蔵庫といった厨房施設はある程度揃っているので、魔法のような何か別の技術が発展しているのかもしれない。


「どうでしょう……?このお店は救えるのでしょうか?」

「まあ、今の段階で立て直せるかどうかは分からないがとりあえずやらなきゃいけないことは分かった」

 シーラがごくりとつばを飲むのが分かる。

「値上げしよう」


 真っ先に分かったのが仕入れの金額に対し、提供している料理の金額が安すぎる。

 一般的に言って、利益を出すには食材費と人件費の合計を売上の半分程度にしならなければ採算は取れないと言われている。  

 家族二人で働いている分人件費の面では有利のはずだが、それでも業績が芳しくないならまずは価格を見直すべきだ。

 材料購入時にぼったくられている可能性も捨てきれないが、親父さんがご存命だった頃からそう大きく変わっていないので、ひとまず相場どおりとみて良いだろう。


「それは考えたこともあるのですが……。実は最近まで隣国と戦争の影響で不景気になっていて、私たちだけが値段を上げられる状況ではないのです。停戦協定が結ばれて落ち着いてきてはいるのですが、今もほとんどお客さんがいない状況で、そんな人たちまで離れてしまったらどうしようかと……」

「不景気なあー。まあ、たしかに値上げするだけじゃあ、間違いなく顧客は離れるだろうな」

これも諸説あるが、一坪当たりの売上が月15万円以上あると繁盛店といえ、無条件に値上げをしても顧客が離れるリスクが低い。こちらの通貨基準はまだ把握しきれていないが、この様子では間違いなく満たしていないだろう。


「それに……それに、この店は宮廷で働いていた父が一般市民にも美味しい食事を提供したい一心で始めたお店なんです!だから値上げはしたくなくて……」

「その志は尊重したいが、それが一番の課題なんだよなあー」


 親父さん、料理の腕はピカイチでも経営についてはイマイチだったかもな……。

 故人を悪く言うつもりはないが、思いやりだけで店が回らないのは前世から変わらない不文律だ。もし親父さんがご存命でも業績が悪化していただろう。

 今の料金設定では、常時満席にしても果たして利益が出るのか怪しいところだ。

 客足を回復させる策も別で考える必要はあるが、値上げは避けられない。

 宮廷時代から在庫の管理なんかはしていただろうが、王族・貴族様たちの希望でどばどばと資金を使えた宮廷と街の飲食店じゃ勝手も違うはずだ。


「堂前さんは……いま来たばかりでこの世界のことを知らないからそんなことが言えるんです!なにか……なにか他に方法はないんですか?」


 うーん、言い方が良くなかったか。シーラはやや熱くなっているようで、話し合いは難しそうだ。

 どうしたものかと迷っていると、意外な所から助け舟が入港した。


「あきら、まだこの世界のことあんまり知らない。食材の下見もしたいし、リーリャが街を案内する」


 セオリーどおりの提案をしていたが、数字と実態とが異なっているケースはままあることだ。それにせっかくの異世界を見て回りたい気持ちもあるし、案内してくれるのならとてもありがたい。


「すまんシーラ、たしかに何も分かってないのにいきなりすぎたかもな。リーリャ、案内を頼めるか? すごく助かるよ」

「い、いえ……こちらこそせっかく考えてくれたのにごめんなさい……」

「頼める。リーリャ、街に詳しい」


 こうして金髪翠眼(すいがん)の美少女、リーリャと異世界散策に出かけることとなったのだった。

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