回想編⑳ 魔が刺した熊
魔が差した
楓達に見えたその得体の知れないものの正体は、『小魔』と呼ばれている普通の人間には見えない存在だった。
この『小魔』と呼ばれし者達は、人間や動物の欲望の隙間に寄生する『魔』と呼ばれる分類のものだ。
この『魔』に取り憑かれた人間や動物達は、その心の隙を狙われて、背中に黒い槍が刺されている。
この事を人間達は、『魔が差した』と呼んでいるみたいだが、実際は、『魔が刺した』の間違いである!
そして、この『魔が刺した』対象物は、欲望が暴走しだし、『悪鬼』へと化し、もう後戻りは出来なくなってしまうのであった。
そう、己が破滅していくまでは、、、
まさに今、楓達の目の前にいるのは、魔に刺されて、食欲が暴走してしまって我をも忘れた悪鬼だったのだ。
当然、そんな事は知らない楓と秀は、目に映って来たその得体の知れないものに、恐怖を感じていた。
ガタガタガタ!
「ねぇー秀ぅ!あれっておばけ、、、」
と、唇が震えながら秀に聞く楓。
その震えた声に、ゴクリと、息を飲み込んだ秀だった。
その熊は、月光が反射し、目を赤く光らせながら、口からはヨダレが溢れ出ていた。
正に、正気の沙汰ではなかった。
そして、『食欲』に狂った熊は、ゆっくりと地面にヨダレを垂らしながら、楓達へと寄って来たのだった。
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