9話:信仰
「骸骨の兜の男? あー、あいつかぁ……」
「は、はい、心当たりありますでしょうか」
翌日。
冒険者ギルドで依頼を見ていたイストとシーリーの二人に、ひかりは思い切って声をかけた。
聞きたかったのは、昨日の骸骨の兜の男性のことだ。
あれだけ目立つ格好をしてるのだから、噂ぐらい立っていてもおかしくはないと思った。
「なんか絡まれたの?」
「い、いえ、ちょっと見つめられたぐらいで……」
「んー、見つめられたぐらいじゃ何もできないよねぇ」
「まぁなー、手ぇ出されたとかなら何かできるんだが」
二人はそう話す。
その口ぶりに何かあるのかと、ひかりは切り出した。
「何か問題がある人なんですか?」
「いや、ないよ? ないけどね……」
「見た目が怪しいんで、憲兵がピリピリしてる」
「な、なるほど……」
「まだなんも問題も起こしてないし、犯罪歴もないらしいんだが、最近この領にやってきたばっかでな。色々と警戒されてるんだよ」
あの見た目、流石に怪しまれているらしい。
とりあえず犯罪者ではないとのことだが、ひかりの不安は拭いきれなかった。
「六大神以外の神のロザリオつけてるし、怪しさは大爆発なんだがなぁ」
「珍しいよね、なんの神様なんだろ」
二人の会話に、ひかりは疑問を挟む。
「……かみさま?」
「あ、知らないのか。この国にはねぇ、六大神って言う神様に祝福されてるの!」
「実際にな。信仰すれば、わずかだが加護が貰えるぞ」
「実際に神様に会ったって人もいるよ〜」
二人がそう言った。
ひかりは驚きだった。概念としてではなく、実物としての神がいるのだと。
かみさま。
この異世界には、本当に神がいるらしい。
そういえば神殿があって、女神がなんとかと言っていた気がする。てっきりメニュー画面を表示するための場所なのだと思った。
「六大神のいずれかに信仰を誓うことで、本当にわずかだが身体能力や、魔力なんかが向上することが確認されてるんだ。信仰を深めれば、神聖魔法とか、なんらかの力が貰えることもある」
「あたしも信仰してるよ〜。だいたいの人は六大神の誰かを信仰してるんじゃないかな」
「もちろん無信仰の市民もいるし、無理に勧めはしないが、こだわりがなければ、ステータス上げるためだけに信仰しとくのはアリだと思うぞ」
イストからの説明に、ひかりは聞き入っていた。
ひかりの住んでいた日本では、神や宗教といった概念は薄めだ。ひかり自身、無宗教だった。
しかし異世界には実際に神様がいると聞けば、興味が湧いてくるものだ。
幼い頃、どれだけかみさまに祈ったことか。
「きょ、興味、あります。教えてください!」
「いいぜ、せっかくならじっくり教えるぞ。名前の通り六柱いるから、一柱選んでな。改宗もできるが、ちと手間がかかるから慎重にな」
「はい!」
そうして、イストから六大神の話について聞くこととなった。
「まず第1の神、プロメス。旅と自由を司る女神で、信仰すると身体能力がわずかに上がる。で、稀に結界で信者の怪我を防いでくれる事もあるらしい」
「市民からの信仰1位だと思うよ〜」
「俺個人的にもおすすめだな。自由を司るだけあって、他の神への改修が簡単なんだ。とりあえずで信仰してみても損はない」
「な、なるほど……!」
「次が第2の神、シャサール。狩猟や工芸の神で、信仰すると手先が器用になるんだとか。で、狩りをしたり物を作るときに、上手くいきやすいらしい」
「言った通り、狩人や鍛冶屋とかに好かれてる神様だね!」
「冒険者としても無縁ではないが、特に生産職におすすめする神だな」
「で、次が第3の神、アルム。こっちはバリバリ戦いの神で、信仰すると筋力や魔力が実際に上がってる。なおかつ戦闘関連のスキルが少し成長しやすくなるんだとか」
「あたしアルム様信者だよ! 強いから!」
「荒事の多い冒険者にはうってつけだな。もちろんどんな依頼を受けるかにもよるが、見当しといて損はない」
「第4の神が、マルシャン。これは金と商売を司る神で、信仰すると商売上手になったり、金周りが良くなるらしい。ほんとかは知らんけど」
「商人とかはまずマルシャン信者だと思うよ!」
「だな、商人が験担ぎに信仰してるイメージだ。言っておくが、起業に大失敗したマルシャン信者の話はごまんとあるからな。金欲しいからって安易に信仰するのは、おすすめはしない」
「イスト痛い目みたもんね!」
「うるせぇ!」
「そうなんですね……」
「気を取り直して……。第5の神がリチュエル。秩序と癒しの女神で、信仰すれば手っ取り早く癒しの力を扱える。だから冒険者にも人気だ」
「都会の神殿のリチュエル様像は、見た方がいいよ! めちゃ綺麗だから!」
「ちなみにアンデッド……ゾンビとかゴーストとかだな、そいつらを撃退する神聖魔法にも長けている。いわゆる神官といえば、リチュエル信者なことが多い」
「で最後に、第6の神、ヴィヴィ。知識と魔法の女神で、信仰するとマジで魔力がグッと上がる。魔法使いならマジでおすすめだ。ちなみに俺はヴィヴィ信者」
「頭良くなるらしいね! イストには関係なかったけど」
「あるわ! まぁ魔法を使いたいならおすすめだな!」
これで六大神の紹介は終わったようだ。
「六大神を信仰することで、デメリットは基本ない。たまーに、神託……まあ神からのお使いだな。それを依頼されることがあるが、別に無理して受ける必要もないからな」
「そうそう、信仰しない人は、なんらかの拘りがある人だけだね、基本は、しといて損はないよ!」
ひかりとしては、大変興味深い内容だった。
複数の神様がおり、それぞれが違った特徴を持っている。
すでに、どの神様を信仰するか悩んでしまうほどだ。
とりあえず、骸骨の兜の男性のことは、頭からすっかり抜けてしまっていた。
こういう設定作るのすき