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8話:納品

「あの〜……」

「あっ、今朝の急に出てきた子! どうしたの?」

「ヒールベリーを摘んできましたので、確認を……」


 夕刻の冒険者ギルドにて、ひかりはヒールベリーの納品を行った。

 ちゃんと隠密スキルをオフにすれば、受付嬢に普通に話しかけて気づいてもらえた。


「ヒールベリー8本!? 頑張ったわねぇ! 普通一日やって2、3本でしょうに」

「たまたま運よく群生地があって」

「それはめちゃくちゃ運が良かったわね! うん、根っこの上から切ってるし、状態も良い、8本まとめて換金するわね」


 受付の女性は、薬草を持って一度奥に引っ込むと、少しして銀貨の詰まった袋を持ってきた。


「はい、1本50シルバーだから、8本で400シルバーね」

「は、はい」


 ひかりは銀貨を受け取ったが、すぐに首を傾げた。


「この大きい銀貨は……?」

「大銀貨知らない? これ一枚で、10シルバー。40枚で、400シルバーよ」

「な、なるほど」


 見た目五百円玉よりも大きい銀貨が、40枚。これで400シルバーらしい。

 また一つ勉強になった。


「ありがとうございました」

「いえいえ。小さいのにお仕事頑張れて、えらいね」


 受付嬢はそう言って、報酬を受け取ったひかりを見送った。


 ひかりはとりあえず冒険者ギルドを出て、宿屋に向かう。


(初めてお金を稼いだ!)


 それも一日で400シルバーも稼いでしまった。

 食事3食宿屋代込みで約40シルバーと考えると、10日は暮らせる金額だ。


(でも普通は2、3本って言ってたな……。となると普通の人は100から150シルバー?)


 もしそうなら、2、3日分の暮らししかできない。

 見つからないこともあるだろうし、冒険者の生活は意外とカツカツなのかもしれない。

 多分一日で8本取れたのは、《幸運の申し子》のおかげだろう。

 つくづく、取って良かったギフトだった。


ギフト

《幸運の申し子》

あなたは幸運が訪れやすく、不幸は訪れにくい

《完全免疫》

あなたは毒と病気をまったく受けない


(《完全免疫》のおかげで病気の心配もいらないし、とりあえずは暮らしていけそう……あとは……)


 なんとか生活はできそうと判断したが、大きな懸念事項がある。

 『プレイヤー』の存在だ。

 隠密999のおかげで影が薄いので、そうそう目は付けられないと思ってはいるが。

 この世界は、黒髪はそこそこ珍しいらしく、名前もヒカリ=カゲハラで登録してしまっている。他の転生者が見たら、すぐバレるだろう。

 最初の立ち回りを失敗したような気がしてならなかった。


(おっと……)


 考え事をしながら歩いていたら、人とぶつかりそうになり、ひかりは避けた。

 その避けた人をちらりと見て、ひかりはぎょっとした。


 頭が、骸骨。

 いや、骸骨のような大きな兜を被っていた。

 多分獣かなにかの頭蓋骨だろう。

 服は黒い外套を着込み、背は2メートル近くある。

 顔が見えないが、いかにも怪しげな人だった。


「……?」

「……!」


 その骸骨頭は、あろうことか、影の薄いはずのひかりをじいっと見つめてきた。

 いや目がどこにあるのかは分からないが、とにかく、足を止めてひかりの方を見ている。

 ひかりに悪寒が走った。


(隠密、オン!)


 すぐに隠密999スキルを発動し、ひかりは走って宿屋に向かった。


 幸い、追っては来なかった。

 宿屋に逃げ込み、ひかりはバクバクと暴れる心臓を押さえて、壁に寄りかかった。


(なんかすごい人に見つかった……。どうしよう)


 見た目で決めつけてはいけないが、いかにも怪しい見た目をしている。

 そんな相手が、足を止めてひかりを見つめてきた。

 オフにしていたとはいえ、隠密スキルの高いひかりを。


(転生者かも……!?)


 その可能性が頭を離れず、ひかりは緊張でしばらく動けなかった。

 もし悪い人間だったら、命を狙われるかもしれない。

 だとしたら、どうすればいいか……。


 しばらく考えても結論は出ず、とにかく目立たないことを意識しようと再確認しながらひかりは宿に泊まった。

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